お前ら・・・モー娘はもう終わりだ。

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1MARCH
文句あるか?
2 :02/09/16 12:57 ID:rRuXFCot
2
33:02/09/16 12:59 ID:5wCmUEBS
3
44:02/09/16 13:00 ID:ZqYEx4FI
4
5<<<<:02/09/16 13:01 ID:6FgfcA0k
やり捨てだ。。。あいつら
6名無し募集中。。。:02/09/16 13:01 ID:3hO+m/Bd
お前らチョンの癖に生意気だぞお。ぷんぷん。
7名無し募集中。。。:02/09/16 13:11 ID:STbh/NEJ
8名無し募集中。。。:02/09/16 20:40 ID:UTyYngGU
モー娘。=モー終わってる娘。
9名無し募集中:02/09/16 23:01 ID:4KrfNBQE
これからはカントリーの時代。これ常識。
10名無し募集中。。。:02/09/16 23:02 ID:fRnLgWO7
10
11名無し募集中。。。:02/09/16 23:09 ID:L+QsR+qJ
おれ、もうモーヲタじゃないかも・・・。
いちばんモー板の上の宣伝みたいな所が変わってたのをはじめてしった。鬱・・。
12ななし:02/09/16 23:30 ID:IePuWett
ていうか、庵らモー娘でねぇし
13ねえ、名乗って:02/09/16 23:35 ID:Y5LJebwL
∋oノハヽo∈
   ( ´D`∩ノンノノン♪
 (( (⌒) ⊃ノ  ))
     (_)

 ∋oノハヽo∈
   ( ´D`)ののたん れす♪
 ((  ノ ⊃⊃ ))
   (__ノヽ_)

 ∋oノハヽo∈
   ( ´D`)つみんなのアイドル♪ ののたんれす♪
 (( (⊃  (⌒) ))
    (__ノ

  ∋oノハヽo∈
    (´D` )__ てへてへてへてへてへ♪ ヨイショ♪
 (( ⊂⊂   _)
     (__ノ ̄ 彡

  ∋oノハヽo∈
   (´D` ∩ ))ののなのれす♪
 ((  (⊃ 丿
    し(_)
14池田屋:02/09/19 00:33 ID:Yaqh+YYp
重複スレで移動されてしまいました、、、
ひとまず疲れるまで今までの部分うpしていきます。

『さみしい日』と『回帰(改訂)』に繋がるハロプロ改編妄想小説。



   『A MEMORY OF SUMMER '02』


15池田屋:02/09/19 00:34 ID:Yaqh+YYp

「あー、もうすぐ4月かぁ。早いよねえ」
圭ちゃんが指で蟻の進路をジャマしながら言う。
「そっか、来週から4月なんだ…。お花見くらいしたいよねぇ」
「お花見ならこの前したじゃん」
「えっ? わたしやってないよ」
「やったじゃん。辻が焼そば食べられなくて駄々こねてたじゃん」
「なんだあ…ハロモニの話か…。
 そんなんじゃなくて、わたしはもっとちゃんとしたお花見がやりたいの!!
 ねえ、なっちもそう思うでしょ?」
「・・・・・・」
「あれ? …なっち? ちょっとー」
なっちを振り返ると、コンクリートの上に『大』の字になってかすかに寝息をたてている。
「なっちー、風邪ひくよ。こんなところで寝てたら」
そう言って肩を揺り動かした。
「…んー? …なにー? やぐちぃ?」
目をこすりながらゆっくりと身を起こしてくる。
……まったくこの人は…こんなかわいい顔してて無防備なんだから…
16池田屋:02/09/19 00:35 ID:Yaqh+YYp
今日の娘。は東京のスタジオでゲネプロの真っ最中。
明日には石川入りして春のツアーが始まる予定になっていた。
アルバムを出した直後とあって、いつものシングルメドレー的なライブとは違い
メリハリのあるライブを久しぶりに見せられそう。
それだけにみんな練習にも気合いが入っていた。
そして休憩。
誰ともなしに火照った体を冷ますために3人でスタジオの外に出てきた。
午後の陽射しに温められたコンクリートが心地よく、3人とも腰をおろす。
知らぬ間になっちは横になって寝てたんだ……
17池田屋:02/09/19 00:36 ID:Yaqh+YYp
「ねえ、なっちもお花見したいでしょ?」
「うん…でも今年はもう散っちゃったって話だよ。
 ここのところずっと暖かかったし」
「えー!そうなのー? お花見やりたいのにぃ」
「桜ももう咲いてないし、それにそんな時間ないの分かってるでしょ?」
圭ちゃんが冷静にツっこんでくる。
「そんなの分かってるよぉ。でも『言うだけならタダ』って言うじゃん。
 こんくらいのこと口にしてなきゃやってらんないよー、実際」
「…そういや、矢口。あんたもう平気なの?」
「何が?」
「『何が?』って、あんた大泣きしたとかヘコんだとか、
 一昨日にそんなこと言ってたじゃない」
「あー、あれね。もう大丈夫。なんか昨日ラジオで話したらすっきりしちゃった」
「あんたさー、あんなことラジオで話して大丈夫なの?
 また怒られるんじゃないの? 知らないよ〜」
圭ちゃんがおどかしてくる。
18池田屋:02/09/19 00:38 ID:Yaqh+YYp
「えー? なになに? わたし聞いてないよ〜。矢口、なんか失敗したの?」
「なっちは一昨日休みだったからねー」
「別にたいしたことじゃないよ……
 今の自分を見てヘコんで、昔のことを思い出して、感傷的になって、
 それで大泣きしたってだけだよ……」
「昔のことって…また……?」
「そう。またあの頃を思い出してただけ。
 どんなに怒られたって忘れようとしたってやっぱ忘れらんないよ」
「…………」
「わたしたちはこんなに変わっちゃったのに……
 モーニング娘。はこんなに変わっちゃったのに……
 そんなこと考えてたらずーっと涙が出てた」
「なっちも分かるよ…」
またコンクリートの地面に仰向けになってなっちはつぶやく。
「…なっちもちょうど昨日のラジオの収録で語ったんだ。
 『人生』ってなんなのか。
 『生きる』ってなんなのか。
 自分は何を残せるのか?
 自分で生み出したものを残せるのか?
 そんなことをね、語ってみた……
 それでBGMに『21世紀』をかけてくれるように頼んでおいた…」
19池田屋:02/09/19 00:39 ID:Yaqh+YYp
「へぇ、なっちも昨日だったんだ! 矢口も昨日語ったんでしょ? すごい偶然だね」
「そんなことないよ圭ちゃん。みんなそういうのを思い出す時期なんだよ。ね、矢口?」
「そうなのかな……でもこの時期になるとやっぱり不安だよね…
 これからのモーニング娘。はどうなっちゃうんだろうとか、
 今年は誰も辞めなかったけど、いつ急にまた『卒業です』って言われるんだろうとかね……」
圭ちゃんは
「…これからの『モーニング娘。』か……」
と言ったっきり黙ってしまった。
「わたしたちにはどうすることもできないよ…
 紗耶香のことだって…」
わたしは慌ててなっちの言葉を遮る。
「ちょっと、なっち、紗耶香のことは…」
口に人さし指をあてて、それ以上言わせないようにする。
「あ、ゴメン…圭ちゃん」
「ううん…気にしないで」
20池田屋:02/09/19 00:40 ID:Yaqh+YYp
圭ちゃんには紗耶香の話はタブーだ。
紗耶香にとってモーニング娘。の中での一番の理解者であり、
プッチモニで一緒で、地元も一緒だった圭ちゃんは
紗耶香の脱退にも復帰にも終始わたしたちには何も語らなかった。
そのことが逆に紗耶香の抱えている問題の深刻さをわたしたちに悟らせることになった。
だからわたしたちは極力圭ちゃんの前では紗耶香の話はしないようにしている…
「でもさ、これからあと何年かモーニング娘。続けるとしてもわたしたちは何か残せるのかな?
 今の活動を記憶に残してくれる人っているのかな?」
そんななっちの言葉が棘のように心に刺さった……
21池田屋:02/09/19 00:41 ID:Yaqh+YYp
「矢口さ〜ん!そろそろ再開するみたいですよー」
石川がかん高い声を張り上げて迎えに来た。
「じゃあ、そろそろ行こっか」
わたしの声に二人がやれやれといった感じで立ち上がる。
「ちょっと今日は黄昏れすぎたね」
石川がきょとんとした顔をしてる中、3人で顔を見合わせて苦笑いした……
22池田屋:02/09/19 00:41 ID:Yaqh+YYp


     ◇      ◇      ◇

23池田屋:02/09/19 00:50 ID:Yaqh+YYp


     ◇      ◇      ◇

24池田屋:02/09/19 00:55 ID:Yaqh+YYp

コンサートも各地を回って今日は大阪公演の初日。
木曜にオールナイトニッポンをやって、昨日韓国に日帰りで行って、今日早朝に大阪へ出発。
さすがにキツイ。睡眠不足で頭がガンガンする。

「つじ〜、かご〜、これ韓国のお土産」
二人にそれぞれ韓国海苔とアカスリグッズをを手渡しする。
「「ありがとございます」」
25池田屋:02/09/19 00:56 ID:Yaqh+YYp
「矢口さん、韓国に行ってきたですか?」
加護が聞いてくる。
「うん、昨日ね。焼肉とか石焼きビビンバとか食べてきたんだー」
それを聞いた辻がうらやましそうな声を出した。
「いいなあ。辻も焼肉食べに行きたかったです」
そう言いつつ韓国海苔の袋を開けようとしている。
「こらー! 辻! なんで今開けようとしてるのよ」
「いや、ちょっと味見してみようと思って」
「もうすぐリハーサルでしょ! 少しの間我慢しなさいよ!」
「カレーうどんに入れたらおいしいかな?」
「聞いてんの? 辻!」
辻はわたしの怒声も気にせず袋を開け続けている。
26池田屋:02/09/19 00:59 ID:Yaqh+YYp
そして加護も一向にわたしの怒鳴り声なんか構わずに聞いてくる。
「ねえ、矢口さん。今晩外に出れますかねえ?
 せっかく大阪に来たんだからお好み焼き食べたいです」
「ちょっと加護、あとにしてくれる。辻を止める方が先なんだから」
「あ、タコ焼きもいいかなあ」
「加護、少し黙ってて!」
わたしが強く言うと
「もういいですよーだ。ごっちんのとこにでも行ってこようっと」
って、あっかんべーをしながら走っていってしまった。
辻は相変わらず韓国海苔の袋を手に持ったままだ。
ホントにこいつらは、もう……
「辻! カレーうどんに入れてもおいしくないから。
 どうしても今日中に食べたかったら、あとで御飯にでもかけて食べな。
 それがてっとり早くて一番おいしいから……だから今はやめときな」
わたしが諭すように言うと、ようやく辻も袋を手から放した。
こういう風に最初からしおらしく言うことを聞いてくれればかわいいのになあ。
27池田屋:02/09/19 01:00 ID:Yaqh+YYp
……あとは加護か。
もうすぐ出番だってのに……
わたしはココナッツ娘。の楽屋の扉を叩く。
「ミカちゃーん! ちょっと加護を探してくるから、先に辻と一緒に舞台袖まで行っててくれる?」
奥の方から
「はーい、分かりましたー」
ってミカちゃんの声が聞こえた。
「ヨロシクねー」
辻のことはミカちゃんに任せて加護の姿を捜しまわる。
まったくー、どこ行ったんだよ、加護は!
28池田屋:02/09/19 01:01 ID:Yaqh+YYp

「あ、よっすぃー。加護のこと見かけなかった?」
「そこ曲がったところでごっちんと座って話してましたよ」
良かったー。簡単に見つけられそうで。
「さんきゅー、よっすぃー」
「矢口さんも大変ですねえ、相変わらず」
よっすぃーはいつも通りの微笑を浮かべつつ歩いていってしまう。
29池田屋:02/09/19 01:01 ID:Yaqh+YYp

また怒って逃げられないように、今度はこっそりと近づく。
近づくにつれてごっつぁんと加護の会話する声が聞こえてきた。
「あいぼんは今回実家に帰らないの?」
「うん…」
「なんでー? ここから近いんだったら帰ればいいじゃん」
「だって、明日もライブあるし、その次の日もPOPJAMの収録があるし、
その次の次の日もうたばんがあるし、加護だって忙しいんだから……」
「電車で帰れば1時間くらいで着けるんでしょ?
 めったに帰れないんだから、お母さんと会ってくればいいのに…」
「お母さんは明日来るからいいの……
 それに一回帰ったら、また別れるのが悲しくなるじゃん」
「……そっかー、あいぼんは強いね。
 あいぼんが強いからわたしアイス食べたくなってきちゃったよ」
「なにそれー? ごっちんわけわかんないよー」
「アイス食べに行こっか?」
「えー? ごっちんのオゴり?」
「うん。オゴったげる」
「やりぃ。ごっちん大好きー」
そう言って立ち上がってきた二人と目が合った。
30池田屋:02/09/19 01:02 ID:Yaqh+YYp

「あ、やぐっつぁん、どうしたのー?」
返答につまる。今の会話を聞いて加護を怒れるほどわたしは冷徹になれない。
「うん。そろそろリハが始まるから加護を迎えにね…」
加護はごっつぁんの後ろに張り付いて離れようとしない。
見かねたごっつぁんが加護に声をかける。
「あいぼん、アイスはリハが終わってからにしよう。
 だからとっとと済ませちゃってきてよ。そしたらわたしも早く終われるし」
「…うん…」
加護はアイスが食べられないことよりも、ごっつぁんと離れるのがイヤみたいだ。
「ほら、加護、行くよ!」
ここは変に同情しないほうがいい。
独りよがりな同情は逆に加護の中にしまってある寂しさを呼び起こしてしまう。
今は『強さ』を演じている加護のままにしといてあげよう。
わたしの気持ちが分かったのか加護は廊下を歩き始めた。
わたしは
「ごっつぁん、ゴメンね」
とだけ言ってその場を離れた。
ごっつぁんは
「ううん」
とだけ言って、『にへら』といった感じで笑って首を軽く振った……
31池田屋:02/09/19 01:03 ID:Yaqh+YYp


     ◇      ◇      ◇

32池田屋:02/09/19 01:05 ID:Yaqh+YYp

みんな眠そうな目してるよなあ。
6時前から起き出して出発の準備してたんだからしょうがないか……
わたしは年上チームのバスのいつもの定位置、いちばん後ろの席でみんなが
乗り込んでくる様子をながめる。
一番最後になっちが乗り込んでくると、バスは待ってましたとばかりに出発した。
33池田屋:02/09/19 01:06 ID:Yaqh+YYp
なっちが眠い目をこすりながら、これまた定位置のわたしのとなりに座ってくる。
わたしはちょっと声をひそめてなっちに尋ねた。
「ちょっと、なっち! 昨日はどこ行ってたのさー!」
「えっ? どこって仕事に決まってんじゃん」
「違うよ、夜だよ夜。
 せっかくおいらも早く終わったからなっちと夕ごはん食べようと
 思ってホテルに来たら、なっち帰って来てないし……
 昨日は終わるの早かったんでしょ?」
「うん。7時くらいだったかな」
「じゃあそれからどこ行ってたのさー。朝イチで札幌まで行くっていうのに」
ほっぺたを膨らませて怒ってるフリをする。
34池田屋:02/09/19 01:07 ID:Yaqh+YYp
「…オトコとでもいたのぉ?」
「ちょっとなに言ってんのさー。滅多なこと言わないでよ、矢口!」
なっちは必死になって否定する。
「あやしい…あやしいなあ、安倍さん。素直に吐いた方が身の為ですよ。
 誰にも言わないからさ、どこ行ってたのさ?」
「なんもないって。あやしくないって」
なっちは頑なに言おうとしない。
「じゃあ何なのよ、その眠そうな目は?
 なんでそんなに眠いわけ〜?」
「別に…朝早いんだからみんな眠いでしょ?
 矢口だって天然パーマ少し残ったまんまだよ」
「う……なっち、人が気にしてたこと言ったなー。
 いいよ、じゃあわたしも言ってやろうっと」
35池田屋:02/09/19 01:08 ID:Yaqh+YYp
息を吸い込むと前に向って大声で叫ぶ。
「みなさーん! 昨日なっちはねえ、とんでもないことをしでかしてくれましたよー」
そこまで言ってなっちに口を塞がれる。
「ちょ、ちょっと、矢口! 何を言う気さー!」
「何って『なっちが朝帰り』とかそんなことかなあ」
ニヒヒって笑った。
「朝帰りなんかしてないよぉ。
 ちゃんと12時くらいには帰って来てました!」
「じゃあいいじゃん。
 誰といっしょにいたかくらい教えなって。
 それとも何? 一人でお台場で遊んでたっていうの?」
「……そりゃ一人じゃなかったけどさ…」
「ほらー、一人じゃないんじゃん。
 誰ー? 吐け、吐いちゃいなって。
 矢口さんに全部話してごらん」
なっちの脇腹を小突いて話をせかす。
36池田屋:02/09/19 01:09 ID:Yaqh+YYp
「ちょっと…分かったから、話すから、やめてよー」
なっちがくすぐったがって身をよじる。
「はいはい。最初から素直にそう言いましょうね」
「…………」
「で?」
「…………」
「こらっ! なっち!」
「……分かったって。言うって。言いますって」
「ほら、早く」
「うーん……」
「なっち!」
「…うーんとね……懐かしい人と会ってた…」
「なによー? それ、全然分かんないよ。
 北海道から元カレとかでも来てたの?」
「…矢口ー、オトコのことから頭を切り換えなさいって」
「えー? じゃあ昔の友達とか?」
「うん。昔の友達…ちょっと違うけど似てるかな」
「そんなの分かるわけないじゃん、おいらに」
37池田屋:02/09/19 01:10 ID:Yaqh+YYp
「矢口も良く知ってるよ、とっても良く……」
「…………」
「矢口はうらやましがるかもなあ」
「……もう分かんないよー。降参、降参。
 だから教えてよー、なっちー」
なっちはちょっと得意そうに鼻のあたりをこする。
「ヘヘ…、聞いてびっくりするなよぉ」
「うん、うん。早くー」
「……実は福ちゃんと会ってたんだ」
なっちの思わぬ発言に耳を疑う。
「へっ? 今なんて言った?」
「だからー、福ちゃんと会ってました」
なっちがもじもじしながら照れるように言う。
「えーっ? ちょっと待ってよ。なんで明日香が……
 それにもう連絡とってないんじゃなかったっけ?
 いっつも寂しそうに明日香のこと話てたじゃん」
「…うん、そうなんだけどね。
 昨日わたしのステージを見に来てた。
 それが終わったあと楽屋に来てくれてた…」
38池田屋:02/09/19 01:13 ID:Yaqh+YYp

『辞めたあともライブ見に来るから』

そう言って娘。を去っていった明日香だったけれど
実際に来てくれたのはホンの数回……
前回会ったのは去年の裕ちゃん卒業の大阪城ホールまでさかのぼる。
そんな明日香が訪ねて来るなんて……
それになっちの昨日のステージって…?
「ねえなっち、昨日の仕事って何だったの? ステージって何?」
「うーんとね…きくちさんとのお仕事」
「きくちさんって、フジの?」
「うん」
「それで?」
「きくちさんのやってる番組で『FACTORY』っていうのがあるのね。
 …いろんなアーティストを集めて一般のお客さんを入れて生ライブそのままを
 放送する番組なんだけど…
 昨日それの収録があって、オープニングでなっちが歌ったのよ」
39池田屋:02/09/19 01:14 ID:Yaqh+YYp
「なっち一人で?」
「うん。あ! 演奏とかは坂崎さんたちにしてもらったんだけどね」
「アルフィーの?」
「うん」
「で、何? 娘。の曲を歌ったの?」
「まさかー。だってお客さんの中にはタトゥーいれてる人とかもいるんだよ。
 そんな中で娘。の曲歌うわけないじゃん」
「ちょっとー、どんなライブなのよ? タトゥーって…」
「すっごいロックなライブ。それこそダイブとかしちゃいそうな感じ」
「えーっ! そんな中、なっちは何を歌ったのさ?」
「えーとね……ブルーハーツを2曲…」
「ブルーハーツ? なっち好きだったっけ?」
「ううん」
「じゃあ、きくちさんに歌わされたんだ?」
「ううん、それも違うの。曲はわたしが選んだの。
 どうしてもその2曲が歌いたかったから」
「ふーん…わたしはブルーハーツはよくわかんないや。
 でも、なんか思い入れがあったんだ?その曲に」
「…うん」
40池田屋:02/09/19 01:15 ID:Yaqh+YYp
「でもいいなあ。生バンドでソロでしょ?
 よく事務所がOKしたね。そんな機会めったにないよ。
 わたしなんかには一生なさそうな話だなあ……」
きっとなっちだからこその企画だったんだろうなあ。
わたしがソロで歌うなんてありえない話だよなあ……
あ、マズい。なっちが心配そうな顔をしてこっちを見てる。
「…あ、ゴメン。おいらのことはいいからさ…
 …それで、なんでそこに明日香が来てたのさ?」
気を取り直してなっちが答える。
「よく分かんないんだけどね、きくちさんが招待したみたい。
 なんか和田さんがどうとかって明日香が言ってたけど、詳しいことはよく分かんない」
「そうなんだ…
 でも、ずるいよー。なっち一人だけで明日香と会ってたなんて。
 おいらも呼んでくれればいいのにー。元祖ミニモニ。の3人でしょー」
「矢口ならそう言うと思ってたよ」
「思ってんだったら、呼びなさいよねー。
 なんで呼ばないのさー!!」
なっちが何か言おうとしたそのとき、いきなり前の席に座っていた圭ちゃんが振り向いた。
41池田屋:02/09/19 01:16 ID:Yaqh+YYp
「なっちは明日香と二人っきりが良かったんだよねー」
「「圭ちゃん!!」」
なっちが大慌てで聞く。
「何、圭ちゃんずっとわたしたちの話聞いてたの? CD聴いてたんじゃないの?」
「あー、これ? もう止まってるけど」
耳からヘッドホンをとってひらひらとわたしたちに見せる。
そして前を向くといきなり歌い始めた。

 ♪誕生日に泣いた
  空の星に泣いた
  あなたの事考えながら泣いた
  夏の夜

42池田屋:02/09/19 01:17 ID:Yaqh+YYp
なっちと顔を見合わせる。
「「 ? ? ? 」」
「また圭ちゃんが始まっちゃったよ…」
「いいじゃん。今日はノってあげようよ、矢口」
「えーっ! やるの〜?」
わたしの反応はおかまいなしになっちも歌い始める。

 ♪眠れなくって泣いた
  寂しくって泣いた
  あなたの事わからずに泣いた
43池田屋:02/09/19 01:18 ID:Yaqh+YYp
なっちがこっちを向いて上を指差す。
分かりましたよ。やればいいんでしょ。
おいら得意の高音ハモを魅せてやろうじゃないの。

 ♪好きで 好きで 好きで 好きで 好きで
  朝も昼も夜も真夜中でも
  Love You Love You Love You 止まらない
  涙 涙 涙 涙 涙
  何回目でしょう
  あなたのことで泣くの
44池田屋:02/09/19 01:19 ID:Yaqh+YYp
圭ちゃんはわたしたちがノってくれたのがうれしかったのか
後ろの席に移動してきて歌い始めた。
昔のモーニング娘。の歌らしく3人でタイミングをとって息を合わせて歌う。
やっぱ3人で歌ってもこの歌はしびれるなー。
ハモるのって気持ちいいよなー。
こういう歌、また歌いたいよなあ……

それまで喋っていた石川とよっすぃーがこっちを振り向いて驚いた顔をしている。
ごっつぁんは相変わらず寝たまんま。
あれ? カオリは? カオリだって歌えるはずなのに。
そう思ってカオリの方を見すかした。
そこには外をジッと見つめて、少し寂しげな顔があるだけだった……
45池田屋:02/09/19 01:20 ID:Yaqh+YYp
やっぱりなっちがやってるからやらないのかな…
嫌いあってるわけではない二人。
かといって仲がいいわけでもない二人。
でもお互いに信頼しあってる。
不思議な二人の関係。
そんな二人に振り回されてるわたしと圭ちゃんだけどね…

それにしても明日香かぁ……
いいなあ、なっち。
小生意気でぶっきらぼうな口調で、でもそれでいてどこか憎めない明日香。
わたしもなんだか無性に会いたくなった。
でも今のわたしのままじゃ会いづらいなあ……
46池田屋:02/09/19 01:20 ID:Yaqh+YYp


娘。は今日も札幌でコンサート。

今夜はお寿司にでも連れていってもらおう……
好きなものを食べてる間はイヤなことも忘れられるから……

47池田屋:02/09/19 01:21 ID:Yaqh+YYp


     ◇      ◇      ◇

48池田屋:02/09/19 01:24 ID:Yaqh+YYp

今日のライブはさいたまスーパーアリーナ。
去年運動会で来て以来だから今日で2回目。
でも去年と違うのは2万5000人の前で歌うということ。
さすがにこれだけの大人数の前で歌うのは初めてなので緊張する。
みんな緊張した顔でリハを迎えていた。
リハの順番待ちの間、圭ちゃんと客席の椅子に座った。
49池田屋:02/09/19 01:25 ID:Yaqh+YYp

「あたし昨日なっちの放送ビデオで見たよ」
「おいらも一昨日かな、ビデオで見た」
「矢口はさ、あれ見てどう思った?」
「『どう思った?』って……
 いい表情で歌ってるなあとか、いいステージだよなあとか…
 そんなもんかなあ。
 あ、凛々しいなっちはいいなあって思った」
「うらやましいとは思わなかった?」
「えっ?」
「あたしは思ったよ。正直なっちがうらやましかった。
 きくちさんにあのステージを用意してもらって、
 バンドのメンバーまで豪華に揃えてもらって、
 自分の歌いたい歌を歌わせてもらえる。
 うらやましく思わないわけないじゃない」
「……圭ちゃん」
「矢口だってそう思うでしょ?
 あんただって歌いたい歌を歌えなくなってから何年堪えてるのよ?」
50池田屋:02/09/19 01:26 ID:Yaqh+YYp
「そりゃそうだけどさ、それこそ何年も堪えたから慣れちゃったよ……
 ……どうしちゃったの? なんか変だよ、今日の圭ちゃん」
「……ゴメン。なんかさ、あの映像見てたらすごいイラついたんだよね」
「…………」
「たぶんなっちにイラついたとか、そういうことじゃないと思うんだけど…
 強いていうなら自分にイラついたんだと思う」
「なんでよ?」
「あの曲ってなっちが選んだんだよね?」
「この前そう言ってたね」
「歌ったあとに明日香と会ったんだよね?」
「うん…」
「矢口はなっちがなんであの曲を選んだか気付かなかった?」
「えー? LFに行く前にちょっと見ただけだからなあ…」
「なっちはね、たぶんあの2曲に自分と明日香への思いをのせて歌ってた。
 最初はわたしも気付かなかったけど歌詞を調べてみたら分かった。
 あれだけメッセージ性の強い曲を選んだのは
 そういう意味だったんじゃないのかなって…
 まあわたしが勝手にそう思ってるだけなんだけどさ」
51池田屋:02/09/19 01:27 ID:Yaqh+YYp
「ふーん…
 でも仮にそうっだったとしても、なんでそれで圭ちゃんがイラつくのさ?」
「なんていうのかな…
 なっちはストレートに自分の気持ちをああやって自分なりに表現してたのに
 自分はいったい何をやってるんだろうってね……」
「…………」
「こないだなっちが言ってたじゃん。『自分は何を残せるのか』って。
 けっきょくさ、あたしは番組でイジられてるだけで、あたしたちの本来の目標だった
 『歌』で何にも残してないんじゃないかなって、そんな風に思ったんだよね」
「そんなことないって。圭ちゃんは充分『歌』で何かを残してるよ……」
「…ありがと、矢口…でもみんながそう思ってくれてるわけじゃない。
 そう思ってくれてるのはごく少数だよ…
 それは自分がいちばんよく分かってる……」

圭ちゃんの言葉にわたしは何も返してあげることができなかった。
圭ちゃんの気持ちは少なからずわたしの気持ちでもあった。
わたしだって何にも残せてないよ……
52池田屋:02/09/19 01:28 ID:Yaqh+YYp

舞台の上では石川とカントリー娘。の3人が歌っている。
いつも通りに石川のハズしっぷりが会場中に響き渡る。
「ある意味さ、石川の歌の方がみんなの記憶に残るよね」
ちょっと笑いながらボソッと圭ちゃんに言った。
「それは言えてるかも」
二人でクスクスと笑い合った……
53池田屋:02/09/19 01:30 ID:Yaqh+YYp
そのとき会場の脇からさくらさんが入ってくるのが見える。
「ねえ、圭ちゃん。あそこにさくらさん来てるよ」
「あ、ホントだ。手振ってみようか?」
二人してさくらさんに向って手を振る。
さくらさんも気付いてこっちに来て、わたしたちのとなりに座った。
「客席の方にいても大丈夫なの?」
さくらさんは心配そうでまわりをきょろきょろと見回している。
「はい、まだ大丈夫です。リハのときはいっつもこんな感じですよ」
「ふーん、そうなんだ。でも不思議だなあ、この誰もいない客席ってのは」
わたしたちが何も感じないこの空間に、さくらさんはしきりと感動している。
漫画家さん独特の感性でもはたらいているのだろうか?
「そうだ、真里ちゃん! 昨日ミュージックステーション見たよ」
「あ、ありがとうございます。でも昨日のは恥ずかしかったんですよね〜」
「え〜どうして?」
「だって…頭の上で風車がぐるぐる回ってたんで……」
「そんなことないよー、かわいかったよ」
「…そうですか〜? それならいいんですけど…
 そういえば加護から聞きましたよ。
 一昨日加護といっしょにもんじゃ食べに行ったんですよね?」
54池田屋:02/09/19 01:31 ID:Yaqh+YYp
「そうなのよ〜」
「あの子のことだからすごい量食べましたよね? びっくりしませんでした?」
もんじゃ好きの圭ちゃんがさくらさんに尋ねる。
「うん、大丈夫。みんながみんなすごい量食べてたから。
 明太子もちもんじゃとぜんざいもんじゃってのがおいしくてさー」
「「ぜんざいもんじゃー?」」
二人して驚きの声をあげる。
「そう。あずきとおもちがドロドロになっててねー、焦げたところがこれまたおいしいんだー」
「想像もつかないなあ。おいらは辛いもんの方が好きだから明太子がいいや」
「真里ちゃんならそう言うと思ってたよ」
さくらさんが軽く笑った。
「『もんじゃ』ってモーニング娘。の中じゃちょっとしたキーワードなんですよ」
「そうなの? なんで? なんで?」
本のネタに使えるとでも思ったのかさくらさんは興味津々だ。
55池田屋:02/09/19 01:33 ID:Yaqh+YYp
「もんじゃ好きな人多いよねえ、圭ちゃん?」
「そうだね…好きな人多かっ'た'ね」
しまったー。圭ちゃんにはこの話まずかったよー
もんじゃっていったら紗耶香じゃない。
なんでわたしこんな話しちゃったんだろ……
まずいよー、誰か助けてー。
少しの沈黙……
ちょうどそこに
「お早うございまーす」
よっすぃーの声。
よっすぃーはさくらさんの横に座って雑談を始める。
えらい、よっすぃー!! いつもいいとこで現れてくれて助かるよー。
56池田屋:02/09/19 01:34 ID:Yaqh+YYp

「よっすぃー。この前乗ったボートね、今度台湾まで行くんだって」
「そうなんですかー? いいですねー」
「おいおい、よしこ。台湾ってどこだか分かってるのかい?」
「あー、圭ちゃんヒドイなあ。台湾くらい分かるよぉ。
 中国の端っこの方の小さい島でしょ?」
「お、よく知ってんじゃん」
「知ってるよ〜。
 こないだごっちんの家に遊びに行ったときにユウキ君からおみやげもらったもん」
それを聞いた圭ちゃんがガクッとコケる。
「あんたねえ、EE JUMPが撮影に行ってたのは上海だよ。
 上海と香港と台湾がごちゃごちゃになってんじゃないのー?」
「まあいいじゃないですか」
「よっすぃーは相変わらずアバウトだねえ」
「ダメですか?」
「いや、好きだよ。そういうの」
さくらさんにそう言ってもらって、よっすぃーが喜んでる。
圭ちゃんは呆れ顔だ。
57池田屋:02/09/19 01:36 ID:Yaqh+YYp

よっすぃーは少し話すとまたフラーっとどこかに歩いていってしまった。
「よっすぃーは面白いねえ」
さくらさんが感心する。
「でも寒いときの方が多いですよ」
「よっすぃーはね、ギャグがどうとかじゃなくてね行動そのものが面白いの。
 そういう意味じゃよっすぃーの面白さはテレビ的っていうよりマンガ的なのかな…」
「そんなもんなんですかね……」
わたしにはよく分からなかった。
でも最近のよっすぃーって前にも増してフワフワしてるよなあ……
58池田屋:02/09/19 01:37 ID:Yaqh+YYp


     ◇      ◇      ◇

59池田屋:02/09/19 01:38 ID:Yaqh+YYp

シャッフルユニットのレコーディングも済んで、
ミュージカルの稽古も佳境にさしかかった5月中旬。
5期メンバーもようやくわたしたち年上メンバーに慣れ始めてきたみたい。
1部のメンバーが稽古に行ってしまった後、がらーんとした楽屋の端の方で
突っ立ったままの紺野と小川に声をかけた。
「イス空いてるんだから座りなよ。
 なっちもカオリもいないし、誰に遠慮することもないよ」
紺野がか細い声で答える。
「…はい…」
小川と2人、空いているイスをわざわざ端の方に持っていって座る。
5期メンバーももう少し他の期のメンバーと交流持ってくれればね……
しょうがないか…わたしだって年上チームにいることがほとんどだもんなあ。
けっきょくのところ全メンバーと絡めるのは石川くらいか……
60池田屋:02/09/19 01:39 ID:Yaqh+YYp

「あのー…矢口さん…」
「なにー?紺野」
振り向くと紺野が食べかけのチョコパンを持ったまま立っている。
「あのー…先日は誕生日プレゼントありがとうございました」
「うん。どうだった? 紅茶飲めた?
 フレーバーティは好みがわかれるからねー」
「あの…アプリコットティーは好きな味だったんですけど
 アップルティーはちょっと苦手な味でした…」
「そっかー。アプリコットの方が好きかー。覚えておくね」
「はい…ありがとうございます…」
それだけ言うとまた小川のところに戻っていく。
話しかけられてもあんま話すことってないよなあ、実際。
なに話せばいいかわかんないし……
61池田屋:02/09/19 01:40 ID:Yaqh+YYp

一人静かに台本を読んでいると後ろでいきなり紺野の悲鳴があがる。
座っていた椅子を蹴り倒してしまって、楽屋中に金属の音が響き渡る。
「ちょっと、紺野どうしたの?」
見れば紺野がチョコパンを持ったまま手足をばたばたとさせている。
顔はもう半泣き状態だ。
隣にいた小川も何が起こったか分からず呆然としている。
「紺野ー、どうしたー? なにがあったの?」
紺野は手足をばたばたとさせたまま、息も絶え絶えに答えた。
「…虫……虫……ハエが…いるんですぅ……」
「そりゃあハエくらいいるでしょ」
「…ハエ…ハエが……手に…手にとまったんです…」
あんた、そんなことで泣いてるのかい……
「もうどっかにいっちゃったみたいだから、ひとまず落ち着きなよ」
「…………」
「大丈夫?」
小川が慰めつつ紺野が倒したイスを立ててあげている。
62池田屋:02/09/19 01:41 ID:Yaqh+YYp
「しっかしさー、紺野が泣くなんて珍しいね。
 普段厳しいレッスンとかでも絶対泣かないのにさ」
「…あの…わたし、虫とか超苦手なんです…」
「そうなんだ。意外だねー」
「…そうですか?」
「でもさー、なんでパンは手放さないのさ?
 普通手に止まったら真っ先にパンを放り投げちゃうでしょうが!
 傍から見たら超笑えるよ」
「だって、パンは大事ですから」
そこだけはハッキリ答える紺野。
「大事ねえ……
 …そうだ、それで思い出した!
 紺野さあ、あんた美容院でパン食べるのはやめた方がいいよ。
 北海道じゃ知らないけどさ、あんま東京じゃそういう人はいないと思うよ」
「…そうですか…?」
「そうだよー。紺野が帰った後、裕ちゃんも大笑いしてたよ」
「えっ! 中澤さんが? どうしよう……」
「いや『どうしよう』って、別に裕ちゃん怒ってたわけじゃないよ。
 面白がってただけだから」
「…………」
「おーい、紺野聞いてる?」
「…………あ、はい……」
「……まあ、あんま食べ過ぎないように体重管理はしっかりしてね」
「……はい……」
うぅ…やっぱ疲れる。このコは苦手だなあ……
63池田屋:02/09/19 01:43 ID:Yaqh+YYp

やがて一部の稽古が終わって楽屋にメンバーが帰ってきた。
「お疲れさーん」
帰って来たメンバーに声をかける。
「おっ、いいねえ。今日はみんなそのTシャツ着てるじゃん」
オールナイトニッポンの企画で作って、わたしがみんなに配った
『新垣仮面』と『ポン酢』のTシャツをほとんどのメンバーが着てる。
2部のメンバーはあまり着てくれないから、1部のメンバーがみんな着てる姿を見ると
なんとなくうれしい。
「新垣ー、また『新垣仮面』着てるの?」
新垣は自分のことを書かれたこのTシャツを気に入ってしょっちゅう着てくる。
「はい、やっぱり『新垣』ですから」
新垣がニコニコと答える。
「次のシリーズも早く作ってくださいよー。すっごい楽しみにしてるんです」
「次のはまだしばらく先かなあ。あんまりグッとくるネタが集まってないからねえ」
64池田屋:02/09/19 01:44 ID:Yaqh+YYp
「あ、こないだラジオ聴きましたよー。
 わたしのこと喋ってくれてありがとうございました」
「いいよ、そんなの気にしないで。
 いつも聴いてもらってるからね、やっぱ名前出しておかないと…」
「格闘技の話は全然分からなかったんですけど…」
「そっかー、新垣は格闘技はダメかあ。まあ『とっても弱い』だからね」
新垣のTシャツの胸のあたりを指して言う。
「安倍さんにもさっき言われましたよ。
 今度は『少し強くなった』にしてもらいなって」
「そういうえばなっちは? まだ一人だけ稽古続けてるの?」
「安倍さんなら終わった後に外の風に当たってくるって言って、
 4階のバルコニーに行きましたよ」
「…おいらもちょっと行ってこようかなあ。……新垣も来る?」
「いえ、わたしは……」
新垣にとってなっちは憧れの対象だからこそ、普通の会話はまだ難しいのかな。
まあ、それでなくてもなっちとの会話はツっこめるようにならないと難しいからね……
「じゃあ、ちょっと行ってくるね」
新垣にそう言い残して別れた。
65池田屋:02/09/19 01:46 ID:Yaqh+YYp

「なっちー」
バルコニーへ出る扉を開けながら呼びかける。
「おー、矢口ー。なにー?」
「おいらも涼みに来たー。……!って、なんで辻もいるのよー」
風に当たっているなっちの側に、でーんと辻が仰向けになって寝そべっている。
「なんかね、わたしが食堂の前を通ったときに見かけてついて来たみたい。ね、のの?」
「ん? うん」
「辻!! あんたまたなんか食べてたのー?」
「ん? 食べてないよ。ゼリーを凍らせにいってただけですよ」
「そんなこと言って、ホントは1,2個食べてるんでしょー?」
「ううん。3個だったかな。おいしかったー」
辻がエヘヘと笑う。
「辻ー……」
もう怒る言葉も見当たらない。
66池田屋:02/09/19 01:47 ID:Yaqh+YYp
「あー! また、なっちは着てないの?」
「なにが?」
「わたしのあげたTシャツ!!」
「あー、あの『ポン酢』とか『新垣仮面』ね」
「そうだよぉ! せっかくあげたんだから着てほしいのにぃ」
「だってー、みんな着てるんだもん。なんか変でない?
 ぜったい共演者の人たちに陰で笑われてるよ…」
「なっちが『ポン酢』がイイって言ったんでしょ。
 あれは着なさいよー」
「やだよー。それに矢口だってぜんぜん着てないじゃん」
「…う。おいらはいいのよ。おいらは作った人なんだから」
「矢口さーん、説得力ぜんぜんありませーん」
「……もおー……Tシャツも着てくれないしさ…
 前にあげたマイナスイオンリングもしてくれないしさ…
 なっちはわたしのあげたもん何だと思ってるのよー」
膨れっ面をしてイジけてみせる。
「そういえば矢口はそのリングずっとしてるよね?」
67池田屋:02/09/19 01:49 ID:Yaqh+YYp
「ホントは両腕につけてたのに、なっちが欲しいって言うから2個あげたんでしょー!!
 なっちもしなさいよー!
 …もうね、なっちがつけてくれるまでおいら絶対にはずさない!」
「家でしてるよー。お休みのときもつけてるって」
「ウソだねー」
「ウソじゃないって。ホントだよぉ」
「じゃあ今度いっしょにつけて番組に出てよ」
「それはダメ」
「なんで、そこは即答なのさ? ウソでもいいから『うん』って言いなさいよ」
「…だってさ、変な風に思われたらイヤじゃん。
 なっちと矢口がお揃いのリングつけてるとかって
 インターネットで悪口書かれるんだよ、きっと」
「そんなの気にすることないでしょ。
 しょっちゅうなんだからさあ」
「ダメなものは、ダメなの」
「なんでよー? 昔は明日香とお揃いの指輪して出てたりしたこともあったのに……」
言ってから『しまったー』って後悔する。
68池田屋:02/09/19 01:50 ID:Yaqh+YYp
「・・・や・ぐ・ち」
「ゴメン、ゴメンなさい、なっち。もう言いません、裏なっち」
「ちょっとー、それは言わない約束でしょー。
 しかもついでに「裏なっち」とか言ったでしょ!」
それまでぐだーっとしてただけの辻が口をはさむ。
「安倍さんと福田さんってケンカでもしたの?
 一緒の指輪してたことは秘密なの?」
「ののー、知らなくてもいいことあるんだよー。
 知らない方がいいこともいっぱいあるんだよー」
優しげに言ってるけど、なっちの目が笑ってない…
しょうがない辻を助けてあげよう……
「うわーん、裏なっち怖いよー」
「ちょっと矢口、裏なっち裏なっちってさっきからねぇ…」
「辻、そのことはね、なっちのしまっておきたい思い出なの。
 他人に汚されたくない大事な思い出なの。
 だからね、ペラペラと口にしていいことじゃないんだよ」
69池田屋:02/09/19 01:52 ID:Yaqh+YYp
「ちょっとー、言い出したのは矢口でしょー」
「ほら、裏なっち! ペラペラ喋っちゃダメでしょ」
「っ!…………」
「ってことなの、分かった辻?」
「ん?…よく分かんない。…でもまあ、別にいいや」
おまえなあ、じゃあ最初かっら聞くなー!
そのときなっちが慌てて言う。
「のの!! 爪!」
「あっ。ゴメンなさい…」
慌てて辻が口元から手を離す。
辻の爪を噛む癖はいつまでたっても治らない。
ここ最近は前にも増してひどくなってきた感じもする。
辻は何が不安なの?
何に怯えているの……
70池田屋:02/09/19 01:53 ID:Yaqh+YYp

しばらく5月の心地よい風に当たっていると、圭ちゃんがやってきた。
「矢口、辻ー!! 何やってんのー? そろそろレッスン始まるよー」
「うん。分かったー。今行くー」
「頑張ってねー」
「じゃね、なっち。行ってくるわ。
 ほらっ! 辻、行くよ」
「起こしてー」
そう言って仰向けになったまま両手を前に差し出す。
「自分で起きろよー」
「早くー」
「しょうがないなあ。辻起こすと腕が抜けそうになるんだよね…」
ぶつくさ言いつつ辻の手を引っぱってやる。
「いってらっしゃ〜い」
なっちに見送られてバルコニーを出る。
71池田屋:02/09/19 01:55 ID:Yaqh+YYp

バルコニーの扉を閉めるときにちらっと見えたなっちが、
なんだかめちゃくちゃかわいく見えた。
短い髪を風になびかせて遠くの景色を眺めていたなっちが……
はっ!
おいら何考えてるんだろう。
危ない、危ない……
あたまの中に一瞬浮かんだ妄想を吹き払った…

さっ、今日もレッスン頑張ろうっと!
72池田屋:02/09/19 01:56 ID:Yaqh+YYp


     ◇      ◇      ◇

73池田屋:02/09/19 01:57 ID:Yaqh+YYp
「なんだかさあ、世の中ワールドカップ、ワールドカップって言ってるけど
 わたしたちには全然関係ないよねえ」
コンクリートのブロックに腰掛けたなっちが言う。
「圭ちゃんだけだよね、騒いでんの」
「昨日だって大騒ぎしてたけど、誰も分かんないって。
 日本が引き分けるとどうなるのさ? それになんで引き分けがあんのさ?
 優勝チーム決めるんでしょ?」
「…さあ? おいらだって全然分かんないよー」
「でもさあ、あのスタジアムの観客席? あれは一回行ってみたくない?
 なんかみんな歌っててすごいじゃん。音楽もなんにも鳴ってないのに
 歌声揃っててさ」
「えー、怖いよー。
 それに明日だか明後日だか札幌の街が大変なことになるかもしれないって
 ニュースで言ってたよー」
「ウソー! ホントに? 何でよー?」
「フーリガンとかいうやつ?
 なんか暴れる人たちが札幌に押し掛けちゃうかもしれないんだって。
 それで、お店とかで暴れたり壊したりするんだって」
「そうなの? 彩っぺのお店とか平気なのかなあ…」
「いや、大丈夫でしょ。危ないのは飲食店とからしいから」
彩っぺのお父さんとお母さんは札幌で時計とアクセサリーを扱うお店をやっている。
といっても、彩っぺの結婚パーティー以来だからもう2年以上は会ってない。
彩っぺもどうしてるかなあ……
74池田屋:02/09/19 01:58 ID:Yaqh+YYp

ミュージカルが始まってもうすぐ2週間。
今日は休演日。
わたしたちは1ヶ月間通った豊洲のスタジオを離れ、いつもの慣れ親しんだスタジオで
ミュージカルの歌やダンスの再確認。
まとまってのレッスンはなく、今日は自主練的な意味合いが強い。
中学生組も今日はみっちり学校に行っていて練習はお休み。
わたしとなっちはといえば…
休憩の合間にまたこうしていつもの場所で黄昏れている。
75池田屋:02/09/19 02:01 ID:Yaqh+YYp
「この前さ、吉剛さんがメロンの差し入れ持って来てくれたじゃない?」
「うん」
「矢口たちがステージに行ってる間に、あれで生ハムメロンを作ってみたのよ」
「あー、そういえばケータリングで生ハム出てたね」
「そう。してさ、加護やよっしーたちと食べてみたのよ。
 もう、そしたらマズいことマズいこと。全然合わなくてさ。
 なんであんなもん好んで食べる人がいるのかねえ…」
「えー! もったいないよー。
 吉剛さんが持ってきてくれたの夕張メロンでしょー?
 普通にそのまま食べればいいのにー」
「だってさー、やってみたかったんだもん。
 …ちょっと前にね、シャケとアボガドの生春巻きってのを食べてさ、
 それがね、超おいしかったの。
 わたしアボガドって嫌いだったんだけど、意外な組み合わせで
 けっこうおいしくなるんだなあって分かって。
 でもやっぱ生ハムメロンはダメだったね…」
76池田屋:02/09/19 02:02 ID:Yaqh+YYp
「で、加護やよっすぃーはなんて言ってたの?」
「……あれ? なんて言ってたんだっけ?」
「おーい! また自分だけかよっ!」
笑いながら三村さん風にツっこむ。
「少しは人の話も聞きなさいよねー。
 なっちは夢中になるとそれだけになっちゃうんだからさあ…」
「あ、やっぱり? 分かっちゃう?」
「何年いっしょにいると思ってんのよ……」
なっちはいつだってそう。
4年前に初めて会ったときから、話しだすと回りが見えなくなる人だった。
最初はなんて自分勝手な人だろうって思ったけど、ホントにただただ純粋に
話にのめり込んじゃう人だって分かって、それ以来気にならなくなった。
77池田屋:02/09/19 02:03 ID:Yaqh+YYp

「今年のミュージカル、なんとなくつまんないよね……」
わたしのつぶやきになっちが反応する。
「去年みたいな一体感っていうの? そういうのがないね…」
「うん……5期メンバーとかも慣れてきて自分から話してくれるようになったけど
 なんか違うんだよね。全体的に見たときにバラバラって感じ…
 なっちはそう思わない?」
「うーん、ミュージカルが1部2部に分かれてるしねえ。
 普段から5期メンバーとの仕事なんてあんまりないしさあ…
 それに年の近いメンバーで固まっちゃってるもんね……
 まあ、辻・加護は別だけども」
「もうね、このまんまでもいいと思うよ。
 無理して一体感なんて出さなくていいよ。
 そんなの自然に出てくるもんだしさあ、もう必要ないよ。
 ……この先おいら『年上派閥』主張しつづけるんだ。
 ただでさえ、辻・加護の面倒見るので精一杯なのに、
 小さいコドモとか入ってきたって面倒なんか見てらんないって。
 勝手にしてよって感じ……
 普段から主張しとかないとコドモまで押しつけられちゃうよ…」
78池田屋:02/09/19 02:04 ID:Yaqh+YYp
「えー、大丈夫でしょー。
 今でさえ矢口にはタンポポとミニモニ。があるんだからさ、
 スケジュール的にもう仕事入れるのはどう考えても無理でしょ」
「そうだといいんだけど、分かんないからさあ。
 なっちも『年上派閥』コトあるごとに言ってよお。
 じゃないとなっちのところにもそのうち話がいっちゃうよ」
少しなっちをおどかして、釘をさしておく。
じゃないとなっち忘れちゃうからね……
79池田屋:02/09/19 02:06 ID:Yaqh+YYp

「おー、やっぱり二人ともここにいたかー」
「あー圭ちゃん。今来たのー?」
なっちが振り返って言う。
「うん。今日はもう無理しないようにと思ってゆっくり来た」
「年だからねえ、お・ば・ちゃ・ん」
「こら矢口ー! あんた年上メンバーだけのときはやめなさいよー
 裕ちゃんの立場がなくなるでしょー」
裕ちゃんを引き合いに出すところが圭ちゃんらしくてかわいい。
「ちょっと待って!
 あたし今日はこんなノリで話にきたわけじゃないんだ…
 二人にちゃんとした話があってここに来たから…」
圭ちゃんがいきなりマジメな顔つきになる。
「どしたの、圭ちゃん? いきなり改まって」
そう言うなっちはまだ笑ったままだ。
80池田屋:02/09/19 02:07 ID:Yaqh+YYp
「うん……」
圭ちゃんは話すかどうかまだ決めかねているようだ。
わたしはおふざけモードをやめて表情を引き締める。
「何かあった? 相談事?」
「……うん。相談事っていうか二人には話しておこうと思って……」
「何よー? 恐い顔しちゃって… そんな大変なことなの?」
圭ちゃんのただならぬ雰囲気になっちの顔からも笑みが消える。
「いつ言おうか迷ってたんだけど、なかなかタイミングがとれなくてさ……」
「「……うん。」」
なっちと二人うなずいて圭ちゃんに話を促す。
81池田屋:02/09/19 02:08 ID:Yaqh+YYp

「5期メンバーもそろそろ慣れてきたよね……
 わたしたちがいちいち声かけなくても、自分達から動けるくらいには」

「石川もよっすぃーも経験積んで、メインパートもやって
 今じゃもう全然心配いらないよね」

「辻・加護は暴走することもあるけど、ああ見えてもやることはきちっとやってるし
 もう大丈夫だよね?」

「…でさ、ミュージカルも軌道にのって安定してきたところだし、
 もうすぐ新曲のレコーディングにも入るし、ちょうど今が話すのに
 いい時期なのかなあって、そう思ったんだ……」
82池田屋:02/09/19 02:10 ID:Yaqh+YYp

「去年の秋頃からずっと考えてたことなんだけど…………」

圭ちゃんはそこまで言って一旦口を動かすのを止めてしまう。
そしてためらいがちに話を進める。

「去年の秋頃からずっと考えてたことなんだけど、モーニング娘。って何なのかなあって。
 あたしにとってモーニング娘。って何なんだろうって……
 ちょっと前になっちが言ってたじゃない?
 『わたしたちは何かを残してるのか?』って。
 で、あたし振り返ったときに誇れるものを何も残してないって気付いたんだよね……」

「シングルのパートなんて数えるくらいだし、プッチモニの成功だって
 紗耶香やごっちんがいたからこそだし、昔の曲の明日香パートがあたしに
 まわってきたのだって他に歌える人がいなかったっていう消去法じゃない。
 今までにわたしの残したものなんて、なに一つないよ……」
83池田屋:02/09/19 02:11 ID:Yaqh+YYp

「みんなそんな風に思ってないよって言ったじゃない。
 ちゃんとメンバーまとめあげてるし、圭ちゃんのことみんな親ってるよ」
わたしは圭ちゃんに言う。

「……うん、メンバーがそう思ってくれてれば、それはそれでうれしいよ……
 でもね、世間的には違う。歌ってるあたしのことを見てる人なんてほとんどいない。
 あたしは歌手になりたいから学校も辞めてこの世界に入ってきたのに
 あたしを『歌手』と思ってる人なんてどこにもいない……」

「で、あたし考えたんだ……
 『保田圭』って誰なのか?
 『保田圭』って存在してるのかって……
 『保田圭』になるにはどうすればいいんだろうってね……」
84池田屋:02/09/19 02:13 ID:Yaqh+YYp

「…………圭ちゃん?」
なっちが震える目で圭ちゃんを見つめる。

「……でさ、決めたんだ」

わたしは手で耳をふさいで下を向く。
「いやだ。おいらその話の続き聞きたくない!」

「…………ちゃんと聞いて矢口」

「いやだってば!! そんな話聞きたくないよ!!
 そんなのわたし絶対に認めないからね!
 もうこれ以上悲しいのはいやなの。
 さみしくなるのはいやなの
 もうわたしどこまで堪えればいいのよ!!
 そんなのやだよぉ…………」

なっちがわたしの肩を抱いてくる……
そして目のあたりを拭ってくれた……
85池田屋:02/09/19 02:14 ID:Yaqh+YYp

なっちが淡々と圭ちゃんに尋ねる。

「圭ちゃん、覚悟はできてるの?
 圭ちゃんが抜けたらわたしたちとうとう半分以下になるんだよ。
 昔の曲なんてパートすら割り振れなくなる…
 3人じゃ成り立たなくなるんだよ……」

「…去年裕ちゃんに託されたでしょ?
 『これからのモーニング娘。を4人で守っていって』って。
 あのとき、圭ちゃんが知り合いのカメラマンに頼みこんで写真を
 焼き増ししてもらって裕ちゃんにプレゼントしたじゃない?
 あの写真、裕ちゃんすごい感激してたんだよ。
 最後の記者会見のときにまで持ち込んでさ、
 しっかりとメンバー全員を記者会見させたじゃない。
 わたしたちは変わっちゃったけれど、変わっちゃったからこそ
 裕ちゃんや辞めていったメンバーの思いをわたしたち4人で守ってたんでしょ?」
86池田屋:02/09/19 02:16 ID:Yaqh+YYp

裕ちゃんは、去年の卒業コンサートの翌日の記者会見に圭ちゃんからもらった
2枚の写真を自ら持ち込んだ。
1枚は横浜アリーナのデビューイベントで観客席を背にして撮った5人の写真。
そしてもう1枚は初めての紅白出場を決めて記者会見のときに撮った8人の写真。
裕ちゃんはそれ以外は自分がアップになっている写真しか持ってこなかった。
記者会見のステージ上でカオリへのリーダー役の受け渡し、
それを裕ちゃんは明日香・彩っぺ・紗耶香にもちゃんと見守らせた。
「永遠の8人」を最後まで守りきった……

なっちは続ける。
「残されるメンバーの悲しみ、圭ちゃんは分かってるよね……
 それでも圭ちゃんは決心したの?
 中途半端な決心じゃないんでしょうね?」

…圭ちゃんは、ゆっくりと首を縦に振った。
87池田屋:02/09/19 02:18 ID:Yaqh+YYp


……やだよ、そんなこと……


……だめだよ、そんなの……


……そんなこと認めらんないよ……
 

「そんなのぜったいにやだーっ!!」


わたしは泣き叫ぶ…………

88池田屋:02/09/19 02:22 ID:Yaqh+YYp

「辞めてくメンバーはいっつもそうだっ!!

 自分のやりたいこと見つけて、

 一人で悩んで、

 そのうち自分一人で決めて、

 みんなに言うのは決心したあとで、

 自分は清々しい表情してて、

 やり残すことがないように頑張ってて、

 めちゃくちゃ輝いてて、

 そして…………
 
 …………
 
 …………

 そして、わたしたちの前からいなくなるんだ…………」
89池田屋:02/09/19 02:24 ID:Yaqh+YYp

「矢口……」

わたしの肩を抱いてくれていたなっちの目から大きな涙がこぼれて、地面に染みをつくる……

「……なっち、矢口。ゴメン。
 カオリも入れて3人には本当に申し訳ないと思ってる。
 4人しか残ってないってことも、残されるメンバーの悲しみも全部分かってる……

 でも、もう決めたんだ。
 わたしはわたしの道を歩きたい。
 今のモーニング娘。とは違う目標に向って歩きたい。

 だから二人にはきちんとわたしの決意を聞いて欲しい。
 あとから事務所の発表を事務的に聞かせるなんてことさせたくないから……」
90池田屋:02/09/19 02:25 ID:Yaqh+YYp

わたしの肩を持つなっちの手にチカラが入った…

「……圭ちゃんの話、聞いてあげよう、矢口。
 後悔しないようにきちんと聞いておこう……」

ゆっくりと顔をあげた。
なっちの泣くまいとする唇を噛みしめた顔があった……
圭ちゃんの真っ赤に腫れ上がった大きな目があった……

91池田屋:02/09/19 02:28 ID:Yaqh+YYp


圭ちゃんが宣言する。

「わたし、保田圭はモーニング娘。を卒業します。
 二人との思いで、忘れないから。
 ここまでいっしょにやってきたこと、頑張ってきたこと、絶対に忘れない……」


最後の方はほとんど声にならなかった。
言い終わると同時に、わたしたち3人は抱き合っていた。
そして泣いていた。
声も立てず、ただひたすら泣いていた。

92池田屋:02/09/19 02:30 ID:Yaqh+YYp


梅雨入り前の心地よい風が吹いていたその日……


わたしたちの心はすでに梅雨入りしていた……


わたしたちが梅雨明けする日はいつか来るのだろうか……


泣かない日が来るのだろうか……


晴れる日がいつか来るのだろうか……

93池田屋:02/09/19 21:24 ID:cX7r+adc



 ・  ・  ・


 ・  ・ 


 ・ 


94池田屋:02/09/19 21:25 ID:cX7r+adc

わたしたち3人は肩を抱き寄せあって泣き続け、
そしてようやく落ち着きを取り戻す……

わたしたちは芸能人『モーニング娘。』。
泣き合って終わりというわけにはいかない……

なっちが涙の乾ききらないその目をキリっとさせて、
鼻声で喋り出す。
「これから、どうするか決めておかないとね。
 余計なことは言わないように、きちっとラインを決めておかないと……」
95池田屋:02/09/19 21:26 ID:cX7r+adc
「圭ちゃんの卒業って、もうつんくさんとかは知ってるんでしょ?
 卒業っていつになるの?」
さっきは気が動転してて気付かなかったことを改めて尋ねる。
「うん。いろいろと事務所と話し合ったんだけど、来年の春まで待つらしい」
「ずいぶんと先なんだね……で、メンバーへの発表は?」
圭ちゃんはなぜか言いよどんで、言葉が出てこない。
「圭ちゃん?」
なっちが返事を求める。
「ああ、ゴメン…発表はね、来月くらいだと思う」
「ずいぶん前に言っちゃうんだね。こんなに早いの初めてじゃない?」
となっち。
「で、圭ちゃんは卒業のことをおいらたちの他に話したの? カオリには?」
「カオリには昨日の夜、ミュージカルが終わった後に話した……」
今カオリはリーダーという立場を気づかってか、極力ニュートラルな立場にいようとしている。
わたしたち3人が話していても輪に加わることはほとんどない。
まあそれはなっちとの微妙な関係が原因でもあるんだけれど、
何にせよカオリにも話を通しておくのは当然だと思う。
「他のメンバーには?」
圭ちゃんは首を振る。
96池田屋:02/09/19 21:27 ID:cX7r+adc
「ごっつぁんとよっすぃーにはそれらしいことを話したことがあるかな……
 でも、あの二人は知らないものだと思っていて。お願い」
そう言って圭ちゃんは手を合わす。
なんだか意味がよく分からない。
なっちもなんだか理解してない様子。でも、
「圭ちゃんが、そう言うなら……」
って自らを納得させた。
「もう他には言わないつもり。
 石川は今調子いいし、教えるとすぐに顔に出ちゃう子だから黙っておこうと思う。
 それと辻・加護と5期メンバーには精神的負担かけたくないから……
 ミュージカルの真っ最中だし」
「そうだね、それがいいと思うよ」
圭ちゃんの判断に賛同を示す。
「でもまあ、シャッフルまでは歌番組の出演もないしね、
 そんなに気にしないでも大丈夫そうじゃない?
 不安なのは矢口、あんたのラジオだけだよ……」
「分かってるよぉ。気を付けるから安心してよ」
「すっごい不安なんだけど」
そんなこと言いつつも顔は笑顔。
ようやく圭ちゃんの顔にもいつもらしさが戻ってきた。
97池田屋:02/09/19 21:28 ID:cX7r+adc
「で、ソロになったあとの予定って決まってるの?」
なっちが聞く。
「まだ、ぜんぜん。
 わたし自身どうなるか全然わかんないよ。
 半年以上先のことだし」
「じゃあさ、それまでの間にできるだけ知名度あげないとね。
 やっぱりさあ、知られてるってことは大事だよ…
 おいらみたいに『でしゃばり』とか言われたってさ、
 知られてなきゃ何にも活動できないもん…」
「……あたしには無理だよ。
 だって歌わせてもらえないんじゃ、どうしようもないじゃない」
「圭ちゃんには武器があるでしょうが!
 その誰にも負けないキャラクターが」
98池田屋:02/09/19 21:28 ID:cX7r+adc
「えーっ? 喋るの苦手だからなあ…あたし。
 キャラとか言われたって『うたばん』でウインクするくらいが
 あたしの限界なんだけど…」
「まかせてよ、圭ちゃんのキャラの面白さ広めるからさ。ね?なっち」
「んー? まあ、圭ちゃんがいいならさあ」
「いいんでしょ? 圭ちゃん」
「何する気でいるのよー? 任せていいの?」
「大丈夫、大丈夫。おいらに任せなさいって。
 でも、後で文句言わないでよね」
「文句言うようなことなのかいっ!」
「まあ、まあ。圭ちゃん、ここは矢口に任せておこうよ」
圭ちゃんはなっちになだめられつつも、表情は疑問の顔。
うー、わたしって信用ないなあ。
しょうがないか、今まで失言でさんざん怒られてきてるからな……
99池田屋:02/09/19 21:29 ID:cX7r+adc

「そろそろ戻んないとヤバいよね」
「そうだね、圭ちゃん来る前にもかなりの時間ここにいたしね」
「ちょっとさー、涙のあととか残ってない?」
なっちが顔を突き出してくる。
「うん大丈夫、大丈夫。いつも通りのかわいい顔」
なっちはしきりに目のあたりを拭っている。
「矢口、あたしは? 目とか大丈夫?」
「うん、圭ちゃんも平気。いつも通りの・・・な顔」
「ちょっと矢口! あんた今なんて言った!?」
「なんも言ってない、なんも言ってない」
笑いながら建物の角を曲がって、スタジオに向う……
100池田屋:02/09/19 21:30 ID:cX7r+adc



「「「 ! ! ! 」」」



3人ともびっくりした。
角を曲がってすぐそこには……
建物に寄りかかるようにして、膝を抱えて座りこんでいる人影があった。
101池田屋:02/09/19 21:31 ID:cX7r+adc



「「「 辻 !! 」」」


102池田屋:02/09/19 21:32 ID:cX7r+adc

「辻! 今日って休みじゃなかったの?」
圭ちゃんが焦って聞く。

「辻ー、いつからそこにいたの?」
わたしも焦って聞く。

「のの? わたしたちの話、聞いちゃった?」
なっちが肝心なことを聞く。

辻からの返事は……なかった。
ただ爪を噛んでいるだけだった……

辻は立ち上がって
「なんも聞いてないです」
って言うと、スタジオの方に足早に歩き出した。
103池田屋:02/09/19 21:33 ID:cX7r+adc

「おい、辻!」
わたしはあまりの驚きに追いかけることができなかった。
3人で顔を見合わせる。

「いいよ、わたしが行く」
なっちが建物の中に消えた辻を急いで追っていった。

残された圭ちゃんとわたし。
「どうしようか? まずいんでない?」
わたしの問いに
「いいよ。ここはしょうがない、なっちに任せておこう。
 3人でいったら逆に辻が不安になるだけでしょ……」
と圭ちゃんが答える。
104池田屋:02/09/19 21:34 ID:cX7r+adc


 ・  ・  ・


 ・  ・ 


 ・ 

105池田屋:02/09/19 21:35 ID:cX7r+adc

今日が自主練習という形でよかった。
辻はあの後スタジオに姿を見せることなく、なっちに連れられて帰っていった。
もちろん表向きは二人とも『体調不良』という理由で。

その後は圭ちゃんもわたしも、そしてカオリもその日は自分の練習に打ち込んだ。

夜になってその日はみんな言葉少なに別れた……
106池田屋:02/09/19 21:36 ID:cX7r+adc

家に帰って自分の部屋に戻る。
ラックから一枚のDVDを取り出した。

 『ライブレボリューション21 春
        〜大阪城ホール最終日〜』

真っ暗な部屋の中、映像が流れだす。

裕ちゃんの泣いている姿、

なっちや圭ちゃんの泣いている姿、

自分の泣いている姿、

またこんな別れを来年の春には迎えなければならない……

そう思うと泣けてきた。

何年経っても変わらない別れのつらさ……
107池田屋:02/09/19 21:37 ID:cX7r+adc



わたしは泣き続ける…………


わたしはいつまでも泣き続ける…………


108池田屋:02/09/19 21:48 ID:cX7r+adc

    ◆

矢口真里編(1)終わり。
続いて石川梨華編です。

    ◆
109池田屋:02/09/19 21:49 ID:cX7r+adc


「石川ー、頑張ってるかー!」


「あれぇ!! 中澤さん! どうしたんですか?」


いきなり後ろから思いもよらない声をかけられてびっくりした。
いっしょにいたりんねさんとあさみちゃんとまいちゃんも
中澤さんの出現にびっくりしている。
110池田屋:02/09/19 21:50 ID:cX7r+adc
今日は日本テレビの生田スタジオでお仕事。
カントリー娘。が3人に増えてから初めて出す曲で歌番組に出演する。
まいちゃんが入って、もうわたしの助っ人の役目は終わりだと思ってたのになあ。
そう思っていたから、レコーディングのスケジュールを聞かされたときはうれしかった。
わたしも含めて4人とも新曲の衣装は恥ずかしかったけれど、
歌を出せて、こうして歌番組に出演できてうれしいなあ。

中澤さんはわたしたちが座っていたソファーの近くまで来る。
それを見たあさみちゃんとまいちゃんが立ち上がろうとした。
111池田屋:02/09/19 21:51 ID:cX7r+adc
「あ、ええねん、ええねん二人とも。
 すぐ帰るからそのままでええで」
「どうしたんですか、中澤さん?」
「となりのスタジオでドラマ撮ってんのよ。
 石川が来てるってちょっと小耳にはさんでな、
 こりゃあ御挨拶しとかなアカンと思って来たわけよ」
「なーに言ってんですか、『御挨拶』だなんて……
 ドラマって、あれですよね? 保健の先生役ってやつ。
 もうオンエア始まってるんですか?」
「…確か来週からだったかな。あんた、ちゃんと見なさいよねー」
「見ますよぉ。これでもわたしちゃんとみんなの出る番組チェックしてるんですよー」
「ホンマかいな? どうせ最初と最後ちょこっと見るだけでしょ」
「そんなことないですよぉ。ちゃんと見てますって」
「ちゃんと見いや。今回はみんな気合い入ってるから、おもしろく仕上がってるで」
去年出たドラマが大コケして、途中で放送回数が短縮されたことは
中澤さんの前ではしちゃいけない話…
今回も同じにならないといいんだけれど……
112池田屋:02/09/19 21:52 ID:cX7r+adc

「なー石川、ちょっといい?」
そう言って、中澤さんにスタジオの隅の方につれていかれる。
「なんですかー? 改まって?」
「あんたさー、ごっつぁんと明日会う?」
「明日はちょっと会わないと思いますけど…」
「そうか…会わへんか…」
「…あ、明後日だったら大阪でコンサートだからいっしょになりますよ。
 何かあるんだったら伝えておきましょうか?」
「あー、いや、別に何か伝えるとかそういうことでもないんだよね…」
「あのー…ごっちんがどうかしたんですか?」
「うん、まあたいしたことじゃないから…
 …会わんなら別にええわ」
「えー? なんか気になるなあ…
 たいしたことじゃないなら教えてくださいよぉ」
「ええねん、ええねん…
 邪魔して悪かったな。
 わたしもそろそろ戻るわ」
中澤さんはそう言って話を打ち切った。
113池田屋:02/09/19 21:53 ID:cX7r+adc

中澤さんが帰ろうとしたときにプロデューサーさんに呼び止められて
「ちょっと出演していかない?」という話を持ちかけられている。
「じゃあ、ちょっとだけ」ということで話がまとまった。
カメラが回りはじめて中澤さんはわたしに二言、三言声をかけると
最後に
「『ごくせん』よろしく〜!!」
と叫んでスタジオを後にしていった……
114池田屋:02/09/19 21:54 ID:cX7r+adc

「中澤さん、何だって?」
あさみちゃんが聞いてくる。
「んー? なんかよく分からないけど…『ごっちんと明日会う?』だって…」
「ふーん…」
「『会わないです』って言ったら『じゃあいいや』って言ってそれっきり…」
「……そういえば中澤さん、さっき市井さんとも真剣そうに端っこの方で話してたよ」
「えーっ? 市井さんとも?」
「梨華ちゃんはまだ来てなかったからねえ…」

今日は市井さんのユニットとの同時収録。
わたしたちが市井さんと顔を合わせることはないけれど、
もしかしたら中澤さんがわたしのところに来たのは何か市井さんと関係があるのかな?
市井さんともごっちんの話してたのかな?
ごっちんの話ってなんだったんだろう?
そんなことを考えながら収録してたら、全然トークの収録がうまくいかなかった……
115池田屋:02/09/19 21:55 ID:cX7r+adc

翌日、朝早く、といっても8時過ぎにしばっちゃんから電話がかかってきた。
……なによー、こんな時間から。
眠い目をこすりながら携帯電話をとる。
「…なあにー? こんな時間から」
「あ、梨華ちゃん、おはよう。
 まだ寝てた?」
「…うん。寝てたよぉ」
「じゃあ、まだ知らないか?」
「何がー?」
「新聞にさあ、後藤さんの弟さんの記事載ってるよ…」
「えーっ? 何それ? ぜんぜん聞いてないよー」
「やっぱそうじゃないかと思ってた…」
「で、内容はー?」
116池田屋:02/09/19 21:56 ID:cX7r+adc
「うーん、なんか言いづらいなあ。
 近くにコンビニあったよね?
 あそこまで行って買った方が早いと思うよ」
「そんな大変なことなの?」
「大変っていうか……とにかく見た方が早いと思う」
「う…うん。じゃあちょっと買いに行ってこようかな…
 それじゃ一回切るねー」
「うん。じゃあまたあとで」
「あー、しばっちゃん! メロン、今日お仕事は?」
「今日は新曲のレコーディング」
「じゃああとでメールするね」
「うん。そんじゃね」
117池田屋:02/09/19 21:57 ID:cX7r+adc

しばっちゃんとの電話を切ってから急いで顔を洗うと、
とりあえず近くに脱ぎ捨ててあったジャージに着替えた。
そしてまくら元に置いてあったマスクをつけ、帽子をかぶりコンビニに向う。
入口の近くに置いてあるスポーツ新聞を2,3紙とり、ここ最近毎日飲んでいる
牛乳のパックを一つ取ってレジに持っていった。

部屋に戻ってきて、買ってきたばかりの牛乳のパックを開けて一口。
そして適当にスポーツ新聞を一つ取って、芸能欄を開いた。
そこには……
118池田屋:02/09/19 21:58 ID:cX7r+adc


  『EE JUMP ユウキ脱退!!
      中学生がキャバクラ通い』


新聞の見出しにデカデカとそう書いてあった……
119池田屋:02/09/19 22:00 ID:cX7r+adc

……何この記事?
あのユウキ君がキャバクラ?
この前復帰したばっかりなのに……

そっか、中澤さんが昨日わたしに聞いてきたのはこのことだったんだ。
だから市井さんとも何か話してたんだ……
……中澤さん、まだ石川は頼りないですか?
市井さんには話してもわたしには話してもらえないんですか?
そのことがちょっとショックだった……
120池田屋:02/09/19 22:00 ID:cX7r+adc

そうだ、よっすぃーは何か聞いてるのかな?
よっすぃーならなにかごっちんから聞いてるかもしれない。
携帯電話を手にとってかけようとしたけれど、慌ててやめた。
昨日の夜にメールしたばっかりだった……
そう、今日はよっすぃーの誕生日。
朝からこんな電話かけるわけにいかないよ……

はぁ……なんかブルーだなぁ……
いけないなあ、こんなことじゃ。

「ポジティブ! ポジティブ!」

一人っきりのマンションの部屋で牛乳を飲みながら叫ぶ石川梨華、17歳……
吉澤ひとみも17歳を迎えたその日……
121池田屋:02/09/19 22:01 ID:cX7r+adc



     ◇      ◇      ◇


122池田屋:02/09/19 22:02 ID:cX7r+adc

4月20日。
千歳空港行きの飛行機の中。
シートベルトの装着ランプが消えると、わたしたちの席の回りの通路を
おそろいのTシャツを着た人たちが行ったり来たり。
やっぱりね……言った通りになった……
寝たふり、寝たふりと…
123池田屋:02/09/19 22:03 ID:cX7r+adc

羽田空港でバスの中で待機しているときに、矢口さんと安倍さんと保田さんが話していた。
今日はコンサート会場に向う人たちとはち合わせになるから、
飛行機の中はすごいことになるよって。
そして案の定、すごいことになってた。
飛行機の中とはとても思えない交通ラッシュが起こっている。
わたしたちの席の通路側は事務所のスタッフが固めてるけど、やっぱり不安だなあ。
全然気にせずに寝られるごっちんや安倍さんがうらやましいよ。

ごっちんは先週の事件以降、自分からは特に何もコメントするわけでもなく、
まわりのみんなもそのことについて特にふれることもなく、
いつも通りのモーニング娘。が続いていた………
ただ来るときのバスの中で楽しげに歌っていた矢口さん・安倍さん・保田さんの方が
気になっていた。いつも朝は静かな3人なんだけどなあ。
124池田屋:02/09/19 22:04 ID:cX7r+adc

札幌の会場に着くと休憩もそこそこにすぐにリハーサルが始まる。
のどの調子は平気かなあ。
カントリー娘。のリハーサルはいつも通り一番最初。
カントリーのメンバーとは練習とテレビ番組の収録もあって
ここ2週間ほぼ毎日のように顔を合わせている。
まだぎこちなさが残っていたまいちゃんとの関係もかなりほぐれてきた。

「今日と明日が終わったらようやく一段落だね」
わたしがまいちゃんに話しかけると
「すごい疲れましたー。こんなに忙しいの初めてだったから…」
と返してくる。
新曲でのテレビ出演が終わって、札幌のコンサートが終わったら
カントリー娘。は久しぶりに牧場に帰ることになっていた。
125池田屋:02/09/19 22:05 ID:cX7r+adc

「梨華ちゃん、けっきょく今回も牧場行けずじまいだね」
あさみちゃんがニコニコしながら言う。

「そうだよぉ。せっかく札幌まで来たのに牧場とは縁遠いよねえ…
 牧場のソフトクリーム食べてみたかったのに」
「そういえば、明日イベントやるところのソフトクリームもおいしいんだよ」
「イベント?」
「うん。梨華ちゃんは知らないだろうけど、明日札幌で新曲発売のイベントをやるの」
「……そうなんだー」
126池田屋:02/09/19 22:06 ID:cX7r+adc
わたしは牧場にも行かないし、土日にやっている新曲イベントにも
一回も出たことがないから、同じユニットのメンバーとしてなんとなく寂しかった。
「いっしょにソフトクリーム食べたかったなあ…」
「あしたイベントやるところはねえ、ソフトクリームもおいしいんだけど、
 クレープもおいしいお店があるんだー」
そんなあ…あさみちゃん、もうやめてよぉ。
わたしが甘いものに目がないって知ってるでしょー。
「まあまあ梨華ちゃん、そんな悲しい顔しないで。
 そのうち牧場においでよ。プライベートで来るしかないと思うけどさ」
「…プライベートで北海道に行くなんて夢のまた夢だよぉー。
 なんかわたしが行く前に助っ人生活が終わっちゃいそうだなあ」
「縁起でもないこと言わないでよー
 そのうち来る機会があるって」
あさみちゃんはこう言ってくれるけど、そうかなあ…?
127池田屋:02/09/19 22:07 ID:cX7r+adc

わたしたちがリハを終えると安倍さんと5期メンバーの出番。
観客席に座ってリハの様子を眺めていると、いつもとは違う光景がそこには見れた。
普段なら自分の歌に満足するとすぐにリハをやめてしまっていた安倍さんが
5期メンバーたちに歌の指導を始めたのだ。
5期メンバーには芸能人としての基本的な指導をすることはあったけれど、
歌に関しては安倍さんは決して注意することはなかった……
ううん、それは5期メンバーに限ったことじゃなくて、わたしたち4期メンバーにも
ほとんど注意をしてくれたことがない。
そんな安倍さんが5期メンバーと声を合わせてみて、注意点を丁寧に指摘している。
見慣れない光景に、隣に座っていた矢口さんと保田さんもちょっとびっくりしていた。
そして遠くの方で一人見ていた飯田さんも……
128池田屋:02/09/19 22:07 ID:cX7r+adc

本番1公演目。
わたしたちの出番も終わって、ごっちんの新曲初披露も済んで
アンコール前の「なんにも言わずにI LOVE YOU」、
その曲の半ば、間奏でそれは起こった……

矢口さんと安倍さんと保田さんが3人で曲を完全にリードし始めた。
この曲は元々のフォーメーションでも3人は間奏のときに中央で歌うことになっている。
今までは3人ともオケに合わせてそれぞれが別々にリズムを刻んでたのに、今日は違う。
3人で向きあって呼吸を合わせ始めた……
3人がステージの中央で曲をリードしてくれていた。
わたしたち他のメンバーもそれにつられて呼吸を合わせ始めた。
129池田屋:02/09/19 22:09 ID:cX7r+adc



…………なにこれ? 今までと全然違う……!!


今までのライブでは感じたことのなかったものがそこにはあった。
自分のパートを必死に歌ってただけのときには気付かなかったものがそこにはあった。


歌うのってこんなに楽しかったんだ!!


ライブってこんなに楽しかったんだ!!

130池田屋:02/09/19 22:10 ID:cX7r+adc
みんなに「ヘタクソ、ヘタクソ」って言われ続けて忘れてたけど、
わたしって歌うこと好きだったんだよなあ。
みんなとカラオケに行って歌いまくるの好きだったんだよなあ。
いつから歌うことに引け目を感じるようになってたんだろう。
今わたしはこうして楽しく歌っているのに、
なんでこれまでは楽しくなかったんだろう……
肩に乗っていた重たいものがスーっと下りた感じがした。


アンコールが終わって楽屋に帰ってくると、
みんな興奮覚めやらずといった感じで一斉に喋りだす。
小川や紺野が『泣きそうになっちゃいましたー』と言えば、
新垣なんかは安倍さんの方を羨望の眼差しで見てる。
あいぼんも高橋と何やら身ぶり手ぶりを交えて話している。
わたしもタンポポに入った頃に飯田さんや矢口さんが
こぼしていた愚痴の意味がようやく分かった気がする…
131池田屋:02/09/19 22:11 ID:cX7r+adc


歌って気持ちだったんですね!


技術は関係ないんですね!


わたしでも何か伝えられるんですね!


『あんたがそう言うんは10年早いんじゃ!!』


中澤さんのツっこむ声が頭の中で聞こえた……

132池田屋:02/09/19 22:12 ID:cX7r+adc



     ◇      ◇      ◇


133池田屋:02/09/19 22:13 ID:cX7r+adc

今日はお昼過ぎから飯田さんとラジオの収録。
打ち合わせのときにその日の内容を聴いて、飯田さんと二人、
ぽかーんと口を開けてしまった。

スタジオ収録をちょっとしたあとにわたしたちの移動用のバスに乗って
OH-SO-ROのフリーペーパー作成という名目でバスツアー。
途中、天王洲でテレビ収録をしているメンバーを何人か拾って、
その移動途中と食事の場面を番組で収録するという。
他のメンバーが同乗してることは分からせないようにして、
豊洲のミュージカルの練習スタジオで降ろしたら
わたしたちはもんじゃ屋さんで食事。
なによ、これー?
ただの移動と食事だけじゃないの。
ここまでして収録するってことは、この先よっぽど時間がとれないのね。
ああ、もうやだなあ。世間はもうすぐゴールデンウィークだってのに……
134池田屋:02/09/19 22:13 ID:cX7r+adc

バスに乗り込むとわたしと飯田さんにカメラが手渡される。
東京タワーを通り過ぎながら車内で写真撮影をした。
わたしはカメラのシャッターを切りながら飯田さんに話しかける。

「こないだ初めて登りましたよー」
「初めてなのー?」
「はい。グラビアの撮影で登ったんですよー」
「あー、あれね。拳銃構えてセクシーなポーズとってたやつ」
「そうです、そうです。あのときですよー。
 窓際に立たされてめっちゃ恐かったんですよ。
 でも、売店で買ったソフトクリームもおいしかったなあ」
「そうなの?
 ……東京タワーね、わたしも昔登ったことあるよ」
「ありますかぁ?」
「…うん。東京出てきてすぐにねえ、和田さんにメンバー全員つれてってもらったの」

飯田さんは遥か上に見える展望台を見ながら、懐かしそうに振り返った。
そっかー、上京したときに連れてってもらったんだあ。
そういえばなんとなくテレビで見てた記憶があるなあ……
135池田屋:02/09/19 22:14 ID:cX7r+adc

少し早めに天王洲についてしまったので、品川駅の近くまでいって再び写真撮影。
飯田さんが京浜急行の赤い電車を見て興奮気味に写真を撮っている。
こっそり飯田さんのことも撮っちゃおーっと。
レンズを向けてパシャリと撮ったら気付かれた。

「あー、石川ー! 今撮ったでしょー!」
「はい、撮りましたよー。バッチリいい写真撮れました」
「ほんとにー? 石川の腕じゃ信じらんないなあ」
「大丈夫ですよー、今のは」
「だって石川、普段からうまくないじゃん。ぼやけちゃったりしてさあ…」
「…まあ、あれですよ…飯田さんと保田さんの絵といっしょです。
 上手いのと下手なのは紙一重っていうじゃないですかぁ?
 わたしの写真も一歩間違えば芸術ですから」
「じゃあ石川の写真は圭ちゃんの絵といっしょってことでいいんだ?」
「あー、…それはちょっと困るかも。
 もう少しランク上げてくださいよー」
136池田屋:02/09/19 22:15 ID:cX7r+adc

スタジオの駐車場に戻る途中、工事現場の片隅にたんぽぽが咲いてるのを見つける。
「あ、たんぽぽー!!」
わたしがうれしそうに声をあげると、飯田さんもうれしそう。
「石川ー、早くとりなよー、わたげもなってるよ」
飯田さんはカメラをかまえて、わたしがたんぽぽを摘むのを待っている。
「飯田さん、こんな感じでどうですか?」
「お、いい、いい。そんな感じ。いくよー」
「はーい」

パシャリ。

飯田さんにたんぽぽを摘んでる姿を撮ってもらった。
「飯田さんもどうですか?」
わたしもカメラを取り出して言う。
「…うん。わたしはいいよ」
「えーっ。どうしてですかあ?」
「わたしはいいの! どっちかっていえばこのわたげの方がいいんだよね」
137池田屋:02/09/19 22:16 ID:cX7r+adc

わたしがカメラをかまえる前に飯田さんはわたげを摘むと
ふーっと息を吹きかけて飛ばしてしまった。

「あ! 飯田さんちょっと待ってくださいよー。
 せっかく写真撮ろうと思ったのにぃ」
「いいの、いいの。わたしはわたげでさ。
 写真なんかに残さなくったって、ちゃんとどこかで根を張れるから」
「……飯田さん?」

ああ、飯田さんがまた交信し始めてしまった。
わたしには意味がわからないよぉ……。
矢口さーん助けてくださーい…
138池田屋:02/09/19 22:17 ID:cX7r+adc

スタジオに戻ってごっちんやよっすぃーたちと合流すると
バスは天王洲をあとにする。
バスの中ではみんなぐっすり寝込んでしまってた。
気がつくと豊洲のスタジオに着いていた。
今日は軽い打ち合わせと、発声練習。
来週からの本格的な練習に備えての下準備だ。
わたしと飯田さんは食事も兼ねたラジオの収録が残っていたので
そのままバスで月島まで送ってもらった。
139池田屋:02/09/19 22:18 ID:cX7r+adc

このラジオ企画が当初から行き当たりばったりだったので
なかなか食べるお店が見つからない。
スタッフさんたちが右往左往している。
「えっ! 加護がいるんですか?」
飯田さんがマネージャーさんに尋ねている。
「飯田さん、あいぼんがどうかしたんですか?」
「うん、なんかね、これから行くお店に加護が食べに行ってたんだって」
「あいぼんがですか?」
「うん。さくらさんとの取材で来てたらしいよ」
「あーっ。あいぼんの取材って今日だったんだー!
 まだお店にいるんですか?」
「もう食べ終わっちゃって、店は出たってよ。
 なんか今、商店街で買い物してるって」
「買い物ですかあ… 買い物できるところなんてあるんですかね?」
「さあ…?」
飯田さんも近くにいたスタッフさんも首をかしげる。
140池田屋:02/09/19 22:19 ID:cX7r+adc

やがてあいぼんに付いていたスタッフさんがやってきて
わたしたちとOH-SO-ROのスタッフさんをもんじゃ屋さんの前まで案内してくれた。
何人かがお店の中に入っていって早速交渉。
わたしたちは店の外でやることもなくボーっと待っていた。
すると
「梨華ちゃーーーん」
と大きな声が聞こえたと思ったらいきなり後ろから抱きつかれる。
「きゃっ!!」
思わず悲鳴をあげてしまった。
驚いて振り向くとそこにはよく見知った顔。
「あいぼーん!!」
「へへ、びっくりした?」
「びっくりするよー。もー、やめてよねー」
「はい、これー」
あいぼんはわたしの迷惑顔も気にせずにいきなり何かを口に押し付けてくる。
「ちょっと…なあにー、これ? そんなに押し付けてたら何だか見えないよぉ」
「いいから、いいから。あーん」
「んー、もう! しょうがないなあ」
わたしが観念して口をあけると、何かを口に放り込む。
141池田屋:02/09/19 22:20 ID:cX7r+adc
「何よこれー? なんか固いよー」
「これー」
オレンジ色と白い色が混じったものが入っている袋をわたしに見せる。
「干しあんず〜!?」
「うん。さっき買ったんだー」
「あいぼん…わたしダイエットしてるって言ったじゃん。
 甘いもの控えてたのにぃ!」
「一つくらい何ともないよお」
「違うんだってばー。気分の問題なんだって」
「…あ、飯田さんも食べますか?」
「ちょっと、あいぼん聞いてるの〜?」
あいぼんはスタッフさんたちにも干しあんずを配ろうとして
ふらーっと行ってしまった。
「もうっ! わたしの言うこと全然聞いてくれないんだから…」
そんなわたしを見てさくらさんやまわりのスタッフさんが笑っていた……
142池田屋:02/09/19 22:21 ID:cX7r+adc

あいぼんがスタジオに向うためのタクシー待ちをしてる間に
わたしたちはもんじゃ屋さんの中に入る。
飯田さんと向かい合って席についた。
飯田さんとこんな風にして二人っきりで食べ物屋さんなんかに
入ったことないから緊張するなあ。

「石川、この明太子もちもんじゃにしようよ。
 あたし好きなんだー」
「えっ? ここ来たことあるんですか?」
「ううん。昔ね、裕ちゃんと圭ちゃんとよくもんじゃ食べに行ってたの。
 その頃から明太子もちもんじゃ大好きなのよ」
「そうなんだあ…」

わたしたちが入る前のこと、違う…入った後のことなのかな?
3人でしみじみともんじゃをつついている姿が想像できた……
言えないこととか話してたんだろなあ、悩みごととかなんだろなあ……
143池田屋:02/09/19 22:23 ID:cX7r+adc

注文したメニューが来ると飯田さんが焼き始めてくれた。
「どうなのよ、最近は? …石川梨華ホンネトークだよ」
大きなへらでもんじゃを焼きながら飯田さんがわたしに尋ねた。
「…ホンネトークですか?」
「うん」
「……そうですね……なんか今まで、改まってこれからどうしようとか
 考えたことなかったんですけど、最近気持ちにちょっとづつ余裕が出てきて
 そしたらいろいろ考えるようになりました……」
「うん」
「……反省する点とか、これからどう頑張っていきたいかなあとか考えて、
 でも…………」
「何をいちばん考えてる?」
「なに考えてるかなあ…………痩せなきゃ!!」
「えーっ!…そんな簡単なことを?」
「うん…そんな簡単なことをいちばん悩んでるかもなあ」
「でもねえ、あたしもそういう時期あったけどさあ、
 痩せたからきれいになるわけじゃないんだよ。やっぱり。」
「…………」
144池田屋:02/09/19 22:24 ID:cX7r+adc
「あたしも昔さあ、18のときにちょっとダイエットしてすっごい痩せたわけ。
 で、そのときは『すっごい綺麗になったあ』って思ってたけど……
 今はもう全然ダイエットしてないのね。なんでもバリバリ食べるんだけど…
 でもその方がさあ楽しいんだよね、人生がさあ……
 だから、いいよもっと気楽に生きて……」
「気楽にですか?
 わたしには難しそうだなあ……
 …でも太らないために腹筋をすることとかもそうだし、そんなことから
 コツコツとやればいいのかなあなんて……
 最近じゃそんな風には考えられるようにはなりました…」
「でも、それで声も出るようになるからね。
 根性も磨かれてくるし……いいことだと思うよ」
「ちょっとづつなんですよね、きっと……
 努力してればいつか絶対上手く歌えるようにもなりますよね……」
「うん……あと自分を褒めてあげるってことかな」
「褒める?」
「うん。『あたしはさ、音とれなくても、こういう表現はわたしにしか
 できないじゃん』っていうね、そういう気持ちを自分に持ってあげる…」
「……うん……」
145池田屋:02/09/19 22:28 ID:cX7r+adc

飯田さんの言ってることはいつも抽象的で分かりにくい…
でもわたしのことはちゃんと見ててくれてるんだなあってことは分かった。
タンポポはほとんど集まることがなくて、先輩メンバーともちゃんと
話す機会なんてあまり持てなかったから、飯田さんの言葉がうれしかった。

これからも見守っててくださいね、
飯田さんは、わたしのお姉さんですから…
いつか飯田さんの悩みを聞いてあげられる日が来るように
石川はもっともっと頑張りますよ。
だからもうちょっとだけ待っててくださいね……
146池田屋:02/09/19 22:40 ID:cX7r+adc
雑談れす。
ようやく今までうpしてた部分終わりました、、、
前スレで読んでた方には重複してしまって申し訳。
以前書きましたが飯田編で手こずっていたので、
いい小休止になりました、、、
147たぢから:02/09/20 00:20 ID:xpgYue45
再掲載乙です。
まさか重複であぼ〜んだったとは知りませんでした。
死にスレの活用も大変ですね。続き期待してます。
148池田屋:02/09/20 00:37 ID:x0lDwn8j


「はあ? ふざけんな!! このクソ野郎!!」


受話器を思いっきり叩き付けた。
それでも怒りが収まらなくて電話器ごと壁に投げつける。
白い電話器の小さな部品が散らばってグレーの絨毯にぱらぱらと落ちた。
149池田屋:02/09/20 00:38 ID:x0lDwn8j

くっそー、なんだってユウキが狙われなきゃなんねえんだよっ!
今のユウキなんか叩いたって何にもメリットねえだろうに。
ふざけやがって、何が『記事出ますんでヨロシク』だ!!
目の前にいたら生きて帰さねえっつうの!
怒りのはけ口を求めて自分のデスクを思いっきり蹴っとばした。
山のようにつまれた書類の束が崩れ落ちた……

「おい! そこの片づけと新しい電話機持ってきておけよ」
何も言い返せない俺の部下たち。
「あとユウキに事務所来るよう連絡しとけ!」
そう事務所のスタッフに言い捨てて歩き出す。
150池田屋:02/09/20 00:39 ID:x0lDwn8j

「あのー……どちらへ?」
一人の社員が俺の剣幕にビビりながら聞いてくる。
「ああ? ボスんところだよ。ボスの!!」
どなりちらして言ったあとに一言付け加えた。
「あとな、いろいろ電話かかってくるだろうけど、いちいち相手しなくていいからな。
 『知りません。分かりかねます』って答えときゃいいから。
 しばらく帰って来れねえと思うけど、ユウキは絶対に待たせとけよ。
 それこそ縄で縛ってでも帰らすな!」
ったく、ムカツクよな。なんだって俺がこんな苦労しなくちゃなんねえんだよ。
やりたくもねえのに社長なんかやらせやがって……
ボスの部屋へ行く途中ひたすら心の中で愚痴ってた……
151池田屋:02/09/20 00:43 ID:x0lDwn8j

「会長! 和田来ました」
「おう。入っていいぞ」

部屋の奥に入って行き、ボスに示されたソファに腰掛ける。
ボスもデスクから移動してきて俺の向いに腰をおろす。

「ユウキの件なんですが…」
「ああ、こっちにもさっき連絡が来た」
「……どうしましょうかね?」
「どうって…ユウキ辞めさすしかねえだろ。
 中学生がキャバクラで飲酒ってのはイメージ的に悪過ぎる…」
「押さえっていうのは……?」
「……今回は無理だな……」
「…………」
「…………」

長い沈黙……
…部屋に重い空気が漂った。
152池田屋:02/09/20 00:44 ID:x0lDwn8j
「なんでですか?
 あそことは安倍の一件以来、手ぇ結んだんじゃなかったんですか?
 それで矢口の件は押さえられたじゃないですか。
 今回も何とかして押さえらんないんですかね?」
「今回ばっかりはな……難しそうだ…」
「…………わけは?」
「……まあ、分かるだろ?
 安倍のときと一緒だ……」
「……安倍のときって……
 じゃあ、またやつらが?」
「ああ。そういうこった」
「しかし……ユウキを狙ったところでたいして意味がないと思いますが。
 正直なところ、ユウキのタレントとしての価値をやつらは「蚊」ほどにも
 思わないんじゃないですか?
 ユウキを貶めたところで得られるメリットは見当たりませんが……」
「ああ、俺もそう思うよ。おなえには悪いけど。
 まあお前のことだから何とかするとは思ってたけどな…」
153池田屋:02/09/20 00:44 ID:x0lDwn8j
「じゃあ、なんでやつらはユウキを狙ってきたんですか?」
「だから、それが安倍のときと一緒だって言ってるんだよ!」
「はあ? 意味が分かりませんが…」
「おまえなあ、あのあと脅しに屈してどれだけ利権持ってかれたと思ってるんだ?
 ハンパな額じゃねえんだぞ。
 やつらはタレント一人つぶすのなんてなんとも思ってねえぞ。
 安倍のときはこっちが屈したからそれ以上仕掛けてこなかったが、
 あのまんま逆らってたら、どこまでやられてたか……」
「……だから最初に言ったじゃないですか。
 あそこと深く関るのはやめた方がいいって……」
「うるせえな!! 仕方ねえだろ。
 あそこと組まなきゃ仕事取れなかったんだからな。
 おまえだってよく知ってるだろうが。
 あいつらのおかげでCM契約寸前までいってたの何本邪魔されたと思ってるんだ?
 どれだけプロモーション邪魔されたと思ってるんだ?
 あのまま邪魔され続けて全てを失えるかってんだよ!!」
154池田屋:02/09/20 00:45 ID:x0lDwn8j

ああ、分かってるよ。この金の亡者め!
お前があいつらと組んだから俺がはずされたんじゃねえか。
お前が欲に目が眩んだから路線修正できなくなったんだろうが!!
顔にはおくびにも出さず、ひたすらこいつを呪ってやった…
155池田屋:02/09/20 00:47 ID:x0lDwn8j

「……で、ユウキが狙われたわけは?」
「後藤!」
ボスが吐き捨てるように言う。
「後藤……ですか?」
「ああ…後藤だ。
 やつら自分のところの集金力が落ちてきたもんだから必死になってるらしい。
 後藤絡みのカネをもっと寄こせって言ってきやがった。
 つまりユウキを狙ったのは次は後藤本人を狙うっていう暗示だろ……」
「しかし……入ったときの経緯があるとはいえ、やつらには充分渡したじゃないですか。
 俺が預かってたプッチモニだって、後藤のソロだって、それに市井だって
 みんなやつらに渡してるじゃないですか…」
「やつらの力が弱くなってきてるのは分かってるだろ?
 やつらはそんなもんじゃ満足できなくなったってことだ……
 はしたカネじゃ自分たちの力を維持できなくなってきてるんだろ。
 だから、もっとカネになるもんをよこせってとこだろ……」
156池田屋:02/09/20 00:48 ID:x0lDwn8j
「……じゃあ…ユウキの記事の押さえがきかないってことは
 今回は屈しないってことですか?
 やつらとは手を切るってことですか?」
「…そうは言ってない。
 今回の件は取り引き材料として利用させてもらうさ。
 記事に載せちまえばやつらにも負い目ができるからな。
 折り合いをつけるときの切り札にしてやろうと思う」
「それじゃあ、ユウキはどうなるんですか?
 ユウキは切り捨てですか?
 ハメられただけのユウキを切り捨ててしまうんですか?」
「……ああ、そうなるな。
 どうせ問題児だったし、おまえもその方がいいって思ってるだろ?
 ちょうどいいんじゃないか? ヤツは辞める潮時だろ。
 あいつはこのまま芸能界いても芽ぇ出ないぞ。
 所詮は姉の七光りってやつだ」
そう言うとボスはガハハと大笑いした…

このヤロー!! 人間をなんだと思ってやがるんだ!
俺たちはモノを扱ってるんじゃねえんだぞ。
思わず拳を握りしめる……
157池田屋:02/09/20 00:49 ID:x0lDwn8j

「で、おまえはどうするんだ?」
「…俺にはまだより子。が残ってますから……」
「ソニンも切るのか? おまえも案外ヒドい奴だなー」

奥歯を噛みしめて屈辱に耐えた。
おまえとは違うんだ、ソニンだってやってやる。
ここでソニンまで切り捨てたらおまえと一緒じゃねえか。

「……いえ。ソニンもどうにかしてみせます」
「頼むぞー。お前にはカネ貸してるんだからなあ。
 俺のポケットマネーから貸したウン千万、あれは別にいいけどな、
 会社には損害出さないでくれよー」
「いえ。全額返済してみせますよ……」
「ああ。そうしてくれると助かるなあ」

くっそー絶対返してやる。
こんな口、二度ときけないようにしてやる。
俺がやってた森高とシャ乱Qで肥え太りやがったくせに何言ってやがんだ!
158池田屋:02/09/20 00:50 ID:x0lDwn8j
そのあと今後のことについて2,3点、話を詰めた。
「……もう失礼していいでしょうか?
 ユウキの件で事務所も大騒ぎになってると思いますので…」
「ああ、行っていいぞ。」
俺がソファーから立ち上がり、ドアの近くまで行くと呼び止められた。
「おい、和田!!」
「…はい?」
「お前、フジのきくちと組んでなんか動いてないか?」
ギクリとしたが
「いいえ」
と平静を装って答える。
「きくちが持ち込んだ安倍の企画、今回はOKを出してやろうと思う。
 企画の主旨も申し分ないし、いちおう音楽業界に身をおいてた俺としても
 賛同できるところも多々あった」
「そうなんですか? 自分は内容を知らないので……」
「……まあいい。でもな今回っきりだ。
 モーニング娘。の根本を考えるのは俺だ。
 他のやつらが考えることじゃあない」
「……自分にはよく分かりません。
 ……急ぐので失礼いたします」
159池田屋:02/09/20 00:51 ID:x0lDwn8j

……会長室のドアを閉じた。
誰もいない廊下に出て、壁を力一杯に殴った。
手に血が滲んが気にならなかった。
こんなことモーニング娘。のマネージャーをはずされたときに比べれば、
たいした屈辱じゃない。
おいしいところを全部かっさらわれたあのときに比べれば、
今回はまだまだスタートラインから始められる……
逆襲はこれからでもできる。
惰性でやってた社長業、いっちょ本気でやってやろうか……
160池田屋:02/09/20 00:52 ID:x0lDwn8j

ハーモニーの事務所にもどり、
悪く言えば事務所に出頭してきた形のユウキとじっくり話し合う。

「ユウキ、今回のことはもう俺のチカラじゃかばいきれない……
 おまえには辞めてもらうしか手段がない」

「僕がキャバクラに行ったのは事実ですから……
 それは仕方ないと思います……
 でもあの記事とは違うんです!! それは信じてください。
 行ったのは初めてだし、僕から行こうって誘ったわけでもありません。
 どっちかっていえば、断ってたのを無理矢理誘われたんです。
 行きたくなかったのを無理矢理……
 お酒だって飲んでません。
 いきなりコップに注がれたから、口もつけずに急いで店は飛び出したんです。
 これはヤバいぞって思って…
 そしたら、あんな記事になっちゃって……」
161池田屋:02/09/20 00:54 ID:x0lDwn8j

「俺は分かってるよ、お前がハメられたって。
 ただな…もうどうにもならないんだ。
 お前がそう言っても、何にも証明する手段がないんだ。
 記事書かせたやつらは店長から客引き、キャバクラのねえちゃんまで買収してる。
 お前が何言ったところで誰も耳を貸しちゃくれないさ…」

「…………」

「……チカラがなくてスマンな」

「いえ……、結局は店に入った自分のせいですから…
 潔く辞めようと思います……」

「ユウキ……」
162池田屋:02/09/20 00:55 ID:x0lDwn8j

「……一つ教えてほしいんですが…」

「ん? なんだ?」

「今回のことで姉ちゃんにも迷惑がかかるんでしょうか?」

「…………」

「……社長?」

「…うん。正直言ってな、俺には分からない。
 っていうか俺にはもうモーニングへの権限なんてないから
 何が起きてるのか知ることができない…
 でもな、これだけは言っておくぞ。
 もし後藤になにか起こったとしてもお前のせいじゃないからな!
 おまえが気に病むことじゃない。
 もちろん後藤本人のせいでもないぞ」

「…………」
163池田屋:02/09/20 00:56 ID:x0lDwn8j

「……恨むんなら芸能界そのものを恨め。
 芸能界に引っぱり込んだ俺を恨め。
 そしてもう関係ない世界で生きろ。
 それがおまえためでもある…」

「…………」

「せっかく高校進学断念して芸能界に生きる覚悟を決めたところだったのにな……」

ユウキはポロポロと涙を落としはじめた。
こいつにかけてやる言葉が見当たらなかった……
慰めようにも言葉が出てこなかった……
164池田屋:02/09/20 00:58 ID:x0lDwn8j
ユウキに付き添いをつけて帰らすと、今度はソニンを呼び出した。
ユウキと同様に今回の件を説明する。

「5月に予定してたアルバムは発売中止になる。
 それから今後の活動も一切白紙だ…
 テレビ出演は全部キャンセルになったから」

「……はい」

「お前には今後の身の振り方を考えておいてほしい。
 このまま芸能界引退するか、それとも続けるのか。
 もし続けるとしても厳しくなるっていうのは覚悟しておいてほしい」

「…………」

「まあしばらくは動きようもないんでな、ボイトレやダンスレッスンでもしながら
 じっくり考えておいてくれ」

「……わかりました」
165池田屋:02/09/20 00:58 ID:x0lDwn8j

説明するとソニンもまた涙……
そればかりかなぜか鼻血まで出して泣いた。
みるみる減っていくティッシュ……
こんなにこいつは血を流して平気なのだろうか……

けっきょくソニンはティッシュ一箱を使い切り、血は止まったものの、
ユウキと同様に涙ながらに帰っていった……
166池田屋:02/09/20 01:00 ID:x0lDwn8j

ソニンを帰すとどっと疲れが出てきた。
これからテレビ関係者やレコード会社、広告代理店、すべてに謝罪しなくてはならない。
その困難さを思うと……

真っ先に戦友であるあの男に電話をかける。
「ああ俺だけど、EE JUMPヤバいことになっちゃったよ……」
手っ取り早く今回の事情を話す。

「……だからさあ、来週の安倍の件はそっちだけで動いてくれるか?」

「ああ、うちのボスにも勘付かれてる節があってさ、
 これ以上俺が動くのはヤバいのよ…」

「…うん、安倍の件はOK出してやるって俺に言ってきやがった。
 まあ知らないってとぼけたけどな、完全にバレてるな、ありゃあ」
167池田屋:02/09/20 01:01 ID:x0lDwn8j

「いや、それはバレてないだろ。
 まさかあいつを呼ぶなんて思いもしないだろ、普通は。
 安倍のためだけの企画って思ってるよ、ボスは」

「さあ? 来るんじゃねえの? そればっかりは賭けだからな…
 まあでも、物怖じするようなヤツじゃないし、
 一回来る気にさせちまえば、ヤツはちゃんと来るよ」

「まあ上手くやってくれや。
 今のままじゃヤツに登場してもらわんとダメかもしれんし……
 まあ、やれるだけのことはやってみるけどさ…」

「ああ、それと…
 来月に予定してたより子。のFACTORY出演、延期できる?
 やっぱいろいろとあるんで、ちょっと先延ばししたいんだけど…」

「ああ、助かるわ。
 この埋め合わせはなんかするからさ……」
168池田屋:02/09/20 01:02 ID:x0lDwn8j

電話を切って考え込む。
うーん、借りができちまったなあ……
埋め合わせっていっても今の状況じゃなあ………

和田薫、どん底まで落ち込んだ4月上旬の夜……
169池田屋:02/09/20 01:04 ID:x0lDwn8j
雑談れす。
前スレ書き込めるようになったんですね。
自分はイマイチ今回起こったことが理解できてない厨ですが、、、
うーん、2日間無駄にしたってことか。
でもまあせっかくなんで、こっち(羊)で続けます。

和田薫編、あえて言葉を濁してる部分もあるんで
分かりにくいかかもしれません。

>147 たぢからさん
おお、また発見してもらってありがと。
前のスレタイトルの方が好きだったんですけどね(w
170たぢから:02/09/20 23:13 ID:w/SGYRrX
>池田屋さん
飼育の「回帰」がまだ「お気に入り」に入っていたので、ここに辿りつけました。

私は古参ファン(CD一枚も持っていないライトな部類でしょうが…)なので、
「回帰」から続くこの小説の設定とこのスレタイトルでも合っている気がします。

決して4&5期メンを否定するわけじゃないですが、ハロプロ再編には否定的です。
♪娘。の未来は…

もうすぐスレは消えますが、よろしければ私のヘボ小説をどうぞ。
tv2.2ch.net/test/read.cgi/ainotane/1018278443/
171名無し池:02/09/21 13:06 ID:Q/SmzZRC
雑談れす。
ダメだ。名前部分が気になって仕方ないので「名無し池」に戻します。
なんか重く感じてしまう、、、

>170 たぢからさん
そうか、CD一枚も持ってないのかあ、、、
「さみしい日」なんかは原曲を意識して作った話なんですが、
歌詞とか見るのも妄想を刺激されて楽しいですよ(w
小説の方はちょっと今時間がとれないので、余裕のあるときに
読ませていただきます。でも自分はアンリアルはちょっと苦手、、、
172名無し池:02/09/21 13:07 ID:Q/SmzZRC


     ◇      ◇      ◇

173名無し池:02/09/21 13:08 ID:Q/SmzZRC

「おい、ソニン! おまえも行くか?」

やることもなく事務所の片隅で雑誌を読んでいるソニンに声をかける。
「えっ? どこにですか?」
「より子。だよ。より子。のライブ!」
「あー、あれ今日でしたっけ?」
「…しっかりしろよなー。いくらヒマだからってボケてんじゃねえぞ。
 おまえ、より子。としょっちゅうメールやってるって言ってたじゃねえか」
「だってもう1ヶ月近く何にも無しですから…」
「ったくー、しょうがねえなー。
 もう少し待ってろって。
 今はまだおまえにまで手が回らないんだからさ」
「はあ…」
「…で、行くのか? 行かないのか?」
「あ! 行きます。行きます」
「じゃあ支度しろ。もうすぐ出るから」
「はーい」
「近くだから歩きで行くぞ」
「えーっ!」
「『えー』じゃねえって。ただの素人さんにタクシー呼ぶわけないだろ。
 今のおまえはただの一般人なんだから」
174名無し池:02/09/21 13:09 ID:Q/SmzZRC

会場に到着すると顔見知りの男に挨拶をする。
「よう、きくちさん! 悪いね、わざわざ出張ってきてもらって」
「なあに、たいした距離じゃないさ。クルマなら高速ですぐだし」
そうは言うが、仕事を途中で抜け出して、お台場から数十分かけて
わざわざ出てきてもらったことには感謝してもしきれない。
道だってゴールデンウィークなんだから混んでただろうに…

ソニンときくちさんと俺、3人で会場の後方に陣取ってじっくりと見る。
フリードリンクを後方で配っていて、俺らのことをチラっと見てくヤツもいたが
客層からいってそんなに気にするほどでもなかった。
まあ今の俺ときくちさんとソニンならモーニング娘。のファン以外
そんなに気にするヤツもいないか……
175名無し池:02/09/21 13:12 ID:Q/SmzZRC

やがてより子。のステージも終わり……
人目につかない喫茶店に入って俺ときくちさんは打ち合わせ。

「で、どうだった? 今日のより子。は。
 初めて見ての感想は?」
「ああ…CDよりキたな。
 生で聴いた方が全然いい。
 曲も演奏スタイルもインパクトとしては申し分ないと思う。
 今ああいうスタイルでやってる人もいないから、
 オリジナリティっていう面でも有利ではあると思う」
「じゃあFACTORYへの出演は?」
「問題ないでしょ。
 あれくらい出来ればスカパラにぶつけても平気だと思うよ」
「しかしよりによってスカパラとはなあ。
 他の日はダメだったの?」
「まあね、松浦のスケジュールを考えるとその日か6日の
 どっちかしかなかったからさ。
 6日のFACTORYより、まだスカパラの回の方が観客に受け入れられると思うな」
「で、松浦の方はどうにかなりそう?」
「俺の方は大丈夫だけど、栗原さんの方がね…
 脚本の龍居さんが『ウン』って言わないらしい。
 松浦とはイメージが違い過ぎるって……」
「そりゃあ俺らだって思うもんな。
 より子。と松浦じゃまったく正反対のイメージだって…」
176名無し池:02/09/21 13:13 ID:Q/SmzZRC
俺はボスがなんでも利用する気でいるんなら、俺もボスを利用してやろうと心に決めた。
しかもボスみたいにすり減らす利用法ではなく、相乗効果を生み出す利用をしようと誓っていた。
その対象が「ぶっ殺したい」とまで言った松浦だったのは皮肉だったが、
知名度・話題性ともにUFAでは松浦しか考える余地がなかった…

たまたま以前から進めていたより子。の母親の手記が完成したのが今回の企画の
きっかけになった。
俺はユウキ事件が一段落すると、さっそくこの話をドラマプロデューサーの
栗原さんのところに持ち込んだ。
これでドラマを作って欲しいと。
きくちさんを交えて検討して今回の計画が出来上がった。
177名無し池:02/09/21 13:14 ID:Q/SmzZRC

・より子。というアーティストを世の中に知らしめる
・それに附随してCDや書籍等の売り上げ増を狙う
・話題作りのため松浦をドラマの主人公に起用する
・それと連動してより子。にFACTORYで歌わせる
・時間の都合をつけて松浦も何らかの形で歌わせる
・最終的には和田・きくち・栗原、それぞれにメリットを生み出す。

大筋はこんなところで3人がそれぞれのコネクションを使って動き始めたのだ。
そして今日、より子。のライブを隠れ蓑にこっそりと打ち合わせをしている。
178名無し池:02/09/21 13:15 ID:Q/SmzZRC

「でも、押し切る気でいるんだろ? 栗原さんは」
「もちろん。ここで松浦をとれなきゃ他の企画だって全部無意味だろ?」
「あんま松浦はスケジュール空いてないからなあ、決めるのはそろそろ限界だぞ…」
「ああ、分かってるよ…でも、どうせ栗原さんのことだ、
 龍居さんがOK出す前に、もうおたくの会長のところに持ち込んでるさ」
「そうかもな…
 …で、きくちさんの方は?」
「俺の方は順調。
 ちょうど松浦の特番作ってる最中だし、安倍のFACTORYも大成功だったから
 こっちは案外簡単にOK出るんじゃないの?」
「まあ、じゃあ5月下旬を目処ってことで……」
「そうね、そこいら辺までにはある程度確定させておきたいね」
179名無し池:02/09/21 13:17 ID:Q/SmzZRC

2,3細かい点を詰めたあと、きくちさんは尋ねてきた。
「で、福田の方はどうすんの?
 あれ以来特に何にもしてないけど」
「いや、今は何にもしなくていいでしょ。
 本人にやる気が戻ればそれで上出来、上出来。
 それに今戻ってくるって言われても、手ぇいっぱいでどうにもできんよ」
「まあね……」
「あいつの誕生日くらいまでに結論が出ればいいさ。
 ちょうど18だから仕事もやりやすくなるし」
「福田の誕生日って?」
「ああ、12月の半ばくらい」
「よく覚えてんな」
「あー、まああいつの誕生日はいろいろあったからねえ。
 デビュー曲レコーディングしたのもあいつの誕生日だったんだよな」
「へぇー」
「…とにかくその頃までにあいつが覚悟を決めてくれれば、それでいいさ。
 ただね…今回のより子。のことがな……」
「何?」
180名無し池:02/09/21 13:20 ID:Q/SmzZRC
「いやさあ、今回より子。のことは手段を選ばずって感じで売り出すわけじゃん?
 あいつがそれを見て反感感じなきゃいいんだけどなって思うわけよ」
「ああなるほど」
「あいつはほとんどのことは我慢できるけど、歌を冒涜されるのだけは
 我慢できないやつだからな……」
それを聞いたきくちさんが軽く笑う。
「ハハ…、じゃあ今のつんくには相当御立腹だろ?」
「さあ、どうなんだろうなあ?
 あいつなりの基準点があるんだろうけど、俺にもよう分からん…」
「まあ歌いたい歌を歌えるのが一番さ。
 少なくともより子。は自分で曲作って、自分で歌ってるわけだから
 モーニング娘。ほどひどい状況にはなってないだろ?
 むしろ福田が気にするとしたらそっちじゃないの?
 矢口なんて痛々しすぎるぞ……」
「……つんくもな、つらいところだよな。
 いつまで言いなりになって曲作ってるんだか……」
きくちさんも今のモーニング娘。の楽曲には批判的だからな……
まあ歌番組作ってりゃあの人数で口パクされてパートぶつ切りじゃ
文句言いたくなるのも仕方ないか……
181名無し池:02/09/21 13:22 ID:Q/SmzZRC

「そういや明後日、市井のライブ見に行ってやるんだよ」
「へえ、どこでやんの? 東京?」
「ああ。赤坂BLITZ」
「好きだねえきくちさんも…わざわざTBSまで出張ですか?」
「まあ吉澤も出てるからな。あいつ昔、HEY! HEY! HEY!手伝ってたことあるからな」
「ふーん…俺オトコに興味ねえもん」
「俺もあるわけないだろ!
 …それにしてもさ、市井ももう少しどうにかしてやれないの?
 こないだうちの番組来たけど、ああいうやっつけの曲じゃなくて、
 もう少し作りこんだモノとか提供してもらえないんかね?」
182名無し池:02/09/21 13:22 ID:Q/SmzZRC
「…市井は難しいだろうなあ、今のままじゃ。
 市井にカネかけてもウチには利益ほとんど入ってこないから
 ボスも乗り気じゃないしなあ…
 市井にゃ悪いけど、俺には何にも……
 一緒にカラオケ行って気晴らしに付き合うくらいさ」
「…こないだHEY! HEY! HEY!の収録で見たけど、かなり良くなっては
 きてるんだけどなあ…
 ただ声に力がないな、やっぱり。声質が素直すぎるよ…
 どうせだったら誰かと組ませてツインボーカルでやった方が
 あいつにとってもいいと思うんだけど……」
「そりゃ、きくちさんが女の子グループ好きなだけでしょ?」
「ハハ…、そりゃあ否定できんわ」
183名無し池:02/09/21 13:23 ID:Q/SmzZRC

その後、きくちさんと別れて事務所に戻る。
事務所では先に戻ってきてたソニンが行くときと変わらず
部屋の隅の方で雑誌を読んでいた。
スケジュール表は真っ白で何にも目標なくただ毎日レッスンを続けるだけ。
顔にも精気がなくなってきたかな…

しかし、ここが正念場。
ここが踏ん張りどころ。
もう少し待ってろよ、ソニン。
次はお前の番だからな!
184名無し池:02/09/21 13:25 ID:Q/SmzZRC

事務所のテレビをつければゴールデンウィークのUターンラッシュの
渋滞情報が流れている。
渋滞50キロ? 正月にEE JUMPの仕事のために東名高速を1日がかりで
戻ってきたことを思い出した。
ああ…もうユウキの復帰はないんだよな……

それにしても…もう俺、何週間休みとってねえんだ?
キャバクラのおねえちゃんとでもどっかに遊びに行きてえよなあ……

…あ、ヤバっ…
俺も懲りてねえなあ、キャバクラには気をつけないと……
185たぢから:02/09/21 23:18 ID:WouD/uaw
>名無し池さん
説明不足でした。CDは一枚も持っていませんが、レンタル→MDコピーで、
1st-3rdアルバム+α(黄色5etc)は持っています。
勿論、「さみしい日」も知ってますから、妄想度がアップしましたよ。

名無し池さんはアンリアルはちょっと苦手ですか。
まあ、その辺りは人それぞれってことで。
私はリアル・アンリアル問わず読みますが、濃いレズは避けます。
リアルものは、地方に住んでいて番組等材料が少ないので書けないですね。
(ハロモニは30分だし、なっちFACTORYなどについては羊で知りました。)
それ以上に筆力の問題がありますが…

もうすぐ後藤&保田の時間差脱退がありますが、残った旧メンはどうなるんでしょうね?
小説内でも書かれていますが、今でも矢口は痛々しいと思います。
また飯田はタンポポを追われポジションが余計分からなくなるし、
なっち(個人的に一推し)はいつまで娘の代名詞として縛られ続けるのか…
ついでに、シングル発売ごとに下降線を辿る市井inCCの次の手は…
福田帰ってこ〜いっ!

あまり小説に対するレスじゃないですが、後藤までの9人が好きなので…
これじゃライトなファンじゃないかもしれないですね。
186名無し池:02/09/22 23:30 ID:+6Xqpal9
雑談れす。

「絶対戻ってくるんだからね」

「おう、戻ってくるよ」

そう言って涙で別れた二人がようやく今日同じステージに立った。
最後の最後に、本当にギリギリに約束が果たされて良かった。
これで後藤の心残りなことはなくなったのだろうか?
と思いつつも吉澤や加護のショックを考えると、喜んでばかりも
いられない、、、
187名無し池:02/09/22 23:33 ID:+6Xqpal9
飯田と矢口のタンポポが明日終わりを迎えます、、、
もちろん加護もですが。

最後のOH-SO-ROで飯田と矢口が残した『タンポポの誓い』を
石川はきっと必死に守っていく。
そしてそれを飯田と矢口も温かく見守っていくだろう。
飯田と矢口は一人残される石川のつらさを充分わかっている。
それはかつて石川と加護を受け入れなければならなかった
自分達の姿にもダブることだと思う。
だから決して二人は新しいタンポポを否定することはないだろう。
新しいタンポポを応援していくだろう。

しかし…二人が守ってきたタンポポを一方的に取り上げて
メンバーを変更したことは忘れるべきではない。
二人がタンポポというユニットにかけた思いなんかどうでもいい、
そう考えられるなら話は別だけど、自分はそう思うことはできない、、、
188名無し池:02/09/22 23:34 ID:+6Xqpal9
「タンポポの旧譜購入運動」、これを批判する文章をよく見かけるが
批判することは果たして正しいのか?と疑問に思う。
残された石川とそんな石川を気にかけている飯田・矢口の気持ちはわかるけど、
それを理由に批判していいのだろうか?
飯田・矢口は石川を気にかけながらも、自分たちがタンポポを失ったことの大きさ、
悲しさを抱えながらこれからの活動をしていかなくてはならない。
これと同じでヲタの中にもそれぞれに複雑な感情が入り交じっている。
「旧符購入運動」に賛同する人もいれば反対する人もいる。
「運動」そのものを飯田・矢口の石川への気持ちを楯にして
批判するのはどうなんだろう、、、
批判してるだけだったら「新譜購入運動」でも展開すればいい。
それぞれの思い、思惑、気持ちが複雑に交差しあってることなのだから、
批判をする前に自分が動けばいい。ただそれだけのことだ。
少なくとも「旧符購入運動」をしている人たちは自分から動いている。
自分の意思で買おうとしている。
建て前だけの批判はうんざりだ、、、
…好きだから『買う』、嫌いだから『買わない』、それだけのことなんだけどね。
189名無し池:02/09/22 23:36 ID:+6Xqpal9
えらそうなこと書きましたが、自分は旧譜も新譜も購入しません。
自分の中で『All of タンポポ』で一区切りつけました。
最後にきちんとしたコンセプトを持って作り上げたこのアルバムで
タンポポを封印しようと思っています。
そして明日黄色いサイリウムを持ってタンポポに最後のお別れを
してこようと思います。
…一マジヲタの戯れ言でした、、、不快になったら申し訳、、、

そんなわけで明日は更新できません。
モ板は祭になると思われますので保全してくれる方が
いればよろしくお願いします。
dat落ちしたらそれまでということで、、、

>たぢからさん
小説書いてる時点で十分ライトなファンじゃありませんって(w
190名無し池:02/09/22 23:37 ID:+6Xqpal9


     ◇      ◇      ◇

191名無し池:02/09/22 23:40 ID:+6Xqpal9

5月下旬、俺は再びボスの部屋を訪れる。

5月中、俺ときくちさんと栗原さんが動いた結果、
まずまずの成果を得ることができた。
2人には感謝することしきりだ……

・より子。をモデルにしたドラマをお盆前のゴールデンタイムに放送
・主演は松浦で内定
・FACTORYにより子。出演決定。スカパーとフジの深夜枠でTV放映
・同回のFACTORYのオープニングアクトに松浦起用の決定
・FACTORYで歌ったより子。の映像をドラマのエンディングに採用
・ドラマと同日のニッポン放送オールナイトニッポン.comのパーソナリティーに
 より子。の起用が内定
これは後から知ったことだったが、きくちさんがめちゃイケの片岡さんに頼んで
エンディングでより子。の曲を流すことも決定していた。
192名無し池:02/09/22 23:41 ID:+6Xqpal9

「会長、お呼びと伺いましたが…」
「まあ、そこ座れや」
会長の言う通りにソファに腰をおろす。
「まあ、今回はいろいろと動いたみたいだが…」
「ええ。自分のできる限り動かさせてもらいました」
「ほぉ… それで? これで成果が出ると思ってるのか?
 こんなんでより子。に成果が出るかねえ……」
「ええ。出ると思いますよ」
「俺には松浦が得したようにしか見えないんだけどな」

かかった…かかりやがった。
あんたならそう見ると思ってたよ。
ゴールデン枠の主演に目が眩んだな……
松浦はあくまでもおまけなのに……
193名無し池:02/09/22 23:42 ID:+6Xqpal9
そんなことはおくびにも出さず…
「松浦が得するなら、それはそれで構わないと思いますが。
 結局はグループの中で利益が生まれればいいわけですから。
 それで少しでも自分の借金の埋め合わせになれば言うことはありません」
「そうか…松浦で稼げりゃ俺は言うことないな」
会長は上機嫌だ。
…そりゃそうだ。松浦は市井と違って利益率いいからな……
まあ、今はそう思わせておけばいい。
俺の結果が出るのはもっと先の話だ……
194名無し池:02/09/22 23:44 ID:+6Xqpal9

会長は上機嫌で口が滑らかだった。
「ちょうどいい。お前にも教えておいてやる。
 …後藤は辞めさすことにしたから」
「は? 引退ですか?」
「違う、違う。モーニング娘。から辞めさすから」
「後藤をですか?」
「ああ」
「…しかし、なんで今さら?
 タイミングとしてはもう遅いような気がしますが。
 やるなら松浦を売り出す前の方が効果的だったかと……」
「俺も後藤をソロにさせる気なんてなかったさ。
 まあでも例のユウキの件以来な…
 もう後藤のことで揉めるのは面倒なんで、どうせなら
 後藤をソロにしてやつらに全部やっちまうことにした。
 それで今後はモーニング娘。には口出させんってことにして…」
195名無し池:02/09/22 23:45 ID:+6Xqpal9
「…そうなんですか? やつらがそれで引っ込むとも思えませんが…」
「まあ一時しのぎでもいいさ。やつらには充分くれてやったんだ、
 しばらくは文句も言うまい。
 やつらも喜んで後藤ソロでミュージカルの計画立ててきやがった。
 俺らのミュージカル見て、ぼろ儲けできるってことに気付いたらしいぞ。
 バカだなあ、あいつらも」
「はあ…」
「これで俺の思い通りに出来るってことだ…」
ボスは含み笑いをしている…
相変わらずムナクソ悪いやつだ。
196名無し池:02/09/22 23:46 ID:+6Xqpal9

「ああ、ついでにな、保田も以前から進退伺い出てたんで、
 これを機に辞めさす方向でいくことにした」
「えっ?」
「やつには中澤のサポートに回ってもらおうと思う」

はあ? 何言ってんだ?
ここで保田を引き止めないでどうすんだよ。
後藤が抜けるってのに、保田まで抜けさせたら
曲の構成が成り立たねえじゃねえか。
残った3人でどうしろってんだ、ボスは?
保田が抜けちまったらホントにただのアイドルグループじゃねえか。
それに中澤にサポートなんていらないだろうが。
もしいるとしたって矢口や安倍みたいに喋れる連中じゃなきゃ
中澤のサポート役なんて務まらねえって。
保田は歌でサポートしてなんぼのやつだろうが……
197名無し池:02/09/22 23:47 ID:+6Xqpal9

「つんくはもう知っているんですか?」
「ああ、もちろん」
「何か言ってましたか?」
「別に特にな……『そりゃ大変ですわー』って言って、笑ってたぞ」
「そうですか…、笑ってましたか……」
まあつんくはもう笑うしかないだろう。
もうあいつに相談事を持ちかけるモーニング娘。のメンバーなんて誰もいない。
あいつらの間にはもうビジネスライクな関係しか存在してない。
今回のことも会長から突然聞かされたはずだ。
あいつにもちょっと話を聞いてみよう……
198名無し池:02/09/22 23:48 ID:+6Xqpal9
ボスの部屋をあとにするとそのままつんくの詰めているスタジオに向かった。

「つんく、ちょっといいか?」
「あー和田さん、何ですの?」
「次のソニンの曲なんだけど……」
「ああ決まったんですか、ソニンの復帰は?」
「いや、まだだけど、どうせなら早めに頼んでおこうと思ってな」
「そうですかー。まあ曲はいっぱい出来てるんで、
 適当に好きなの持ってってくださいよ」
つんくはまるでコンビニの弁当のように気軽な感じで言う。
199名無し池:02/09/22 23:50 ID:+6Xqpal9
「つんくよー、俺が欲しいのはそんな風に適当に扱わてる楽曲じゃないんだけどな。
 ちゃんとお前が歌い手を意識して作った曲が欲しいんだけどな…」
「意識してますよー、ちゃんと。
 誰が歌ってもそれなりのものになるように心掛けてますから」
つんくはあくまでも事務的に話す。
「じゃあ、今度の曲はソニンにしか歌えないような曲を作ってくれ。
 ソニンが歌う意味のある曲を作ってくれ」
「そんなん無理ですよー。
 スケジュールびっしりなんですから。
 いくら俺でも作れる曲数は限度がありますさかい」
「一部は他のやつに作らせればいいだろうが」
200名無し池:02/09/22 23:51 ID:+6Xqpal9
「じゃあ、新堂にでもソニンのことを考えて作るように言っときますわ。
 それなら和田さんもOKでしょ?
 最近じゃ新堂の方が評判いいんで、ちょっとジェラシー…なんてね」
「…………」
「あれ? おもろなかった?」
「……いや、別にいい。よく考えたらお前に頼む必要なんてなかった」
「何言うてまんの? ソニンでしょ、俺がプロデュースしないでどないすんですか?」
「だから、ソニンだから関係ないんだろ、お前には。
 もうEE JUMPじゃないんだから。
 俺はお前にソニンのプロデュースを依頼した覚えはないぞ」
「はあ? 和田さん、何言うてるかワケ分かりませんわ。
 そんな怒らんといてくださいよ」
「…………」
201名無し池:02/09/22 23:52 ID:+6Xqpal9

二人っきりのスタジオに沈黙が流れる。
意味もなく楽譜をめくるつんく…
興味のないつんくの楽曲リストを見る俺…
俺はタバコに火をつけて、大きく煙を吐き出した。

「…お前もつまらないヤツになっちまったな……」
「そりゃ人間変わりますよ、5年や10年たてば…
 人間は今生きてる環境に適応してくんです。
 逆らったって無駄ですよ……
 流されるままでエエじゃないですか?」
「…………
 ……後藤と保田が辞めるんだってな」
「ああ…聞きましたか?」
「…それも流すままでいいのか?」
「そんなこと言うたかて、俺にはどうにもなりませんよ。
 そんなこと和田さんがいちばん良う知ってることじゃないですか……」
「…………」
202名無し池:02/09/22 23:53 ID:+6Xqpal9
「中澤のときだって、市井のときだって、自分はあとから聞かされるだけですわ。
 真っ先に俺のところに言ってきたのは福田だけじゃないですか……
 俺が聞くときには『脱退します。これは確定事項です』みたいなもんでしょ。
 後藤だって保田だって俺には辞める理由なんて全然知らされてませんよ」
「……そんな他人のせいばかりみたいに言うな。
 少なからずお前にも問題があるんだから。
 あいつらから相談されなくなったのはお前自身の問題だろうが。
 お前に信頼感を抱かなくなった理由があるからだろうが」
「…………」
「…けっきょくはあれだ、福田や石黒の言ってた通りになったってことだ。
 『このままじゃ音楽を嫌いになる』『この絶頂期に辞めるのはわたしにしか
 理解できないかもしれない』っていうな…
 あいつらが言ってたのはお前の未来予測そのものだったわけだ……
 適当な音楽作って、メンバーから段々信用されなくなって、
 『あの頃は良かった』って振り返る……、
 そんな存在になっちまったんだよ、お前は」
203名無し池:02/09/22 23:55 ID:+6Xqpal9
「……別に信用なんてされんでもええですよ。
 覚悟を決めたときにそんなもん捨て去りましたわ」
「ああ。俺もお前が信用されてなかろうが憎まれていようが
 そんなことはどうでもいい。
 ただ、そんな状況でもお前のプロデュースから離れられない、
 お前に頼るしかないあいつらは悲惨だな……」
「…………」
俺は一つため息をついた。
「ハァ……
 こんなことじゃ例え福田が帰って来たってお前には任せらんないよ……」
「…え? 福田が帰ってくるんですか?」
「例えの話だ、例えの。
 でも今のお前を見たら絶対に復帰しようとは思わないだろうな」

少しは福田の話を出せばショックを受けるかと思って話してみた。
過去最高のつんく節の再現者である福田に見放されてるって知ったら
こいつはどう思うだろう……
少しは考え直すきっかけになるのだろうか……
204名無し池:02/09/22 23:56 ID:+6Xqpal9

「……今の俺の音楽そんなにひどいですかね?」
「さあ? 人それぞれだろ?
 商業的に音楽をやってるって意味じゃお前は最高のプロなんじゃねえの?
 感情もなにも無視して作り上げるお前の商売根性は立派だよ……
 別に俺はそれを否定するつもりもない。

 お前が曲を作れば、ハロープロジェクトのメンバー達が淡々と歌っていく…
 そんな光景がこれからもくり返されるだけさ。
 お前がそれで良ければ、それを続ければいい。
 今の俺はお前にあれこれ言える立場でもないしな、好きにすればいい」

俺は言いたいことだけ言い残すとその場を離れた。
つんくはその後、別れるまで無言だった。
俺の言葉に怒ったのか、無視することに決めたのか、
それともつんくの中で何か考えるものがあったのか、
それは分からない……
205名無し池:02/09/22 23:57 ID:+6Xqpal9

つんくよ……、今のお前は楽しいのかい?

楽しそうにメンバーを選んでた頃のお前や
本気でメンバーの卒業を悲しんでた頃のお前はどこにいっちまった?
他人に提供するなんてあり得ないって言ってたほど歌を大切にしていた
その気持ちはどこにいっちまったんだ?

俺は大阪にいた頃の脳天気な明るいお前がもう一回見たいよ。
大阪で上京を夢見てた頃のお前が……

206たぢから:02/09/23 00:26 ID:hK4gC8if
>池田屋さん
―――小説書いてる時点で十分ライトなファンじゃありませんって(w

あ゛… 言われてみればそうですね。
っていうか2ちゃんねらー羊住民という時点でライトじゃないすね。

明日後藤ラスコンに行かれるのですか。死ぬほどはじけてきてください!
私はTFP2で我慢しますわ。
207::02/09/23 13:15 ID:mlP7XYrb
age
208 :02/09/23 13:23 ID:C7WQfBR6
つんくと和田が話す時は関西弁だろ
209名無し池:02/09/24 23:32 ID:VFl/eOXr
雑談れす。
ああ、なんか微妙なレスだなあ(w
和田マネってつんくと話すとき関西弁でしたっけ?
どうも標準語のような記憶があるのですが、、、
中澤と話すときは標準語ですよね?
記憶違いだったら申し訳。

タンポポ祭は各所で感想が上がっているようですね。
あの場での感想はそれらに託すとして、、、
あのタンポポ祭が成功したのはもちろん会場に詰め掛けた
ファンの力であるのは当然なんだけど、
飯田と矢口(もちろん石川と加護もだけど…)が残してきたものの大きさが
表れた結果ではないかと。
特にここ再編が発表されてから1ヶ月半、ラジオで残してきたものは大きかった。
タンポポというユニットをどれだけ大切にしてきたか、
タンポポの歌をどれだけ大切にしてきたか、
そういった二人の気持ちがファンの心に届いたからではないかと、、、

後藤は最後まで後藤らしかった。
後藤だからこそああいう終わり方もありなのだと思う。
ただ欲を言えば、最後は後藤がやりたいと言っていた
『I WISH』か『ダディ』が見たかったかな、、、
210名無し池:02/09/24 23:34 ID:VFl/eOXr


「ののー、ちょっと待ってー!!」

矢口と圭ちゃんと別れたあと、スタジオの中に消えていった辻を
わたしは必死に追いかけていた。
かろうじて見える後ろ姿……
辻は2階・3階と駆け上がっていく。
4階まで来ると黒いポニーテールが扉の中に吸い込まれていくのが見えた。
今日は使われていないダンスレッスンの部屋。
薄暗いまま、辻は照明もつけず部屋に飛び込んでいった……
211名無し池:02/09/24 23:36 ID:VFl/eOXr

わたしはようやく部屋の前までたどり着く。
心臓がバクバクいってて息は乱れたまま…

「ハァハァ……のの、入るよー……」

入口にある照明のスイッチを押した。
辻は……
辻は、わたしたち3人がスタジオの外で見かけたときと同じように
部屋の片隅に膝を抱えて座り込んでいた。

「のの……」

それ以上声が出てこなかった。
しょんぼりしてうつむいている姿を見ると
なんて声をかけていいのか咄嗟に思い浮かばなかった。
212名無し池:02/09/24 23:36 ID:VFl/eOXr

しばらく立ち尽くしてしまった後、
辻の側に行ってわたしはしゃがみ込む。
辻の組んでいる手をはずして、その左手をわたしの両手で
そっとつつんであげた。

やがて辻はようやく顔をあげる。
顔をあげてわたしの方を見つめた。
不安そうな顔、泣きそうな顔、なんとも言い様のない表情だった。

「……のの……」

何も言わない辻。
わたしを見続けたまま……
213名無し池:02/09/24 23:37 ID:VFl/eOXr

「のの……わたしたちの話、聞いちゃったんだね?」

辻が力なくうなずく。

「さみしい?」

また辻がうなずく。

「そっかー…、わたしもとってもさみしいよ。
 仲間がまたいなくなるんだもん」

すると、辻はわたしに握られていた手をすり抜いて
また自分の手を組んでしまった。
214名無し池:02/09/24 23:38 ID:VFl/eOXr

「…のの?」

「……安倍さんの仲間にののは入ってないもん…」

「何言ってるの、のの?
 みんな仲間でしょ?
 みんなモーニング娘。のメンバーでしょ?」

「……さっき言ってたもん…
 矢口さんと飯田さんと保田さんが仲間だって……」

辻はそんな前から聞いてたんだ。
きっと圭ちゃんのあとをつけてきたのかもしれないな…
圭ちゃんのあとをついてけばわたしたちがいるとでも思ったのだろうか…
215名無し池:02/09/24 23:39 ID:VFl/eOXr

「違うの、のの。
 それはね、そういう意味じゃないの。
 なんていうのかな……」

言葉に困った……
辻はどう言えば納得してくれる?
なんて言えば仲間だって分かってもらえる?
このままじゃ辻は心を閉ざしたまま……
また爪を全部かじってしまうなんてことになりかねない。
わたしは思いつくまま喋り出す。

「…のの、前に話してくれたことあったよね。
 4期のメンバーが入ってきたときに、梨華ちゃんとよっすぃーと
 加護ちゃんと『これから4人で助け合っていこう』って誓い合ったって。
 そのあと4人はちゃんと助け合って、ここまできたんだよね?
 助け合ったから4人とも頑張れたんだよね?
 ののはその最初に誓い合ったことを忘れちゃった?
 ののは約束を守らなかった?」

辻は無言で首を振る。
216名無し池:02/09/24 23:41 ID:VFl/eOXr

「…じゃあさ…その誓い合った4人だけを仲間だと思う?
 わたしたち年上メンバーや5期メンバーは仲間じゃないって思う?」

また首を振る辻。

「でも、誓い合った4人はなんとなく違う感じがするでしょ?
 どことなく4人で一つって感じがするでしょ?」

「……うん」

今度は声に出して辻は答えた。
217名無し池:02/09/24 23:42 ID:VFl/eOXr

「わたしたちもね、昔そうやって誓い合ったんだ。
 一番最初は5人で…そして次は8人で……
 その日のことを忘れないでいようって、そう誓い合ったことがあるの。
 だからね、ののにも分かってほしい。
 わたしたちの中にある特別な思いを……

 ののたちはまだ全員残ってるから、これからいくらでも思い出を作れる…
 でもわたしたちの誓い合ったメンバーはもう4人だけ。
 半分になっちゃったの。
 これから圭ちゃんがいなくなったら3人になっちゃうの……
 なっちと矢口とカオリだけになっちゃうの……」

自分で話していて悲しくなってきてしまった。
ののを慰めるつもりが、逆に自分が落ち込んできてしまった。
自分で言ったセリフを反芻してさらに落ち込む…
218名無し池:02/09/24 23:43 ID:VFl/eOXr

3人になっちゃうんだ……
圭ちゃんが抜けて12人になったモーニング娘。……
わたしたち3人と9人の追加メンバーたち……
ハァ……やっぱ落ち込むよなあ……

すると、わたしの方にするすると手が伸びてくる。
その手はわたしの手をそっと握ってくれた。

「……のの。なっちのこと慰めてくれるんだ?」

「さっきのお返し」

「…ありがと、のの。
 なっちのへたくそな説明でも分かってくれたんだ…」

「……うん」
219名無し池:02/09/24 23:44 ID:VFl/eOXr

「…圭ちゃんの卒業はさみしいけどさ、
 まだこれから一緒にいられる時間も充分あるんだからさ、
 思い出いっぱい作っていこうよ。
 圭ちゃんもきっとそれを喜ぶよ。
 みんなでわいわいがやがや思い出を作るのがさ…」

「…そですね」

良かった……
辻に分かってもらえて。
最初どうしようかと思ったけど、こうしてわたしまで慰めてもらって…
これじゃあ、お姉さん失格だな……
220名無し池:02/09/24 23:45 ID:VFl/eOXr

ちょっとはお姉さんらしくしようと思って、
今までめったに取れなかったこんな時間だからこそ、辻に思いきって聞いてみた。

「…ねえ、のの?
 今のモーニング娘。のお仕事つらい?」
「ちょっとだけ…」
「どんなことがつらい?」
「…………」
「なっちに教えてよ」
「……どんどんバカになっていくこと」
「えっ?」
「学校行っても、全然分かんないの…
 先生がなに喋ってるか意味も分かんなかった。
 教科書開いても暗号みたいにしか見えないし…
 回りのクラスメイトは同じ教科書を普通に読んでるのに
 ののはノートにいたずら書きしてるだけ…」
221名無し池:02/09/24 23:47 ID:VFl/eOXr
辻の言葉に心の奥に刻まれている古傷が痛んだ。
そう、かつてわたしは似たような言葉を聞いたことがある。
あのときはみんな自分達のことで精一杯で、回りのことを見る余裕なんて
ほとんどなくて、その悩みに気付いてあげることができなかった。
誰一人その悩みに気付かずにあの日を迎えてしまった。
そして今わたしたちは同じ過ちを繰り返そうとしていたんだ。
辻の無邪気さと奔放さの裏にはそんなことがあったんだ…

「回りのクラスメイトに何か言われたの?
 勉強できないからってバカにされたの?」

もしそうだったら許せない!
勉強なんて出来なくったって、辻は立派に仕事してる!
他の中学生じゃできないほど頑張ってる!
222名無し池:02/09/24 23:48 ID:VFl/eOXr
「ううん、バカにしてくる人なんて誰もいないよ」
「ホントに?」
「うん…」

ずーっと気になっていた辻がとった今日の行動…
わたしはその一番の疑問点を尋ねる。

「……じゃあ…なんでののは今日練習に来たの?
 今日はお休みだったでしょ?
 最後まで学校行くことになってたでしょ?」
「…………」
「言っていいんだよ、のの」
「…………」
「なっちに話してごらん。誰にも言わないから」
「……みんな、辻に気を使うんだもん。
 どうせだったらバカにしてくれた方が良かったのに…
 みんな『辻さんだからしょうがないね』って感じで見てて…
 ここに来ればそんな風に辻のことを見る人いないから…」

まったく思いもしなかった辻の言葉だった。
『バカにされた方がいい』だなんて…
辻はクラスの中で特別扱いされてるのがきっといやなんだね。
辻は学校好きだったもんね。
223名無し池:02/09/24 23:49 ID:VFl/eOXr

「そっかー、そうだね。
 のののことを特別に見る人なんてここにはいないもんね。
 ……だけど、…ここでわたしたちのところに来ちゃったら
 ますます特別扱いされちゃうよ。
 ののの好きだった学校の友達も離れていっちゃうよ」
「でも……」

そう言って辻はまた爪を噛みはじめる。
わたしは辻の手を優しく取った。
224名無し池:02/09/24 23:50 ID:VFl/eOXr

「のの、特別扱いされるのはしょうがない……
 だってわたしたちモーニング娘。なんだもん。
 …でもさ、そんな中にも前と変わらない付き合いしてくれる友達いるでしょ?」
「うん…なっちゃんとか…」
「じゃあさ、そのなっちゃんを大切にしなきゃだめだよ。
 前と変わらない友達でいてくれるなっちゃんを大切にしなきゃ…
 わたしたちはさ、ほとんど友達なんて作れないんだから……
 だから学校でののが来るのを待ってるなっちゃんを裏切っちゃダメだよ…」
「……うん……」
「勉強のことはさ、なっちもバカだからよく分かんないけど、
 なっちは中学校3年間ちゃんと通ってたから、今になってその大切さ
 っていうのがすごいよく分かる……
 行けるときに行っておいた方がいいよ……」
「……はい」
225名無し池:02/09/24 23:51 ID:VFl/eOXr
辻が少しでも納得してくれたのを見届けると、
わたしは握っていた辻の手を裏っ返して爪を見た。
「ののの爪、またボロボロになっちゃったね…」
辻は慌てて手を引っ込めようとする。
でもわたしは辻の手を離さなかった。
「のの、今度爪を噛みたくなったらなっちの手を握ればいい。
 じゃないといつまでたっても治らないよ……」
「でも…」
辻の手をギュって強く握りしめる。
「なっちは気にしないから。
 いつでも好きなときに握ればいい。
 不安になったら握ればいい。
 ね? のの」
辻がうれしそうにコクンとうなずいた。
226名無し池:02/09/24 23:54 ID:VFl/eOXr

「今日はさ、もう帰ろう。なっちも練習切り上げて帰るわ。
 ののは元々お休みだったし、なっちもいろいろありすぎて疲れちゃったよ……」
「うん」
「なんか食べに行こっか? のの、何食べたい?」
辻の口がデレーっと広がった。
「んーとね、何がいいかなあ」

そうそう、辻はそうやって悩んでない顔が一番だよ。
その顔がわたしたちを癒してくれるんだから。
特に今日みたいに大変だった日はなおさら。
きっと帰ればまた落ち込むんだろうけど、
それまでは辻の食べてる笑顔で癒させてよ。

ね? いいでしょ、のの?


227名無し池:02/09/27 00:47 ID:nh4bxi1m
雑談れす。
矢口と同様に23日で気が抜けて風邪ひきました。
ちょっと気力が萎えがちです、、、

今日のエアモニ。安倍は『21世紀』をフルで流しました。
そして飯田も今夜も交信中の中で『21世紀』をかけました。
なんだかんだ言っても二人は離れられない運命ですね。
この大事な時期に同じ曲を選んでくるあたり、、、
228名無し池:02/09/27 00:48 ID:nh4bxi1m


     ◇      ◇      ◇

229名無し池:02/09/27 00:49 ID:nh4bxi1m
圭ちゃんの卒業を聞かされてから1週間近くが経ち、
そんな中でもわたしたちのミュージカルは滞りなく続いていて、
日常の忙しさの中で、ふとそんな重大なことも忘れそうになったりする。
あれからわたしたち旧メンバー4人も偶然聞いてしまった辻も、
そのことを口にすることはなく、ただただ時間が流れていった。
きっとわたしたちの日常はこうして過ぎていってしまうのだろう。
その時間が貴重なものだったことに気付くのは、それを失ってからなんだろう……

今度出す新曲。
圭ちゃんの話を聞いた翌日にデモテープをもらった。
移動中のバスの中で一つのMDを矢口といっしょに聴く。
矢口と二人、思いっきり興奮した。
うれしさのあまり泣きそうになったのを二人して騒いでごまかした。
こんな曲、何年ぶりなんだろう。
歌詞に共感できたのなんていつ以来だろう。
『Memory 青春の光』や『ふるさと』みたいな曲はもう二度と歌えないと思っていた。
もう歌うことはないんだと諦めていた。
だからわたしはこの曲と出会えたことがうれしかった。
それと同時につんくさんの心境の変化にもびっくりしていた……
230名無し池:02/09/27 00:50 ID:nh4bxi1m

そして今日、ついにレコーディング。
レコーディングブースに入ってつんくさんが指示を出すのを待ちかまえる。

「あれ? つんくさん、どうしたんですか?」

つんくさんがレコーディングブースの中に入ってきて
わたしの後ろにある椅子に腰かけた。

「今日はな、中でやろうと思う」
「めずらしいですね。最近ずっと外だったのに…」

つんくさんはハピサマのレコーディングの頃までは
わたしたちの近くに身をおいて、細かい歌唱方や
歌い回しのアドバイスをしてくれていた。
でもそれはいつしかやらなくなり、レコーディングブースの外で
事務的に機械をいじくるだけの作業をつんくさんはするようになった…
つんくさんが機械をいじくってる姿を見て、つまらなそうだなあって
思ったのはいつからだったろう。
最初の頃はあんなに楽しそうにレコーディング作業に臨んでいたつんくさん……
いつからこんな『お父さん』みたいな人になっちゃったんだろう……
231名無し池:02/09/27 00:51 ID:nh4bxi1m

「今日は本気で録るから。安倍もそのつもりでな」

そう言うとつんくさんはわたしにマイクのスイッチを切るように指示してきた。
わたしは言われた通りにスイッチを切る。
これで外にはわたしたちの会話は聞こえない。

「…なんですか?」
「おまえには、このレコーディングに入る前に言っておきたいことがある…」
「…はい?」
「ちょっと違うな……おまえだからこそ言うんや。
 おまえにしか言われへんことがあるんよ…
 ちょっといろいろと考えさせられることがあってなあ……」

変なつんくさん。なんでいきなりこんなこと言い出すんだろう?
つんくさんのいつもと違う雰囲気に、わたしは何を言われるのか心配……
232名無し池:02/09/27 00:53 ID:nh4bxi1m

「今度の曲、うれしいか?」
「はい、めちゃくちゃ!」
「そうかー……、なんでうれしいん?」
「そりゃあ、だってこんなしっとりとした曲歌えるの久しぶりだし、
 歌詞にも共感できるところがあるし、わたしの歌いたかった歌って
 こういう歌だったから……」
「そうか…歌いたかった歌か……」
つんくさんはそこで一回言葉を区切って考え込んだ…

「……この曲の歌詞の意味、おまえなら分かるよなあ?
 俺がこの歌詞にこめた意味分かるやろ?」
「…はい、分かっているつもりです……」
「この歌詞はなあ、おまえのステージを見て思いついたんやで。
 おまえのブルーハーツのステージを見て……」
「…………」
「俺のこの曲に込めた思いはおまえと一緒や。
 この曲はホンマはな、二人が一緒になろうって歌やねん。
 一緒になって約束を叶えようって歌やねん。
 …分かるよな? この意味……」
「はい……」
233名無し池:02/09/27 00:54 ID:nh4bxi1m
「おまえがあのあと福田と会ったのかどうか、俺は知らん。
 福田がどう言ったのかも、どう考えてるのかも俺は知らん。
 ただな、この曲に込めた『決心』っちゅうテーマは、あいつへのメッセージでもあるんや。
 ……もう3年や、あれから。
 あいつもいつまでもフラフラしとってもしゃあない、宝の持ち腐れや。
 それに、そろそろ『決心』してくれんと、もうタイムリミットやで……」
「タイムリミットって……?」
「俺がこの先おまえらを自由に使っていける範囲はきっとますます狭くなってく。
 まあ、それは仕方ないことや、そういう道を選んだんやからな……
 おまえもそうや。
 事務所に未来はないと思ったから、おまえの妹、ウチの事務所じゃなくて
 ナベプロに入れたんやろうが?
 後藤の弟みたいに扱われたらたまらんから、ウチの事務所につれてこなかったんやろ?」
「……いえ、そういうわけじゃ…」
「いいんや、別に。
 俺もよう分かっとるし……
 だけどな、今なら少しでも俺の自由のきく余地があるんや。
 だからな帰ってくるなら今しかないねん。
 俺があいつにかまってやれんのは今しかないねん……」
234名無し池:02/09/27 00:55 ID:nh4bxi1m
今の明日香がつんくさんの元に帰ってくるなんてことありえるんだろうか?
今みたいな音楽作ってるつんくさんを信用するのだろうか?
つんくさんが今作ってる歌を『歌う』なんてことありえない……
…すると、つんくさんはわたしの疑問を見透かしたように答えた。

「新曲はな、俺の『決心』でもあるんや。
 今の俺でもこんくらいのもん作れるっちゅう意思表示や。
 勝手に13人まで増やされても、俺はこんだけできるっちゅう意地や。
 今回の曲だって急遽変更したんやで。
 ホンマは全然違う曲やったのを、少しばかりワガママ言うて差し換えたんや」
「そうだったんですか……
 変更前の曲はいつもみたいな曲…?」
「そうや。いつもみたいな曲や。
 おかげで事前に発注しといた衣装が『Do it! Now』と全然合わへん」
つんくさんは自嘲気味に笑う。
「しょーもない曲しか作れなくなったわけやない。
 あいつや石黒がいなくなったんが悪いんや。
 あいつらがいなくなったから、俺の思い描く曲を作らなくなったんや。
 でもな、今回は違う。
 あいつらに見せつけてやんねん。
 俺が作った曲を。俺が作った歌詞を……」
235名無し池:02/09/27 00:56 ID:nh4bxi1m
「……でもそのこと伝わりますかね?
 今のわたしたちで……13人のわたしたちで……」
「そうや。それが一番の問題や……
 なんか感じとってもらわなあかんねん。
 そんでもってあいつの決心を促したいんや」
「……このことを話すのはわたしだけなんですか?
 カオリは? 矢口や圭ちゃんには?」
「……おまえだけや。
 こんなこと話すのはお前があのステージやったからやで。
 俺とおまえが似たような思い持ってるって分かったからな」
「でも……矢口たちにも伝えた方が……」
「あいつらはエエ。
 あいつらにはちゃんとあいつらにぴったりの歌詞を作っておいた。
 そこから何か感じとるはずや……
 ……だから今回の曲はおまえに頑張ってもらいたい。
 あいつへのメッセージを伝えるのはおまえしかおらん」

矢口たちにはちょっと後ろめたかったけど、わたしの思いも同じだった……
わたしがやらなくちゃ、わたしが伝えなくちゃ…
切符を渡すのはわたしの役目だ…
236名無し池:02/09/27 00:57 ID:nh4bxi1m
「って言ってもな、今回のメインで歌うんはおまえと後藤と高橋と紺野や。
 これはしゃあない……そうしろって言われてるからな……」
「ごっちんはともかく、紺野と高橋ですか?
 あの二人に歌いこなすことなんて……
 特に紺野は……」
「かまわん。どうせ歌番組に出ても高橋と紺野がかぶさるところは
 あいつら二人とも口パクにするつもりだからな。
 だからおまえと後藤がきっちり歌えばそれでエエ」
「でもそれじゃあメッセージ性が薄れてしまうんじゃ……」
「それはちょっと考えてることがある。
 それを補う手段をな……
 まだ本決まりしてへんから言えんけど、まあ楽しみにしときや」

なんだろう? 補う手段って……
何か伝えることができる手段でもあるのだろうか……
237名無し池:02/09/27 00:59 ID:nh4bxi1m

「さあ、そろそろ始めるで」

つんくさんに言われてレコーディングが始まった。
つんくさんも一緒にリズムを刻んでくれて、
納得いくまで何度も何度も録り直した。
それこそ昔やっていたあの頃のように……
なかなかOKが出ないレコーディング。
つんくさんとわたしの真剣勝負。


夢は叶うよ……絶対に…………

そう信じてわたしはいつまでも歌い続ける。

238名無し娘。。。 :02/09/27 20:22 ID:rXYEjcq9
ここって読んでる人どんくらいいるの?
239名無し:02/09/27 21:28 ID:UOIT8BGK
読んでますよ 回帰から追っかけてます
面白いです がんばってください
でもホントは明日香登場を願ってる・・・
240名無し池:02/09/28 21:21 ID:e+3I7Wsz


     ◇      ◇      ◇

241名無し池:02/09/28 21:23 ID:e+3I7Wsz
モーニング娘。はミュージカルが終わると凄まじい忙しさに見舞われていた。
ミュージカルの千秋楽で日本テレビの新番組の制作発表記者会見をやったかと思えば、
翌日からはテレビ収録の嵐だった。

ちょうど一週間前にシャッフルユニットのPVを撮影した。
5月の最初の頃にレコーディングした『きょうりゅう音頭』……
めちゃめちゃイヤだった。
なんでこんな歌、歌わなくちゃいけないんだろうって……
それでも仕事だと思って我慢した。
いつかちゃんと歌える日が来るさって思って気にしないことにした。
242名無し池:02/09/28 21:25 ID:e+3I7Wsz
圭ちゃんの卒業発表はいつまでたっても事務所からわたしたちに発表されなかった。
いつまでもされない発表に圭ちゃんの卒業は取り止めになったのかなって
思うこともあったけど、圭ちゃんの意志の固さからみてそんなことはないんだろう。
圭ちゃんにそのことを聞こうとしたけど、また重苦しい雰囲気になるのが
イヤだったし、ゆっくりと話をする時間もなくて、そのままになってしまった…

矢口はといえば、卒業を聞かされて以来、なにかにつけて圭ちゃんの話題を
口にするようになった。
ワールドカップのときの話やケメ子命名の由来とかを自分のラジオやTV番組で
ひたすら喋りまくった。
わたしもそれに合わせるように『ケメ子走り』の話やチャック全開で生放送に
出た話とかをラジオやTV番組でした。
少しでも圭ちゃんに注目が集まれば……
圭ちゃんの自分では気付いてない面白いキャラクターにスポットが当たれば……
圭ちゃんは嫌がるかもしれないけど、知名度を上げるって意味では役に立てると思っていた。
そしてそれができるのは矢口とわたししかいないとも思っていた。
わたしたちおしゃべりだもんね……
243名無し池:02/09/28 21:26 ID:e+3I7Wsz

辻はあの日以来めちゃくちゃわたしになついてしまっている。
シャッフルで一緒だったこともあって、四六時中わたしの側にいるようになった。
そしてしょっちゅうわたしの手を握るようになった。
辻は体温が高くてちょっと暑かったけど、でもかわいいから……ま、いっか。
辻は「お菓子を食べない! 毎日腹筋!」っていう決心を最近して、
それを今のところ守っている。
不安に感じることが少なくなったのか、爪を噛む癖は治りつつあったし、
ストレスの発散を食事に持っていくこともなくなったみたい。
244名無し池:02/09/28 21:27 ID:e+3I7Wsz

シャッフルユニットのPV撮影の翌日、ハロモニの生放送があった。
番組の撮影内容はイヤだったけど、裕ちゃん・カオリ・矢口・圭ちゃん・
それとわたし、昔のメンバーだけで揃って仕事できたことはうれしかった。
梨華ちゃんもいたけど、それはまあ、それ……
生放送の最中はとてもつまらなそうにしていたつんくさんが
番組が終わって子供達が帰るとうれしそうに話しかけてきた。

「おまえら〜、新曲のPV撮影楽しみにしとけよー。
 それと中澤の新曲もなー」

…あ、これが言ってた例の『補う手段』ってやつだ、きっと。
わたし以外、そんな裏事情を知らないからみんなきょとんとしてたなあ。
245名無し池:02/09/28 21:29 ID:e+3I7Wsz

昨日はシャッフルユニットで出演したミュージックステーションで
タモリさんにイヤミを言われた。
それも番組の最初で……
わたしたちに向けられた第一声が
「それじゃあ、売り上げ目標額を聞かせてもらいましょうか?」
だった。
そりゃあタモリさんから見れば、ううん誰が見たって
シャッフルはまじめに音楽やってるように見えないよ。
おカネ目的にしか見えないよ。
でもさ、わたしたちだって好きでやってるわけじゃないんだからさあ、
わたしたちに言わないでよ……
タモリさんくらいだったら、もっと上の方の人に言ってよ……
246名無し池:02/09/28 21:31 ID:e+3I7Wsz

そして今日、わたしたちは全員揃って『Do it! Now』のPVを撮影する。
楽屋に入って手渡された衣装にみんな驚いた。
みんな真っ黒で統一されたシックな衣装。
てっきり衣装はジャケ写で使った赤の衣装だけだと思ってた。
辻・加護や5期メンバーはこういった衣装を着たことがないからちょっと興奮気味。
すると誰よりもいちばん興奮してる人がわたしの前にやってくる。
「ねえー、なっちー、見て見て。似合ってるー?」
そう言って、カッコつけてポーズを決める。
「おー、いいじゃん! イケてる、イケてる。
 やっぱあれだね、矢口もそういう格好すれば大人っぽく見えるね」
「ヘヘ、やっぱそう?
 矢口のセクシーさ出ちゃってるかなあ?」
矢口はガハハと大笑い。本当に心の底からこの衣装がうれしそう。
「昔の明日香くらい大人っぽく見えてるかなあ?」
矢口のことばに、ふと気付く。
そういえばこの衣装って……
「ねえ矢口…、この衣装ってMemoryのときの衣装と似てない?」
「えーっ? 気のせいでしょー。
 ただ黒いからそう思うだけだよー」
「そうかなあ…」
だってこんなシックな衣装着るの何年ぶりかな?
Memory以来だよ、きっと……
247名無し池:02/09/28 21:32 ID:e+3I7Wsz

メイクもみんな出来上がり、
「こちらでーす」
そう案内された扉からスタジオに入る。
入っていくとすぐに曲り角があって、その先は階段になっていた。
収録セットはこの先かあ……
辻と手をつないでしゃべりながら階段を登っていると、
前を歩いていた矢口とぶつかった。

「ちょっと矢口ー、いきなり止まんないでよ! もー…」

顔を前へ向けると矢口が呆然と壁をながめている。

「なっち……これ……」

矢口が指差す方を見る……

「……なにこれ…?」

248名無し池:02/09/28 21:33 ID:e+3I7Wsz

……そこにはモーニング娘。のシングルがずらーっと15枚、
額に入れられて壁に飾られていた。
階段の途中から発売順に少しづつずらして並べてある。
…わたしは思わず『愛の種』に駆け寄った。

髪を切る前の裕ちゃん。
まだかわいさの残る彩っぺ。
大人っぽく見える福ちゃん。
笑顔のぎこちないわたし。
黒髪ストレートのカオリ。
そして『ASAYANプロジェクト』の文字。
249名無し池:02/09/28 21:35 ID:e+3I7Wsz

…すべてはここから始まったんだ。
わたしはジャケットの『愛の種 モーニング娘。』の文字を指でなぞる……
そこから一歩づつ階段に沿って並べてある8センチのシングルたちをながめていく。
『モーニングコーヒー』
『サマーナイトタウン』
『抱いて HOLD ON ME!』
『Memory青春の光』
『真夏の光線』
『ふるさと』
ながめているうちに気がついた。
これって『Do it! Now』の
「一歩一歩でしか進めない人生だから立ち止まりたくない」の部分を
表してるんじゃないかって……
250名無し池:02/09/28 21:36 ID:e+3I7Wsz

『LOVEマシーン』からは衣装もジャケットも大きく変わる……
8センチから12センチ用のジャケットに。
衣装も一気に派手になった。
そして
『恋のダンスサイト』
『ハッピーサマーウェディング』

それ以降のシングルは階段状に並べられず、『ハピサマ』と
同じ高さに並べられていた……
これは何を意味しているんだろう……
『ハピサマ』以降、成長を止めてしまっていた自分の姿になんとなく重ね合わせた……
251名無し池:02/09/28 21:37 ID:e+3I7Wsz

『I WISH』
『恋愛レボリューション21』
『ザ☆ピース』
『Mr. Moonlight』
『そうだ! We're ALIVE』
全部のシングルをながめたわたしはその場をあとにして、メインセットの中に入る。
仕切りのカーテンをくぐると……
そこにはコンクリートがうちっぱなしにしてあるセットが広がっていた。
まるで倉庫の中みたいなセット。
これってやっぱり……

先に入っていた矢口がわたしを見つけると急いで近づいてくる。
「なっち! さっき言ってた通り……これって…」
わたしはうなずく。
「「Memoryだ……」」
二人の声がハモった。
252名無し池:02/09/28 21:39 ID:e+3I7Wsz

撮影が進むにつれて、その疑念はどんどん深まっていく。
壁に寄りかかってせつない表情をしたり、固定したカメラワークを多用したり、
かつて経験した撮影が再び繰り返されている。
『Memory』のときは階段を下りて行って誰もいなくなった…
でも今回は旧メンバー4人が誰もいないところにむけて登って行く…
「これでガム噛めば完璧なんだけどねぇ」
矢口がつぶやいた。
「ガムじゃないけどさ、わたしあとで水飲むシーンがあるんだけど、
 これって何だと思う?」
「えー? なっち一人だけで?」
「うん……」
「分かんないなあ……
 そういえばさっき紺野がさ、『愛の種』のジャケット見上げて「一生忘れない〜」
 の部分録ってるのよ。あれもわけ分かんないよね……
 今日は分かんないことだらけだよ……」

ゴメン、矢口。
意味は全部は分からないけど、なんで今日こんなことが起こってるかの理由は
わたし知ってる……
「一生忘れない」が『何』を指してるのかも分かってる……
でも言えないんだ。
これはわたしとつんくさんの『決心』だから……
253名無し池:02/09/28 21:40 ID:e+3I7Wsz

後日、出来上がったPVを見る。
最初から最後まで統一されたコンセプト。
画面から伝わってくる意思。
並べられたシングルと衣装、そして受賞した数々のトロフィーと楯。


つんくさん、この曲に賭けてるんだ…
この曲を第2のMemoryにしようとしてるんだ…
記憶に残るものにしようとしてるんだ……

254名無し池:02/09/28 23:14 ID:e+3I7Wsz
雑談れす。
今回の話、自分でもイマイチ納得がいかない。
『Do it! Now』のシングルDVDを見てからちょっと書き足そうと思ってたんだけど、
安倍の反応が予想通りのものだったので、妄想進まず、、、
書き上げといたやつそのままでいくことに。
どうしても気になったらあとでここの部分書き直すかも。

で、今日そのシングルDVDと「モーニング娘。×つんく」を買ってきたのですが…
まあこういう妄想小説を書いてる以上、この本の内容が恐かったわけです。
話が根底から崩れる恐怖っていうのかな、、、
こっちはインタビューとかしてるわけじゃなくて、あくまで妄想だから。
でもリアルさをできるだけ追求してるわけでして、、、
255名無し池:02/09/28 23:21 ID:NkrTlIyk
うぁ、PCフリーズした、、、

それで…ざっと「モーニング娘。×つんく」に目を通しました。
旧メンは長年自分が築いてきた妄想像wというか、そんなものにぴったりな
インタビューなわけでして、それを考えると後藤以降のインタビューが新鮮だったかな。

あと気になった点を二つ三つ。
飯田のインタビューのところで真っ先にタンポポの写真が使われてるのがうれしい。
矢口のMY BEST SONGが『でっかい宇宙に愛がある』っていうのは意外。
他の旧メン同様、古めの曲を選んでくると思っていた。
保田が選んだ『ワガママ』、好きな曲としてあげた『乙女の心理学』。
ああやっぱりって感じでしょうか。
後藤、『パパに似ている彼』ですか、、、ホントこの人はセカモの曲好きだね。
256名無し池:02/09/28 23:23 ID:NkrTlIyk
実はここで小説続けるかどうか迷ってしまいまして、
タンポポ祭りとその後体調崩したこともありまして、ちょっとヘコみ気味な感じで、、、
アップできる小説のストックもあと数回分しかなくて、
風邪薬飲んでることもあって考えまとまらないし、、、
でもね、ちょっと雑談多くなってしまうけど、続ける決心はしたんで
もう少しおつき合いください。
まあ…あと読んでる方、雑談につきあってくれるとうれしいかな。

>239の名無しさん
最初の回帰から見てくれてるってことは15のスレも見ちゃいました?
まだあのスレ生きてるんで、最後はあそこに逃げるかも(w
明日香登場…あるかもしれないし、ないかもしれない。
すべては現実次第なので果たしてどうなるか、、、
小説の最後どうするか本当に決めてないんですよ。
『。』を打たない文章はあいなちさんを連想してしまうんですが
御存知なのでしょうか?
257たぢから:02/09/29 00:17 ID:HRpMIlaA
>名無し池さん
私でよろしければ雑談にお付き合いします。

「Do it! Now」は27時間TVの前に出回ったmp3を聴いたのですが、
(まぁた原宿かよっ!…は除いて)久々にいい曲だなと感じましたね。
「サマナイ」〜「抱いて」の頃からハマり、「ハピサマ」&市井脱退&なっち激太りで熱が冷め、
しばらく娘。の動向を静観していた私にとっては、懐かしさも感じました。
私は後藤脱退etcでまた娘。熱が下がりそうです。でもふんぎりがつけられない。
次の曲は… これからの娘。の展開はどうなるんでしょうね?

また「回帰」に戻られても、別のスレに行かれても私は応援し続けますよ。
258名無し:02/09/29 08:44 ID:l1SYGkbG
あいなちさん 名前は存じてます
小説をいくつか読ませていただいたことがあるという程度ですが
ですので『。』がないのはあいなちさんを意識してのことではないです
というか別に何の意図もありません そこまで考えてませんでした(w

明日香が好きだった私としては今の娘。はあの頃とは別物として
見るしかないって感じです ファンというのとはちょっと違いますね
「古き良き時代を懐かしむ」というタイプでしょうか
初期からのメンバーにとっては今の活動は不本意なんだろうなと思いながら
見ている私には名無し池さんの小説は妄想というか事実と映ります(w
これからもどこに行かれても読ませていただきたいと思ってますので
頑張ってください
259名無し池:02/09/29 11:38 ID:omKYgC9T
雑談ありがとう。
しばらくはここで書くんで安心してください(w

>たぢからさん
自分も帰還組です。ハピサマで一回離れて、中澤卒業のときに戻ってきました(w
帰ってくるなとか言われそうですけどね(w
「原宿」がよく歌詞に出てくるのは、事務所が近いからなのかなって考えてます。
娘。たちが軽く遊びに行ったり、ちょっと寄り道するのは渋谷や原宿なんだろうなって。
特に年下メンバーなんかはそうでしょうね。
この前も加護と高橋がパパラッチされてましたね、、、
それを知ってるつんくが娘。たちが情景を想像しやすいように
あえて「原宿」を多用してるのかなあなんて考えています。
きっと地方から出てきたメンバーなんかは、忙しさを考えると原宿・渋谷あたりしか
遊ぶ場所がないんでしょうね。
それを考えると東京組は恵まれてるのだろうか?
地元の友達と遊んだりや家族と暮らすことができて。
と思ったけど、自宅通いのメンバーはストーキングに悩まされるという問題を思い出した。
自宅だからおいそれと引っ越すわけにもいかないし。
保田や石川あたりの距離がちょうどいいのかな、、、
260名無し池:02/09/29 11:40 ID:omKYgC9T
今後の娘。ですか…どうなるんでしょうね。
ちょっと気になっているのが安倍が「Do it! Now」の曲紹介をしたときに
「テーマが決心なだけにいろいろと決心している」と言ったこと。(エアモニ。7/25)
果たして何を決心したのか、それが気になっています。
それと、新曲「ここにいるぜぇ!」、誰に自己主張してるんでしょうね?(w
「夢の翼を広げ 自分をブチ破れ!」「1度きりの人生 おなかいっぱい学ぼう」
この歌詞で「Good Morning」や「ダディ」を思い出したり、、、
ジャケ写をトランポリンを使って撮影したそうですが、
最近トランポリンにハマっていた人がいますね。
言うまでもなく安倍なんですが、これはどういう意味を持つのかな?とか考えてます。
あ、でも「そうだ! We're ALIVE」のときもトランポリン使ったような気が、、、
今発表されている衣装、あれで歌番組に出てくるとは思えないので少し様子見です。
261名無し池:02/09/29 11:44 ID:omKYgC9T
>258の名無しさん
>別に何の意図もありません そこまで考えてませんでした(w
うん。そうだと思ってました(w
ただね、こういう妄想を書いてるとやっぱりあの人は常に意識してしまいます(w

「モーニング娘。×つんく」より引用。
「いちばん美しい理想的な解散形のひとつにBO●WY (真ん中の文字
どうやって打つのか知らない…)の解散があるんですよ。
いちばんいい時期に解散、みたいな」(P.145)
「当時の状況からすると、あのコの解散のカタチは、ある意味''ひとりBO●WY ''じゃないすか」
(P.157)
これを読むとつんくもあの頃をいい時期だったと思ってるんだろうなあって考えますね。
でもね、今が全部不本意かっていうとそうでもないわけで、
旧メンは今でも歌うことを楽しんでるし、ツアーを回るのは楽しいみたいだし、
今の活動の中でもそれなりに好きな部分もたくさんあるわけですよ。
それが娘。を辞められなかったり、こだわったりする理由なのかなと。
前に書きましたが、そういった矛盾点が見えるのが今の旧メンの魅力の一つ
なんじゃないかなあ、、、
262名無し池:02/09/30 00:22 ID:sE3w2JzF


     ◇      ◇      ◇

263名無し池:02/09/30 00:23 ID:sE3w2JzF


…………


……





…何よー、いったい…


…うるさいわねえ。


せっかく人が気持ちよく寝てるっていうのに……

264名無し池:02/09/30 00:24 ID:sE3w2JzF

目を覚ますとそこにはガラーンとした楽屋。
…あれ? みんなどこ行っちゃったんだろう?
広い楽屋をぐるーっと見渡すと、そこには一人……
あ…なっちだ……
なっちは一人、ミュージカルの3部に向けて化粧直しをしている。
ああ、どうしよ…声をかけるかどうか迷うな……

「……ねえ、なっち…他のみんなは?」

「あー、カオリか……加護たちならビデオテープとCD持って出てったよ。
 どうせいつもの部屋でしょ」

なっちは鏡を向いたまま、あたしのことを振り返るでもなく言う。

「ふーん……」

あたしも全然違う方を向いて、気のない返事をした。
265名無し池:02/09/30 00:25 ID:sE3w2JzF

あたしたちはずっとこうだ。
お互い気にしないふりしてて、実はもっとも意識しあってて、
会話もろくにしないのに考えてることは分かってて……

今だってそう……
あたしがなっちのことを意識してるように、
なっちもあたしのことを意識してる……

いつまで続くんだろうな、この運命の巡り合わせは……
266名無し池:02/09/30 00:26 ID:sE3w2JzF

そのときまた外で
「うぉーー!」
とか叫ぶ声が聞こえる。

あ、まただ… いったい何やってんの?

あたしは気になってドアの隙間からそっと廊下をのぞく。
声を発してる人の姿は見えず、また声だけが聞こえてくる。
あたしはなっち一人を楽屋に残し廊下に出てみた。
…そして声の聞こえる方に歩いていってみる。


「うぁーー!!」


カントリー娘。とココナッツ娘。の楽屋からそれは聞こえてくる。
カントリー娘。は今2部に出演してるから、アヤカかミカか……
267名無し池:02/09/30 00:27 ID:sE3w2JzF

「うるさ〜い!!」

そう怒鳴って楽屋の扉をガチャッと開けた。

「あ、あれ? よっすぃー?」

「……あー飯田さん、どうかしたんですか?」

予想に反してそこにはよっすぃーが一人でいた。

「『どうかした?』じゃないでしょーが!!
 廊下にまで声響かせて、何やってんのよー!!」
「『何』って、別に…ただ叫んでただけですよ」
「だから、その叫ばなきゃならない理由が分かんないって…」
「あー、あのですね、ヒマだからアヤカさんかミカちゃんがいるかなあって思って
 ここの楽屋覗いたら、誰もいなかったんですよ。
 そしたらなんか叫びたくなったんで、叫んでました」
「はあ? よっすぃー意味分かんないよ…」
「いやあ、一人だから叫んでも迷惑にならないと思って」
268名無し池:02/09/30 00:28 ID:sE3w2JzF
大丈夫かな、このコ……
なんで他人の楽屋入って叫ばなきゃならないのさ?
そもそも何で叫ぶ必要があるの?
よっすぃーはその疑問にすら気付いてないのかな……

「ねぇ、よっすぃー……
 何かあったの?」
「いいえー何にもありませんよー」
そう笑って答えるよっすぃーだけど…
「じゃあ、またあれが重い……?」
よっすぃーのあれが重いのはメンバー間には周知の事実なわけで…
去年紗耶香がMUSIX!に出たときも、クリスマス特番のときも
途中で倒れて収録を退席した。
そういえば紗耶香のときの退席はいろいろと噂を呼んだっけ…
269名無し池:02/09/30 00:29 ID:sE3w2JzF

「いやあ、全然。今じゃないし、いたって快調ですよ」
元気そうに答えるけど、何なんだろなあ、よっすぃーは……

「そんなことより、あいぼんのところに行きましょうよ」
うーん…、あたしの心配は『そんなこと』呼ばわりかいっ!
よっすぃーはあたしの背中を押して、半ば強引に連れていく。

「やだよー、あの部屋行きたくないよー」
「いいから、いいから」

その部屋の前まで来ると例の音楽が聞こえてくる……

 ♪Yeah! めっちゃホリディ
  ウキウキな夏希望〜

まったく飽きもせず毎日、毎日……
…ドアを開けると中では加護と高橋と新垣が踊ってる。
270名無し池:02/09/30 00:31 ID:sE3w2JzF

「あー、よっすぃー!!
 よっすぃーもやりにきたのー?」
「あたしは違うよぉ。
 飯田さんがね、やりたいって言うから連れてきたの」
「ちょ、ちょっと待ってよー。
 あたしやりたいなんて一言も言ってないよー」
「はいはい。
 じゃあいきますよお。
 ミュージックスタート!!」

加護の合図に高橋がCDラジカセのスイッチを押す。
またあの曲が最初から流れ出した…

 ♪Yeah! めっちゃホリディ
  ウキウキな夏希望〜

加護と高橋と新垣が揃って踊りだす。
3人とも振り付けバッチシで、息もピッタリ。
271名無し池:02/09/30 00:32 ID:sE3w2JzF

「あんたたちウマくなったねえ……」
「飯田さんも覚えましょーよ」
「いいよー、あたしは……」
「なんでー? 氣志團とかはよく踊ってるじゃないですかー?」
「あややと氣志團は別だよー。
 あたしはね、あややを踊ってるかわいいかわいいあいぼんが見れればそれで満足なのぉ」
いつもみたくぶりっこして言ってみた。
「オエー、おばちゃん気持ち悪いよぉ」
と、それを聞いた加護が逃げていく……

冗談で言ってるんだから、そこまで本気で引きつった顔しないでよー。
まだハタチなんだからおばちゃんなんて言わないでよー。
心はまだ16歳なんだからさあ……
272名無し池:02/09/30 00:33 ID:sE3w2JzF
ああ、でもこんなこと言ってるからオッサンとか言われるんだろうなあ。
でもオッサンっていったらみっちゃんなのになあ。
あたしみっちゃんみたいにお酒飲んで、人に絡んだりしないよお。
裕ちゃんや貴子さんみたいに浴びるように飲んだりしないよお。
なのになんでオッサンとか言われるんだろ?
こんなにかわいいかわいいカオリンなのに……


「…………ださん!」


「……いださん!」


「…いいださん!」

273名無し池:02/09/30 00:34 ID:sE3w2JzF

「あ、なにー?あいぼん」
「またどこかにいってましたよー」
「えー? ウソだよー。
 最近あたし交信しなくなったもん」

よっすぃーと加護のあたしを見る疑わしい顔付き。
そうかなあ? あたし交信してるのかなあ……


…飯田圭織、今日も交信中。
ミュージカルが始まって間もない頃の出来事……


274名無し池:02/09/30 00:38 ID:sE3w2JzF
雑談れす。
中澤のラジオで『でっかい宇宙に愛がある』の話が出た。
中澤も「モーニング娘。×つんく」を読んだのだろうか?
そして矢口にこの曲のことを聞いたのだろうか?
25日のハロモニ収録のときに全員に配られた可能性もあるのか。

この本、福田の話が多いと思うのは気のせいなのかな?
それだけ福田卒業前後のことが鍵になっているんだろうけど、
こういう小説を書いている以上ちょっと気になる、、、
何かの前兆であると思いたい。
まあ違ってもそれはそれでいいんだけどね。
待つことには慣れた、、、
275たぢから:02/09/30 01:11 ID:sVv3XM5o
こんばんは。
日曜夜は中澤姐さんのANN→みちよし(HBC)とAMラジオをはしごしています。
「でっかい宇宙に愛がある」は4期加入後の娘。では好きな曲ですね。
シングルB面には勿体無いです。ま、ラジオで聴くだけですが…

みちよしのラジオでは新タンの「やじろべえ」を初めて聴きました。
可も無く不可もなく、といったところでしょうか。
初期タン→旧タンの衝撃的な路線転換に比べれば、特に抵抗は感じなかったです。
「似て非なるもの=同じ名前の別ユニット」と頭で割り切っているからかもしれません。

今は12人娘。での新曲「ここにいるぜぇ!」の情報が出回ってますね。
まぁたコスプレすぺしゃるで、曲の方ははハジケ路線のようですが、
今の邦楽界や一般人の財布にどれだけ刺激を与えられるかが勝負の鍵ですね。
276名無し池:02/10/02 00:11 ID:ZJBq8jj3
雑談れす。
新曲の話が出たところで……保田には果たして卒業ソングが用意されるのだろうか?
なんて考えてみた。
考えてみても何も思い浮かばなかった。
それは自分が来年春には保田卒業だけで終わるとは思ってないからだったりして、、、
他にも何かあるような気がしてるからだったり、、、

本当はモーニング娘。の解散ソングになる予定だった「Never Forget」。
当初の予定が狂ってこれが福田明日香卒業ソングになるのですが、
福田はこの曲を自分がいなくなった後、安倍に歌ってほしいと言い残した。
やっぱり安倍の卒業ソングは「Never Forget」であってほしい、、、
277名無し池:02/10/02 00:12 ID:ZJBq8jj3
>たぢからさん
「でっかい宇宙に愛がある」は自分もけっこう好きです。
鈴木俊介編曲の曲は「Mr. Moonlight」を除くとほぼ好きですね。
「やじろべえ」はおっしゃるように自分も可もなく不可もなくです。
タンポポを名乗る必要性は微塵も感じられませんけどね(w
新しい名前にした方が反感くらわなくて良かったような気がします、、、

あんまりね、自分は売り上げとか気にしないようにしてます。
事実確認のためにチェックとかはしますが。
娘。本人達が歌いたいような曲を歌ってくれればそれでOKです。
今は飯田・矢口に歌う機会が与えられることを願うばかりです、、、
278名無し池:02/10/02 00:13 ID:ZJBq8jj3


     ◇      ◇      ◇

279名無し池:02/10/02 00:15 ID:ZJBq8jj3


……先週、圭ちゃんから卒業の話を聞かされた。

ミュージカルが終わったあと、二人で食事に出かけて……
もんじゃ屋さんなんていう雰囲気のないところで聞かされたけど、
あたしたちには相応しい場所だったんだと思う。

またあたしの側から仲間がいなくなる……
そんな重大なことを聞かされてもあたしの心はショックを受けなかった。
涙は遥か昔に涸れ果てて、一滴も流れてこなかった。
いつからかわたしは何でも受け止められるニンゲンになっていた。
モーニング娘。に何が起こっても関係ない。
タンポポに何が起こっても関係ない。
あたしはあたしの道を進むだけ。
そんな風に仮面をつけて生きるようになったのはいつからだろう。
280名無し池:02/10/02 00:17 ID:ZJBq8jj3

圭ちゃんと二人っきり。
お酒を飲んだ。
二人っきりで飲むのなんて初めてだったな…
思い出話に花を咲かせ、ときには笑い合ったり、ときには愚痴を言い合ったり、
いろんなことを話した気がする……
昔、泣くまで大喧嘩したこと…、いっしょに遊びに行ったりしたこと…、
中には和田さんと3人で飲みに行った話なんかも…
4年間で培ってきた圭ちゃんとの思い出…
ウソのつけない圭ちゃん…
その素直さが大好きだったよ……

281名無し池:02/10/02 00:17 ID:ZJBq8jj3

…どれくらい時間が経ってからだろう。
圭ちゃんに言われた…

「カオリ……涙拭きなよ……」

そう言ってハンカチをあたしの前に差し出してきた。

「へ? 何言ってるの圭ちゃん?
 あたし泣いてなんかいないよ」

あたしが言うと、圭ちゃんは無言であたしの頬をハンカチで拭った。
思わず圭ちゃんの手を取って、握られていたハンカチを見る。
…ハンカチにくっきりと残る雫の痕。
282名無し池:02/10/02 00:19 ID:ZJBq8jj3

「……あれ?
 …あたし、泣いてるの?
 あたし、いつから泣いてた?」

「最初からずっと……」

「…なに言ってんの?
 あたし泣いてなんかいなかったよ」

圭ちゃんはちょっと笑みをみせて、ゆっくりと首を振った。

「カオリ最初から泣いてたよ……
 笑った顔してたけど泣いてた……」

「……ホントに?」

「うん…」
283名無し池:02/10/02 00:20 ID:ZJBq8jj3

「…なんで?
 …あたしが泣いたの…?
 あたしが泣くわけないじゃん……
 あたしが涙なんて流すわけないじゃん……」

「……人間って悲しいとき泣くもんでしょ。
 言葉で伝えられないかわりに泣くんでしょ……
 …それともカオリはあたしとの別れ悲しくなかった?」

「ううん…
 悲しいに決まってるよ…
 そんな当然なこと聞かないでよ……」

「じゃあ泣いていいじゃん……
 泣いてあたしとの別れを悲しんでよ……」

「……うん」
284名無し池:02/10/02 00:21 ID:ZJBq8jj3

その後どれくらい飲んだんだろう。
翌日ミュージカルがないのをいいことに相当飲んだ気がした。
顔が腫れるのも気にしないで好きなだけ飲んで、好きなだけ泣いた気がする…
タクシーでマンションに帰ってきたときには太陽が登りかけていた。
ちょっと寝て、重たい頭を抱えて無理してスタジオに行ったけど
案の定、圭ちゃんは来ていなかった……


285名無し池:02/10/02 23:23 ID:/NtW1xJI

……そんなことがあってから1週間がたち、
あたしは今日新曲のレコーディングに臨んでいる。

歌う前につんくさんに言われた。

「おまえもデビューしてからいろんなことがあったやろ。
 そんな思いを飯田らしく歌ってくれ」

珍しいなあ。つんくさんがそんなこと言うなんて……
それじゃあ、あたしの好きなように歌わしてもらおう。
あたしが考えるままに歌わしてもらおう。

 ♪最初のデートの帰り道〜

286名無し池:02/10/02 23:24 ID:/NtW1xJI
わたしが一曲気持ちよく歌い終えるとつんくさんは言う。
「お前は悲しい人間やなー。
 この二人はな、いつかは一緒になるんやで。
 一緒に約束を叶えようって歌やねん。
 もしかしたら今は離れとるかもしれへんけど
 いつか一緒に旅立とうって歌やねん」
「…そうなんですか?
 あたしはてっきりロミオとジュリエットみたいな
 悲しい話を想像して歌ってました…
 この二人は一緒になれないんだろうなあって」
「ちゃうちゃう。
 まあ、あれやな……おまえも大人の女になったっちゅうことや。
 そう簡単にハッピーエンドじゃ終われんって思ったわけや、おまえは」
「はあ、まあそうですね……」
「でもちゃうねん。
 この話はハッピーエンドでエエねん。
 悲しいって思ってたけど、実はハッピーエンドになるんや。
 この二人にはな、決心してもらってハッピーエンドにしてほしいねん。
 そんな歌なんやで、この曲は……」
287名無し池:02/10/02 23:26 ID:/NtW1xJI
つんくさんが曲に込めた思いを説明してくれている。
なんか今回の曲はこだわってるなあ…
でも出来上がったときにはあたしのパートなんてほとんどないんだろうなあ…
これだけ説明してくれてもあたしの表現する場なんてないんだろうなあ…
この曲はまたなっちが歌うのかなあ…
なっちのことだから喜んでるんだろうなあ…
そういえばなっち髪伸びてきたなあ…
あたしの前髪もかなりうざくなってきたなあ…


「…………だ」


「……いだ!」


「…いいだ!!」

288名無し池:02/10/02 23:27 ID:/NtW1xJI

「はい?」
「……次のテイク録るぞ」
「あ、つんくさん。あたしも決心しました。
 あたしこの夏、前髪切りません!」
「はあ? 何を言うとるんや、おまえは?」
「いや、だから、前髪を切らないって決心したんです」
「……はあ。そりゃええんとちゃうの?
 いくらでも伸ばしときー。
 おまえが決心したんなら……」
「はい。頑張って伸ばします!」
「…………」

……レコーディングは順調に進み、あたし個人の分は録り終わった。
パートは少ないかもしれないけど、今回の曲を歌うのは楽しみ。
季節を問わずに、しっとりとしたいい曲を歌えるようになれたのかなあって思うと
すごくうれしかった。
あとはタンポポにもいい曲をもらえたらいいのになあ……
289名無し池:02/10/02 23:28 ID:/NtW1xJI

レコーディングブースを出て、外のソファーに座って
曲の注意点の確認をしているとつんくさんに声をかけられる。
「なー、吉澤どこいったか知らへん?
 次の番あいつやのに、見当たらんのよ。
 さっきまでそこに座とったんやけどなあ…」
「えー? 分かんないですよー。
 あたしだってその中で歌ってたんですから」
「そりゃそうやなあ。
 ……困ったな、あんま時間あらへんのに…」
「あのー、あたし探してきましょうか…?」
「そうかー? そうしてくれると助かるわ。
 悪いなー、飯田」
「じゃあ行ってきますね」
あたしは部屋を出ると真っ先にトイレに向かった。
290名無し池:02/10/02 23:29 ID:/NtW1xJI

女子トイレの中に入ると声をかける。
「よっすぃー、いるー?
 大丈夫なのー?」
一つだけ鍵のかかったところを見つけると、小刻みにドアを叩いた。
「ねえ、いるんでしょ?よっすぃー!
 平気だったら返事してよー!」

よっすぃーはオーディションのときにあれが重なっちゃって
何にも言わずに1時間トイレから出てこなかったって加護が言ってたからなあ…
なんか返事してくれればいいんだけど……
291名無し池:02/10/02 23:30 ID:/NtW1xJI

「ちょっと、よっすぃー!
 無理だったらあたしがつんくさんに言ってくるよ。
 このままスタッフさんたち待たせておくわけにいかないからさあ」
するとかすかに物音がして、水を流す音。
「大丈夫、よっすぃー?
 レコーディングやれそう?」
すると、ドアがガチャッと開く…

「あ、よっすぃー…………

 …………へ? 誰?」

……出てきたのは全然知らない人。
あたしのことを一睨みするとそのまま行ってしまった。
めちゃ恥ずかしい……
292名無し池:02/10/02 23:32 ID:/NtW1xJI

気を取り直してロッカールームや自販機のおいてある部屋、
どこを探してもよっすぃーは見当たらない。
よっすぃーはいったいどこ行っちゃったのよ。
あたしはだんだん不安になってくる…
この建物の中にいるんでしょうね?
誰かに連れていかれたりしてないよね?


「よっすぃー!!」


廊下で思いっきり叫んだ。
いい加減出てきてよー!
293名無し池:02/10/02 23:33 ID:/NtW1xJI


「ハ〜イ!」


ふいに、よっすぃーが後ろから現れる。
顔にはいつもの微笑を浮かべて、何ごともなかったかのよう…

「ちょっとー、『ハーイ』じゃないでしょー!!
 みんなよっすぃー来るの待ってるんだよ。
 何してたのよー?」
294名無し池:02/10/02 23:34 ID:/NtW1xJI

「かくれんぼ」

「はい?」

「だから、かくれんぼです。
 見つけられなかった飯田さんの負けですね」

「かくれんぼって…
 …今、そんなことしてる場合じゃないでしょ」

「……いいんですよ。やりたかったんだから。
 すぐ戻りますよ」

そう言ってレコーディングに向かおうとした。
だめだ…これはリーダーとして、先輩として注意しなきゃ…
295名無し池:02/10/02 23:35 ID:/NtW1xJI


「待ちなさい、よっすぃー!!」


よっすぃーの肩をつかんで振り向かせた。

そのとき初めて気が付いた…
よっすぃーの表情……
微笑んでるように見えて、実はそうじゃない。
キュと口をむすんで、目を見開いて、
微笑んでるように見せるその表情……


「よっすぃー……
 …なんで?
 ……なんで泣いてるの…?」
296名無し池:02/10/02 23:36 ID:/NtW1xJI

「…泣いてなんかいませんよー」

「ウソだよ。よっすぃー泣いてるよ…」

「何言ってるんですか? あたしもう行きますよ…」

あ…、わかった…
圭ちゃんの言ってたことってこういうことだったんだ…
あたしもよっすぃーと同じように見えてたんだ……

「ちょっと、よっすぃー。こっちおいで!」

よっすぃーの腕をつかむと、さっきよっすぃーのことを探した
ロッカールームに引っぱりこんだ。
297名無し池:02/10/02 23:37 ID:/NtW1xJI

「ちょ、ちょっと…飯田さん、こんなとこ連れてきて何なんですか?
 みんな待ってるって言ってたじゃないですか」

「……今よっすぃーがそのままレコーディング行っても、
 たぶんつんくさんからOK出ないと思う。
 そんな状態で行ってもちゃんと歌えないと思うよ…」

「…そんなことないですよ……」

「……最近さあ、よっすぃー、なんか変だよ。
 ミュージカルのセリフはよくとばしちゃうし、
 わけもわからず叫びだすし、
 ……それに体調管理だって…、
 ……みんな何にも言わないけどさ、
 もう少し節制したほうがいいと思うよ……」

「…………」

あたしは知っている…
過度のストレスで急激に太るってことを…
メンバーの誰にも言わずに自分の殻にこもり続けたコのことを…
よっすぃーは同じ道をたどろうとしているのかな……
298名無し池:02/10/02 23:38 ID:/NtW1xJI

「……何かあったんでしょ…?」

「…………」

「…あたしでよかったら聞かせてくれない…?
 それで少しでも気が晴れれば……」

「……飯田さんが悪いんですよ…」

「え? あたしが?」

「飯田さんが悪いんです……
 あの曲をあんな切なそうに歌うから……」

「…だって…あたしはあの曲を悲しい歌だと思ってたから……」

「…だからってあんな悲しそうに歌わなくったっていいじゃないですか!
 あんな悲しげな顔してまで歌うなんて……」

「…よっすぃー…?」
299名無し池:02/10/02 23:39 ID:/NtW1xJI

おかしいよ、よっすぃー……
そんなことで泣くようなコじゃないでしょ?
なんでも明るくとらえられるコでしょ?
もっとさばさばと感じ取るコでしょ?
なんで今回に限ってこんなマイナスに感じ取ってるの?
あの曲を…あの曲のテーマを聞いて悲しく感じ取るなんて…

「……ねえ、よっすぃー…
 …なにか隠してることあるでしょ…?」

「…何か知ってるでしょ?」

「…メンバーから何か聞かされてるでしょ?」

よっすぃーから返事はない……
300名無し池:02/10/02 23:40 ID:/NtW1xJI

「…大丈夫だよ、よっすぃー。
 きっとあたしも知ってることだと思うから……」

「……知ってるんですか…?」

「うん。知ってるから…聞いたから…
 ……だから言いたいこと言っちゃいなよ。
 我慢してたこと言っちゃいなよ。
 あたしでよければ聞いてあげる……」

「…………」

「…平気だよ。ここにいるのはあたしだけなんだから……」

「……あたし不安なんです…」

「…うん」
301名無し池:02/10/02 23:42 ID:/NtW1xJI

「不安なんですよね。
 メンバーが減っていくことが…
 仲間がだんだん減っていくことが……
 …正直、市井さんのときは加入してすぐだったし何とも思ってなかったんです。
 中澤さんのときも、それまでそんなに親しくしてたわけじゃなかったから…
 普通に部活の先輩を送りだすような感じで……
 そのときは悲しかったけど、過ぎてみればそんな悲しくなくて……
 それに中澤さんは辞めてもいっしょの仕事が多かったし……
 …でも、今回は身近な人が辞めてくから……」

「…そっか、そうだね……
 プッチモニで仲良かったしね……」
302名無し池:02/10/02 23:45 ID:/NtW1xJI

「……はい。
 だからプッチも一人になるのが不安で……」

……え?
よっすぃー何言ってるの?
圭ちゃんが辞めたらプッチモニは二人でしょ。
なんで残り一人になっちゃうのよ。
……

…一人って…
…まさか…
…もしかして……
303名無し池:02/10/02 23:46 ID:/NtW1xJI

「…ねえ? …もしかしてごっつぁんも辞めんの?」

「え…知ってたんじゃないんですか?」

よっすぃーは言ってマズかったって顔してる。

「…ゴメン。あたしが聞いてたの圭ちゃんだけだった……
 ごっつぁんまで辞めるなんて知らなかった……」

しかしごっつぁんまでとは……
圭ちゃんのことだけでもショックだったのに…
よっすぃーはごっつぁんの卒業のことまで聞かされてたんだ……
304名無し池:02/10/02 23:47 ID:/NtW1xJI

「…よっすぃーはさ、ごっつぁんの卒業いつ聞かされたの?」

「……圭ちゃんから辞めようか考えてるって話を聞かされた後に
 二人っきりのときに聞かされました……
 『あたしも辞めることになると思う』って話を…」

「ごっつぁんが辞めることを他の人は?」

「ううん、誰も…」

「…じゃあ、ずっと一人で悩んでたんだ、よっすぃーは……
 誰にも言えないことを一人で悩んで……
 よっすぃーは二人といること多かったもんね……」
305名無し池:02/10/02 23:48 ID:/NtW1xJI

「…はい
 ……だから、あたし一人になったらどうなるんだろうとか考えて……
 あたしが一人で続けたって圭ちゃんとごっちんがいないプッチモニは
 プッチモニって呼べないわけで……
 それはあたしにとって市井さんと交代したときよりももっとつらいことで……
 そんなこと考えてても、たぶんプッチモニは解散なんだろうなあとか考えたり……」

「……いろんなこと考えちゃったんだね……」

「……はい。そしたらさっき飯田さんの歌を聴いてて、
 なんかめちゃくちゃ悲しくなってきちゃって……」

それからよっすぃーは自分の抱く不安を吐き出すように一気に語った……
親しいメンバーが辞めていくことへの不安。
プッチモニがなくなるかもしれないことへの不安。
自分がそのことに対してなんにもできないことへの不安。
よっすぃーは泣くことはしなかったけど、ときどき口をキュっと結ぶようにして
こみあげてくる感情を堪えて話をしていた……
306名無し池:02/10/02 23:50 ID:/NtW1xJI

じっくり話を聞き、よっすぃーを落ち着かせるとレコーディングブースまで
一緒について行ってあげた。
「つんくさん、今日よっすぃーあんまり体調良くないんで
 程々にしといてあげてください」
そう言い残すとあたしはスタジオを後にした。


スタジオの外に出ると一息つく。
307名無し池:02/10/02 23:51 ID:/NtW1xJI

ハァ…11人になるのか……

本当に11人で済むのかどうか……

この先、何が起こるのか……

あたしもそろそろ決心するときが来てるのかな……

いつまでもこのままモーニング娘。続けてていいのかな……

いつまであたしは歌い続けることができるのかな……


飯田圭織、漠然と不安を感じ始めた6月中旬の出来事。

308名無し池:02/10/02 23:53 ID:/NtW1xJI
雑談れす。
ようやく前スレで言っていた飯田編までたどりつきました、、、

後藤の新曲はピッコロタウンレーベルから発売らしい。
市井やFOLK SONG、童謡を発売してるこのレーベル、実に胡散臭い。
やっぱり妄想通りなのだろうか?
なんで後藤はゼティマのままでいかないのだろうか?

横浜アリーナで夏ツアーが終わって、今の時期比較的余裕がある
スケジュールのように思う。
日曜も空いてるから「HEY!×3」の収録も20日あたりに入るのかなとか思ったり。
レコーディングやPVの撮影に時間を割いててくれれば、
それが一番いいのだけれど、、、
後藤が抜けたあとのパート割りやフォーメーションの直しにそれなりの時間は
取られるんだろうなあ。
やっぱり気になるのは『Do it! Now』の後藤パートが誰に引き継がれるかということ。
309たぢから:02/10/03 00:03 ID:yQAHNi3r
リアルタイムで拝見させていただきました。更新乙です。

ごっちんはピッコロタウンなんですか。
じゃあ市井ちゃんと… と妄想したくもなりますが、ホント何ででしょうね?

後藤のパートの代替は、個人的に初期・2期メンにやってほしいのですが、
将来的なこと(まず保田脱退)を考慮して、4期・5期メンになるでしょうね。
この8名が中心となるはずの、これからの娘。へのテコ入れは、今しかないでしょう。
タイミングは良かったとは言い難いですが…
310名無し池:02/10/04 23:43 ID:7ztCk0UQ


     ◇      ◇      ◇

311名無し池:02/10/04 23:44 ID:7ztCk0UQ

7月7日、七夕。
わたしたちは朝7時からここフジテレビ向かいのメディアージュにいる。
中学生組はもうすぐ期末テストがあるはずなのに、今週もテレビ収録がぎっしり。
ミュージカルが終わってからロクに休みもない……

昨日は新曲のPVを録った。
昔みたいにPV撮影に2日も3日もかけないけど、
久しぶりに満足のいく撮影が出来たんじゃないかと思う。
わたしの好きなセピアな感じ、せつない雰囲気が出せたんじゃないかと思う。
出来上がりを見るのが今から楽しみ。
312名無し池:02/10/04 23:45 ID:7ztCk0UQ

午前中に撮ったシャッフルユニットの公開録画は最悪だった。
お客さんが騒がし過ぎて自分達の声すらまともに聞こえなかった。
司会者の方の声も全然聞こえなくて質問にまともに答えられなかったし。
シャッフルと新曲初披露が逆じゃなくてホントに良かったと思う。
新曲であれやられてたらわたしも含めてメンバーみんなきっと楽屋でキれてたと思う。
…そう。新曲はキダムの記者会見と兼ねて、報道陣の前だけでの披露だった。

「ちょっと、辻! なっちのこと引っ張ってあげて!」

なっちがめざましテレビのカメラに待機部屋の入口のところで引っかかっている。
入口の近くにいた辻になっちを部屋の中に引っ張り込むように指示した。
まったくもう…時間ないのにカメラ好きなんだから、なっちは……
313名無し池:02/10/04 23:46 ID:7ztCk0UQ

わたしの横にきたなっちにこっそり声をかける。
「なっち、早く整列しないとまたカオリがイライラしちゃうよ」
「…分かってるって。だってさー、今回の曲のポイントは?って聞いてくるんだよ。
 やっぱ気合い入ってるこっちとしちゃあ、答えてあげたくなっちゃうじゃん」
「…そりゃそうだけどさあ、それこそ曲披露のときに気合い入れればいいでしょー。
 今回の曲はそれができる曲なんだからさあ」
「ゴメンゴメン。気をつけるって…」
ホントに分かってるのかなあ…
二人が喧嘩したらメンバー全員困るんだからやめてよね……

200人を超える報道陣の前でキダムの制作記者会見。
特に思い入れがないことを話すのは苦労する…
みんな答えにつまりながら報道陣の質問に答えていた。
メンバーの誰一人として興味ないのにモーニング娘。は公式応援団として
応援しなければならない。
なんでわたしたちなんだろう?
なんでこの曲をキダムのテーマソングにしたんだろう?
自分達の活動に疑問はつのるばかり…
314名無し池:02/10/04 23:47 ID:7ztCk0UQ

3時から『27時間テレビ』の生放送で新曲初披露。
それが済むと衣装もそのままに急いでフジテレビに移動した。

移動してすぐに『HEY! HEY! HEY!』のオープニングとイントロクイズを撮る。
イントロクイズ。モーニング娘。お姉さんチームで一緒になった
なっちとカオリが協力し合って答えてた。
やっぱり二人はずーっと音楽聴いてただけあって強い。
二人で答えすぎたから、わたしたちお姉さんチームは松本さんに
「あいつら休ませてくれんかなあ」
って言われてしまった。それでも答えてたらついに浜田さんに
「お姉さんチームしばらくお休みです」
って言われちゃった。
もっと、答えたかったのになあ……
それからは参加が許されても遠慮がちになっちゃった…
なんで他のチーム『ダイアモンド』くらい分からないのよ。
わたしのななめ後ろにいたなっちも、その横にいたカオリも
答えられない他のチームに焦れている。
けっきょくイントロクイズはわたしたちが圧倒的に答えていたにもかかわらず、
最後の大逆転ルールによって負けてしまった…
315名無し池:02/10/04 23:49 ID:7ztCk0UQ

イントロクイズの収録が終わるとようやく休憩の時間がとれた。
ダウンタウンの二人とケミストリーが収録している間はわたしたちはお休み。
13人一部屋の楽屋でみんなお弁当を食べる。
何時間ぶりのまともな食事だろう…

わたしはお弁当を隣で食べていたなっちに声をかけた。
「ねえ、なっち。最近料理してる?」
「えー、なによ? いきなり」
「最近さあ、よくするようになったんだよね」
「へー。…なっちは最近あんましてないかなあ。
 ここんところ忙しいしさ、朝ちょこっとタマゴ焼いたりするくらいかなあ」
「なんかね、最近おいら目覚めたね。
 料理とかも出来なきゃダメだなって」
「ふーん……
 なんか最近いろいろと目覚めてんね…
 犬とかも飼い始めたりしてさ」
「…うん…これ以上モーニング娘。中心の生活してたらいけないなって
 思うようになった……
 少しは普通の生活も楽しもうって思うようになったかな…」
「普通の生活かあ…
 そんなの夢みたいな話だなあ……」
316名無し池:02/10/04 23:50 ID:7ztCk0UQ
なっちが遠い目をしながら懐かしそうに振り返る。
「ミュージカルのときにさ、お父さんが10年くらい前の
 ホームビデオを持ってきてくれたのよ。
 したら、そこに家族でバーベキューしてる姿とか映っててさ、懐かしかったね…
 もうそんなことずーっとやってないし、どんな気持ちでお父さんが
 このビデオテープ持ってきたのか考えるとさ……」
「……ミュージカルの練習が始まる前に帰ったときは?
 あのときはそういう時間は取れなかったの?」
「……うん。やっぱり東京との往復のことも考えなくちゃならないし、
 そこまでの時間はなかったかな……
 あ、でもメロンがわたしのことを覚えててくれたのはうれしかったなあ。
 帰ったの2年ぶりだったのに、わたしのこと見たらすぐに分かってくれて…」
なっちが自分の家の犬のことを語るときはホントに楽しそうだ。
「おいらのところのクッキーもそうなるかなあ?
 かわいいんだけど、まだ完全になついてくれてなくてさあ」
「大丈夫でしょ。会える機会はいっぱいあるんだから、
 そのうちごっつぁんのところのタカみたいになつくって」
「……早くそうならないかなあ」
わたしたちは犬の話に花を咲かす。
そのうち辻や珍しいことにごっつぁんも加わってけっこう盛り上がった。
やっぱりみんなで食べる食事はおいしいね。
仕事終わってから家で一人で食べるごはんはおいしくないよ……
317名無し池:02/10/04 23:53 ID:7ztCk0UQ
雑談れす。
りんねのハロプロからの卒業。
かなり寂しいものがある。
これで99年の夏のハロプロコンに参加予定だった21人(後藤除く)の内、
ハロプロに残るのはたったの8人。
とりわけ安倍にとってりんね脱退はショックだろうなと思う、、、
あさみのショックよりも大きいかもしれない。
安倍にとってりんねは「なっち」と呼んでもらえるハロプロ内の数少ない友人の一人。
プライベートで映画に行ったり食事をしたりする仲。
言わば中澤にとっての平家と同じような存在だったのかもしれない、、、
318名無し池:02/10/04 23:54 ID:7ztCk0UQ
ピッコロタウンの話。
仮に自分が和田薫編で書いた妄想を続けるとすると、「やつら」と表現したグループの
受け付け窓口の一つがピッコロタウンとなります。
ピッコロタウンが間に合わせのCDしか発売しないことの説明もついてきます。
荒稼ぎが露骨なレーベルですからね、、、
市井も復帰のときからやつらの影がちらついてたし、市井の復帰と同時に
あのレーベルを立ち上げたのはなんらかの因果関係があるからでしょう、、、
でも合流目的の後藤移籍ではないと考えます。
ただ後藤も市井も稼げなかった場合、奥の手としての合流はあるかもしれない。
市井がそうなりつつあるのは気になるところだけど、まだその段階ではない。
何か動きがあるとしたら後藤のミュージカル後、つまり保田の卒業の頃に
なるのではないでしょうか。
319名無し池:02/10/04 23:55 ID:7ztCk0UQ
ただの脳内妄想です。わざと分かりにくく書いてる部分もあります。
気になるようでしたらその手のスレに行ってみてください。
自分なりの妄想を見つけられるかもしれません(w

たぶんないとはいえ市井・保田・後藤が合流なんてことになったら
吉澤のショックがデカいでしょうね。
ますます吉澤は、、、

この小説、後藤編が必要だと思いますか?
和田薫編でだいたいの状況は語ったし、多くを語るとも思えない後藤だから
このまま書かずに進んでいこうかとも思っているのですが、、、
希望が複数あれば悩むんですが、迷いどころですね。
320名無し池:02/10/04 23:56 ID:7ztCk0UQ
>たぢからさん
うーん、自分はこれからの娘。が4期・5期メン中心になるとは思ってないんですよね。
4期・5期はユニット活動の方に重点を移すように思えます。
逆に娘。本体は後藤が抜けたことによって旧メンへの依存度が増すかもしれないなあと。
飯田は分かりかねますが、安倍・矢口はこれからも核を担っていく
存在ではないでしょうか?
人気がどうとかいう話ではなく、周囲の芸能界の目はそういう感じではないかと。
それを無視するUFAとも思えません。

これは何にも根拠のない妄想なんですが、『Do it! Now』の後藤パートは
一時的に保田が歌うような気がしてます。
他の曲はどうなるんでしょうね?
誰が歌うにせよパートぶつ切りは勘弁してもらいたいものです。
321名無し池:02/10/06 12:55 ID:Xbw6M0b4
HEY! HEY! HEY!の次の収録に備えてわたしたちは全員浴衣に衣装替え。
順番に着付けしてもらって、わたしが楽屋に帰ってくるとまだカオリがいる。
「カオリ、行かなくていいのー?」
「うん、今行く。ちょっと待っててもうすぐで終わるからさ。
 まだ大丈夫でしょ?」
そう言って手元のマンガを読み続ける。
「カオリー、またマンガ? 好きだねぇ…」
「午前中のシャッフルのときに石井ちゃんに借りたんだー。
 明日の収録までに返すって言っちゃってるからさあ…」
カオリはなんだか4月くらいからマンガにハマってしまっている。
収録で一緒になることが多い石井ちゃんの影響かなにか知らないけど、
石川やメロンの斉藤さんまで巻き込んでハロプロの中にマンガブームを
起こそうとしている。
でもさあカオリ、じっと端の方で読んでるだけじゃみんな気味悪がって
近づいてこないと思うよ…
322名無し池:02/10/06 12:57 ID:Xbw6M0b4
カオリがやっと着付けに出ていったと思ったら、なっちが入れ替わるように
楽屋に戻ってきた。
「あー、なっち、その浴衣かわいい!」
オレンジの地に白い花をあしらって、髪には花のアクセサリーを一櫛。
もー、この人は他人のくすぐりどころってのを適確に捉えてくるんだから…

…ああ、ヤバい…
……いつもの欲求が…
…どんどん昂ってくる……

「…ねぇなっち、……チューしていい?」

「はあ? 矢口、何言ってんの?」

「いいじゃん。チューしようよー」

「ちょ、ちょっと待ってよ…」

「いい?…するよ?」
323名無し池:02/10/06 12:58 ID:Xbw6M0b4

強引に顔を近づけていって、チューをしようとした…
…その瞬間、なっちが顔を背けて逃げていく。

「あー! もうなんで逃げるのよぉ?」
「…だって恥ずかしいんだもん……」
「何でよぉ? 辻や加護にはさせてるじゃん!
 わたしにもさせてくれたっていいじゃないのよー!」
「ののと加護は別だよぉ…」
「…じゃあおいらも別にしろよー」

そう言ってまたなっちに近づこうとする。
またなっちが逃げる。
追いかけるわたし…
逃げるなっち……
324名無し池:02/10/06 13:00 ID:Xbw6M0b4


「コラ待て、なっち、チューさせろー」


やっとの思いでなっちを捕まえたと思ったら後ろから軽く叩かれた。
「何やってんの?あんたたち!
 そんなことしてたら浴衣が乱れちゃうでしょ!」
「あっ、圭ちゃん。
 だってさー、なっちがチューさせてくれないんだもん。
 もう少しなんだから邪魔しないでよぉ」
325名無し池:02/10/06 13:01 ID:Xbw6M0b4
「何考えてんのよ矢口……
 …そうだ、じゃああたしとする?
 あたしは抵抗しないからさ」
圭ちゃんがくちびるを突き出してくる。
「グエっ、いやいいです。いいです。
 そんなの突き出さないでください…」
「矢口ー! 『そんなの』って何よー!!」
わたしが圭ちゃんから顔を背けているその隙に…
ああ……なっちがわたしの腕から逃げていく……
「あ、ちょっと待ってー、なっち!」
「じゃあねー矢口、あとは圭ちゃんとごゆっくりー」
そう言い残すと辻と手をつないで楽屋の外に出ていってしまった。
「あー、なっちー!!」
追いかけようとしても、今度はわたしの腕をつかんで離さない人が……
ハっ! わたしたちいったい何やってたの…?
腕をつかまれて急速に興奮が冷めていくわたしがいた。
ゴメンよー圭ちゃん。やっぱりムリ。
326名無し池:02/10/06 13:02 ID:Xbw6M0b4

ダウンタウンさんとケミストリーさんの収録が終わったらしく
わたしたちは収録スタジオに向かう。
わたしたちが集合を終えるとダウンタウンの二人が入ってきた。
なんだか浜田さんの様子がおかしい。
顔も真っ赤だし。
松本さんが
「僕一人やと思っといてくださいね」
って言っている。
そっか、ケミストリーさんとのコーナーは『居酒屋トーク』って聞いてたけど
浜田さんは収録中にそんなに飲んじゃったんだ…
327名無し池:02/10/06 13:03 ID:Xbw6M0b4

わたしたちモーニング娘。はこれからくじ引きをしてチーム分け。
…やだなあ、浜田さんのチームにはなりたくないなあ。
最初にわたしがくじを引いて松本さんチームになると、
そのあとわたしと同じチームには高橋、圭ちゃん、なっち、ごっつぁん、小川、
よっすぃーって続く。お姉さんメンバーはみんなこっち。
浜田さんチームで一番年上になってしまった石川が泣きそうな顔をしながら
最後にくじを引くカオリに向かって叫んでる。
「飯田さ〜ん…こっち来てくださ〜い…」
カオリは運良くというか悪くというか、浜田さんチームのくじを引いた。
ホッとしている石川。
石川は責任感じすぎると回りが見えなくなっちゃうからなあ…
良かったね石川、カオリが入って少し余裕ができてさ。
328名無し池:02/10/06 13:04 ID:Xbw6M0b4

そのあと金魚すくい対決、かき氷早食いリレー、足で触って何じゃろな対決と
順番に収録を済ます。
途中レモンのシロップをぶちまけちゃったり、
ゲームで全然活躍できなかったけど収録は楽しかったなあ。
きくちさん、日曜日はなかなか来れないけどまた番組に呼んでくださいね…

最後にもう一回着替えて新曲の収録。
歌収録を終えて楽屋に戻る頃には9時を超えていた。
今日の仕事はこれでおしまい。
みんなそれぞれの帰路につく。
……タクシーに乗ってから思い出した…

あ! なっちにチューするの忘れた!!


329名無し池:02/10/06 13:11 ID:Xbw6M0b4
雑談れす。
ちょっとの間だけ使った15chのスレに、
ヴァネッサ・カールトンに惹かれる安倍が気になっていると書いたことがある。
6月27日と7月18日に推薦曲としてエアモニ。の中で彼女の曲をかけた。
なぜ気になったのかはあのスレ見ちゃった人なら分かるけど、
ピアノソロシンガーの姿がより子。とかぶったから。
より子。のFACTORYの直後だったことから。
そのことが妙に引っかかっていた。

7月20日のLF-R Recordの放送の中でより子。はギターを弾き始めたと言っていた。
安倍は8月に入ると今度はミシェルブランチの曲を推薦曲としてかけている。
この関係性は何なんだろうなと気になったり、、、

で、本題。
エアモニ。で6月27日にかけた推薦曲が「サウザンド・マイルズ」。
そして昨日、より子。はその曲をライブで歌った。
偶然に過ぎないことは分かってるつもりでも、何らかの接点をそこには
求めたくなってしまう。
福田-より子。があまり連絡を取り合う仲ではないということ、
より子。はどちらかといえば飯田に近いところにいるということを
差し置いても、なんとなく安倍-福田-より子。のラインを考えたくなってしまう。
まあこれこそ妄想の極致ですね、、、
330名無し池:02/10/06 13:12 ID:Xbw6M0b4
より子。のライブはアーティストと観客の距離がすごい近かった。
やっぱりこの人はライブでこそ生きる人だなと再認識。
まあとにかくいろいろとやってくれたんではないかと。
需要がないと思うので詳しくは書かないけど。
たぶんここを読んでいる人がいたら気になること…福田がいたか?いないか?
素直に分かりませんです、はい。
娘。メンバーがいたか?いないか?
これも分かりません、、、飯田あたりのラジオの発言を待ちましょう。

そういえばより子。のバックバンドのメンバー、
バンマス兼ギターが娘。の曲を編曲している高橋諭一。
これは去年のより子。初ライブの時からそうなんだけれど、
おそらくより子。にギターを教えたのはこの人なんだろう。
そしてソニンも。
高橋諭一と言えば3月頃のMUSIX!で市井にギターを教えていた姿を思い出す。
ここにも気になるつながりがまた一つ、、、
331名無し池:02/10/08 23:23 ID:mEVw7l25


     ◇      ◇      ◇

332名無し池:02/10/08 23:25 ID:mEVw7l25


「ねえ、なんでわたしこっちのチームになったのかなあ?」

新しいポッキーのCMの撮影。
最初わたしは大人数のチームの方のはずだったのに、
なぜかわたしだけ変更になってカオリとごっつぁんとよっすぃーと同じチーム。
圭ちゃんはシックなイメージのこっちのチームをうらやましがってたけど、なんでわたし?
よりによって背の高い3人と一番チビのわたし…
順当にいくなら石川でしょうに。ビターチョコのCMなんだから…

「みんなはなんか聞いてないの?」
わたしが聞いても3人は首を振るばかり。
「だいたいなんでいきなり4人に増えたのさ……」
やっぱり3人は無言…
「ちょっとー、聞いてるのー?
 わたし独り言言ってるみたいじゃない…」
「……聞いてますよぉ。
 …きっとあれです……矢口さんのセクシーさに負けて急に変更したんですよ」
微笑みながらよっすぃーが言う。
「……よっすぃー本気で言ってないでしょ」
「言ってますよぉ。なんてったって矢口さんあっての『セクシー8』ですから」
「もぉ…説得力ないなあ……」
まあいいけどさあ…
こっちのチームに移ったおかげでコスプレしないで済んだし…
333名無し池:02/10/08 23:26 ID:mEVw7l25

 ・ ・ ・

その翌日、名古屋でハロープロジェクトのコンサートのツアーがスタートした。
全員のリハが終わるとテレビ朝日のスイスペ用の『Do it! Now』の歌収録をする。
先週鶴瓶さんと国分さんと撮ったトーク部分からの続き。
…トーク収録は楽しかったな。けっこうホンネがしゃべれて。
なによりも1期と2期がモーニング娘。を支えているって言われてうれしかったなあ。


「裕ちゃん、裕ちゃん! ゲネプロのときのパンツの話、ラジオで話していい?」

わたしは赤い衣装もそのままに舞台袖で収録を見ていた裕ちゃんに話しかける。
334名無し池:02/10/08 23:27 ID:mEVw7l25

ハロープロジェクトのコンサートのゲネプロのとき、わたしたち29人は
大きな一つの楽屋を全員で使っていた。
ふとわたしはみんながどんな下着を着けてるのか気になり、みんなの下着を片っ端からチェック。
大谷さんがメチャメチャ派手だったりアヤカがやたらとセクシーだったりする中、
気を抜いていたのが裕ちゃん。
まさかあんなパンツはいてるとはね…

「あんたねえ、やめときぃや。また怒られるでしょ!」
「えー、大丈夫だよぉ、あれくらい。
 前はもっと過激な話もしてたんだからさあ」
「前とはちゃうやろー!
 今はなあ、マセた子供からウブな大人まで聴いてんやで。
 あんな話してみいや、事務所だけやなくてファンまで文句言うてくるで」
「うわ、裕ちゃん、すごい皮肉……」
335名無し池:02/10/08 23:28 ID:mEVw7l25
「…まあとにかくあれや…話したらアカンっちゅうことや」
「そんなこと言ってー、ホントは自分のパンツばらされるのがこわいだけでしょー?」
「なんでや? あたし、ばらされて恥ずかしいパンツなんか着けてへんもん」
裕ちゃんがフフーンといった感じで笑う。
「ふーん……じゃあしゃべっちゃおうっと」
「アカン言うてるやろー!!」
「ほらー! やっぱりイヤなんじゃん。
 素直になればいいのにさー。あのパンツばらされたら恥ずかしいでしょー。
 あのパンツはまずいよねえ。気ぃ抜いてるもんねぇ」
そう言うとわたしの口を裕ちゃんがムニューってつまんでくる。
「矢口ー、そんなこと言うんはこの口か? この口が悪いんか?」
「うぁ、裕ちゃんやめてよー。矢口のセクシーな口になにするのさー」
「何がセクシーやねん。生放送で恥さらしたくせに」
「あー、傷付いてること言ったなー。けっこう気にしてたんだぞー」
336名無し池:02/10/08 23:29 ID:mEVw7l25
こないだのミュージックステーションで『セクシーな部分は?』の問いに
『口』って答えたらみんなにバカにされてさ……
カオリなんかコトあるごとにマネしてくれちゃって…
「そんなら癒したろうか? あたしのこのセクシーなくちびるで」
「…いや、いい……」
「なんやねん、つれないなあ」
「裕ちゃんのキスはもういいよぉ…」
ああ…今のあたしみたいになっちも思ってたのかなあ。
なんかイヤだなあ、裕ちゃんと同じように思われてるんじゃ……

337名無し池:02/10/08 23:30 ID:mEVw7l25

「裕ちゃんは明日もラジオあるんでしょ?」
「あたりまえやん。ライブ終わったら速攻で駅まで行って新幹線乗らなアカンねん。
 まあ明日はラジオ楽しみやからエエんやけどね…」
「えー? 何かあるの?」
「うん。より子ちゃんと和田さんがゲストで来んねん。
 …あー、和田さんはラジオには出ぇへんけどな」

より子ちゃんか…。前にレコーディングスタジオで会ったことあるんだよなあ。
あのとき『わたしにも曲作ってよ』って言ったこと覚えてるかな。
…あれももう1年くらい前のことか……
338名無し池:02/10/08 23:31 ID:mEVw7l25

「矢口はより子ちゃんのことよく知ってるんやろ?」
「えっ!なんで? 一回会っただけだよ」
「そうなん? さっきより子ちゃんのアルバム見たら、裏に名前載ってるからてっきり…」
「…何それ? わたし聞いてないよ…」
「スペシャルサンクスのところに明日香と並んで名前載ってんやで。カオリもな」
「ウソ…ホントに?」
「ホンマやって。福田明日香の上にしっかり矢口真里と飯田圭織って書いてあるから。
 疑うんやったら後であたしの楽屋に来ぃや。
 より子ちゃんのアルバム持ってきてるから」
「そっか…ホントに載ってるんだ。なんかうれしいな…」
「それがねえ…面白いのよ、そこの部分。
 矢口とかカオリとか他の人には『モーニング娘。』とか何かしら肩書きが
 付いてるんだけど、明日香だけただの『福田明日香』なの。
 知らん人が見たら何者なんやっちゅう話や」
「ハハ…なんか明日香っぽいね。
 何聞かれても『わたしは福田明日香です』って言いそうだし…」
「そう思うやろ? それ考えたらあたしも笑えたわ」
そう言って裕ちゃんもちょっと笑った。
339名無し池:02/10/08 23:33 ID:mEVw7l25

「…どうなん? 最近は明日香と連絡取っとらんの?」

わたしはうつむきがちに軽く首を振った。

「そっか…仲良かったのにね……」
「…………」
「…あたしは最近よく連絡取ってるよ。
 さっきも『明日より子ちゃんに会うよー』ってメールしといたし」
「……へえ」
「何やろなあ…。まあ去年からちょこちょことは連絡取っとったんやけど、
 最近特に増えたかなあ…」
「……そうなの?」
「うーん…『東京美人』のレコーディングしてから増えたかな、やっぱ…」
「えー? なんで『東京美人』が関係あんのさ?」
「なんや、気付いとらんのかい…
 あの曲は東京で挫折してる孤独な女の子への応援歌なんやで。
 その話つんくさんから聞かされたとき真っ先に明日香のこと思い出したわ」
「……挫折? 明日香が…?」
「まああのコはそんなこと口にはせえへんけど…
 …でもここ1,2年でいろいろとあったことは知ってるやろ?」
340名無し池:02/10/08 23:34 ID:mEVw7l25
学校やバイト先にまで押し掛けてくるファンがいたこと…
そのせいで学校もバイトも辞めなければならなくなったこと…
週刊誌やストーカーに追いかけられたこと…
ファンを信用して写真を撮らせてあげたら、その写真を売られたこと…
辞めてからも明日香はモーニング娘。の呪縛から解き放たれていない…

…裕ちゃんは話を続ける。
「初めて会ったときの明日香ってさ、今の新垣や辻・加護と比べてもはるかに大人やったろ?
 なんかな…最近ようやくあのコの考え方が実際の年齢に追いついてきたって感じがするのよ。
 あのコの考えてることがようやく実現できるっていうね…
 そういう年齢に明日香もようやくなってきたんだなって…」
「じゃあ裕ちゃんはそんな明日香を応援したいんだ…? 『東京美人』でさ…」
「まあ明日香に限った話やないけどな。矢口かてそうやで。
 なっちもカオリも、紗耶香だってな……みんな応援したいんよ、あたしは。
 みんな東京美人になって欲しいねん」
341名無し池:02/10/08 23:35 ID:mEVw7l25

「なーにクサイこと言ってんだよ、ゆーこ」

そう言って裕ちゃんの首をしめた。
ちょっとしたわたしの照れ隠し。
面と向かって応援してるって言われてもねぇ…

「コラっ。やめんかい矢口」
裕ちゃんもわたしの首をしめてくる。

「やめろよー、アホゆーこ」

半年ごとにしか裕ちゃんとはこうして一緒に遊べないけど、ホントはうれしいんだよ。
だから裕ちゃんの楽屋にもしょっちゅう行くんだ…
あんまり松浦や藤本と仲良くしないでよぉ…
342名無し池:02/10/08 23:38 ID:mEVw7l25

「裕ちゃん、ソロライブ見に行くからね」

「なんやいきなり?」

「いいの! とにかく行くからね。
 それと…やっぱり…キスしたくなったらいつでもしていいよ……
 矢口でよければさ…」

わたしの言葉に裕ちゃんがキョトンとしてる。

…うれしいんだ。
こうしてわたしのことを分かってくれてる人がいて…
話さなくても分かってくれてる人がいて…

まだまだ裕ちゃんはわたしたちのリーダーだからね…
これからもわたしたちのことを影で支えていてね…

343名無し池:02/10/08 23:40 ID:mEVw7l25
雑談れす。
新曲は旧メンヲタの人はどうなんだろう?
自分はありだと思うのですが、、、
少なくとも歌詞はそれほどぶっとんだものではないと思う。
っていうか妄想しやすいかも(w

『Do it! Now』のPV撮影の日の話。
安倍は撮影がすべて終わって、みんなが帰ったあとに
がらーんとした一人っきりの楽屋でメイキング用のビデオカメラを
回したという話を思い出した。
今までの娘。のこととか、これからの自分のこととか
いろいろと一人語りしたらしい。
これが見たかったからシングルDVDが欲しかったんだよなあと、
エアモニ。を聴き直してて思い出した。
でもけっきょく使われなかったんですね、、、
これは見てみたいなあ。事務所的にNGだったのかな?
344名無し池:02/10/09 23:51 ID:vEjo+Pis

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「ねえ愛ちゃん」

「なあに?まこっちゃん」

「あそこの丘の上に見える木さ、『親子の木』って言うんだって」

「へえー、よく知ってるねー」

「うん。さっき牧場の人に教えてもらったんだー」

「ふーん、『親子の木』かあ。なんかいい名前だねー」

「うん。そう思うでしょ?
 それでさあ…昔あの木のところにモーニング娘。がロケで来たことあるんだって」

「そうなんだー、珍しいね。こんなところまでロケに来るなんて。
 何のロケだったの?」
345名無し池:02/10/09 23:53 ID:vEjo+Pis

「やだなあ、愛ちゃん。気付かないのー?
 『ふるさと』のPVのロケだよー。
 あの木のところで先輩たちが映ってたじゃない!」

「…あー、言われてみたら、見覚えがあるわ…
 そっか、あそこであのPV撮ったんだー」

「あたしさー、あの曲大好きなんだ。
 モーニング娘。に入る前からずっと……
 それで、この前コンサートで歌ったでしょ?
 あれでもっともっとあの曲を好きになっちゃったかな…」

「まこっちゃん泣きそうになってたもんね。あたしの隣でさあ」

「ありゃ、見られてたか…
 …うん、なんかねー…歌うたびに泣きそうになるの必死で我慢してたよ…」

「でも先輩たちもみんな我慢してたっぽかったよ。
 安倍さんとか、矢口さんがさあ…」
346名無し池:02/10/09 23:54 ID:vEjo+Pis

「泣けるんだよー、あの歌詞…
 心に染みるっていうか……
 とにかく泣けるの…

 …でもさ…すごいと思うんだー」

「え?なにが?」

「…あの歌詞の内容と『親子の木』が。
 よくこんな場所探したなあと思って…
 それでよくこんなところまで来たなあって…」

「よっぽどつんくさんも思い入れがあったのかな?」

「そうなのかなあ…
 でもさあ、あの曲でここであんなPV撮ったら絶対に思い出に残るよね…
 一生忘れらんないよね。
 だから先輩たちもあの曲への思い入れが強いのかなって思えたんだ…
 矢口さんがいっつも嘆いてるじゃん、『今回のPVもスタジオなんですか?』って。
 絶対『ふるさと』を意識してるよ、あれは……」
347名無し池:02/10/09 23:55 ID:vEjo+Pis

「なんかさー、まこっちゃんも相当意識してるね。
 めちゃくちゃペラペラ喋ってるもん」

「…うん。そりゃあ意識してるよぉ。
 あたしもあれくらいのものを歌ってみたいなあって。
 まだまだ全然無理だけど、いつかああやって心に残る歌を歌ってみたいなあって。
 ミュージカルの頃はよく分からなかったけど、『Do it! Now』と『ふるさと』を
 歌ってみて、ようやく先輩たちの言ってたことが少しだけど分かってきた気がするんだ……」

「…まこっちゃん……
 …あとで時間とれたら近くまで行ってみようか?
 あたしたちの思い出にもなるかもしれないよ」

「お!いいねえ。
 でもそんな時間あるかなあ?」

「うん…だからこの牛の餌、早くやり終えちゃお。
 それでお昼ごはんの時間になんとかして行こうよ」

「よしっ、気合い入れて早く終わらせるぞー!!」

348名無し池:02/10/09 23:58 ID:vEjo+Pis
雑談れす。
ちょっとした短編です。
昨日寝そけてしまいまして、短時間でちょろっと書いてみました。
本編の一部と考えてもいいんですけどね。
小川と高橋がNHK BSの特番で美瑛の牧場に行ったときの話です。
美田小学校の近くでロケしてるから、間違いなく「親子の木」はすぐそばです。

『ふるさと』にはやっぱりいろいろと考えさせられるものがありますね。
この曲にまつわる真相が出てくるのはずっと先の話なんだろうけど、
安倍はもちろんのこと、中澤も矢口も飯田も市井もこの曲を大切にしているのは確かですね。
安倍メインだったことは関係なくみんな大切にしている。
市井が去年『ふるさと』をレコーディングしたときに歌詞を載せた紙に書いてあった
「がんばるべさ」の安倍の文字…あれを見て自分は安倍と市井の関係を疑わなくなった。
むしろ連絡を取り合ってる仲なんじゃないかって…
それらのことといい、中澤が以前うたばんの中で
「この頃誰かがわたしたちのこと潰そうとしてた」と言ってたことといい、
無数にある北海道の牧場の中からわざわざあそこを選んでBS特番を作ったことといい、
『ふるさと』にはやはり一般人には知り得ない何かがあるんでしょうね。
まあ、某掲示板ではさんざん語ったことです、、、重複して申し訳。
349名無し池:02/10/11 11:33 ID:De+MXKkE


     ◇      ◇      ◇

350名無し池:02/10/11 11:34 ID:De+MXKkE

なんであたしの人生振り返っているんだろう。
なんでモーニング娘。やタンポポの歴史を語っているんだろう。

石川とOH-SO-ROの収録。
あと1ヶ月とちょっとであたしの誕生日。
石川がインタビュアーになってあたしに質問をしている。
オーディションの頃のこと…、なっちと初めて会ったときのこと…、
飛行機通学していた頃のこと…、タンポポが3人だった頃のこと……

やめてよ、大西さん!!
『愛の種』なんてBGMにかけないでよ!
泣きそうになってくるじゃん。
そんな中あたしへの質問は続く…
351名無し池:02/10/11 11:34 ID:De+MXKkE

「あの3人で作った音楽っていうのは、すごい良かったね…楽しかったし…」
「…わたしと加護が入ったときはどんな印象でした?」
「それまで大人っぽいユニットって言われてたから、どういう風になるか
 すっごい不安だったな……
 …でも、今となって思えば良かったのかなって思う。
 音楽的にもさ、かわいらしくなったけどタンポポが大事にしてる音楽性っていうのは
 変わらなかったから、入ってきて良かったと思うよ…」
「…そうですか…よかった……
 わたしもカッコイイっていうかセクシーなタンポポをモーニング娘。に入る前から
 ずっと見てたから、わたしが入って崩れるんじゃないかって不安でした…」

石川とこんなことまで話せるようになったんだね…
……うん、4人になったときはイヤでイヤでしょうがなかったけど、
今こうして考えてみれば4人で残したものもいっぱいあるし、
タンポポとしては良かったのかなあって思う…
彩っぺと合わせて5人でタンポポなんだなあって思うよ…

っ!! だからやめてって言ってるじゃん、大西さん!
「何にも言わずにI LOVE YOU」とか流さないでよー…
泣いちゃうから止めてよー…
352名無し池:02/10/11 11:35 ID:De+MXKkE

 ・ ・ ・


それから2週間が過ぎ、ハロプロのコンサートも始まり
そして今日、わたしたちタンポポの4人は新曲をレコーディングしている。
9月の初めに出すっていうアルバムの中に入れる曲だとか…
アルバム用の曲『I & YOU I & YOU & I』。
「何年たっても」か…、なんだか『Do it! Now』を思い出すな……
そのことを矢口に話したら
「何年たっても最初と変わらない新鮮な気持ちでいたいよね…」
って言われた。
最初と変わらない気持ちか…
彩っぺどうしてるかな……
353名無し池:02/10/11 11:39 ID:De+MXKkE

「『大・中・小』って叫んでたの懐かしいよね」
わたしがポツリとつぶやいた一言に矢口が反応する。
「最初はさ、すっごい恐かったんだよ。
 本当はカオリと彩っぺの二人組のユニットでいくはずだったのに
 わたしも入れられてさ。
 ホント恐かった……」
「あー、そうかもねぇ。彩っぺ、態度露骨だったしね」
「でもさ、そのあと3人で苦労して、段々仲良くなって、
 1日1時間しか寝れない日とかもあったけど、
 あの頃に経験したことってやっぱり強烈に記憶に残ってるよ…」
「…なんか今回の曲さあ、彩っぺもいれて5人で歌ってる気ぃしない?」
「えー? 『I & YOU I & YOU & I』で、数えると5人だからとか言うんでしょ?
 そこまで考えてないって!
 今さら彩っぺのことを持ち出してくるつんくさんでもないでしょ?」
「…えー、そうかなあ…」

矢口はそう言うけど、この不自然にIとYOUを繰り返した意味は?
…なんでこのタイトルにしなくちゃいけないの?
354名無し池:02/10/11 11:40 ID:De+MXKkE

「おいらこの曲すごい気に入ってるんだ!」
「うん、あたしも…」
「この曲シングルで歌いたいよねえ。
 歌番組とかさあ、この曲で出たいのに…
 タンポポの次のシングルってどうなってるんだろうねー?」
「『王子様と雪の夜』からもう半年だもんね…
 …でも『聖なる鐘がひびく夜』の後もそんくらい待たされたじゃない?
 もうそろそろじゃないの?」
「えー、でもあの時は彩っぺの卒業が挟まってたからさあ…」
「きっと何か考えてくれてるって。
 …だってもうすぐ夏のコンサート始まるのに『王子様と雪の夜』のまま
 いくわけないでしょ?」
「分かんないよー。『真夏の光線』とかも冬に歌わされてきたんだからさ…」
355名無し池:02/10/11 11:41 ID:De+MXKkE

あたしたちの不安をよそにレコーディングは淡々と済んでいく。
石川が歌って、矢口が歌って、そしてあたし。
学校が終わってから来た加護が録り終わると、みんなでコーラス録り。

「石川と加護も上手くなったもんだよね。
 こんだけレコーディング早く終わるようになるなんてさ」

あたしがちょっと誉めてあげたら二人ともすごい喜んでた。
最初のレコーディングのときなんてどうしようかと思ったもんなあ……
紗耶香が卒業した武道館コンサートの翌日に録った『乙女パスタに感動』。
レコーディングブースで愕然とした思い出……

それまでのタンポポとあまりにも違う曲。
そして何より入ってきた二人との歌に対する意識の違い。
あの頃は毎日そんなことに悩んでたな……
言葉にすることが許されないそんな思いを絵に描いたこともあったっけ…
356名無し池:02/10/11 11:43 ID:De+MXKkE


  『でもすき、、、
      大すき、、、
   わかってよ、、、
      心の中を、、、』
                   TANPOPO「すき」より


そして、それを乗り越えて今がある…
やっぱりあたしはタンポポが好き。
何が何でもタンポポが好き。
タンポポがあたし…
タンポポこそあたしの生きる場所…
それはメンバーが変わってもあたしの変わらない気持ち…
タンポポをあたしは愛し続ける……

357名無し池:02/10/11 11:50 ID:De+MXKkE
 ◆ ◆ ◆

1999年12月25日「タンポポ畑でつかまえて」より。

愛するカオリン&真里へ
カオリン、真里っぺ。本当にありがとう。
二人に会えなかったら、いまの彩っぺはなかったと思います。
カオはなんだか知らないうちに、彩っぺの心の中をよくわかっていた気がします。
真里は一緒にいてチョー楽しかった。なんかホント、気の合うともだちって感じで、
真里とふざけているときはホント、素の石黒彩だったなあと思います。
タンポポって、本当に最高のユニットだって、あたしは思います。
ホント、つんくさんに感謝、感謝でございます。
二人といて、泣いたり笑ったり、本気でケンカしたり、青春してるって感じなんだもん。
自分が生き生きしているのを感じるんだよ。
タンポポはスケジュールもハードで、お互い限界までがんばっていたよね。
そのときも3人でいたから、なんか彩っぺがモーニングでもタンポポでもなくなったとしても、
心はずっとつながっていられる気がします。
3人で感じた最高の感動は、一生ぜったい忘れません。
私たちタンポポ3人を応援してくれたみんなも、本当にどうもありがとう。
タンポポは2人になっても、この最高の2人を、ぜったいに応援して欲しいです。
彩っぺはこれから新しいスタートです。
カオリが前に言ってくれたよね。
「タンポポの花は2本になるけど、彩っぺはタンポポを育てる、水だったり光になるんだよ」って。
すごい嬉しかったよ。あたしも、ぜったいそうなりたい、と思っています。
2人の事が誰よりも誰よりも本当に大好きです。2人の歌がホントにホントに大好きです。
これからもすてきな歌を歌ってね。困ったときは、たまには頼ってよね。
本当にありがとう。愛しているよ。・・・・ from 石黒彩 でした
358名無し池:02/10/11 11:51 ID:De+MXKkE

「あたしに約束して。
 あたしは、2人の歌声とかすっごい大好きなの。
 ホントに大好きだからこれからもいい歌を歌って、
 絶対にテレビで見てるあたしを感動で泣かせてください」

「新しいスタートをきる彩っぺに強く生きてほしいなって思うから
 カオリと真里から歌を贈りたいと思います……『たんぽぽ』…」

359名無し池:02/10/11 11:52 ID:De+MXKkE
ハロプロ改編前の飯田のタンポポへの気持ちはこのラジオと
7月16日のOH-SO-ROを聴けば、かなり分かるんじゃないかと思う。
次回から7月28日の話に入る気でいるからあまり細かくは書きませんが、
3人でやってたこと、途中2人になってしまったこと、
新しい2人を受け入れられなかったこと、
徐々にそれも受け入れて4人なりの音楽を作りあげたこと、
そういった過程を経てあの日を迎える。
逆にいえばそれら全てを無視してあの改編が発表された、、、
ごく普通の感情を持っていれば受け入れられるわけがない。
どうせだったらなぜ解散という道を選ばなかったのだろうか。
去る方も残る方も、応援していたヲタにも一番厳しい選択を強いたのは疑問だ。
タンポポというユニットが先細りになって自然消滅する姿だけは見たくない、、、
現メンバーには「タンポポを枯らせたメンバー」という汚名はできることならきせたくない。
だから改編するくらいなら解散してほしかった。
360名無し池:02/10/11 11:53 ID:De+MXKkE
ついでに。
7月16日のOH-SO-ROの中で石川が「9人時代の娘。はすごい団結力があった」と言っている。
石川でさえも(w失礼)そう思うんだから、実際イイ感じだったんだろう。
5期メン加入以降、よく低落気味とか落ち目とか言われるようになったのは、
この団結力に翳りがさしたからではないかと思う。
グループとしての方向性が見えなくなってしまった。ぼんやりとしてしまった。
結果として勢いが感じられなくなったように見えることになってしまったのではないかと。
加入して1年もたてばどの増員のときもある程度の結束力が見えてきたものだけど、
今の娘。には感じることができない、、、


9月23日から日にちが経ち、あの日のことは風化しつつある。
そんな風にUFA(漠然とこう書くしかないが)が考えたのかどうか分からないけど
「ごまっとう」結成の発表、、、
自分はこのユニットに何ら興味もないし、敵意もないけど、
こんなことが成り立つ世界には憤りを感じる。
幾重にも背信行為が重なってることにUFAは気付いているのだろうか。
361名無し池:02/10/11 11:56 ID:De+MXKkE
今日から4日間ほど更新できません。
最後まで参考資料は載せないつもりでしたが、
落ちてしまったときに悔いが残るから、今までの分を載せておきます。

矢口真里編(1)
参考資料 「矢口真里のオールナイトニッポンスーパー」02.04.11放送分
     「矢口真里のオールナイトニッポンスーパー」02.04.25放送分
     「矢口真里のオールナイトニッポンスーパー」02.05.09放送分
     「矢口真里のオールナイトニッポンスーパー」02.05.16放送分
     「矢口真里のオールナイトニッポンスーパー」02.05.23放送分
     「矢口真里のオールナイトニッポンスーパー」02.05.30放送分
     「矢口真里のオールナイトニッポンスーパー」02.06.06放送分
     「タンポポ編集部 OH-SO-RO!」02.06.25放送分
     「安倍なつみのエアモニ。」02.04.04放送分
     「安倍なつみのエアモニ。」02.04.11放送分
     「安倍なつみのエアモニ。」02.04.25放送分
     「安倍なつみのエアモニ。」02.05.02放送分
     「安倍なつみのエアモニ。」02.06.13放送分
     「安倍なつみのエアモニ。」02.06.20放送分
     「和田薫のオールナイトニッポンr」02.03.09放送分
     「MUSIX!」02.04.23放送分
     「ハロモニ」02.05.19放送分
     「HEY! HEY! HEY!」02.02.04放送分
     「ミュージックステーション」02.04.26放送分
     「Matthew's Best Hit TV」02.05.08放送分
     「うたばん」02.07.25放送分
     「ハコイリ娘。」さくらももこ(新潮社)
     「ミュージカル写真集『モーニングタウン』」(講談社)
     「oricon」8/5号 2002 No.29
362名無し池:02/10/11 11:58 ID:De+MXKkE
石川梨華編
参考資料 「タンポポ編集部 OH-SO-RO!」02.03.12放送分
     「タンポポ編集部 OH-SO-RO!」02.05.14放送分
     「タンポポ編集部 OH-SO-RO!」02.05.21放送分
     「FUN」02.04.19放送分
     「ハコイリ娘。」さくらももこ(新潮社)
     「Chain! Chain! Chain!」(光文社)

和田薫編
参考資料 「和田薫のオールナイトニッポンr」02.02.09放送分
     「和田薫のオールナイトニッポンr」02.03.09放送分
     「うたばん」02.08.22放送分
     「走れソニン」02.08.29放送分
     「ソニンのオールナイトニッポンr」02.08.21放送分
     「FACTORY #0093」02.06.08
     「LF+R フライングLIVE vol.2」02.05.04
363名無し池:02/10/11 12:00 ID:De+MXKkE
安倍なつみ編
参考資料 「HEY! HEY! HEY!」02.02.04放送分
     「ミュージックステーション」02.07.05放送分
     「ハロモニ」02.05.19放送分
     「ハロモニ」02.06.30放送分
     「ハローランド」02.07.10放送分
     「MUSIX!」02.02.17放送分
     「MUSIX!」02.07.16放送分
     「安倍なつみのエアモニ。」02.07.04放送分
     「安倍なつみのエアモニ。」02.07.25放送分
     「Memory 青春の光」PV
     「Do it! Now」PV
     「TVガイド」7.20-7.26号
     「oricon」8/5号 2002 No.29
     「CD HITS!」9月号
     「ハコイリ娘。」さくらももこ(新潮社)

飯田圭織編(1)
参考資料 「飯田圭織の今夜も交信中」02.06.06放送分
     「飯田圭織の今夜も交信中」02.06.13放送分
     「タンポポ編集部 OH-SO-RO!」02.07.02放送分
     「タンポポ編集部 OH-SO-RO!」02.07.23放送分
     「oricon」8/5号 2002 No.29
     「CD HITS!」9月号
364名無し池:02/10/11 12:01 ID:De+MXKkE
矢口真里編(2)
参考資料 「矢口真里のオールナイトニッポンスーパー」02.06.13放送分
     「矢口真里のオールナイトニッポンスーパー」02.07.11放送分
     「矢口真里のオールナイトニッポンスーパー」02.07.18放送分
     「矢口真里のオールナイトニッポンスーパー」02.07.25放送分
     「矢口真里のオールナイトニッポンスーパー」02.08.08放送分
     「中澤裕子のオールナイトニッポンサンデースーパー」02.04.14放送分
     「中澤裕子のオールナイトニッポンサンデースーパー」02.07.14放送分
     「中澤裕子のオールナイトニッポンサンデースーパー」02.08.11放送分
     「安倍なつみのエアモニ。」02.05.23放送分
     「安倍なつみのエアモニ。」02.07.25放送分
     「27時間TV」02.07.07放送
     「めざましテレビ」02.07.08放送分
     「HEY! HEY! HEY!」02.07.15放送分
     「HEY! HEY! HEY!」02.07.22放送分
     「MUSIX!」02.07.16放送分
     「スイスペ」02.07.17放送
     「GiRL POP」VOL.58-2002
     より子。「Aizenaha」
     GIRL POP FACTORY BBS

飯田圭織編(2)
参考資料 「タンポポ編集部 OH-SO-RO!」02.07.16放送分
     「タンポポ編集部 OH-SO-RO!」02.08.20放送分
     「飯田圭織の今夜も交信中」02.09.05放送分
     「うたばん」01.11.22放送分
     「飯田圭織 心のスケッチブック。」(近代映画社)
365名無し募集中。。。:02/10/12 13:16 ID:cJANddF7
>>360
9人時代から落ち目が始まってる
団結ってよりも馴れ合いって感じ
366たぢから:02/10/14 23:09 ID:YIU0g2lK
「とくダネ」で、つんく♂が今年中の6期メン加入について言ってたらしいですね。
…となると、ところてん方式で追い出される(と私は思います)メンバーがいるわけで、
ますます娘。の先が見えなくなってきましたね。
尤も、それがこの集団のシステムなのですが、バランスが崩れつつある気がします。
5期メンの立場は… 後輩が入ることによって市井みたいに目立てるか…?

なんか静観というより、訳が分からなくなってきました。一種の中毒症状ですかね?
新曲はOKです。MP3を何度も聴いてます。
367名無し池:02/10/15 00:31 ID:5GRD4xY4
雑談だけで申し訳。
>>365
馴れ合いってのは確かでしょうね。
中澤も自分が抜けたあとの娘。の楽屋を「緊張感がなくなった」って表現してるし。
ただね、石川や加護なんかは去年のミュージカルの頃の一体感をすごい大切に感じている。
楽しかったと思っている。
その気持ちはきちんと記憶にとどめておきたいなと思うわけです。
中澤が抜けてグループとしての方向性を見失ってたときに一つの目標に向かって
感じられた一体感ってのをね、、、
芸能界的にみればまだまだ娘。は女性アイドルのトップクラスにいるわけだし
落ち目とは程遠いところにいると思います。
それをふまえた上で、個人的に感じるターニングポイントを言わしてもらうなら、
石黒が辞める前と辞めたあとだろうなと。自分はそう思います。
368名無し池:02/10/15 00:31 ID:5GRD4xY4
帰ってきてみたら増員情報が、、、
まだよく把握してないんですが、年内には決定で、娘。が大好きなことが条件?
あと2ヶ月なのにオーディションなんかしてる時間ないよなあ。
ハロプロのメンバーからの娘。入り?
過去の落選メンバーからの娘。入り?
いやいや、娘。のことが大好きで、歌もすぐ歌えて、ダンスも曲によっては踊れる
即戦力の人が5人ほどいるでしょ、、、
1人はもうダンスはキツイって言ってるけど(w
折りしも12月はあのコの誕生月。今の娘。の楽曲を歌ってほしいとは思わないけど、
ひょっとするとひょっとするかも。
まあ、これは根拠なし。今の娘。だったらこんな事態になっても不思議ではないなと。
妄想して楽しむのが今の娘。は一番いいかもしれない(w
少しは楽しいことも考えないとね、、、
369名無し池:02/10/15 00:32 ID:5GRD4xY4
>たぢからさん
いつもありがとう。
たぶん前に書いたと思いますが、自分は年明けに起こることは保田卒業だけとは
いまだに思っていません。おっしゃるように、さらに辞めるメンバーがいるのかも
しれないし、娘。自体どうなるのか想像もつきませんね。
バランスも崩れつつあるんでしょうね。なにより心配なのは、ここ一連の改編の動きに
旧メンたちが諦めにも似た感情を持ち始めていることです。
これは前回のANNを聴いてて漠然と思ったことなんですが、「これを乗り越えてやろう」とか
「立ち向かってやろう」とか、そういった覇気みたいなものがなくなってしまったように
感じました。モーニング娘。を象徴する言葉だった「走り続ける」ということが
できなくなりつつあるのでは?
旧メンの中でも特に飯田なんかは過去にしか振り返れるものがなくなりつつあります。
飯田が今の状況では一番心配かな、、、
脱退とかじゃなくて精神バランスがね。
370名無し池:02/10/15 00:34 ID:5GRD4xY4
>5期メンの立場は… 後輩が入ることによって市井みたいに目立てるか…?
上にも書きましたが、後輩じゃなかったりして(w
どっちにしろ今から年末いっぱいまでに決めるってのはどう考えても時間がなさすぎですよね。
今から告知して、オーディションやって、合宿やってって流れはどう考えても無理っぽい。
しかも11月後半からは年末年始のスケジュールでクソ忙しい時期。
入るメンバーはもうきっと決まってますよ。
気になっているのが11月30日に前橋で行われる秋コンのラストライブ。
奇しくもこの日は「愛の種」を完売した日。娘。のデビュー決定からまる5年。
この日になにかあるのかもしれない、、、

りんねが花畑牧場のライブでラストに「二人の北海道」と「雪だより」を
ソロで歌ったと聞いた。
やっぱり、りんねにとってのカントリー娘。はこの曲だったんだな、、、
決してカン梨華ではなかった。最後にこの2曲を歌えたのがせめてもの救いとなった。
これでまた一人去る、、、 でも見るべき人が残ってる限り見続けているのは
たぢからさんの言うように中毒症状なんだろう。
いつになったらやめられることやら、、、
371名無し池:02/10/16 23:44 ID:t/l2+bFb
雑談れす。
メロンのリーダーが斉藤に変わったようで。
斉藤といったら真っ先に「石黒リスペクトな斉藤」が思い浮かぶ(w
メロンの新曲「香水」。香水の匂いを漂わせている石黒の姿が思い浮かんだ、、、

HEY! HEY! HEY!を見ていたら、浜崎あゆみの飼っている犬の名前が
マロン、メロン、リンゴって言うらしい。
それが何って言われたら困るけど、記憶に残ったので書いてみた、、、
372名無し池:02/10/16 23:45 ID:t/l2+bFb


     ◇      ◇      ◇

373名無し池:02/10/16 23:46 ID:t/l2+bFb


「矢口さん! これいいでしょ?」

ミニモニのリハーサルの合間、加護が右腕につけた黄色いリングを
自慢げに見せてきた。

「珍しいねー、加護が腕になんか付けるなんてさー」

「ごっちんとよっすぃーとお揃いなんです。
 さっき3人で付けたんですよ」

へへと笑いながら腕を振ってみせる加護はホントうれしそうだ。
それを見た辻がちょっとした嫉妬心が芽生えたらしく悪態をつく。

「お揃いくらいで喜ぶなよぉ。二の腕が揺れてるぞ」

「うるさいなあ。何にも付けらんないほど太くなっちゃった誰かさんよりましだろぉ」

「なにおー」

…また始まったよ。もう放っておこう。
こいつらにイチイチかまってたらこっちの身が持たないよ……
ミカちゃんがハラハラしながら二人のことを見てるけど、大丈夫だって。
そのうち勝手に仲良くなってるから…
374名無し池:02/10/16 23:47 ID:t/l2+bFb
7月28日。ハローのコンサート。
3週間かけてまわってきたコンサートも今日の2公演で終了。
最終日ということで高木ブーさんやキッズオーディションのメンバーも
今日はステージに立つらしい。
そのキッズの連中が廊下をウロウロしてる姿を見ると妙にイラつく。
緊張感がなくて加護や松浦を見かけるとはしゃいでいる。
わたしは絶対にこのコたちを仲間とは認めない…
自分の意志もないくせに大勢のお客さんがいるステージに立てて、
歌手になりたいわけでもないのに歌うことになるだろうこのコたちを…
わたしは歌いたくても歌えずにいるコたちをいっぱい知っている。
オーディションのときに一緒だったコ、ハロプロからやめていった仲間、
そして今もハロプロに残ってる仲間…、数えればキリがない。
そのことを考えたらキッズの子供達と同じステージに立つだけで気がひける…
今日だってみっちゃんやりんねさんや斉藤さんの気持ちを考えたら……
375名無し池:02/10/16 23:48 ID:t/l2+bFb

…さらにイラついたのが関係者の人が今日はいっぱい来ていたことだ。
最終日のせいなのか、ブーさんが来るからなのか、
それともキッズの紹介があるからなのかわからないけど、とにかく楽屋裏には人が多い。
暑いのは苦手なのにどこに行っても人だかりができている。
それに加えてハロモニやハローランドのカメラマン、写真集のためのカメラマン、
あちこちにカメラマンがいて誰が誰なのやらさっぱり分からない…
わたしたちもインスタントカメラを手渡されてメンバーをお互いに撮り合った。
2月頃に作った自作写真集の第二弾を出すんだとか。
なっちやカオリは人ごみがイヤなのか早々にどこかに消えてしまっていた…
376名無し池:02/10/16 23:49 ID:t/l2+bFb

「矢口ぃー!」

あ、また来たよ…

「なによー、裕ちゃん」
「そんなイヤそうな声出さんでもいいやろー」
「だってさー、どうせまた写真撮りに来ただけでしょ?」
「おー、よく分かっとるやん。
 でもなー、今回のは仕事用じゃないから安心しいや。
 …ほれ!」

そう言って裕ちゃんがポケットから何かを取り出した。

「あ、携帯!! いつ換えたのー?」
「換えたわけやないよ、別に。
 ちょっとそこいらから借りてきた」
「はあ? そこいらって…
 …何やってんのさ、裕ちゃん…」
「あたしの携帯、カメラ付いてないからさあ…
 矢口のこと撮りたくても撮れんのよー」
「そんなことしなくったってこの前送ってあげたでしょー」
377名無し池:02/10/16 23:50 ID:t/l2+bFb

ちょっと前に携帯換えたけど、忙しくてつい裕ちゃんに電話番号教え忘れちゃったんだよね…
大阪公演のときに裕ちゃんに怒られたから、その日の夜にホテルで自分のすっぴん写真撮って、
新しい番号と一緒にメールしてあげた。
そしたら裕ちゃんはその写真を気に入っちゃって待受け画面に使っている…

「だって、あれだけじゃ我慢できへんもん。
 キリっとした矢口の写真も欲しいなあなんて…」

裕ちゃんは携帯のレンズをこっちに向けて撮ろうとしている。
咄嗟にわたしはレンズを避けた。

「コラ、動いたらアカンって!」
「ちょっと待ってよー。それって本当は誰の携帯なのよ?
 やだよー、知らない人の携帯においらの写真が残るなんてさー」
「あー、大丈夫、大丈夫、気にしなくて。
 マネージャーから借りてきただけだから。
 それにあたしの携帯に送ったら削除しておくから心配せんでもええって」
「えー? なんか納得いかないなあ…
 …そんなにおいらの写真撮りたいの?」
378名無し池:02/10/16 23:51 ID:t/l2+bFb

「ウン!!! 撮りたい!」

裕ちゃん…気合い入れ過ぎ……
思わず吹き出してしまった。
しょうがないなあ…撮らせてあげようかな…

「1枚だけだよー。きれいに撮ってよね」
「お、やりぃ! 撮らしてくれるん?
 まかしときいや、いいの撮るから」
「なんか裕ちゃんまるで子供みたいだね…
 とても三十路には見えないよ」
「…まだなっとらんっちゅうねん……」

つぶやきながら裕ちゃんが必死に携帯の画面を覗き込んでる。
ちょっとして携帯から音が鳴ると、裕ちゃんが満足げにうなずいた。
まあいいか…これだけ喜んでもらえればわたしもうれしいよ……
379名無し池:02/10/16 23:52 ID:t/l2+bFb

「裕ちゃん、もういいでしょ?
 おいらそろそろ楽屋に戻んなきゃ…」

楽屋の方を窺いかけたそのとき、裕ちゃんがいきなり声をひそめて聞いてきた。

「なあ矢口ー、最近ごっつぁん変わったことあらへんかな?」
「別にー。いつもと変わんないよ。
 さっきもよっすぃーと加護と一緒に遊んでたみたいだし。
 いたって普通だけど…」
「そうかー? やっぱあたしの勘違いか……」
「……?」
「いやな、ごっつぁんのソロの時さ、曲名なんていったっけ…」
「『手を握って歩きたい』の方、それとも新曲のこと?」
「ああ、その『手を握って歩きたい』の方や。
 …その曲をさ、大阪で歌ったときに気になったんよね。
 ごっつぁん、歌いながら泣きそうになってたから…、あの明るい曲でさ…
 あのコはさあ、あんまり曲で感情昂らせて歌を乱すようなコじゃないから気になったんだ…
 ああ、珍しいこともあるんだなあって…」
380名無し池:02/10/16 23:53 ID:t/l2+bFb
「…へえ、おいら全然気付かなかったよ…」
「矢口はミニモニ。でスタンバってるところやからな、たぶん分からんやろ。
 ……でさ、ごっつぁんが降りてきてからちょっと声かけたのよ。
 『泣きそうになってたねー』って。
 そしたらいつもの照れ笑いしてそのまま行っちゃった…
 そんとき何かあるのかなあって漠然と感じたんだよね…」
「えー? 裕ちゃんの思い過ごしだよ、きっと。
 今日だっていつもと変わらずに歌ってるよ。
 新曲だって楽しそうに歌ってるし」
「…いや、何にもないんならそれでエエねん。
 ちょっと気になっただけやから…
 …本番前に変なこと言うてゴメンなあ」
381名無し池:02/10/16 23:54 ID:t/l2+bFb

裕ちゃんとはそこで別れて楽屋へ歩き出す。
…ごっつぁんは前と変わらないよ。
最近になってやたらとごっつぁんと話すようになったカオリはおかしいと思うけど…
後輩みたいに熱心に化粧の仕方なんか教わったりしてさ。
妙に加護のことも気にかけるようになったし…
去年の年末頃、加護がヤバかったときもそんなに気にしてなかったのに、
どういう心境の変化かねえ…
……なっちと辻の関係にでも影響されたかな…

382たぢから:02/10/18 23:11 ID:9nJ7Pjoi
私所有のコンポが故障しました。
修理に出した為、市井・矢口・中澤・吉澤のラジオが聴けない…
何か物足りなさを感じる今日この頃、まさに娘。中毒ですね。

名無し池さんの後藤編は読みたいです。
先日一週遅れの後藤卒業スペシャルを見て、市井が出てきたところで思わずニヤケました。
それまであまり共演が見られなかったので、つい裏の事情を妄想してみたり…

…完っ全に娘。中毒のようです。失礼しますた。
383名無し池:02/10/20 22:31 ID:ExyBMnlE
更新滞ってて申し訳ありません。
忙しいのもあったんですが、次の回は重要なので、、、
ここで妄想し損ねるとw話が狂ってきてしまうので慎重にいきたい。
火曜のMUSIX!で新メンバーの募集要項が出るはずなので、それ待ち。
7月28日のときに新メンバーを追加することは伝えられていたはずだから、
かな〜り悩む、、、

今発売されているCDでーたとザッピィのインタビューで
安倍のところでお台場の夜景の話とモーコー2002の話がちょこっとだけ出てきた。
やっぱり妄想で書いたことと現実が一致してくるとうれしいものだ、、、
「モーニング娘×つんく♂」の45ページを見たときもうれしかったし
384名無し池:02/10/20 22:32 ID:ExyBMnlE
>たぢからさん
すごいな、全部チェックしてるのか!
さすがに自分は市井・吉澤のラジオは放置気味です。
資料整理がとてもじゃないけど追いつきません、、、

今のところ後藤編は無しのつもりで書いていました。
7月28日も矢口編のみでいくつもりです。
矢口編だけで表現できないことがあれば、書き足すかもしれませんが、、、
小説のストックはもうなくなったので行き当たりばったりになってしまうかもしれません。
後藤の話はかなり難しそうです。
リアル設定で書いていると今の動きは予測がつかな過ぎて困ります。
しかも後藤は自分のことをあまり語らないのでさらに難しいですね、、、
書くとしてもちょっと先のことになりそうです。
情報が現時点では少な過ぎて、、、
少なくともごまっとうがテレビに出てくるまではこの件も待ちです。
ご自分の妄想で話を作ってみるのはどうでしょうか?
9月22日だけを作るのはかなり難しいかもしれませんが。
385名無し池:02/10/20 22:34 ID:ExyBMnlE
透明なミドリに囲まれて
私は深く思うんだ・・・・
早く翼がほしいーって
まぶしい位に真っ白な羽
震えているから
待ちかまえているから
いつも飛べずに ちぢこまり
羽は輝きをなくし 雫が流れ
手を強く握りしめる
ユックリと顔をあげ――
願うから。誓うから。
《七のヒカリタチ》パープルの雲
澄んだオレンジ包まれる
SKIPしながら通り抜け
抱くよ未来に届くまで
“一人じゃないから”
あなたが崩れそうになったら
私の言葉を思い出してね
手のヒラに星のカケラをあげるから
見えないチカラをあげるから
心のピンクの幻・・・・
忘れないで
ずぅーーーっと.
                   写真集「ナッチ」より
386名無し池:02/10/20 22:36 ID:ExyBMnlE
お台場の話が出たところで、久しぶりにこの話をしたくなった。
この写真集の中に載った安倍直筆の作品は2つだけ。
一つは母親への詩で、もう一つがこれ。
書かれたのは1999年。
7の光たちとチカラをあげる`あなた´。
何を言いたいかは書かなくてもいいね、、、
きっとここを読んでる人ならわかる。

久しぶりにこの写真集を引っぱりだしてみて驚く。
載せられた詩とFACTORYで歌った2曲との共通性に。
ここに載せられていた詩、あまり気にしたことはなかったけど
改めて今になって読んでみると考えさせられるものが多い。
安倍が無意識のうちにやったのか、それとも意識してやったことなのか
わからないけど、「チェインギャング」と「夕暮れ」を選曲したことは
ここの詩を読むと当然のことだったんだなって思える、、、

さらに二つほど載せておきます。
387名無し池:02/10/20 22:37 ID:ExyBMnlE
「私と一緒にいた日の事は忘れても、
 あの日一緒に見た星空を、キレイと言ったこと……
 心を忘れないでいて。」

「一人がちょっと切なくて、
 手を伸ばしても誰もいなくて、
 私は何も出来ずに震えていた。
 あなたの声が聞こえてくれば……
 いいのにな。
 自分でつくった
 ウソも、
 この想いも、
 全部だれかのせいにして、逃げてた。
 強くなりたい、
 もっと強くなろう、
 そう思った。」
388名無し池:02/10/20 22:41 ID:ExyBMnlE
ちょうど羊の福田スレにペルセウス座流星群のときのコピペが出ていたので。
去年東京で福田が流星を見上げていた同じ時刻に安倍は飯田・保田・りんねと一緒に
沖縄で夜空を見上げていた。
それだけの話、、、
ただ二人とも感動した、キレイって思った。それだけでいい。


流れ星なだけにちょっと頼みごと。
19日のエアモニ。の中で安倍が「気に入った写真」と言っていたのが
何の写真か分かる方がいたら教えてください。
自分は聞いただけではどの写真のことを言ってるのか分かりませんでした。
389名無し池:02/10/22 01:35 ID:tK866pUl
ここで急ぎサイトを作ってしまいました、、、
http://members.tripod.co.jp/submarinedog/index.html
これで落ちても一安心、、、なのか?
390名無し池:02/10/23 22:05 ID:zzmvz9Lu

その日のコンサート。
一回きりの練習で臨んだ『ハッピーサマーウェディング』のハワイアンバージョンも
うまくいったし、高木ブーさんとの共演もまあよく出来た方だと思う。
キッズのメンバーはステージに上がっても相変わらず緊張感がなくて、
見るとイライラしそうなので、極力見ないようにしていた。
つんくさんのウソくさい笑顔も見たくなかったし……

最後の『そうだ! We're ALIVE』を終えて、なっちと一緒に薄暗い廊下を楽屋に戻る。
明日は久しぶりのオフ。思えばこの一ヶ月間、目の回るような忙しさだった。
ようやく迎える休息に自然となっちの顔もわたしの顔もほころんだ。
明日は何をしようかなあ……
391名無し池:02/10/23 22:06 ID:zzmvz9Lu

…あとは着替えて解散という段階になってマネージャーさんから指示があった。

「ひと休みして着替え終わったら会議室に集合」

唐突な指示。最初の予定ではコンサートが終わったらすぐに解散だった。
報告するマネージャーさんの顔も妙に強ばっている。

…あ! …ついにきたのか…
なんとなく察しがついた…

圭ちゃんから卒業の話を聞かされて約2ヶ月。
あれから何にもなくて、圭ちゃんとなっちとの3人の会話もいつも通りで、
ずーっとそのままの日が続くような錯覚を起こしてた…
あれは夢の中の出来事だったんじゃないかって思いそうなときもあったけど、
やっぱり現実なんだ……
392名無し池:02/10/23 22:07 ID:zzmvz9Lu

わたしは思わず圭ちゃんとなっちとカオリの顔を見渡した。
コンサートが終わってホッとしていた顔から3人とも笑みが消えた…
3人も今日発表されることに気がついたんだろう。
辻は…、気付いたのかどうか分からなかったけど、なっちの傍から離れようとしなかった…

今日発表か……、ってことは圭ちゃんの卒業は年末なのかな…?
秋コンのラストか、彩っぺみたくお正月のハロプロライブ…
圭ちゃんには悪いけど中途半端な時期だなあ。
最後くらいぱーっとさせてあげればいいのに…
……ああ、やめよう。
頭を振った……
話聞く前からうじうじしてても仕様がないや…
今は圭ちゃんのほうがよっぽど不安なはずだよ……
393名無し池:02/10/23 22:09 ID:zzmvz9Lu

「ちょっとおいらトイレ行ってくるね。
 先に行っててよ」

まだ着替えているメンバーに言い残すとトイレに向かう。
洗面台の前に立ち、思いっきり頬を叩いた。
そして鏡の中の自分に言い聞かせる…

 しっかりしろ、矢口!
 あらかじめ圭ちゃんから聞かされてるんだから。
 突然聞かされる4期や5期のメンバーを慰めるのはわたしの役目だぞ。
394名無し池:02/10/23 22:10 ID:zzmvz9Lu

わたしが鏡の中の自分と向き合っている中、急にトイレの扉が開く。

「何やってんの? やぐっちゃん」

鏡の端からステージ衣装の白いショートパンツそのままのアヤカが現れる。

「あー、アヤカか…別に何もしてないよ。
 コンタクトずれたから直してただけ…」

咄嗟にウソをついた…

「フーン…
 …ねえ、このあとモーニング娘。も会議室に集められるの?」

「…えー? …そうだけど……
 …ひょっとしてアヤカたちも集められてるの?」

「うん。わたしたちの楽屋とメロンとカントリーの楽屋の全員が集められるみたい。
 早く帰りたいのにさあ、何言われるんだろうねー。
 つんくさんが来てるのって何か関係あるのかな?」

「……さあ?」

外人みたく肩をすくってみせた。
アヤカ、ゴメン。今は言えないから許してね…
395名無し池:02/10/23 22:11 ID:zzmvz9Lu

トイレを後にして会議室に向かう。
扉を開くとそこには白い壁と大きなテーブル、それに茶色い椅子がいくつか並んでいる。
すでに先に来ていた圭ちゃんと石川とよっすぃーが奥の方に座っていた。
圭ちゃんはわたしが来ても顔を上げようとしなかった…
わたしも特に声をかけるでもなく石川の隣の席につく。
正面によっすぃーがいたけど目を閉じていて表情は分からなかった…

しばらくすると紺野、高橋、新垣がまとめて入ってきた。
この3人は初めての夏のハローのコンサートが終わって興奮気味なのか
楽屋にいたときからしきりと喋り続けている。
遠慮がちに新垣がわたしの隣に、他の二人が向かいの席に座った。
その次に入ってきたのがなっちと辻。
けっきょく辻もなっちの表情を見て、圭ちゃんの発表が今日だということを悟ったんだろう…
なっちの手をギュっと握りしめて離さないでいる。
二人は手をつないだまま新垣の横に座った。
なっちが座る直前にこっちを見て目で合図してきたので、
こっちも頷いてそれとなく返しておく。
辻のことはもうなっちに任すよ…
396名無し池:02/10/23 22:12 ID:zzmvz9Lu

…カオリが部屋に入って来るとどこに座るか迷っている。
さんざん迷ったあげく、結局高橋の横、なっちの正面に腰を落ち着けた…
こんなとき落ち着きがないのは昔からのカオリのクセ。
それなのにカオリは、自分だけはいたって冷静ですってフリをしようとする。
本当はそんなバレバレの性格は直した方がいいんだろうけど、
そうやって動揺してる姿を見せるカオリが今日はなんだかうれしかった。
ドキドキしてるのはわたしだけじゃないって思えて…
きっとなっちや圭ちゃんも同じ気持ちだったと思う。

その後、加護とごっつぁんが手をつないで入って来た。
辻の表情とはうって変わって、加護はゴキゲンそのものだった。
リハのときよりもさらに進んで、今度はパーカーまでごっつぁんとお揃いにしている。
加護は辻に何か言おうとしたけど、なっちの手を握って
シュンとうつむいている辻の姿を見てやめてしまった。
本当は辻に自慢したかったんだろうなあ…ごっつぁんとお揃いを着てきたことを…
加護はカオリの横に二つの空いてる席を見つけるとごっつぁんを引っ張るようにして
つれて行ってそこに座った。
わたしの場所からは少し遠めに見える二人の姿。
胸にプリントされたお揃いのスヌーピーの絵柄が会議室の雰囲気と
マッチしてなくて妙に気になった……

最後に小川が駆け込んでくる。
一人だけ遅れてしまって相当焦っていた様子が窺える。
まだ何も始まってないことが分かるとホッと一安心。
入口に一番近いところの辻の横の席に座ると大きく息をはいた。
397名無し池:02/10/23 22:14 ID:zzmvz9Lu

これで会議室に13人全員揃った。
でもなかなか話が始まる様子もない。
狭っ苦しい会議室に閉じ込められて時間だけが過ぎていく…
最初は話のはずんでいた5期メンバーもライブの疲れが出てきたのか口数がめっきり少なくなった。
加護だけが呑気に
「何の話だろうね?」
なんて、ごっつぁんに話しかけてる。
石川もわたしに何か話しかけようとしてたけど、年上のメンバーが一言も喋らないのを見て
遠慮してやめてしまった…
398名無し池:02/10/23 22:16 ID:zzmvz9Lu

…待つこと20分近く。
ようやくつんくさんがやってくる。
つんくさんはスタッフからプリント用紙の束を受け取ると、
スタッフ全員に会議室から出るように要請した。
中には抵抗するスタッフもいたけど、つんくさんに懇願されて、
あるいは半ば強引に会議室の外に出されてしまった。
中に残った娘。以外の人はつんくさんとデジタルカメラをかまえたスタッフが一人だけ。
本当はつんくさんはカメラも外に出したかったみたいだけど、
それは事前に決まっていたみたいで無理そうだった。
圭ちゃんの卒業を聞かされてびっくりするわたしたちを撮るつもりなんだろう…
ASAYANのときから変わらない手法…
明日香のときも彩っぺのときもそうだった。
普通じゃない雰囲気とカメラが残ったことでどうやら石川も何を言われるか気付いたらしい。
まあASAYANをずっと見ていた石川なら気付くだろうな…
石川の表情が見る見る曇って、年上メンバーの方をちらちらと見出した。
…そう。わたしたちの内の誰かが辞める…
石川の推測は正しいよ…
399名無し池:02/10/23 22:17 ID:zzmvz9Lu

つんくさんはスタッフを外に出すと、ごっつぁんと小川の席の間、
テーブルの一番端、いわゆるお誕生席についた。
それまでかけていたサングラスを外してテーブルの上に置くと、
わたしたちをぐるーっと一周眺め回す…
…そのあとは目を閉じてなかなか口を開こうとしなかった。


…10秒…20秒…30秒……そして1分……


…………


会議室に沈黙が流れる……


…………


…………

400名無し池:02/10/23 22:19 ID:zzmvz9Lu

堪りかねたカオリが口を開いた…

「…つんくさん……?」

…ゆっくりとつんくさんが目を開く。

「わかっとるって…飯田…
 焦らんでもええやろ……」

…ぽつりとつぶやくように言う。

やがてさっき運んできたプリントに目を一旦落とすと意を決したように話し始めた……

「…今日はな、これからのモーニング娘。について話す…
 つらいこともあるかもしれへんけど、しっかり聞いてくれ……」

…ついに来た。

圭ちゃんの卒業…

これでもう後戻りはできない…

卒業の日に向かって走るだけ…

圭ちゃんとの思い出を作るだけ…
401名無し池:02/10/23 22:21 ID:zzmvz9Lu


「…まず、今年の9月23日。
 あと2ヶ月弱やな…

 …この日は夏コンの最終日やけども、
 この日の横浜アリーナのコンサートをもって後藤が卒業…」


…はい!?

今何て言った!?

思わず席から立ち上がった。

402名無し池:02/10/23 22:22 ID:zzmvz9Lu

「ちょ、ちょっと待ってください。
 今つんくさん何て言いました?
 何か間違えてませんでしたか?」

わたしをちらっと見たつんくさんが、自分にも言い聞かせるように繰り返した……

「9月23日をもって後藤が卒業や……」

……ごっつぁんが卒業?
何それ…、わたし聞いてないよ…

ホントなの、ねえ、ごっつぁん?
ごっつぁんの方を見たけれど、ごっつぁんは視線を床に落としていて
みんなと目を合わさないようにしていた……
403名無し池:02/10/23 22:23 ID:zzmvz9Lu

「矢口、座ってくれんか…
 話、まだ終わったわけやないで……」

「あ…すいません……」

5期メンバーよりも先に取り乱してしまった…
先輩失格だな…
でも…ごっつぁん卒業って……
今さら何で……
…じゃあ、圭ちゃんは? 圭ちゃんの卒業はどうなるのよ…
404名無し池:02/10/23 22:26 ID:zzmvz9Lu

「…それから、来年の春。
 細かい時期はまだ決まっとらんけど、とにかく来年春に保田も卒業する…」

圭ちゃんの卒業もやっぱりあるんだ…
二人の卒業を聞いた5期メンバーがショックを受けている姿が目に入った。

そして…、特に加護が…、
ごっつぁんの横に見える加護が……、
目に見えて落ち込んでいく姿が見えた……
5期メンバーみたいにびっくりした声をあげるでもなく、
表情から生気が抜けていくのが分かった……
405名無し池:02/10/23 22:27 ID:zzmvz9Lu

「…まずこの二人が卒業するっちゅうことを伝えとく。
 後藤も保田も卒業後はハロプロに残ることになっとるから…
 いなくなるわけやない。
 ちゃんとおまえらの近くでこれからも活動してくから、そんなに悲しまんでもええ。

 それと…、他の細かいことは今から配るプリントに書いてあるから、
 それを見ながら説明するな…」

つんくさんが手元にあった紙を半分に分けてごっつあんと小川に手渡した。
順番にプリントが回ってきて、新垣から受け取る。
受け渡す新垣の手が震えていたみたいだった…

全員に行き渡ったのを見届けると、つんくさんは切り出した。
406名無し池:02/10/23 22:30 ID:zzmvz9Lu
「見る前に一言だけ言っておきたいことがある…

 …違うな……

 『言っておきたい』だなんて偉そうに言えるもんでもあらへんか……

 …『どうか聞いてください』やな……」

自嘲気味に笑うとおもむろに立ち上がった。

「ホンマすんません。
 俺の力不足のせいでこんなことになってもうて…
 みんなには迷惑な話やと思うけど、俺にはどうすることもできへんかった……
 つらいかもしれへんけど、みんな堪忍やで…」

つんくさんは言い終わると深々と頭を下げた…
あまりの突然の出来事に呆気にとられた。
回りのみんなもなんて言ったらいいのか分からずに顔を見合わせてしまっている。
407名無し池:02/10/23 22:31 ID:zzmvz9Lu

…つんくさんがそのまま無言で椅子に座ると、
圭ちゃんが配られたプリントを手に取って見始めた…
それにつられてみんなもプリントを開く。
わたしも目の前に置かれたプリントをおそるおそる開いた…



……

目に飛び込んでくる文字の羅列……

408名無し池:02/10/23 22:34 ID:zzmvz9Lu


  9月23日 後藤、モーニング娘。卒業
       飯田・矢口・加護、タンポポ卒業
       保田・後藤、プッチモニ卒業

       タンポポ、石川・紺野・新垣・柴田(メロン記念日)に編成替え
       プッチモニ、吉澤・小川・アヤカ(ココナッツ娘)に編成替え

  9月26日 タンポポ、新編成でシングル発売

  10月9日 プッチモニ、新編成でシングル発売

  今秋   平家、ハロープロジェクト卒業
       後藤・松浦・藤本、ユニット結成

  来春   保田、モーニング娘。卒業
       矢口、ミニモニ。卒業

       ミニモニ。、ミカ(ココナッツ娘)・辻・加護・高橋に編成替え
       矢口とハロプロキッズ数名で新ユニット
       保田、ハロプロサブリーダーに就任

409名無し池:02/10/23 22:40 ID:zzmvz9Lu


…………!!


…なによ…これ……!


ごっつぁん卒業…


圭ちゃん卒業…


…それに…みっちゃんがハロプロを辞める?


……いったい何なのよ?
なんでこんなにいっぺんに……


ごっつぁんと松浦と藤本でユニット?
ごっつぁんはこのユニット組むために卒業するの?
…じゃあ、モーニング娘。って何よ!
残されるわたしたちはいったい何なのよ!!
410名無し池:02/10/23 22:52 ID:zzmvz9Lu


それに…なによりも……


タンポポ編成替えって何……?


ミニモニ。編成替えって何……?


ハロプロキッズのユニット?


……わたしに全部手放せっていうの!


今まで一から作り上げてきたものを全部手放せっていうの!!


そして全部取り上げたわたしには子供のおもり?


バカにするのもいい加減にしてよね!!

411名無し池:02/10/23 22:53 ID:zzmvz9Lu

わたしが何か言おうとするその前に、先に圭ちゃんが口火を切った…

「なんですか、これ?
 わたしこんなの聞いてないし、こんなこと認められません!」

そう言って持っていたプリントを机に叩き付けた。

「わたしが辞めるのは自分で何かを残したいから、
 何かを伝えることのできる人になりたかったから……
 
 こんな風に残ったみんなに迷惑を残すような形での卒業じゃ納得いきません!!
 こんな形で卒業したって心残りになるだけでちっともうれしくありません!!

 ……これを認めたら表現者としてダメだと思う…
 見ている人たちに気持ちを伝えられる人間になんかなれない!
 …それに、なによりも今まで応援してくれた人に顔向けができない!!

 どんな顔して来週からのツアーに出ろって言うんですか?
 こんな話聞かされて笑顔でステージに立てって言うんですか?
 これ以上わたしたちに嘘をつかせたって、ファンはみんな気付きますよ。
 わたしたちが本当に笑っているかそうじゃないかなんて……

 …そのせいでわたしの卒業だって変に勘ぐられるかもしれない。
 わたしは自分の可能性を信じて辞めるのに、こんな風に他のいろんなことと一緒にされたら
 わたしがどんなことを言ったってファンの人はそれと絡めて考えてしまう。
 できることならもっと別々のかたちにしてほしかったです…」
412名無し池:02/10/23 22:54 ID:zzmvz9Lu

「それから、何なんですか?
 このタンポポとプッチモニの編成替え!!
 わたしたちをバカにするのもいい加減にしてください!!

 わたしのことはともかく、ごっつぁんがいないでプッチモニ?
 カオリと矢口がいないでタンポポ?
 こんなこと誰が望むんですか?

 オリジナルメンバーがいなくなって、そのあと続けることに何も意味なんてないじゃないですか!
 わたしたちが必死に今まで頑張ってきたのは何なんだったんですか!!

 ユニットの名前を残すためなんかにわたしたちは頑張ってきたんじゃない!!
 ユニットとしての歌があったから、ユニットのメンバーだけで作りあげるものがあったから
 頑張ってこれたんですよ。

 名前なんてただの器にすぎない……
 わたしたちにとっては作り上げた過程の方がよっぽど重要なんですよ!
 その積み重ねがあったからユニットの名前にも愛着がわいたんですよ!
 それを機械の部品みたいに簡単に交換したりして……」
413名無し池:02/10/23 22:55 ID:zzmvz9Lu

「オリジナルのメンバーが残らないんだったら名前だって変えればいいじゃないですか!!
 機械の名前みたく簡単に変えればいいでしょ!!

 それなら誰も文句いいませんよ!
 新しいユニットに新しい名前がつくんだから、当然じゃないですか。
 新しいユニットに今までの名前をつけること自体がおかしい!!
 …辞めていったメンバーや、応援してくれた人たちに申し訳ないって思わないんですか?

 …今までわたしたちがやってきたことってなんだったのよ……
 これまで頑張ってきたのって何だったのよ……

 こんなかたちで終わるためにわたしたちは活動してきたんじゃありません!!」
414名無し池:02/10/23 22:56 ID:zzmvz9Lu

…圭ちゃんは一気にまくしたてた……

圭ちゃんがこうして言葉にして怒りを表すことは滅多にない…

最後の方は声がふるえていたかもしれなかった……

…小川や高橋はすでに泣き始めていた。
ごっつぁんや圭ちゃんが辞めることのショック、そしてユニットのいろいろなこと……
それらを一度に聞かされて、圭ちゃんの言葉を聞いて、衝撃は量りしれないだろう…
こんなこと初めてのはずだし……

わたしだってもう何も考えられない。
考えがまとまらない…
夢の中のように頭の中がふわふわしていた…
415名無し池:02/10/23 22:57 ID:zzmvz9Lu

…次に口を開いたのがなっちだった。
圭ちゃんのときとは違って、ゆっくりとした淡々とした口調…
考え考え話す感じだった…

…なっちはたぶん怒っていた。
だからこんな静かな話し方だったんだ……

「モーニング娘。ってそんなに軽い存在なんですか?
 今までつらいことも悲しいこともいっぱい我慢してここまできたのに…

 我慢できたのは、モーニング娘。が大好きだったから…
 一緒にいたメンバーが支えになってたから……
 それがあってここまで大きくなってきたんですよ。

 そんなメンバーの気持ちを今日の発表は踏みにじってる……」
416名無し池:02/10/23 22:58 ID:zzmvz9Lu

「…わたしたちって夢を売ってる商売じゃないですか…
 そんなわたしたちが夢も希望もない中身を見せちゃっていいんですか?

 わたしたちにとってモーニング娘。を辞めることは人生の転機なんですよ。
 大きな不安を抱えながら、悩みに悩んで決心することなんですよ。
 こんなに軽々しく扱ってほしくないです……
 …わたしたちにだって感情がある。
 言われたからって『はいそうですか』なんて簡単に受け止めることなんてできない…

 …それに…ユニットに新しく入るコたちだって、これからどうやって頑張れるんですか?
 最初からずっと頑張ってきたオリジナルメンバーが最後にこんな仕打ちを受けたのに、
 これからやっていくコたちはどこに希望を見い出せばいいんです?
 …どんな夢を持てばいいんですか?

 どんなに頑張っても最後はこうやってとりあげられることが分かっているのに
 どうして頑張れるんですか?
 頑張れば頑張るほど理想から遠ざかっていくのに
 どこにわたしたちは理想を求めればいいんですか?」
417名無し池:02/10/23 22:59 ID:zzmvz9Lu


圭ちゃんのことば……

なっちのことば……

二人のことばがわたしに重くのしかかる……


圭ちゃんも、ごっつぁんも、みっちゃんも、

そしてタンポポも、ミニモニ。も、

何年もかかって築き上げてきたものをわたしは一度に失う。

わたしに残されたものってなんなんだろう……

わたしが築き上げてきたものってなんだったんだろう……

418名無し池:02/10/23 23:01 ID:zzmvz9Lu


……つんくさんの声がまるで遠くの方で話すように聞こえてくる…
圭ちゃんとなっちの言葉を受けての弁解……

…でも、どうせつんくさんからは本心は聞けない…
少なくとも全員の前で、そしてカメラのある前で、つんくさんが本心を話すことはない…
…それに、つんくさんに責任があるわけじゃないことも分かってる。
つんくさんは言われた通りに動いているだけ…
嫌な役を押しつけられてわたしたちに報告してるだけに過ぎない。
そんなことはもう圭ちゃんだってなっちだって分かってる…
…それでも…頭では分かってても言わずにはいられない…

419名無し池:02/10/23 23:02 ID:zzmvz9Lu

「…………
 
 ………
 
 …これを乗り越えれば新しいものが見えてくると思う。

 残るメンバーも辞めるメンバーもこれを乗り越えてさらにいいものを作っていこうやないか…

 今までもそうやって大きくなってきたんやろ……

 …………」


ぼんやりとしていた頭の中につんくさんの話す声がかすかに届いてきた。
420名無し池:02/10/23 23:03 ID:zzmvz9Lu


…乗り越える?


わたしには乗り越えるものすらなくなったのに……


乗り越えた先にはなんにもなかったのに……


大事なものをいっぱいいっぱい失って乗り越えてきたのに……

421名無し池:02/10/23 23:05 ID:zzmvz9Lu

つんくさんが何かを話してるのも構わずに頭を抱えてテーブルに突っ伏した……
声をあげなかったのは少しでも残ってたわたしの理性…
後輩に対するせめてもの遠慮…


誰もいなかったら、

ここにわたし一人だったら、

きっと泣き叫んでた……

大声で泣き叫んでた……

422名無し池:02/10/23 23:08 ID:zzmvz9Lu



わたしから奪わないで


わたしから取らないで


わたしの大切な仲間を……


わたしの大切な思い出を……


わたしの夢を…………


…………


…………


423たぢから:02/10/23 23:22 ID:4mN3C88Y
>名無し池さん
大量更新乙です。かなりドキドキしながら読ませていただきました。
やはり7.31事件は旧メンおよびそのファンに対し酷なものでしたね。
あの発表の後の、半泣き矢口のANNSは耳から離れませんし。

ちょうどその頃でしょうかね、娘。中毒だと思い始めたのは…(遅っ!)

サイト拝見させていただきました。おおっ!明日香ぁ!!
特にアイドル向きではなかったけど、あの子のオーラが忘れられないです。
勿論、銀杏コンビも。

まだコンポが直らないらしく、明日の矢口ANNSが聴けそうにないです。
市井も中澤も、いつの間にか地元で始まってたエアモニも…
娘。中毒は続く…
424名無し募集中。。。:02/10/26 00:15 ID:zz7s+ccZ

425名無し池:02/10/26 03:26 ID:pZ1VZBlQ
スレ圧縮があったようで。
424は保全してくれたのかなあ?
そうだったらありがとう。違っててもありがとう。

ハロプロ改編はファンはともかくメンバー全員に酷なものだと思いますよ。
旧メンはもちろんのこと、他のハロプロメンバーにも。

石川は教育係だった保田を失うことになり、タンポポでかわいがってもらった
飯田・矢口を失い、先行き困難なユニットを押しつけられた。
とりわけ石川は先輩メンバーに揉まれて育ってきたような人だから、
そのショックは大きかったと思う。
中澤卒業のときは4期メンの中で一番泣き、福岡の後藤卒業打ち上げのときは
保田に甘え、2期タンのOH-SO-RO最終回では誰よりも真っ先に普通の
テンションでいられなくなった。
「いじられてるのがうれしい」「使いっぱさせられてるのがうれしい」
そんなことまで言ってた石川が先輩メンバーを次々に失うのは
かなりのショックだったはず。
426名無し池:02/10/26 03:28 ID:pZ1VZBlQ
吉澤はなによりも後藤がいなくなったのが大きい。
娘。に入って真っ先に仲良くなって、旧メンとの緩衝材の役割を果たして
くれていた後藤が。
後藤がいたおかげで4期メンと旧メンの関係が成り立った。
保田だけだったらきっと受け入れてくれなかったプッチモニも
後藤がいたからこそ今のような仲の良さになった。
それらの過去があって、今がある。
ショックがあったはずなのに、9月23日まで吉澤はいつもの
微笑を守り通した。意地でも後藤に涙は見せたくなかったんだろう、、、

辻も加護も二人なりのショックがある…
平家卒業だってメロンのメンバーや松浦に影響がある…

つらかったのは旧メンだけじゃないよ、、、
あの発表でつらくなかったハロプロメンバーなんてきっといない。
旧メンヲタでもそこいらへんはちゃんと見ていきたいと思います、、、

今週のANNはあんまり自分的には聴きどころなかったですよ>たぢからさん
427名無し池:02/10/30 01:08 ID:523WtMmg


…………


……!


…気がつくと誰かに肩を叩かれてた。

「矢口…、テレビのコメント撮り…
 矢口の順番だよ…」

「……うん…」

…顔をあげるとそこには目をはらした圭ちゃんの姿があった。
すでに会議室には年上メンバーの姿しか残っていない……

「…矢口……

 ……ゴメン…」

「……なんで圭ちゃんが謝るのさ…
 圭ちゃん、何にも悪いことなんてしてないじゃん……」
428名無し池:02/10/30 01:09 ID:523WtMmg

「…あたし……こんなに大きなことになってるなんて知らなかった…
 ごっつぁんが辞めるなんて知らなかった…
 こんなことになるなんて思ってもみなかったよ……」

「…圭ちゃんのせいじゃないよ……

 …圭ちゃんが悪いわけじゃない……

 ……

 …

 …おいら、コメント撮ってくる……」

ふらふらと歩きながら会議室を出てカメラの前に向かった…
指示された椅子に座るとカメラが構えられる…
429名無し池:02/10/30 01:09 ID:523WtMmg

……「卒業を聞かされてどうですか?」って聞かれた。

そんなの悲しいに決まってるじゃない…

そんな当たり前のこと聞かないでよ…

あなたたちにわたしの気持ちが分かるの?

こんなときにそんな無神経な質問してくるあなたたちに何が分かるの?

…みんな悲しいんだよ…

…みんなショックなんだよ……

430名無し池:02/10/30 01:11 ID:523WtMmg

わたしが無言のままでいると再び聞かれる…

「メンバーが卒業していくのは寂しいですか?」

黙っているわけにもいかなくて…、
涙をこらえながら懸命にコメントした……

「……寂しいっていうか…
 家族みたいな存在だから……
 ショックですね…すごく…」

それだけ言うのが精一杯だった…

後は涙が出て言葉にならなかった……


……


……


カメラの前を離れると人気のないところを探した。

そこで思いっきり泣いた…

…もう我慢なんて出来なかった……

声が洩れるのも構わずに号泣した……
431名無し池:02/10/30 01:12 ID:523WtMmg



……どのくらい泣いたんだろう。

自分が落ち着いてきたのが分かって…

ようやくモノを考えられるようになってきて…

……

…帰ろう…

…家に帰ろう……

…ここにはもう居たくないよ……

432名無し池:02/10/30 01:13 ID:523WtMmg


……





楽屋に戻ると、まだ3人が残っていた…


なっち…


カオリ…


圭ちゃん…

433名無し池:02/10/30 01:15 ID:523WtMmg

わたしが帰ってきたのを認めると真っ先に圭ちゃんが声をかけてくる。

「大丈夫なの?…矢口……」

「…うん。少し落ち着いた…
 …他のみんなは?」

「もうとっくに帰ったわよ…
 あんた、どれくらい帰ってこなかったと思ってるの?」

「…え? そんなに時間経ってた?
 3人共、おいらのこと待っててくれたんだ…
 …ゴメンね、心配かけちゃって……」

「…いいよ、そんなこと。気にしないで…
 みんな矢口の気持ちは分かってるから……
 座ってお茶でも飲んで少し休みなよ…」

圭ちゃんに肩を持たれて椅子まで連れていかれる。
わたしが座るのを見届けると、なっちがペットボトルから紙コップに
お茶を注いで無言でわたしの前に差し出した。

「…ありがと、なっち」

軽く首をふって微笑むなっち…
434名無し池:02/10/30 01:16 ID:523WtMmg

…差し出されたお茶を一口飲む。

…わたしの斜め前にはカオリが座っていた。
爪の先を自分の手のひらに押し付けたり離したりしながら
その自分の指の動きをじーっと見てる…
ぽっかりと心に穴が開いてしまっている…、
どこかに感情が飛んでいってしまっている…、
そんな感じだった……
思わず圭ちゃんの方を見て、カオリのことを目で指した。

「…さっきからずっとそのまま……」

圭ちゃんが悲しそうに言った。
カオリもショックだったろうな…
それこそカオリは娘。よりもタンポポのことを大切にしてきたかもしれなかったのに…
…それをカオリは失うんだ。

「…カオリ、…タンポポとうとう終わっちゃうね…」

わたしが話しかけてもカオリから反応はない…
…代わりに圭ちゃんから返事があった。
435名無し池:02/10/30 01:17 ID:523WtMmg

「…なんでタンポポまで変えなきゃなんないのよ。
 プッチはあたしとごっつぁんが辞めるから仕方ないけど、
 タンポポなんて全然関係ないじゃん。
 メンバー変更なんてしなくったってやっていけるじゃない…
 …やめてほしいよ……なんかプッチのせいでタンポポも変わるみたいじゃない……」

「…もういいよ…圭ちゃん…
 プッチモニのせいなんかじゃないよ…
 圭ちゃんとごっつぁんが辞めなくても、きっと変えられてた…
 みっちゃんの卒業やミニモニ。のことも考えると
 わたしたち個人がどうこうって問題じゃないと思う…

 ただ…みんな悲しかった……
 わたしたちに言えるのはそれだけ…
 わたしたちの誰が悪いとか誰がいいとか、そんなの関係ないよ…」
436名無し池:02/10/30 01:18 ID:523WtMmg

なっちが冷静に受け答えた。
たぶんなっちが一番回りが見えていたのかも…
なっちはユニットに入ってなかっし、圭ちゃんの卒業も事前に聞かされていたし、
一方的な通達にも慣れてたし…、
…だから回りのメンバーの気持ちも一番良く分かっていたのかもしれない……

「…うん。もうやめようよ圭ちゃん…
 圭ちゃんだってこれからが大変なんだから、そんなこと考えてる場合じゃないよ…」

「…そうだよ。矢口、良いこと言う!
 圭ちゃんはこれからなんだからね。
 最後まで走り続けなきゃだめだよ」

「……ありがとう…二人とも…」

…それっきりみんな黙ってしまった……
それぞれが思うこと、考えること、いっぱいあった。
437名無し池:02/10/30 01:19 ID:523WtMmg


4人だけの空間。

裕ちゃんの言葉を守って、4人でやってきて1年と少しが経った。


来年の春で3人になる。
…その先はどうなるんだろう。
2人になって…、いつか1人になっちゃうのかな……
そんなの寂しすぎるよ……

…なっちとカオリはどうする気でいるんだろう。
二人とも、やっぱりわたしをおいてどこかにいっちゃうの?
…わたしは置いていかれちゃうの?

不安にかられてつい出てしまった…
わたしたちの中で暗黙の了解の禁句……
438名無し池:02/10/30 01:20 ID:523WtMmg

「……ねえ。…なっちとカオリはこれからどうするの?
 辞めないよね?二人とも…」

「「…………」」

当然のように二人から返事はない…

「…ねえ、答えてよ。
 …わたし一人になるのイヤだよ…
 一人っきりになるのはイヤ……」

その先を言うのはためらいがあった……
…そんな日が来て欲しくなかったから…
でも…、言わなきゃわたしは一人になる。
この二人は覚悟を決めたらきっと素早く動く。

「……卒業するときは一緒にしようよ…」

やっぱり二人から返事はなかった…

「…ねえ約束して!! 辞めるときは一緒って」

「……大丈夫だよ、矢口。
 まだわたしは辞めないから…」

なっちがぽつりと言う。
439名無し池:02/10/30 01:23 ID:523WtMmg
「そんなこと信じらんない…
 みんな辞める直前まで言わないんだから。
 卒業するときは一緒って約束してよぉ…
 じゃないとわたし不安で不安でこれからやっていけないよぉ…」

「…大丈夫。信じていいよ。
 まだわたしは辞めるつもりなんて全然ないから…
 それに…わたしが辞める決心をするときが来たら、きっと矢口も分かるよ…
 矢口もこのときだなって気付くと思う…」

「…おいらも?」

「そう。きっと矢口も決心するときになると思う…」

「…それっていつ? 近いうちに起こることなの?」

「…分からない。
 ただね…今わたしがモーニング娘。の中で叶えようと思った夢って半分にもなってない…
 40%くらいにしかなってないの。
 それがいつか倍になって、残りのちょっとを埋めて100%になるときが来る。
 そのときがわたしの辞めるとき…
 …その100%になるときには矢口にもいてもらわなくちゃいけないんだから、
 矢口はわたしより先に辞めちゃだめだよ。
 これ以上減ったらもうダメなんだ……」
440名無し池:02/10/30 01:24 ID:523WtMmg

…なっちの夢?
強くなること?
気持ちを伝えられるような歌手になること?

それとも……

……




441名無し池:02/10/30 01:25 ID:523WtMmg

「……カオリは?」

「…………」

「…カオリ!」

「…ん?」

「カオリはどうするのよ? これから…」

「…あたしと約束してもしょうがないよ……」

「…どういう意味?」

「…あたしは約束を守れないから……
 守りきる自信がないから…」

「…なによ、それ……?」

「今のあたしは自信を持って約束できない…
 矢口の気持ちは分かるし、そう思ってくれるのはうれしいけど、
 約束はできないよ…」

それって…辞めるかもしれないってこと?
いつ決心してもおかしくないってこと?
442名無し池:02/10/30 01:26 ID:523WtMmg

わたしはカオリにそれ以上聞く勇気がなかった…
なっちも圭ちゃんも深く聞こうとはしなかった…

考えをまとめるにはそれなりの時間がわたしたちには必要だった。
今日聞かされた様々なこと……
圭ちゃんとごっつぁんの卒業、ユニットの再編、
それに対するみんなのそれぞれの思い…
いろんなことがありずぎて……


……





3人との別れ際、恐くなった…

また会えるよね。

4人して乗り越えられるよね。

ダメだよ…勝手にいなくなったりしたら…

わたしの支えなんだから……

443名無し池:02/10/30 01:27 ID:523WtMmg





……


自宅に向かうタクシーの中…

流れる夜景…

行き交う人たち…


通り過ぎていく笑顔…

まっすぐな笑顔…

わたし、あんな風に笑えるかな…

今までも笑えていたのかな…
444名無し池:02/10/30 01:28 ID:523WtMmg

笑いの絶えない生活…

わたしの夢…

淡い夢…

…叶うときが来るの?

みんな笑って明日を迎えられる日が来るの?


…いつか、きっと…………


……


……



445名無し池:02/11/01 23:29 ID:IN3M7Z5q


     ◇      ◇      ◇

446名無し池:02/11/01 23:30 ID:IN3M7Z5q

すべてが変わったあの日から二日が経ち、
今日、夏コンのダンスレッスンで顔を合わせたけど、みんな暗かった…
カオリはそれこそ明日香が辞める直前の頃のように目の下に深いクマを作って、
眠ってないことがハッキリと顔に出ていた……

矢口の顔からは笑顔が消えた…
たまに笑っても無理して笑っているのがバレバレで、
逆にその無理した笑顔が痛々しくて、さらにみんなの気持ちを暗くしていた…

娘。たちに深い傷跡を残してあの日は去った。
モーニング娘。はどこに向かおうとしているんだろう。
私の夢はまた遠ざかったってしまったのかな…
早くしないとわたしどんどんおばさんになっちゃうよ…
447名無し池:02/11/01 23:31 ID:IN3M7Z5q


ダンスレッスンが終わって夜集合した羽田空港のロビー、
そして北海道の帯広に向かう飛行機の中、
裕ちゃんがずーっと矢口に付きっきりだった…

前のシートから裕ちゃんと矢口の会話が聞こえてくる。

「…なあ、大丈夫なん?
 少しは寝れてるの?」

「…うん…大丈夫……
 もう落ち着いたから…」

「…無理したらアカンよ……」

「…うん」
448名無し池:02/11/01 23:32 ID:IN3M7Z5q

わたしのとなりに座っていたりんねも心配そうな顔をして聞いていた。

「なっち、みんな大丈夫かな〜?」

そんなこと聞いてくるりんねも体調がすぐれなさそうだ…

「りんねこそ大丈夫なの? なんか顔色良くないよ」
「全然平気だよ〜。きっと光のせいだよ〜」

いつものほんわりとした返事が返ってくる。

「それに体調悪いとかそんなこと関係ないよ〜。
 みんなが牧場に来てくれるんだもん。
 張り切っちゃうよ〜」

「…そう? それならいいんだけどさ…」
449名無し池:02/11/01 23:33 ID:IN3M7Z5q

泊まった帯広のホテルでもみんな静かで、早々に自分の部屋に引きあげた。
辻だけがわたしの部屋に来て騒いでいたけど、そのうち疲れてわたしのベッドで寝てしまった。

明日はハロモニの撮影で義剛さんの牧場でロケ。
ハロモニが始まって以来、初めてのロケだ。
裕ちゃんと矢口とわたし、それにごっつぁんと梨華ちゃんとよっすぃー、
辻と紺野、それとカントリー娘。の3人。
ちょっとした修学旅行みたいな雰囲気に、沈みがちだったわたしたちの気もまぎれた…

カーテンから覗く東京とは比べ物にならない寂しい夜景を見てふと感じる…
『ふるさと』の時…、去年の裕ちゃんの卒業の時…、そして今回。
思えば節目節目に北海道にロケに来てるなあ。
まるでその時のことを忘れないためのように……

裕ちゃんが先週小樽に行ったって言ってた。
帰ってきたら急にガラス職人になるって言い出して…
去年矢口たちが小樽で作った卒業記念のオルゴールが忘れられないのかな…
あのステンドグラスをはめ込んだオルゴール、裕ちゃん大事にしてたっけ…
450名無し池:02/11/01 23:34 ID:IN3M7Z5q


『コンコン』


わたしが去年の思い出に浸りかけたその時…
ドアのノックする音が聞こえる。

「なっち、わたし〜」
「…あ、りんねか。どうしたの?」

ドアを開けるとそこにはジャージ姿のりんねがいた。

「うん。話したいことがあって…
 …ちょっといい?」
「別にいいけど…
 …でも、ののが中で寝てるよー。
 それでも大丈夫?」
「…うん。全然……」
「じゃあ…」

りんねを部屋の中に促す。
りんねを椅子に座らせると、わたしは空いているもう一つのベッドに座った。
451名無し池:02/11/01 23:35 ID:IN3M7Z5q

「どしたの? 何かあった?」
「ううん」
「じゃあ何か相談事?」
「ううん」

あくまでもりんねはゆったりと答える…

「じゃあ何なのよー?」
「うーんとねー、思い出話したくなったから来ちゃった…」
「へ? 思い出話?」
「うん。思い出話…」

珍しいな…りんねがそんなこと言い出すなんて…
過去のことはあまり話したがらないりんねなのに…

「どうしちゃったの、りんね?
 今日は珍しいね…」
「うん…話したい気分なんだ〜」
452名無し池:02/11/01 23:36 ID:IN3M7Z5q

「……ねーなっち、覚えてる? わたしの初ステージのこと」
「りんねの初ステージ?」
「うん…、カントリー娘。の初ステージでもあるけど…」
「…えーっと、何だっけ?」

りんねの初めてのステージ?
どこだったっけなあ…
うーん……、出てこない…

「ちょうど3年前…
 リハーサルの時、雨が降ってて、風がめちゃくちゃ強くて……」
「…ああ! 思い出した!
 あの函館の近くでやった野外コンサートだ!!」
「そう。日本海の見える小さな町だったんだよ〜」
「覚えてるよー!
 ずーっと雨降ってたのに、始まる頃になって雨があがってさー、
 ステージの裏から海に沈んでいく夕日が見れたんだよねー」
「良かったあ、覚えててくれて…」
453名無し池:02/11/01 23:37 ID:IN3M7Z5q

「……もうあれから3年かあ…」
「うん。3年前の8月1日。
 モーニング娘。とわたしだけ…
 8人しかいなかったんだよ…あの頃の楽屋」
「りんね、めちゃめちゃ緊張してたよね。
 話しかけてもほとんど反応なくってさ。
 …懐かしいなあ」
「…そうだね。緊張してたねー…」
「今も緊張屋なのはあんまり変わってないよねー、りんねは」
「…………」
「……あれ? りんね?」

…りんねのことばが止まる……
ちょっと間が開いてりんねから返事があった。

「……あの時は姐さんと圭ちゃんと市井ちゃんにフォローしてもらって、
 なんとか歌えたんだ。3人にコーラスしてもらって……」

……

…なんでりんねがこんな話を始めたのか、やっとわたしは気がついた……
りんねの初めてのステージってことは、その2週間前にあの事件があったわけで…
だから裕ちゃんと圭ちゃんと紗耶香が急遽コーラスをやることになったわけで…

それは転換期を迎えていたわたしたちモーニング娘。にとっても忘れられない出来事だった。
454名無し池:02/11/01 23:38 ID:IN3M7Z5q

……尋美さん。
わたしたちがまだ5人だった頃、湘南の海岸でドラマを撮影したことがある。
一気に撮り溜めするドラマで、撮影期間中ホテルに泊まるより安いからって
マンションの一室を借りた。
今でも覚えている、6畳の狭い部屋。その中に5人で寝泊まりしたんだっけ…
…そのときに隣の部屋に泊まってたのがみっちゃんと尋美さん。
年はそんなに離れていたわけじゃなくて、みっちゃんと同い年だったのかな。
長い待ち時間に話したり、食事を一緒にしたり、だんだん打ち解けていって…
矢口たち3人が入ってきてからも映画で共演したりして、
つんくさんやみっちゃんとかの仲間内を除けば、
その頃唯一「友人」と呼べる芸能人だったのかもしれない。

…そんな尋美さんの訃報が届いたのは、忘れもしないミュージックステーションで
『ふるさと』を歌って、生放送が終わった後のことだった。
新曲だと通常2回出られるはずのミュージックステーションがなぜか『ふるさと』のときは
1回だけだったからよく覚えてる…
デビューが決まり、テレビ出演が決まり、わたしたちとライブも一緒にやることになって、
カントリー娘。が順調に動きだした矢先のことだった…
455名無し池:02/11/01 23:39 ID:IN3M7Z5q

交通事故……

信じられなかった…

明るく動物と戯れてた尋美さんがもういないなんて……

……その後、事故はデビュー直前の悲劇としてワイドショーや雑誌におもしろおかしく
取り上げられて、そのせいでもう一人のメンバーは心労で倒れて、おまけに触れられたくない
過去まで引っぱりだされてカントリー娘。を辞めることになって…、
残ったのは傷心のりんねだけだった……

…その頃のわたしたちはりんねとそんなに面識があったわけでもなく、
ただ、本当に痛々しかったのだけは覚えてる…
楽屋の片隅で一人寂しそうに座っていて……
456名無し池:02/11/01 23:40 ID:IN3M7Z5q

「……ごめんね、りんね。気付かなくて…
 …あれからもう3年経つんだね。
 …三回忌か……法事は?」
「…ううん。出れなかった…
 ほら…ハローのコンサートやってたから……」
「そっか…そうだよね……
 そういえばわたしたち御葬式も出れなかったなあ…」
「…うん。
 だからね…今回こうしてみんなが牧場に来てくれるのがうれしいの。
 尋美ちゃんが最後に働いてた場所をみんなに見てもらえて…
 尋美ちゃん、モーニングとコンサートやるのをすごい楽しみにしてたから」

「そうだったんだ……
 ……
 ねえ、りんね。明日って牧場行くときに…その…事故の場所って通るの?」
「…うん、たぶん…通ると思う」
「…じゃあ、そのとき教えてね。
 ちゃんと覚えておきたいから…
 きちんとお別れ言いたいからさ…
 …裕ちゃんと矢口にも言っておくよ」

裕ちゃんは大丈夫だと思うけど、今の矢口に言って平気かな?
そんな不安があったけど、牧場に来ることなんてたぶんもうないと思うし…
先に裕ちゃんに相談してみよう…
457名無し池:02/11/01 23:41 ID:IN3M7Z5q

「できればあの頃の人たちにはみんな来て欲しかったよぉ。
 圭ちゃんやカオリンや他の辞めていった人たちにも…」
「カオリは大分に行くって言ってたからねえ…
 圭ちゃんも島根でロケがあるし…」
「…初めてのコンサートの時に中澤さんたちにコーラスしてもらったこと
 今でも忘れられないんだ…
 本当は尋美ちゃんと梓とわたしの3人でやる予定だったコーラスをやってもらって…
 始まる前に中澤さんに言われたんだ…
 『りんねはカントリーで一人でも、モーニングのみんなが仲間なんだから頑張んなさい』って。
 あの言葉、泣きそうなくらいうれしかった…」

「…覚えてる。
 そのあと8人で『いきまっしょい!』やったんだよね」
「あのとき弱音は絶対吐けなかったから…
 肩ひじ張って、すごい力んで生きてるときで、
 だからモーニングの楽屋にいるときもすっごい緊張してて…」
「頑張ってたよね…あのときのりんね…
 こっちが見てるだけでつらくなるくらい……」
「今のわたしが見ても、あの頃のりんねに『もっとリラックスしていいんだよ』
 って言ってあげたくなる…
 でも…すっごい頑張ってたなあって思う……」
458名無し池:02/11/01 23:42 ID:IN3M7Z5q

…りんね……
話したくなったんだろうな……
あの頃のこと…
ちょうど3年経って、わたしたちが牧場に来ることになって、
気持ちに整理がついたのかもしれない。
そう思えるくらいりんねの話す表情がリラックスしていた。
飛行機に乗ってたときは体調良くないように見えたのに…

「りんね…何かいい表情してるよ…
 変わったことあった?」
「うん…そうかもしれない…
 一昨日にあんな話を聞かされてさー、
 もう一回最初の頃の自分を思い出してたら、いろんなこと考えちゃって…
 自分は何のために芸能界入って来たのかなあとか、
 3人で始めた頃ってどんなことをやってたのかなあとか、
 1人のときはどうやって乗り越えてきたんだっけ?とかね…」
459名無し池:02/11/01 23:43 ID:IN3M7Z5q

「それでね、わたし、来週から牧場に帰るの止めるんだー」
「…え?…それどういうこと?
 そんなことりんねの意思だけで決められるもんじゃないでしょ?」
「そうだけど…でも決めたんだ、帰らないって…
 もうあそこにやるべきことは残ってないよ。
 わたしの知ってるカントリー娘。はもうあそこにはないんだもん」

「ちょ、ちょっと待って!
 それって辞めるってこと?」
「違うよー。辞めないよー。カントリー娘。は」
「…無理だよ。そんなワガママ通るわけないでしょ!」

「ワガママかなあ? 
 最初と違うことやらされてるのに、それに文句言ったらワガママなのかなあ?」
「だって、大丈夫なの? 辞めさせられちゃってもいいの?」
「…うーん。
 …でもさあ、わたし今の牧場イヤなんだ。
 尋美ちゃんとかは本当に動物が好きで、それがあったからカントリー娘。になったのに、
 今はカントリー娘。であるために動物を好きでいなくちゃいけないみたいな感じなんだもん。
 似てるようだけど逆でしょー?
 牧場の雰囲気もだんだん商売重視になってきちゃっててさあ、
 初めて行った頃のわたしが好きだった牧場の雰囲気がもうないんだー」
460名無し池:02/11/01 23:44 ID:IN3M7Z5q

「…それって…あさみと里ちゃんのこと言ってるの?」
「違うよお。確かにあさみとはあんまり仲良くないし、里ちゃんは動物苦手だったけど
 二人とも頑張ってる姿を知ってるから、悪くは思わない。
 でも、もうあそこはいいよ…
 あそこはわたしの帰るべき場所じゃない」
「……本当にいいの? きっとつらいよ、この先……」

「大丈夫だよ、わたしは。
 3年前よりつらいことなんてきっとない。
 そのつらさを一人で乗り越えてきたんだもん。
 きっと何があっても平気だよ…
 わたしは大丈夫。
 わたしはやりたいことをやるよ…」
「…りんね……」

…この日わたしはりんねとの別れを覚悟した……
すっきりとしたりんねの顔。
3年間の重責から解放されてリラックスしてた…
これで明日、裕ちゃんとわたしと矢口が牧場に行けば
もう思い残すことはなくなるんだろう…
もしかしたら梨華ちゃんの願いが叶うのも待っていたのかもしれない。
牧場に行ってみたいっていう願い…
りんねはこの日をずっと待っていたのかも……
461名無し池:02/11/01 23:45 ID:IN3M7Z5q

…そういえばお正月の頃に発売されたDVDでりんねが変なことを言っていたのを思い出した……

『カントリーの歴史は全部アイさがが映してて…
 アイさがのスタッフがカメラを持って牧場にいることがあたり前だったから、
 それが牧場の一つの風景になってて…
 とにかく全部映像に残ってるから、もうちょっと時間が経ったら残ってるフィルムを
 全部見直してみたいなあって思います…』

りんねはこの頃から考えていたんだ、きっと…
つらい思い出も見直せるときが来たんだね、りんね…


…りんねが辻のはだけたTシャツを直してあげている。

10人祭とおどる11でずーっと二人して辻の髪を直してあげたり、服を直してあげたり…
そんな日もいつかなくなるときが来るんだ…


「りんね、明日は牧場でいっぱい笑おうね。
 忘れられない思い出にしようね」


わたしが言うと、りんねがぱあっと微笑んでうなずいた……
462名無し池:02/11/01 23:46 ID:IN3M7Z5q



……



……



翌日、朝早く起きたわたしたちはコント用の制服に着替えてバスに乗り込んだ。
牧場に向かうバスの中での撮影。
りんねたちカントリー娘。の3人は前の方に座ってカメラに映らないようにしている。
隣に座った矢口は北海道に来た解放感からか、少し明るさが戻ってきていた。
北海道にいる間だけでも気が晴れるといいね、矢口…
463名無し池:02/11/01 23:47 ID:IN3M7Z5q

出発前、裕ちゃんに尋美さんのことを話したら大いに賛同してくれて
矢口にも言った方が良いってことになった。
たぶんみんなで牧場に来るのは最後の機会だし、この時期にあれから3年というタイミングで
ここに来れたのは何かの縁があったからでしょ…
そう裕ちゃんに言われて、矢口にも機会を見つけて話した。
今日は朝から忙しくて、その場所でバスを停めることはできなさそうだけど……

花畑牧場に向けてホテルを出発してしばらくすると『幸福駅』って看板が見えてきた。
遠めに電車みたいのが停まっているのも見える。
この辺に鉄道って通ってたっけ?
わたしの記憶にないその駅の看板が窓を通り過ぎて行く…

幸福か……
りんねも尋美さんもここをいつも通ってたんだろうな……


464名無し池:02/11/01 23:49 ID:IN3M7Z5q


中札内村に入るとコントを撮りつつバスは進む…

「なっち! もうすぐ…」

収録の合間を見計らってりんねがわたしたちのところにやってきた。
わたしと矢口の前の席にいた裕ちゃんが急いで隣に座らせる。

「もうすこし行くと、道路の脇に一輪の花が挿してあるところがあるから…」

矢口と裕ちゃんと窓の外を食い入るようにして見た。


やがて見えてくる一輪の花…


465名無し池:02/11/01 23:50 ID:IN3M7Z5q


……あっという間に過ぎ去った…

バスのシートにもたれ掛かってほんの束の間、目を瞑る…


二度と会うことのできない尋美さん…
矢口と裕ちゃんと見たこの瞬間…
そしてそれを見届けたりんね…


ずっと忘れないように、心に大事にしまおう……


わたしたち4人の行動に他のメンバーやスタッフたちはキョトンとしている。
マネージャーさんもメイクさんも当時のことを知っている人は誰も残ってなくて、
知っているのはこの4人だけ…

それでもいい…
こうして一緒に振り返れる仲間がわたしにはいたのだから……


466名無し福ちゃん。:02/11/03 08:18 ID:cV3f3Irv
保全
467名無し募集中。。。 :02/11/04 08:13 ID:pDwDIiI1
保全
468 :02/11/04 10:43 ID:mVD3HKTW


469_:02/11/04 23:10 ID:i6jqoNgQ
気付かないふりをして
小さな窓から遠くを見つめてた
空に広がる天使の声 風に抱かれて
瞳に映るざわめきは何も聞こえなくて
ただ今は甘い時間(とき)の悪戯だと
空に呟いた

廻る、廻る...置き去りにされた時間の中で私は今
les miserables...
愛しすぎた貴方が壁際の向こうでそっと微笑ってる

届かないこの想いだけ吐息にのせて...
470名無し柳。:02/11/05 16:32 ID:2MjHhBAm
保全。
471名無し娘。:02/11/06 18:09 ID:BKLnuFwu
保全。
472名無し池:02/11/07 21:36 ID:+b0hfjJg



……



……



牧場に着くと収録準備が整うまで矢口と二人、散歩する。
二人とも高校生の制服着て、リュックを背負って、本当の修学旅行みたいで楽しかった。

「でっかーー!!」

義剛さんのつれてきた犬に矢口が驚いてる。
473名無し池:02/11/07 21:37 ID:+b0hfjJg

「ねー、なつみ。この犬2メートル以上あるんだってー」
「矢口よりはるかに大きいんじゃない?
 …それよりなによー? 『なつみ』って」
「いやあ、セリフのままの方が雰囲気出るかなあって思って。
 修学旅行みたいな感じがさ」
「じゃあ矢口のことは? 『矢口さん』って呼ぶ?」
「うーん…、それもなあ…
 …やっぱ『真里』でしょ!」
「えー? 『真里』ー?
 なんか恥ずかしいなあ」
「いいから。制服着てるときはそう呼んで!」
「…なんか変な感じ……」

矢口が牧場に着いたときから明るくなって良かった。
やっぱり自然って大事だなあ。
こうして人の気持ちをほぐしてくれるんだもん。
474名無し池:02/11/07 21:39 ID:+b0hfjJg

辻が羊のかぶりモノをしてこっちにやってきた。

「かわいいー!」

矢口が見るなり叫んでる。

「いいなあ、これ。
 こんなんだったら、おいらも着てみたいかも」

辻の…いや、ひ辻の頭を叩いて矢口は大はしゃぎ。
かわいいって言われた辻も自慢げに喜んでた。

でも辻の着ぐるみは重そうで…
そのうえコントのときにわたしがNGを出しちゃって、
何回も走らせる羽目になってしまった。
475名無し池:02/11/07 21:40 ID:+b0hfjJg

「ごめんねー、のの」

わたしが声をかけても辻は息を切らしてゼェゼェ言ったまま…

「なつみー、しっかりしないと!」
「ゴメンゴメン、次は間違えないようにするからさあ。
 …そうだ! 真里がうまく合図してよ。
 また数を数え間違いそうになったらさ」
「うぁ!!」
「えっ? 何よ?」
「もう一回言って!」
「はぁ?」
「『真里』ってもう一回言って!」
「……スタンバイOKですー」
「ちょっとー! なつみーー」

無視無視っと……
476名無し池:02/11/07 21:41 ID:+b0hfjJg

写真撮影やコントの収録も順調に進み、
その後はチームに別れてゲームを収録する。
着替える前に制服姿のわたしたちを矢口がバシャバシャ写真に撮ってた。
よっしーもごっつぁんも辻もみんなすすんで映ろうとしていた。
この日が思い出になること、忘れられない日になること、みんな分かってたのかもしれない…

ニュースを撮ってた梨華ちゃんたちも合流してきて、わたしたちはお揃いの
オーバーオールに着替える。
わたしのチームは梨華ちゃんと辻と紺野とりんね。
矢口チームはごっつぁんとよっすぃーとあさみと里ちゃん。
さしずめおどる11対セクシー8といった感じ。
案の定、梨華ちゃんが
「裏切り者〜」
って、矢口チームからいびられてた。
477名無し池:02/11/07 21:42 ID:+b0hfjJg

最初のゲーム、長い距離走らされてツラかった。
わたし走るの得意じゃないし…
中間地点で自分のうちわを2枚揃えて持って行かなくちゃならない。
「お揃いー? わたしのうちわ見つからないよー!!」
叫んでるうちにどんどん抜かされていく…
ゲームは体調があまりすぐれない矢口と、コントの撮影で体力を使っちゃった辻と、
わたしだけが残された。
けっきょく矢口が答えてわたしたちは負けちゃったんだけどね…
問題は分かってたのに…

その後のゲームではりんねが辻に乳搾りを教えたり、
梨華ちゃんのバター作りを手助けしたり、
みんなにディスクの投げ方を教えたり、楽しそうに動き回っていた。

ゲームを終えたあとに協力してくれた地元の小学生たちと記念の集合写真を撮る。
私の両隣には裕ちゃんとりんね。
そして今日ここに集まったみんな…

…良かったね、りんね。
みんながこうして笑って牧場で過ごすことができて…
りんねにそう声をかけるとうれしそうにうなずいていた…
478名無し池:02/11/07 21:44 ID:+b0hfjJg

みんなでやったバーベキュー、矢口がおいしそうにお肉を食べてる…
わたしたちのチームは負けちゃったからお肉はない……

「のの、お肉こっそり取っちゃおう!」
「お肉食べちゃっていいの?」

辻がスタッフさんの顔を窺ってみる。
笑って急かせるスタッフさんたち。

「おいしいねー、みんな」

わたしが喋ってる隙に辻がごっそりお肉を取ってきた。
りんねと紺野が急いでバーベキューの網の上に移す。
479名無し池:02/11/07 21:44 ID:+b0hfjJg

「あー、肉焼いてる!」
「シーっ!」

ダメだよ梨華ちゃん、声に出しちゃ!
裕ちゃんも矢口に
「あれー矢口チーム何かなくなってるよー」
って言ってたけどバレなかった。
それをいいことに辻がさらに肉を取ろうとしたら義剛さんにバレちゃった。

「こらっ!辻ー!!」

義剛さんの声もかまわずにどんどんお肉を焼いていく。
なんだか楽しいな…
ホントにたわいもないことだけど。
でもこんなこと滅多にできないからうれしいんだよ。

みんなとの楽しい食事の時間はあっという間に過ぎていった……


 ・ ・

480名無し池:02/11/07 21:45 ID:+b0hfjJg

今日一日の撮影が終わり、7時の飛行機に乗るためにわたしたちは牧場を後にした。
薄暗い中札内のとうきび畑の中をバスは進む。
後ろを振り返ればぼんやりとした山並。
あの山を越えれば家族でバーベキューをしに行った静内や、さらにその先には室蘭がある…
……北海道の短い夏。
今ごろ室蘭は海びらきして港まつりをやってる頃だなあ…
白鳥大橋の向こうに見える花火…きれいだったなあ……


……いつの間にか窓の景色は小麦畑に。
収穫間近の小麦が穂をたらしている…
…そんな景色を見ながらわたしはぼんやりと口ずさんだ……

 ♪メモリー 夏のメモリー
  あなたと出会えたね この夏
  Ah 二人きり 夕暮れだった

481名無し池:02/11/07 21:47 ID:+b0hfjJg

…彩っぺのパートだけ歌ってそこで止めた。
ちょっと恥ずかしくなっちゃったから……
…そしたら裕ちゃんが続きを歌い出した。

カオリのパート…
自分のパート…

 ♪例え 他にどんな
  男の人が現れても
  Ah 大丈夫 きっと大丈夫

裕ちゃんが大丈夫と言い聞かせてたのは自分だったのかな…
わたしたちのことだったのかな…
それとも矢口に言ってたのかな…
とにかく誰かをなだめるように……そんな風にわたしには聴こえた。

裕ちゃんもそこで止めてしまった…
…ううん…わざとそこで止めたのか……
……わたしはその先を引き取った。
明日香のパート、そしてわたし……
482名無し池:02/11/07 21:48 ID:+b0hfjJg

 ♪いつか 淡い夢を
  邪魔する事件が起こっても
  Ah 二人して 乗り越えたいな

  もう少ししたら サヨナラだけど
  また 会えるよね

  明日もいい日である様に

  海も夏祭りも
  揃いで買ったうちわ達も
  Ah 大切な 宝物になる

  もう少ししたら サヨナラだけど
  また 会えるよね

  明日もいい日である様に
  明日もいい日である様に
           (「A MEMORY OF SUMMER '98」より)
483名無し池:02/11/07 21:49 ID:+b0hfjJg

すっかり暗くなった大地を見下ろしながらわたしたちは北海道を去った…
去り行く北海道を最後まで見つめていたりんね…
穏やかな顔で眠っている裕ちゃん、矢口、辻…
仲良さげに話してるごっつぁんと梨華ちゃんとよっしー…
……みんないい顔してた。


飛行機から見える雲の向こうに7月31日の太陽が沈んでいく。
忙しい毎日の中で記憶に残るいい日がある…
それが今日…
わたしはきっと忘れない…
いつまでも……


…わたしはもう一回、ココロの中でワンフレーズだけ歌った……


「……明日もいい日である様に…………」


……そしてわたしも眠りに落ちていく……


…………


……
484名無し池:02/11/07 21:53 ID:+b0hfjJg
雑談れす。
ようやく7月が終わります。
最初はこの日までを書く予定でいました。
それが8月末にこの作品を書き初めて、9月23日に横浜アリーナに至るまでにいろいろとあって
ここで終わらしてしまうと書ききれないことが多いなと、、、
そんなわけでもう少し続きます。

更新ペース極端に落ちてますが、しばらくおつき合いくださいませ、、、
485ナギサンド:02/11/09 09:06 ID:ZIJsJXmy
保全。
486名無し地方人:02/11/10 00:36 ID:t8Aojl6C
保全
487名無し募集中。。。:02/11/11 19:38 ID:NJd2hKgV
名無し池待ち保全
488名無し募集中。。。 :02/11/12 22:30 ID:PshOw+1D
保全。
489番組の途中ですが名無しです:02/11/13 03:09 ID:4kbCyJQc
保守
490名無し池:02/11/13 23:11 ID:+ZxhirNo


     ◇      ◇      ◇

491名無し池:02/11/13 23:13 ID:+ZxhirNo


「おっはよーございまーす」


「あ、おはようございます…」


紺野や新垣から返事はあった。
でも奥の方にいる矢口やなっちからは……
何だかみんなが暗い…

抱えてきたバッグをテーブルの上に無造作に置いてコップとお茶のペットボトルを引き寄せた。
そのとき目に入ってきた矢口の読んでた新聞の文字……

「あー、今日発表だったんだ……」

あたしのつぶやきに矢口の隣でやっぱり新聞に目を通していたなっちが顔をあげる。
492名無し池:02/11/13 23:14 ID:+ZxhirNo

「圭ちゃん、遅いよー!
 ワイドショーとか大騒ぎになってるよー」
「え、そうなの? 朝テレビ見てる時間なかったからさあ。
 昨日の島根行きで疲れちゃって…」
「新聞もほら、こんなにデカデカと出てるよ」

なっちが自分の読んでいた新聞を広げてあたしに見せた。
ごっつぁんやあたしの写真。
各ユニットの相関図。
今までのメンバーの変遷。
そんな記事がズラーっと並んでいる。

明日香、彩っぺ、紗耶香、裕ちゃんと同様にごっつぁんとあたしに付けられた『卒業』の二文字。
なんか実感湧かないなあ…
あたし、ホントに卒業するの?

「大変だよ今日は。
 なんてったって記者会見があるんだから…
 圭ちゃん、ちゃんとコメント考えてる?
 圭ちゃんはきっとつっこんだ質問されるよー」
「脅かさないでよー。
 そんなこと言われたってあたしもまだこの先どうなるか分からないしさあ。
 大変なのはあたしよりもごっつぁんの方でしょ…」
493名無し池:02/11/13 23:15 ID:+ZxhirNo

今日は冬に公開する映画「仔犬ダンの物語」と「ミニモニ。じゃムービーお菓子な大冒険」の
制作発表記者会見だった。
表向きはそう発表されていたけど、実質的には卒業発表の会見になるんだろう…
…コメントか…考えておかないとね……
あたしよりもごっつぁんの方に質問が集中するのは分かっていても…

あたしとなっちが話してる間にもメンバーはだんだんと集まり始め、次第にうるさくなっていく。
ワイドショーの話、朝に親から電話がかかってきた話、さらには昨日のロケの話、
あちこちからいろんな会話が聞こえてくる。
うるさくなった部屋からなっちが出て行くのを見るとあたしは急いで後を追った。

「なっちー!」
「んー?なにー?圭ちゃん」

あたしはそこで声のトーンを落とす。
494名無し池:02/11/13 23:16 ID:+ZxhirNo

「昨日の北海道、どうだった?」
「…どうって聞かれても…、うーん…楽しかったけど…
 とにかくいろいろあったよ…
 でも…行って良かった。
 …行けて良かった」
「…そう。それならいいけど…
 ……矢口は?
 矢口は平気だった?」
「うん…裕ちゃんがずっと付き添ってた。
 撮影のとき以外は…」
「え…、矢口、そんなにきつそうだったの?」
「そういうわけでもないよ。
 牧場着いたら楽しそうに笑ってたし。
 どっちかっていうと二人で慰め合ってたってのかな…
 ほら、裕ちゃんはみっちゃんのことがあったから。
 矢口を側に置いておきたかったんでしょ…」
「…ああ…そっか、そうだね……」
495名無し池:02/11/13 23:17 ID:+ZxhirNo

「…なっちは?」
「へっ? わたし?」
「うん。なっちは大丈夫なの?」
「わたしはあんま変わんないよ…
 みんなみたいに直接的なショックがあったわけじゃないし。
 なっちはみんなが卒業していくのを見守るよ…
 モーニング娘。が変わっていくのを見守るよ…
 必要がなくなるときまで……」
「…なっちは相変わらず強いなあ。
 あたしにはとても真似できそうにないよ…
 今週矢口の顔、見るのすらつらくてさ……」
「…強いわけじゃない。
 強がってるようにみせたいの…
 だって、わたしよりつらい人がいっぱいいるのに…
 そんな人たちが弱いところを必死に見せまいと頑張ってるのに、
 わたしがヘコんでなんかいらんないでしょ。
 やっぱ走り続けてないとね…」
「…なーんか惚れちゃいそうなこと言ってるなあ」
「ヘヘ。惚れんなよー、ケメ子」

照れ笑いしながらなっちがあたしの肩を軽く叩いてきた。
やっぱこの人にはかなわないな…
なっちは自分のこと今でも弱い弱いって言ってるけど、
もう他の誰よりも、誰もかなわないくらい強いよ…
これ以上強くなってどうする気でいるのよ?
496名無し池:02/11/13 23:18 ID:+ZxhirNo

「…あ、よしこもそうなろうとしてるのか……」
「え?」
「……ああ、いや…よっすぃーは何を聞いても涙を流さなかったからさ……
 あたしとごっつぁんに『プッチモニは任してくれ』なんて言ってきてさ、
 本当はあのコも矢口と同じくらいショックなはずなのに元気に振る舞おうとしてて…
 強い自分でありたいんだろうなあって……」
「…圭ちゃんやごっつぁんに気持ち良く卒業していってもらいたいんでしょ、あのコは…
 裕ちゃんのときに心残りができちゃったから、今度はそうならないように気張ってるんでしょ…」
「…あったね、そんなこと…」

…裕ちゃんの卒業間近までよっすぃーは仲良くすることができなかった。
裕ちゃんはあの頃の頑張ってないよっすぃーが好きじゃなかったし、
よっすぃーもそんな裕ちゃんが苦手なのがありありと見えて……
そんな関係が変わったのは「モーたい」の撮影で下関に行ったとき。
二人して新しい水族館のためにフグを捕りに行かされて、
裕ちゃん魚苦手だったから、よっすぃーが頑張って…、
…なんか、それをきっかけにして仲良くなって東京に帰ってきた。
…でもそのあとの北海道ロケのとき、みんなが卒業記念に裕ちゃんとのプライベートの
ツーショットの写真を用意するなか、よっすぃーだけツーショットの写真がなくて…
そのことをよっすぃーは後々まで後悔していた。
今度はそんなことがないように、思い残すことがないようにしたいんだろう…きっと……
497名無し池:02/11/13 23:19 ID:+ZxhirNo


「おはようございまーす」


…遠くの方からごっつぁんの声が聞こえてくる。

足音が聞こえて廊下の曲り角からごっつぁんの姿が現れた。
顔には汗の雫が浮かび上がり、慌てて来たのが窺える。

「まだ大丈夫だよ、ごっつぁん」
「あ、なっち……ヤバかったよ今日はー。
 大慌てで仕度してギリギリ。もうダメかと思ったー」
「大丈夫だよ、今日はみんなそんな感じだから。
 みんなほとんど昨日は最終便の飛行機だったからねー。
 疲れ残ってるでしょ」

なっちが言った後にちらっとあたしの方を見た。
498名無し池:02/11/13 23:20 ID:+ZxhirNo

「あ! なんで今あたしの方、見たのよー?
 あたしは全然疲れてませんよー。
 若いんだから!!」
「さっきと言ってること違うよー
 『疲れたー』ってさっきは言ってたくせにー」
「言ってないよー、そんなこと」
「どう思う、ごっつぁん?
 このケメ子の言い草」
「いや、若いって思うのは自由でしょ」

ごっつぁんが少しニヤけた…

「ちょっとー、ごっつぁん!
 その笑いは許さないわよー!!
 あたし本気で若いんだからー」
「はいはい。分かった分かった。
 分かったからそろそろ部屋に戻るよ」

なっちとごっつぁん二人に両脇を抱えられて連れていかれた…
うぅ…あたしだって若いのにー…
この2人は反則だよぉ……


 ・ ・

499名無し池:02/11/13 23:21 ID:+ZxhirNo

ホテルに移動しての記者会見、会場に入る順番で並んだ。
前列の最後はあたし。
前にいるごっつぁんがものすごく緊張してた。
カメラもそんなごっつぁんを追ってて、
…あたしのことを映すことなんてないんだろうな。
卒業するのは同じ立場なのに……

ちょっとした嫉妬心。
でも自分でも納得してることだから…
あたしは歌で自分を見せることができればいい、
自分にしかできないことをやればいい。
そうやってここまで来たんだから…

全員が席につくとさっそく会見が始まる。
最初はつんくさんがあたしたちの出演する映画についてのコメントや
今回の改編についてのコメントをざっと喋った。
それが終わるとあたしたちの番。
会場にずらりと並んだ取材陣とカメラの列…
いっせいにあたし達の方に注目が集まる。
500名無し池:02/11/13 23:22 ID:+ZxhirNo

…さっそくごっつぁんが質問を受けて答えていた。

「『ああ…モーニング娘。脱退…卒業なのか。これから一人か…』
 って思ったらちょっと寂しい気持ちもあるんですけど……」

ごっつぁんの緊張した声。
でも、比較的落ち着いてるのかな……
まだ卒業に対してはあたしと同じで実感がないんだろうな…

「……新しいキッズとのユニットはですね、きっと…
 もっともっとすごいユニットにしていきたいなぁと
 今からすごいワクワクしているんですが……
 やっぱり、ミニモニ。が今すごく、大丈夫かなってすごい不安なんですけども…
 それを見守っていきつつ…ライバルとして頑張って行きたいと思うので、
 皆さん、新しいユニットも応援してください。よろしくお願いします」

…矢口のコメントを聞いているのがつらかった。
自分の感情を押し殺して…本当に言いたいことも言えず…
建て前だけのコメント……
きっと会場にいる誰もが矢口が本心を喋ってるなんて思わなかっただろう…

よっすぃー、石川共に二人らしいコメントだった…
タンポポとプッチモニをつらい立場で受け継ぐ二人だけど
辞めていくメンバーのためにも頑張りたいっていう気持ちが出てた…
501名無し池:02/11/13 23:24 ID:+ZxhirNo

突然あたしに突拍子もない質問が飛んでくる。

「結婚っていう訳じゃないですよね?」

「ハァ!?」

そんなことあるわけないでしょ!
メンバーも会場の人たちも大笑いしてる。
だいたい、そんなことしたら裕ちゃんに怒られちゃうよ。
『またあたしより先に結婚しやがって』って…
…それでもしつこく聞いてくる。

「結婚という訳では……」

「ないですねぇ……」

あたしはきっぱりと答えた。
…ああ、もうそんなに聞くんだったら本当に結婚してやろうかな…
相手を探すのが先だけどさ……
あたしへの質問はさらに続く…

「卒業までにメンバーとどんな思い出を作りたいですか?」

「そうですね…、ちょうど今週からツアーが始まるんですけど、
 合間にみんなで一緒に花火したいねって話をしてて…
 『花火をやらして下さい』っていうお願いは、スタッフさんにちょこっとしましたね」

ごっつぁんとはこのツアーで最後だから、
あたしにとっても最後の夏のツアーだから、思い出に残ることをしたい。
せめて花火くらいはみんなでやったっていう思い出を残したい…
502名無し池:02/11/13 23:26 ID:+ZxhirNo

質問は順番に回り、各メンバーのコメントが聞こえてくる…
なっちやカオリはさすがで極力メンバーに涙を誘わせないようにコメントしてた。
…でもだんだんみんなも気持ちが入ってきてしまって……
高橋の次の辻のコメントはめちゃくちゃだった…
そして加護と矢口とよっすぃーのコメント……

「はい……。はい。あのぉ……びっくりしました。
 でも、花火もやって…一緒に遊園地行って…
 一緒にご飯食べて……あと…………はい」

「いっつも加護は、ごっちんにばっかり、ひっついて、ひっついていて……
 いつも金魚のフンだと言われてまして……
 で、これからはいなくなって……。加護が金魚に……フフっ……
 ごめんなさい。えっとぉ、色んなことを教えてもらったり……
 保田さんには、あのぉ、おばちゃんおばちゃんとか言って……ごめんなさい。
 ごっちんはもう少ししか時間がないんですけども、いっぱい思い出を作り……たいと……思います」
503名無し池:02/11/13 23:27 ID:+ZxhirNo

「…圭ちゃんの落ち込んでいる姿を見たりとか…
 ごっつぁんがソロでやってる時とか……すごい…こう手が震えてたりして…
 しっかりしてるように見えて、まだ16歳なんだなあってところがたくさんあって……
 たぶん今一番不安なのは、二人だと思うんですけど……
 モーニング娘。としても、ごっつぁん、圭ちゃんがいなくなって、
 すごい頑張らなきゃいけない時だし……
 二人にとっても一人でやっていく……
 すごい良いスタートを切って欲しいなあと応援している気持ちで一杯なんですが……」

「圭ちゃんと、ごっつぁんは一緒にプッチモニでやってきて…
 すごい思い出がたくさんあって…でも二人から色々と教えてもらって……
 なので『プッチモニは任してくれ』っていう風に言ってます。
 あと、やっぱ卒業して一緒に歌を歌えなくなっちゃうのは寂しいんですけど、
 ハロープロジェクトの中では一緒なんで、
 これからも一緒に色んなお仕事をしていきたいと思います」

……あたしは思わず涙をこぼした…
辻の気持ちの整理のついていない支離滅裂な言葉。
加護のユーモアを交えていても気持ちのいっぱいつまった言葉。
矢口のあたしやごっつぁんを思いやってくれる言葉。
よっすぃーの気丈夫な言葉。
みんなの言葉があたしの心に届いた……
…それはみんなも一緒だったみたいで、みんなの鼻をすする音が聞こえてきた……
隣に座っているごっつぁんの涙を拭っている姿も目の端の方に見えた…
504名無し池:02/11/13 23:28 ID:+ZxhirNo

「あのぉ……何て言っていいか分からないんですけども。
 いっつも13人で一緒にいて、それが2人もいなくなるってのは寂しいんですけども……
 後藤さんとか保田さん……が……うん…………」

最後の小川のコメント。
あたしの後ろに座っていた小川からの声がとぎれる。
ごっつぁんと二人して振り向くと、小川が顔をくちゃくちゃにして大泣きしてた……

『小川、頑張れ』

ごっつぁんと共に小川に優しく微笑みかける…
小川は軽くうなずくと懸命にコメントを続けた…

「卒業するまでに……
 …楽しい思い出を作れればいいなって思ってます」

……うん…よく頑張った…小川……
…あんたにプッチモニを託すんだから頑張りなさい!
プッチモニの取り柄は元気で明るいことなんだから、
早く立ち直って笑顔を見せるんだよ、小川……


小川がまだ泣き顔を見せたままあたしたちは立ち位置を変えて集合写真の撮影。
目がうるんだままのコもいたし、涙の痕が残ってしまっているコもいた…
…キッズのメンバーたちも撮影で壇上にでてきたけど、そんなの関係ない。
ここはあたしたちモーニング娘。のステージ。
あたしとごっつぁんの卒業記者会見。
…こんな子供たちに主役の座は譲らない。
あたしには自分の力でここに立っているプライドがある。
みんなそう思ったのか、あたしたちは必死に笑顔を作りカメラに向かった……
505名無し池:02/11/13 23:29 ID:+ZxhirNo


 ・ ・


記者会見が終わってカメラや記者さんたちが引き上げると、
あたしたちはその場所を使ってMUSIX用のコメント撮り。
それも済んであたしたちの今日の仕事は終わる。
みんなが着替えてる中、辻に声をかけるなっちの声が聞こえてきた。

「のの、明日のインタビューはしっかりやりなさいよ」
「…うん。分かってるよぉ」

あー、辻は明日がインタビューの日か…
能地さんのインタビュー、こんなときに当たるなんて辻も運がないな…
そんなことを考えていると、いつものあのかん高い声が聞こえてきた。

「わたしも明日インタビューなんですぅ。
 何を話していいのか困っちゃいますよねぇ」

また石川か…。思わず笑ってしまった。
ホントにタイミング良く、いつもまあ……
我慢できずに横から口を出した。
506名無し池:02/11/13 23:30 ID:+ZxhirNo

「石川は心配しなくてもいいでしょ、別に。
 あんたはいつも通りそのまんまやりなさいよ。
 それに誰も心配してないからイチイチ言わなくていいよ」
「ちょっと!保田さ〜ん、それどういう意味ー?」

石川がわたしの腕にまとわりついてくる。

「こらっ、ベタベタさわるな。暑っ苦しいから離れろー」
「イヤですよー。
 どういう意味だか言ってくれるまで離れませんからね」
「だから、誰も石川のことなんか心配してないって言ってんの!」
「あぁ、ひどいなあ。わたし拗ねちゃおう」

そう言って手をイジイジさせている。
あ…、なっちと辻が石川を見て引いてる…
あたしも苦笑するしかなかった。

…でもね、石川。
あんた、もうそれくらい強くなったってことなんだよ。
いちいち心配されなくても平気なくらい強くなったんだよ。
だから、あんたにはこんなことも言えるようになったんだからね。
もう少し自信持ちなさいよ、あたしよりも恵まれたもんいっぱい持ってるんだから。
507名無し池:02/11/13 23:32 ID:+ZxhirNo

「なっちも今日はこれで終わりでしょ?」

まだ隣でいじいじしている石川をしり目になっちに訊ねた。

「ううん。ラジオ録りが残ってるよ…
 ほら、今回の改編を受けてのコメントっていうの?
 それをちょっと録らないといけないんだよね…」
「あー、大変だねえ、そりゃあ……」
「そうでもないよ…、カオリも録るし。
 ……大変なのは矢口でしょ……
 今晩2時間生放送なんだから……」

あたしたちのいる場所とは反対の、ごっつぁんや加護の近くで着替えている矢口に目をやった。
黒のランニングにオーバーオールに着替えて黙々と荷物の整理をしている矢口…
矢口はこの後、生放送か……
つらいな…………

「……あの、わたし聞いてます!
 安倍さんのラジオも、矢口さんのラジオも。
 …だから頑張ってください」
「ありがと…梨華ちゃん……」

早々に着替え終わったなっちが石川に声をかけられつつ部屋を出ていった。
なっちもカオリも矢口も今日こんな状態でラジオ録りか……
あたしもちゃんと聞き遂げないとなあ。
3人が何を話すのか、何を言うのか、
それを聞くのが、みんなを置いて卒業するあたしのせめてもの責任だよね……
508名無し池:02/11/13 23:32 ID:+ZxhirNo


 ・ ・


みんなと別れてタクシーに乗り込み、いつも通りに携帯の着信履歴とメールの確認をする。

……あ、紗耶香……!!

着信に残った紗耶香の名前のところであたしは無意識に発信ボタンを押していた。

3回、4回と続く呼び出し音。
諦めかけて切ろうとした時、紗耶香の声が携帯電話の向こうに聞こえた。

「なにー? 圭ちゃん」
「何って、紗耶香が何か用あってかけてきたんでしょ?」
「やだなあ、聞いてないのー?留守電」
「あー、聞いてないや。ゴメン……
 そんで、何?」
「そんなにたいしたことじゃないけど…
 …和田さんが『頑張れよ!』って」
「何それ?」
「昨日さ、和田さんと会ったときに伝言頼まれちゃって。
 まあそれだけなんだけど…」
「和田さんが? 何だかなあ……」
「あたしに言わせたかったんじゃないの? 圭ちゃんに…
 いろいろあったんでしょ?今日もさ……」
「そりゃあ、まあね…
 今日もくたくただよ…精神的に……
 参るね、ここんところ毎日毎日…」
509名無し池:02/11/13 23:34 ID:+ZxhirNo
「……後藤は?」
「んー、ごっつぁんはまだ卒業する実感がまだないみたいで、
 いつもとあんま変わんないかな。
 さすがに今日は記者会見で泣いてたけど…」
「後藤のことだからまた直前になって大泣きするんじゃないの?
 初ライブやあたしの卒業のときみたいに……」
「どうだろねえ…
 あのコ、前にも増して自分の気持ちを他人に知られるの
 嫌がるようになったからさ、どこまで堪えるかな……」
「ふーん……」

「…………そういえば、
 なんで和田さんがあんたに伝言なんか頼んでんのよ?」
「昨日会ったって言ってんじゃん」

相変わらずぶっきらぼうな答え方…
このせいで最初の頃生意気だって怒られてたのにまだ直す気ないのか……
510名無し池:02/11/13 23:34 ID:+ZxhirNo

「ほら、昨日ソニンとより子。ちゃんと一緒のライブに出たからさ、
 和田さんも来てたってわけ。きくちさんの主催だしね」
「そっか……そういやソニン、戻ってきたんだっけ…」
「和田さんも無茶させるよねー。いきなりソニンにギター持たせてんの。
 でも、なんかあたしよりサマになっててさー、悔しいんだよー」
「へぇ、ソニンもギター使うんだ…
 …で、どうなのよ? 紗耶香の方は?」
「えー、何が?」
「…だから…ソニンや和田さんのことより、あんたの方はうまくいってんの?」
「…………」
「…いや、言いたくないなら別にいいけど」
「……んー…、あんま良くないかな……」
「そうなんだ……」
「明日もMステ出るんだけどさ、座りトークなしの1曲目になっちゃった。
 何しろ売れてないからね…CDが……」
「…………」
「いや、いいよ、別に圭ちゃんが気にしなくても……
 あたしにはひとまず歌える場所があるから。
 今度の曲は自分で作詞したし、少しづつだけど辞めるときの理由だった
 シンガーソングライターになるって夢もかないつつあるし、
 今はこれでいいよ…」
511名無し池:02/11/13 23:35 ID:+ZxhirNo

歌える場所か……
来年の春、あたしはどうなってるんだろう。
女優もやってみたいって言ったけど、一番にやりたいのはやっぱり歌。
もう一回一緒に歌いたいって言ったこと紗耶香は覚えてるかな…

「ねえ、紗耶香、前にさ…」
「うん?」
「…………あ、やっぱいいわ」
「なんだよぉ」

…やめよう。今言うべきことじゃない…
あたしにも紗耶香にももう少し時間が必要だよね。
そのときが来れば自然ともう一度やれる…
…きっとそうなる日がくる…

「…あのさ、今日これから時間があったら矢口のラジオ聴いてあげて。
 矢口が一番つらいときだから……
 精一杯頑張ってる矢口を見届けて欲しいんだ、同期として。
 矢口がモーニングに残ることになる唯一の2期生だから……」

最後にそれを伝えて紗耶香との電話を切った。
紗耶香と次に会えるのはいつかな……
512名無し池:02/11/13 23:37 ID:+ZxhirNo


マンションの近くでタクシーを降り、コンビニでちょっと買い物。
コンビニを出ると頬に冷たいものが当たる…

…あ、雨か……
遠くの方で雷鳴も聞こえてくる。

…頭の中に浮かんだワンフレーズ。

 ♪コンビニ寄って立ち読みすりゃ雨が降ってきた

紗耶香との武道館での最後…
…あのときもみんな泣いていた。

カオリがそんなみんなを「みんなの目から雨降ってた」って表現したっけ…
今日もみんなの目から雨か…

あたしはポツポツと降ってくる雨を見上げてそんなことを思っていた……



 ・ ・

513名無し池:02/11/13 23:38 ID:+ZxhirNo


9時20分すぎ。
リビングに置いてあるコンポの電源を入れてラジオのチューナーを文化放送に合わせる。
聴こえてくる島谷ひとみさんの声。
雷はさらに近付いてきて、ときどき落ちる雷に電波も乱れがち。
あたしはクッションを抱えて絨毯に座り込むと、冷蔵庫から取り出してきた缶ビールを開けた。
一口飲んで壁にもたれかかる…

…やがて聴こえてくるなっちの声。


  みなさんこんばんは。モーニング娘。の安倍なつみです。
  みなさんお聞きの通り圭ちゃんとごっつぁんの卒業、
  そして他にも新しいタンポポ、プッチモニ、ミニモニ。の発表がありましたけども
  ハロープロジェクトいっぱいいますが、一人一人これからも前向きに頑張っていきますので
  みなさん応援よろしくお願いします。
  …圭ちゃんとごっつぁんの卒業を聞いたときには…なっちはさみしい気持ちもありましたけど、
  また新しい気持ちでスタートして頑張っていきたいと思います。
  これからもモーニング娘。はどんどん前向きにパワーアップしていきますので
  みなさんついてきてくださいね!
  よろしくお願いします。


ここがなっちの言ってた今日収録って部分か…
無難にまとめたなあって思って聴いてたら、声のトーンが一変した。
514名無し池:02/11/13 23:39 ID:+ZxhirNo

あれ…この声……?

なっち、なんで泣いてんの?

…なんで泣いた後の声?

ハタチまでもう少しという話をしているなっちの声が震えている。
話し方も少しヤケ気味…

これ、いつ録ったんだろう……
月曜? 火曜?

なっちめ、また黙ってたな…
…もう! いっつも肝心なことは何にも言わないんだから…
また自分の中だけにしまいこんで……
リスナーにプライベートな話するくらいだったら、
あたしたちにも少しは話しなさいよ!
そうやってなっちは溜め込んでいくんだから……

…ラジオからはパパパパパフィの収録やセカンド写真集の頃にバリ島に行ったときの
懐かしい話が聴こえてくる。
なっちは紗耶香とマッサージに行ったときのことを話していた。

あのときあたし一人の部屋が恐くてカオリと一緒の部屋にしてもらったんだよなあ。
でもカオリはタンポポの仕事の都合で一日早く帰っちゃって、寂しかったっけ…
515名無し池:02/11/13 23:40 ID:+ZxhirNo

あたしがなっちにつられて昔を思い出している間にもラジオは進んでいく…


  ……なっちの推薦曲をおかけしたいと思うんですけども、
  やっぱり夏ということで…夏といえば花火ですね……
  聴いてください。モーニング娘。で『せんこう花火』。


……せんこう花火。
なっちが歌ってあたしと紗耶香がコーラスをいれた曲……
その歌をなっちが推薦曲でかけている…

花火か…
昼間の記者会見で花火がやりたいってちょうど言ったよね…
本当ならライブの合間やスタッフさんがいるところじゃなくて、
あたしたちだけでやりたい…
昔やった富良野の花火みたいに家族も交えて。
なっちもあのときの花火が忘れらんないのかな……
516名無し池:02/11/13 23:41 ID:+ZxhirNo


……窓に打ちつける雨の音が激しくなっている。
なっちの番組が終わるとカーテンを開けてちらっと外を覗いてみた。
雷の光が目に飛び込んで、その直後にものすごい音がした。
びっくりして思わず飛び跳ねてしまった。

雷雲がちょうど真上を通過中…
なんか、あたしたちハロプロも似たような感じか…
嵐のまっただ中だもんね……


矢口のラジオを聴こうと思ってニッポン放送に変えたけどやってない。
ちょっとー、野球ってどういうことよー!
こんな試合より矢口の放送しなさいよー!
あたしは手元にあったクッションをコンポに向かって投げ付けた。

いつまでたっても放送が始まらないことにイライラしながら、
テレビのチャンネルを意味もなく変えたり、
立ち上がって冷蔵庫を開けに行って何も取らずに戻ってきたり…
517名無し池:02/11/13 23:43 ID:+ZxhirNo

10時半を過ぎるとようやく矢口の声が聴こえてきた。
あたしは雷で乱れがちな音声に耳を澄ませた。


  9月23日にごっつぁんがモーニング娘。を卒業ということでですね…
  とりあえずもうビックリしました。
  こんなに近い卒業っていうのはたぶん初めてじゃないかな…
  ごっつぁんはたぶん一番不安ですよ、きっと。
  ああ見えても16歳じゃないですか。
  裕ちゃんでさえ緊張してたし不安もたくさんある中、卒業していったんですよね…
  …ごっつぁんはたぶんそれ以上にもっともっと緊張して、
  この先の不安を感じながら卒業していくんじゃないかなと思います…
  …でもね、新しいことも出来るし、自分のやりたかった歌を一人で歌ったりとか、
  ウチらは応援するしかないんですけども…
  初めて聞いたときはものすごくショックでしたね。
  可愛い面も大人っぽい面も全部知ってて、まあ兄弟みたいなもんだったので、
  家族の一人がアメリカかどこかへ行っちゃうような気分ですよ。
  …でもハロプロとしてもこれから一緒だし、会う機会もたくさんあると思うから
  そのときは思い出話に花を咲かせようと思います…


最初はごっつぁんの話。
初めてごっつぁんの話を聞いたときはショックを受けていた矢口だったけど、
ごっつぁんのソロ志向ってのは元々みんな分かってたから、何日か経つうちに徐々に慣れて…
ある程度気持ちの整理はついたのかもしれない。
週刊誌とかに不仲説を書かれたこともあったけど、実際は二人は仲良かった…
ごっつぁんが入った頃はなっちも含めてよく3人で遊びに行ってたみたいだし。
4期メンバーが入ってからは見守る立場に変わって…
本当に妹がどこかに行くような気持ちなんだろうな…
518名無し池:02/11/13 23:44 ID:+ZxhirNo

…ラジオからはごっつぁんの新曲が流れてくる。
CMがあけると再び矢口の声。


  長年やってきたタンポポを…卒業するのはやっぱりさみしいね…
  ミニモニ。もそうだけど…タンポポはね、やっぱり長いもん。
  …モーニングのユニットの中で一番長いユニットで…
  おいらがデビューした年から始まったユニットだったんでねぇ……
  やっぱり聞かされたときは「うぇー!!」って驚きと
  「はぁー、そうなんだ…」っていう感じもあったんですけど、
  …なんかね…、彩っぺがいた頃から、カオリと矢口と3人でやって、
  彩っぺが抜けて、途中から加護ちゃんと石川が入り、
  4人でタンポポとして……いっぱいCDも出したしね……
  あのCDは今度から誰が歌うのさー!!
  どうするのさー!!
  って感じなんですけど、…でも新しいタンポポを心から応援していきたいと思っています。
  ……まあね、ホントにさみしい気持ちなんですけども…
  …あのミニモニ。も…まだ先のことなんですけども映画が始まりますし、
  お正月には公開されるのでその映画も見てくださいね…
  …あの…たぶん矢口さんがミニモニ。でいる最後のお仕事になるんじゃないかなと思います……
  ……あの…………一気に両方卒業っていうのはね……
  ……ヤバいね……
  寂しい……ホントに…………
  なんかもう、どうしようっていう……
  …卒業も悲しいことの一つなんですけど、このユニット話もですね、
  矢口にとってはかなり衝撃的なことだったんですが……
  ……あの……でもね…………新ユニットがあるから……
  …あの…わたしは、そのハロープロジェクトキッズの子たちと新しいユニットを作って… 
  …リーダーとしてですね責任を持って、一つのユニットを作り上げていきたいと思うので
  みなさんそちらの方を楽しみにしていてください……
519名無し池:02/11/13 23:45 ID:+ZxhirNo

  …………
  ……あのーちょっとね、最近涙腺弱くてですね、
  たぶんおばちゃんになってきた証拠ですね…
  ……あのー…なんて言うんだろ…新しいことも始まるっていう期待はあるんですけども…
  やっぱり寂しい方が今一番大きく来てますね……
  …心の中に……
  …あとはですね、来年の春に圭ちゃんが卒業するということで、
  2期生が一人になってしまうという寂しさもあるし、
  後はですね、モーニング娘。が来年の春、11人になって……頑張り時ですよ。
  おいらも上から3番目になり、お姉さんチームとしてですね、
  圭ちゃんが安心して卒業していけるようなモーニング娘。を見せてあげたいですね。
  きっとそういう頑張ってるモーニング娘。を見て圭ちゃんもね、頑張れると思うので
  お互い励ましあいながら頑張りたいなと思っています。
  …まあ、でもですね、来年の春まで時間もあるらしいので……
  …あの……ね…いろいろあるし……
  モーニング娘。、それまでどんどんどんどん頑張っていきたいと思うので
  ……圭ちゃんとごっつぁんがいる13人のモーニング娘。、
  まだ時間がありますのでみなさん応援してください。
520名無し池:02/11/13 23:47 ID:+ZxhirNo

……矢口が泣いてた……

…泣きながら必死に喋ってた……

あたしにも気をつかって、仕事のことも気にして…
本当は泣き崩れたかったはずなのに……

自分の意思とは何も関係なく引き離されるタンポポ…
矢口にとってどれだけショックだったんだろう……
覚悟を決めてたあたしですら衝撃を受けたのに…

…矢口の泣きながら喋っていた声が耳に残って離れない……


…………


ラジオからは今の雰囲気とかけ離れたミニモニ。の曲…
でも…矢口はこれすらも手放さなければならない……


矢口のつらさを考えると、あたしは普通でいられなかった…


……矢口…………


……ゴメン…あんたを一人残して……


何があっても3人で一緒にいようって約束したのに……
521名無し池:02/11/13 23:48 ID:+ZxhirNo


…………


……



  紗耶香が卒業して、圭ちゃんが卒業して、3人で入ってきた2期生がですね、
  一人になってしまうわけなんですけども…
  まあ、でも圭ちゃんが卒業するまではまだ半年くらいあって…
  やっぱりね、一番最初から一緒だったメンバーが卒業してっちゃうってのは、
  …どうなんだろ……すごく不安ですね。
  圭ちゃんとかとはいろんな話もするし…
  あと落ち込んでるときとかに相談に乗ってもらったりしたのが圭ちゃんだったので…
  その相手はこれからどうなるんだろう……
  …でもその点はですね……圭ちゃんとかに頼らないで、
  矢口が他のメンバーの相談にのってあげたりとか、
  責任を持ってモーニング娘。をまとめていかなきゃいけないって点ではですね、
  圭ちゃんの卒業は矢口にとってはものすごく強くなれる機会なんじゃないかなと思います。
  ……来年ハタチの矢口さんはですね、下のメンバーなんかの面倒をどうやって見て、
  どうやってまとめていけばいいのかを考えつつ、
  圭ちゃんの卒業の日まで頑張っていきたいと思います。
522名無し池:02/11/13 23:50 ID:+ZxhirNo

  おいらのラジオに圭ちゃんまだ来てくれたことないので、
  卒業の日までに圭ちゃんが『おじゃまします』って、
  みなさんの前に出てくれる日をみなさん楽しみにしていてください。
  たぶん出てくれると思います。
  ねー?

  不安はありますけども、圭ちゃんが抜ける日まで2期生として下の子たちを
  ぐいぐい引っぱっていきたいと思います。
  カオリとなっちも心強いし、大丈夫だと思います……
  …あの…みなさん心配しないでくださいね……


……うん……

…きっと、行くよ……

ううん…無理矢理にでもニッポン放送まで押しかけるから……

「おじゃまします」って突然入ってビックリさせてやるから…

…矢口の願い、絶対叶えるよ……

…今は何も言えないけど…、見守ることしかできないけど…

あんたのことちゃんと見てるから……

だから…今は…頑張って、矢口……
523名無し池:02/11/13 23:50 ID:+ZxhirNo


…………



……


…まったく場違いだった藤本のコーナーが終わるとカオリの声が聴こえてきた。
カオリも今日録るって言ってた……
…みんなつらいことやってる……
あたしだけがこうしてラジオを聴いている。
当事者のあたしが……
矢口、なっち、カオリの3人に少し後ろめたさを感じた…


  今回いろいろと御心配、そしてお騒がせしています、リーダーの飯田圭織です。
  突然のことでね、リスナーのみなさんをびっくりさせちゃったと思いますが…
  わたしがその話を聞いたのはですね、矢口と同じときに聞いて、
  確かにびっくりはしたんですけども、正直言いまして、何度も何度も
  繰り返し繰り返し変化してきたから、ショックをあまり感じなくなってきたかも……
  っていう感じですかね…
  …やっぱり、わたしがリーダーなので、あたしが落ち込んでいてもね
  残るメンバーも可哀想だし、旅立っていくメンバーも気持ち良く、
  自分の力を信じてね、強く旅立って欲しいので、わたしはね、笑顔で、
  元気に送りだしてあげたいなあと思っています。
  矢口と一緒にタンポポを卒業することになったんですけども、
  タンポポはですね、わたしを作り上げてきてくれた場所、私自身も成長できる場所となったのでね
  卒業するのはものすごくさみしいんですけども、新しく入るメンバーにもわたしと同じように
  いろんなものを学んで欲しいし、わたしもですねもっともっと成長できるように、
  飯田圭織自身も頑張っていきたいと思っています。
524名無し池:02/11/13 23:51 ID:+ZxhirNo


カオリ、早口だった…
本心で喋ってないときはいっつもそう。
言いたいこといっぱいあるはずなのに、言葉にしたいこといっぱいあるはずなのに、
カオリは与えられた言葉をそのままに喋った。
気持ちを込めなかったのはカオリのせめてもの抵抗なんだろう…
いま口にしていることが本心じゃないよって、リスナーに伝えたいんだろう…

カオリがどれだけタンポポを大切にしてきたか、みんな知ってるよ。
あたしたちプッチモニに負けたときどれだけ悔しがってたか、
自分達の歌う歌にどれだけ誇りを持ってたか、みんな分かってるよ……
カオリの本当に言いたいことはそんなことじゃないよね…
口にしなくてもきっと…、みんな分かってくれるよ、カオリ……


…………


……

525名無し池:02/11/13 23:53 ID:+ZxhirNo

矢口が雷の話をしている。
雷はお台場の方まで行ったらしい…

あたしの部屋のカーテンの向こうではすっかり雨はあがって、雷の光はもう見えない。
窓を開けると8月の熱気と共に雨上がりの匂いが流れ込んでくる。

でも…矢口はまだ嵐の中……雷雨の中、放送を続けている……
それがなんだか矢口の置かれた境遇とダブって見えて……


……スピーカーからはエンディングのドリカムの歌…
幾分か元気を取り戻した矢口の声……


  あとつんくさんを責めないでくださいね。
  つんくさんが悪いわけではありませんからね、みなさん。


…………!

…あのコ、最後の最後にホンネを言っちゃった……

寂しいってことは言ったけど、悪いとか責めるとかそんな言葉はずっと避けてきたのに……
なんとか前向きな言葉だけで乗り切れてきたのに……
こんな『何かが悪い』ことを意識した言い方なんて……

また怒られなければいいんだけど……
今の矢口に怒られたことをバネにする力が残っているのかどうか、
それがあたしはすごく不安だった…
いつもの矢口なら怒られてもそれを見返してやろうって気持ちがいつもあったから…
526名無し池:02/11/13 23:54 ID:+ZxhirNo

…エンディングにかかっていたドリカムの歌が聴こえなくなるとメールの着信音が鳴った。
紗耶香からのメール…

『明日のMステ見ててよ。
 オープニングで「2」って3回出すから』

…そっけない……
けど…紗耶香らしい…
あたしたち2期メン<3>人のことか…
「2」ってピースにしか見えないじゃん…
なによ、それ……

そんなことに気を使う紗耶香が微笑ましかった。
紗耶香、前からそういうの好きだよね……

きっと矢口にも同じメールを送ったはず。
矢口はどう受け止めるかな……
あたしたち3人の絆をまだ大切に思っていてくれるかな……

きっと明日会えば、矢口は笑っているんだろう…
いつもと変わらない笑顔で。
…でも、本当は違う。
いつもと変わらない笑顔でいるために自分を犠牲にしている……
みんなに余計な心配をかけさせたくないために…

あたしにはまだ半年の時間があるし、プッチの終わりも覚悟できていた。
ごっつぁんもそれは同じだったと思う。
なっちやカオリはショックだっただろうけど、あの二人はマイペースを守れるから……
4期や5期のコたちはショックとかいう前に、新しい環境を受け入れることで精一杯だろう…
でも矢口は何がショックで、何が起こったのかをすべて理解した上で自分に無理をかけるに決まってる……
527名無し池:02/11/13 23:56 ID:+ZxhirNo


…あたしは何をしたらいいんだろう……

卒業までの半年間、何をしたらみんなに恩返しできる?

みんなの犠牲に見合ったものをあたしは返してあげることができるんだろうか……


なっちやカオリや裕ちゃん……

…明日香・彩っぺ・紗耶香…そして矢口……

みんなの声になって聞こえてきた……



   走り続ければいい
  
   それがモーニング娘。なんだから 


528名無し池:02/11/13 23:57 ID:+ZxhirNo



…そう、あたしは走り続ければいい。


走り続けている姿を見せることがみんなへの恩返し…


走り続けるのがモーニング娘。なんだよね、みんな……



……



……


529名無し池:02/11/14 00:02 ID:OrvVAB1h
雑談れす。
いやあ、予定通りギリギリで水曜以内に収まったw
そんなわけで、8月1日保田圭編、一気にアップです。
完全にストック無しの状態なので、次回はいつになるか、、、
530名無し募集中。。。:02/11/14 02:55 ID:+tBgJvRn
(●´ー`●)「○○○○・・・どうし・・・て・・・
        わたしたちを消しても・・・・・・・
        モーヲタの・・・私達への思いは消えない・・・」

○○○○「芸能人ごと消してやるよ」
531名無し募集中。。。 :02/11/15 05:39 ID:7ct1cywL
児童館でバイト保全。
532名無し募集中。。。:02/11/15 23:11 ID:SZyLJ3Hc
つーかモー娘に会うとか言って歌手になろうとしてギターの練習してるやつ
まじキモイんだけど
533エロギャル:02/11/15 23:11 ID:+pHTKDml
清純そうな顔して好きもの!!
http://www.pink1.com/
http://www.pink1.com/
534名無し募集中。。。 :02/11/15 23:22 ID:WNzeADbI
(●´ー`●)
535名無し募集中。。。:02/11/16 20:52 ID:NFKbqPkH
保ぜん
536名無し募集中。。。 :02/11/17 22:06 ID:e2ThgvRU
がんばれ池田屋。ゆっくり待つよ保全。
537名無し募集中。。。 :02/11/18 22:05 ID:RpSa9Cqp
川o・-・)保全です。
538名無し募集中。。。 :02/11/19 21:17 ID:/dAHbdbc
(0゜―゜0)<…三毛猫のほうも、大林宣彦が監督やったことあるよね。保全。
539名無し募集中。。。:02/11/20 05:28 ID:hKyJPvX6
.
540名無し募集中。。。 :02/11/21 06:16 ID:5yHrefdK
(0゜―゜0)<好きかも……しれない……保全。
541名無し池:02/11/21 22:30 ID:eL9kC4m2


     ◇      ◇      ◇

                       飯田圭織編(3)
542名無し池:02/11/21 22:31 ID:eL9kC4m2


  ハッピーバースデー
  飯田さんも21ですね(笑)
  でもおばちゃんて呼ぶのはたまーにだけにします。
  これからもいろいろ相談にのってくださいね。
  今度おもしろいマンガがあったら貸してくださいな。
  汚い字ですみません。
  それでは、チャーオー。
          飯田さんのかわいい妹、石川梨華より


  編集長へ
  ちゅっ! ねえ、笑って。
  お誕生日おめでとうございます。
  運命で出会って約2年ちょっと、
  いっつも変なギャグばっかりで困ってしまいます。
  でもそんな飯田さんが好き。
  21さいの誕生日本当におめでとうございます。
        これからもプリチィーな加護をよろしくね。
543名無し池:02/11/21 22:32 ID:eL9kC4m2

OH-SO-ROの収録中に渡された手紙。
2人とも1本目の収録が終わった後に書いたんだろうなあ。
石川はその後にインタビューが待っていたから急いで書き上げたみたい。
加護はあたしが来るまでの間、暇を持て余していたみたいで、
自分とあたしの似顔絵まで書き添えてあった。

昨日の記者会見があってのラジオ収録。
石川と加護だけでやった1本目、石川が苦労して喋っている姿が想像できた。
2本目の収録、本当はあたしと矢口と加護の3人でやる予定だったけど…、
矢口は昨日のラジオでボロボロだったらしいから、
…大事をとって休ませるらしい。

あたしの誕生日まではまだ1週間あったけれど、
収録のスタジオでは加護がケーキを作ってきてくれたり、お寿司が用意されていたり…
うれしかったな…こんなときだから、なおさら…
最後は加護といつまでも『恋をしちゃいました』を歌おうねって約束して……
544名無し池:02/11/21 22:33 ID:eL9kC4m2


ラジオの収録が早めに終わったので、あたしは今まで行こう行こうと思いながら、
ついに今日まで行くことがなかった松田聖子さんのライブに行くことにした。
TBSのスタジオを出てタクシーに飛び乗ると、大急ぎで運転手さんに武道館まで行ってもらう。
昨日と一緒で東京の空は雷が鳴っていた…
昨日みたいな大雨にならなければいいけど…

初めて一人で見に行くコンサート。
どこから入っていいのか分からなくて迷った。
紗耶香のラストの時や24時間テレビの時は全部案内されてたから…
入ったときはすでに何曲か終わってしまった後だった…
545名無し池:02/11/21 22:34 ID:eL9kC4m2


聖子さんかわいいなあ…


武道館のステージで歌って踊る聖子さん…


途中SAYAKAちゃんも登場したりして…


あたしは聖子さんのステージに見惚れていた。
小さい頃からずっと…、札幌にいたときからずっと憧れていた聖子さん。
あたしもこうやって武道館のステージに一人で立って歌える日が来るのかな…
母親になっても、いくつになっても、歌を歌い続けていたい…

そんな淡い夢を抱いてステージを見ていた。
あたしの失いかけてるものがそこにはあったから…

546名無し池:02/11/21 22:35 ID:eL9kC4m2

コンサートが終わると人目につかないように武道館を後にして、
すぐ側の公園を一人ぶらついた。
なんか一人で歩きたい気分だった…

緑の隙間から見えるぼんやりと明るい武道館のタマネギ…

初めて見たとき感動したっけ、なっちと一緒に…
みっちゃんのデビューライブのときに見上げた武道館と
今こうして見ている武道館は何も変わらないのに
あたしたちだけが変わっていく…
モーニング娘。もみっちゃんも、そしてタンポポも…
みんなみんな変わっていく…


…ねえ、彩っぺ。

あたし約束守れなかったよ。

彩っぺと約束したのに…

彩っぺを感動させるような歌を矢口と二人、歌い続けるって約束したのに……

547名無し池:02/11/21 22:36 ID:eL9kC4m2

先週の土曜日、彩っぺが久しぶりにハローのコンサート会場に顔を見せてくれたけど
タンポポが歌う機会はなかった。
あたしはそれが恥ずかしくて、情けなくて…
タンポポの歌ってる姿をとうとう彩っぺに見せられなくなったことが
後ろめたくてどうしようもなかった。

彩っぺは相変わらずで、子供連れのクセにルーズソックス履いてきたりして、
無頓着でゴージャス彩っぺそのままだったけど…
彩っぺが気にしない素振りを見せてても、やっぱりあたしは気にしてしまう。
裕ちゃんやみっちゃんも交えて話してる最中にも、あたしの心はどこかズキズキしていた。
いつ彩っぺにタンポポのことを言われるんじゃないかと思って…
彩っぺがそんなことを言うわけないって分かっていても、やっぱりあたしの心は傷んだ…
548名無し池:02/11/21 22:37 ID:eL9kC4m2

そしてその翌日、あの発表……
ついにあたしからタンポポがなくなる…
あたしたちが大事に育ててきたタンポポが……


彩っぺ、あたしたちタンポポを咲かせられなかったよ。


彩っぺがくれた水や光、生かせなかった。


…タンポポ枯らせちゃったよ…、彩っぺ……



独りたたずむ公園の中…


いつしか降り出した雨にタマネギが霞んで見えた……


549名無し池:02/11/21 22:38 ID:eL9kC4m2


 ・ ・


 ・



今日も朝から暑い。

昨日、聖子さんのコンサートから帰ってきた後、いつものように
キャンバスに向かったまま朝を迎えた。
今日は広島での野外コンサート。
体調のことを考えればこんなことじゃいけないんだろうけど、寝不足は慣れてるから。
1,2時間寝ればなんとかなる…
それに移動中でも寝れるし。

空港で会ったメンバーたち、やっぱり矢口の体調が悪そうだった。
あたし以上に目の下にクマを作って…
サングラスをかけてみんなに心配かけさせまいとしてたけど、
たまにはずしたちょっとの間だけでも、矢口の心労が顔に出ていることはすぐにみんなに分かった。
この暑さの中、矢口も少しは手を抜けばいいけど、
全力でライブをやらないと気が済まないコだから…
自分の体調が悪いと分かったら逆に無理するに決まってる。
ただでさえ矢口は小さい体をみんなの動きと合わせるために激しく動かしているし…
あたしは矢口の体力が持つか心配だった。
550名無し池:02/11/21 22:39 ID:eL9kC4m2


広島に向かう途中不安に思っていたそんな危惧が、現実のものとなる…
そんなことになってほしくないと思っていたのに…


アンコール前の『恋のダンスサイト』が終わって、一旦ステージ裏に引き上げる中、
矢口が圭ちゃんに支えられるようにして戻ってきた。
圭ちゃんがしきりに矢口に声をかけてるけど、矢口は息も絶え絶えだった。
汗びっしょりで、圭ちゃんに支えられてやっと立ってるような感じだった。

ステージから降りたのを確認してホッとした矢口…

……その矢口の顔色が急激に悪くなったと思ったら、
圭ちゃんの腕をすり抜けてそのまま床に崩れ落ちた……

551名無し池:02/11/21 22:41 ID:eL9kC4m2


「…っ!! やぐちーーっ!!」


ステージ裏に響き渡る圭ちゃんの声。

…矢口の体が…小さな小さな体が…床に横たわっている……

あたしは突然のことに体がすくんで動かなかった。

コンサートスタッフが急いで駆け寄ってきて圭ちゃんと一緒に矢口を抱えて運んでいく…

時間にすれば引き上げてきてからほんの1分足らずの出来事…

あたしはその光景をボーっと、外の世界の事のように見ていた……

…………

……立ちすくでいたあたしに後ろからかかる声…


「カオリ…、着替えて準備しないと…」
552名無し池:02/11/21 22:42 ID:eL9kC4m2


…なっち……


「…だって矢口が…矢口が倒れたんだよ!!」

「でもアンコールが…」

「そんなの後回しでしょ!! 矢口が…矢口が……
 あたしの目の前で倒れて、そのまま起き上がらないで……
 …圭ちゃんに運ばれて……」

「…カオリ、冷静になって。
 矢口は大丈夫だから……ちゃんと意識もあるし…」

「だって…」

「紺野がケガしたときみたいに冷静に対応しないと…
 あのときも収録に戻らせたのはわたしたちなんだから……」

……アタマでは分かってた。
去年うたばんの収録のとき、溝に落ちてケガをした紺野に意識があるのを確認すると、
その場はスタッフに任せて、メンバーたちをすぐに収録に戻らせたのはあたしたちだ…
動揺してる5期メンバーたちを収録に戻したのはあたし。
タカさんはそんなあたしたちのプロ根性を誉めてくれたけど、本当はつらかった。
倒れてるメンバーを他の人に任せてその場を去ることが…
ましてや今回倒れたのは矢口だ…
553名無し池:02/11/21 22:43 ID:eL9kC4m2

倒れた理由も…体調が悪い理由も…
みんな分かってるじゃない!
なんで矢口がこんなことになってるかみんな分かってるでしょ!
あたし、そんな矢口を放っておけないよ……

「アンコール待ってるお客さんがいっぱいいるんだよ…」

…分かってる。
分かっていても、なっちの言葉に素直にうなずくことができなかった…
反発すら覚えていた。
それこそあのときの5期メンバーたちが感じたのと同じように……
人としての命の価値と、芸能人としての命の価値…
芸能人として判断を下したなっちも、あたしもイヤだった。
そんなことを口にするようになった自分を心の底で嫌っていた…


「カオリ! 行くよ」

突然圭ちゃんに背中を押されてようやくあたしの足が動く。
圭ちゃんも無理して矢口の側を離れてきたんだろう。
顔に苦渋の色が満ちていた。
それでもアンコールのために戻ってきた圭ちゃん…

あたしがここで看病の道を選んでも矢口はきっと怒るだろう…
歌えるのに歌わなかったらきっと矢口はあたしを怒り、悲しむに違いない。
圭ちゃんもきっと同じように考えて戻ってきた…
圭ちゃんの表情を見たらそう思えた…

あたしたち年上メンバー3人、悲壮な覚悟で控え室に向かう。
554名無し池:02/11/21 22:44 ID:eL9kC4m2

扉を開けると心配そうにあたしたちを見るメンバーたち。
あたしは極力普通のトーンでみんなに言った。

「はい! みんな着替え終わったらさっさと行くよー!」

言いながらあたしも着替え始める。

「矢口は大丈夫だから。
 自分達のステージだってことを忘れずに、しっかりとやりなさいよー!」

圭ちゃんが一言添えた。
不安そうな顔をしながらもアンコールの支度を始めるみんな…

壁越しにお客さんの「アンコール」の声が聞こえてくる…
この暑い中、10分近く続いている「アンコール」のかけ声。
この期待に答えなくちゃならない…
それがライブを大事にしてきたモーニング娘。なんだから……
555名無し池:02/11/21 22:45 ID:eL9kC4m2


…矢口が欠けたままあたしたちはステージに戻る。

一人ずつのMC。
矢口のいないことに気付いたファンのコたちがざわつき始めた。
あたしたちは構わずにMCを続ける。
MC明けの『本気で熱いテーマソング』も何も説明せずにそのまま乗り切った。
直前にした打ち合わせ通り矢口のパートは急遽なっちが引き継いで…


ラスト曲の『でっかい宇宙に愛がある』で矢口が戻ってきた。
ふらふらになりながら列の端にさりげなく加わったけど…
メンバーたちみんな矢口が歌えるのかどうか、心配そうだった。
矢口は大丈夫って合図してたけど、顔は真っ青のまま…

それでもオケは鳴り始め、あたしたちは歌い出す。
556名無し池:02/11/21 22:47 ID:eL9kC4m2

矢口は朦朧としながら懸命に歌ってた…
矢口が大好きなこの歌を…


 ♪誰かを責めるより
  涙を流すより
  自分を愛してあげようよ〜


この瞬間なぜだかあたし、涙ぐんでいた…

……あれ?……なんで?

ぼやける視界が意外だった…

あ…!

…みんなに評判の良くなかったこの曲。
とりわけあたしたち年上メンバーに評判が悪かった中で、
矢口だけがこの曲を大好きだと言っていた。
その理由が今なんとなく分かった気がした…
矢口が無理してこの曲に出てきたわけも……

矢口、この曲の歌詞に自分を映してたんだ…
あたしたちはこの曲が抽象的な大きな存在を対象にしてたのがイヤだった。
適当に宇宙とか地球って言葉が使われてるのが大っ嫌いだった。
でも矢口は…
矢口はもっと小さく、自分自身のことで考えてたんだ…
557名無し池:02/11/21 22:48 ID:eL9kC4m2


 ♪どんなすごい奴も
  孤独は寂しいの?
  笑ったなら楽しいの〜
           (「でっかい宇宙に愛がある」より)


最後の方、マイクを持つことすらつらくなっていた矢口を横から圭ちゃんが支えていた。
圭ちゃんが矢口の腕を支えてあげて、なんとか口にマイクを当てていた…

曲が終わるとお客さんへの挨拶もそこそこに矢口は圭ちゃんと舞台袖に引いていく。
あたしたちはステージの端から端まで回ってファンのみんなに最後のご挨拶。
…どうにかして終わることができた。
ちょっとホッとした気持ちもあったけど、充実感が得られるにはほど遠いライブだった。
楽しいって思えるライブではなかった…

…控え室に戻ってくると、やっぱり矢口と圭ちゃんは戻ってない。
どこかもっとちゃんと休めるところに連れて行ったんだろう…
スタッフさんたちの内、かなりの人数が消えていた。
558名無し池:02/11/21 22:49 ID:eL9kC4m2

楽屋に取り残されたあたしたち。
4期メンバーや5期メンバーは矢口のことが心配というよりも
矢口の最後のステージに圧倒されるものがあったみたいで、みんな黙ってしまっていた…

「覚えておきな…
 昔は1時間しか睡眠時間もらえない時とかでも、ライブはきっちりやってたんだから。
 ドクターストップがかからない限り、何があっても、オケが止まろうがなんだろうが
 最後まで歌い上げるのがあたしたちの信条だったんだから。
 歌をそれだけ大切にしてきたんだから…」

あたしの言葉に5期メンバーたちはただうなずくだけだった…
いつかこのコたちも分かるときが来る。
歌の大切さ、ファンの大切さを。
今みたいに恵まれてる環境では知り得ないけど、
本当の苦境に立たされたとき、あたしの言っていたことを思い出してね…
…あたしの後輩たち……
559名無し池:02/11/21 22:50 ID:eL9kC4m2


…外では救急車を呼ぶほどまで大騒ぎになっていた…

それでも少し寝かされて休憩を取った矢口はなんとか持ち直し、
みんなに笑顔を振りまいている…

そんな矢口を見ていたらあたしも泣いてなんかいられない。

絶対に矢口の前で涙を流すのはやめよう…

それがあのコへのせめてものいたわり……



飯田圭織、21歳まであと5日。


泣くまいと誓った広島の夜……


560名無し柳:02/11/22 18:03 ID:vVEPvRTf
泣くまい保全。
561名無し募集中。。。 :02/11/23 19:41 ID:jiM1OEGD
保全。
562名無し募集中。。。 :02/11/24 19:50 ID:0sWf9YmX
保全。
563名無し募集中。。。 :02/11/25 20:05 ID:DcTDUPf8
(0゜―゜0)<…建みさとさん……引退してたなんて……保全。





564名無し募集中。。。 :02/11/26 20:12 ID:NDvhOKTH
ほ。
565名無し募集中。。。 :02/11/27 19:36 ID:9UcHeisM
ぜ。
566名無し募集中。。。 :02/11/28 21:02 ID:OD9+1sEk
川o・-・)ん。
567名無し池:02/11/28 22:07 ID:ouVQj7/U


     ◇      ◇      ◇

                       矢口真里編(4)
568名無し池:02/11/28 22:08 ID:ouVQj7/U


「矢口さん! 今晩よろしくお願いしますね」

「あー! ソニンちゃん、久しぶりー!!
 戻ってきたんだー!」

「はい!おかげさまでー」

MUSIX!のクイズの収録前。
ソニンちゃんから数カ月ぶりの挨拶をされた。
ソニンちゃんの後ろには和田さんがニヤついて立っている。

「今晩って何かあったっけ?」
「はい。新曲持って矢口さんのラジオにお邪魔しますから」
「あー、そうなんだー。
 直前の打ち合わせまで知らされないこともあるからさあ、
 全然知らなかったよー」
569名無し池:02/11/28 22:09 ID:ouVQj7/U

そこまで言うと待ってましたとばかりに和田さんが話に入ってきた。

「違う違う。
 まだ決まってないから。
 強引におまえのラジオに行くから、今日」
「えー! 大丈夫なんですかー?」
「平気平気。
 だからおまえも何か気の利いたコメント考えとけよ。
 新曲の宣伝で行くんだから」
「コメントー?
 まあ、いいですけどー…
 そんな簡単にわたしのラジオ出れるんですかね?
 ああ、いや、自惚れとかそういうことじゃなくて…
 けっこうゲストとか立て込んでるみたいで」
「問題ねえって。
 明日のより子。のオールナイトニッポンの打ち合わせも兼ねて行くんだし。
 顔見知り多いしな。まあ、何とかなんだろ」
「え! より子。ちゃんオールナイトニッポンやるんですか?
 早いっすねー…」
「ドットコムの方な。
 明日より子。のドラマの放送が9時からあって、そのあと1時から」
570名無し池:02/11/28 22:10 ID:ouVQj7/U

さらっと言う和田さんだったけど、ここまでこぎ着けるには
相当苦労があったに違いない。
今年の春先にはマイナスの状態だったんだから…

「すごいですねー。
 ソニンちゃんは新曲でより子。ちゃんはドラマ化とラジオですか?」
「もう忙しくて忙しくて。
 ここ1週間ソニンとより子。のスケジュール、満杯でなー。
 今日だって天王洲とお台場行ったり来たりで死にそうだよ、ホント…
 メシ食ってる時間もねえもん」

そういえば少し和田さんやつれた気がする。
ミュージカルで会ったとき痩せたなあとは思ってたけど、
こうして見るとあれからさらに疲れてるような…


「おはようございまーす」


カオリが収録用の衣装に着替えてやって来た。
今日はカオリの誕生日。
今日の収録メンバーはわたしとカオリと圭ちゃんとごっつぁんだけっていう
少人数だったけど、ほんのささやかなお祝いをしようって決めていた。
571名無し池:02/11/28 22:11 ID:ouVQj7/U

「飯田ー、この前サンキューな。
 より子。へのコメント」
「あー、いえ…」
「何かやったの?カオリ」
「うん。『とくダネ』でより子。ちゃんの特集を組むっていって
 あたしのところにコメント取りに来たの」
「へぇ…。カオリのところにねぇ…」

わたしはちょっと嫉妬したのかもしれない。
わたしには来ないような仕事だったこと。
カオリがミュージシャンと呼ばれる人たちと付き合いがあること。
そして何より…明日香の友達とカオリが友達なこと…

「和田さーん、今度はより子。ちゃんもオールナイトニッポン連れて来てくださいよー。
 裕ちゃんのところやカオリのところには連れてって、
 なんでおいらのところには連れてこないんですかー?」
「いや…まあ、今度な……そのうち連れてくから。
 今日はとにかくソニンのコト頼むわ」
「それはもちろんですけどぉ…」
572名無し池:02/11/28 22:12 ID:ouVQj7/U


「矢口のところに連れて行って下着の話でもされたらかなわんから、
 連れて行かんとちゃうの?」

「裕ちゃん!?」

何でか知らないけど裕ちゃんが、突然わたしの後ろに立っている。
いるのがさも当然と言わんばかりの態度で…

「なんで裕ちゃんがいるの!
 裕ちゃんの収録、2本目でしょ?」

裕ちゃんの出るクイズの収録は2本目なのに、なんでこんなに早くスタジオ入りしてんのさ?

「今日はなー、あたしもこことお台場を行ったり来たりなんよ。
 時間の取れるときにちゃっちゃと歌収録とか済まさんと…
 あんたたちが1本目撮ってるときにあたしが歌収録すんのよ。
 そんで、あたしがクイズ撮ってるときはソニンちゃんが歌収録」
「そうなの? なんか今日はみんな忙しいねえ…
 フジで特番の収録でもあんの?」
「ちゃうちゃう。
 今日はなー、テレビじゃなくてライブ。
 フジの7階で野外ライブやるんよ。
 ソニンちゃんもあたしもそれに出んの」
「フジの7階って、あの屋上の風のめちゃ強いところ?
 あんなところでやるの?」
「そうや。
 夏っぽくてエエやろ?
 それに今日は紗耶香も来るんよ」
「紗耶香もかあ……」
573名無し池:02/11/28 22:14 ID:ouVQj7/U

先週のミュージックステーション、
ビデオで見たら本当に紗耶香ったらピースサインを3回出してた。
あの日届いたメールの約束通り…
わたしにそんなに気を使わなくていいのに。
紗耶香だって苦労してるんだから……

「何か伝えとこか?紗耶香に」

裕ちゃんの問いかけにわたしは首を振る。
あのあとわたし、メール返さなかった。
何て打ったらいいのかも分からず…、
考えがまとまらなくて、そのまま今日まできちゃった…

「うん…いいや。
 それより頑張ってね、裕ちゃんも」
「ん? なんや?いきなり…」
「聞いたよ…ラジオの話。放送事故直前だったんでしょ?」

日曜日の裕ちゃんのラジオ…
わたしの話をして、タンポポの話をして、プッチモニの話をして…
最後にみっちゃんの話をしているときに、ついに裕ちゃんが泣き崩れて
話せなくなったってことを耳にした……
574名無し池:02/11/28 22:15 ID:ouVQj7/U

「あー、なんやその話か…
 それならもう気にせんといて。
 …もう怒ることもないわ、アホらし過ぎて…
 なんて言うのかな…人間さ、怒りが達すると泣きに入るよね…分かる、これ?
 …もう今じゃ怒りすら超えて、ある意味無感動?みたいな…
 だからもう泣かへんよ」
「ちょっと裕ちゃん、リアルすぎる話やめてよ。
 せっかくあたしの誕生日なんだから今日は楽しくいってよね」
「…ああ、ゴメンゴメン。ついな…」

感情が昂り始めた裕ちゃんをカオリが慰めてた。
わたしも裕ちゃんみたいにストレートに言えたらなあ…
いくらか気が楽になるかもしれないのに……

 ・ ・

 ・

575名無し池:02/11/28 22:16 ID:ouVQj7/U

ソニンちゃんがゲストの回と、裕ちゃんがゲストの回のクイズを撮り終わるとひと休み。
裕ちゃんは収録が終わると急いでお台場に出発していった。

「カオリ! ちょっとこっち来て!」

圭ちゃんが収録を終えて楽屋に戻ろうとしているカオリを呼び止める。
準備しておいた部屋に、ごっつぁんとわたしでカオリを引っぱり込んだ。
部屋に飾り付けも何にもできなかったけど…、小さいケーキだったけど…
カオリへのわたしたちのささやかなお祝い。
大きいロウソクが2本と小さいロウソクが1本…

「「「カオリ、誕生日おめでとう!!」」」

3人で『ハッピーバースデー』をカオリに歌ってあげる。
歌い終わるとカオリがうれしそうにロウソクの炎を吹き消した。

「ありがとね、みんな」

ケーキをテーブルの上に置くと、3人それぞれカオリにプレゼントを渡した。
わたしのプレゼント…ケーキ型のキャンドル…
今カオリが火を消したケーキとそっくりな形のキャンドル。
…カオリ、開けたらビックリするかなあ?
576名無し池:02/11/28 22:18 ID:ouVQj7/U

「これでカオリもあたしと同い年だねえ」
「4ヶ月だけでしょー、同い年なのは」
「あたしにとっちゃその4ヶ月がデカいんだから。
 これでおばちゃんネタがカオリにもいくし」
「いいよー、12月になったら前よりもっと『おばちゃん』って言ってあげるから」

カオリと圭ちゃんがしょーもないことで張り合っている。
それを見たごっつぁんが笑いながらきっつーい一言。

「まあ、あたしから見れば二人ともおばちゃんだけどね」

「「ちょっと、ごっつぁーん!!」」

二人、息ぴったりにごっつぁんにツっこんだ。

わたしはそれが可笑しくて…、思いっきり笑い転げてた。
カオリも圭ちゃんもごっつぁんも、みんな笑ってた。

 ・
577名無し池:02/11/28 22:20 ID:ouVQj7/U

「カオリ、この後空いてるの?」
「ゴメン、ちょっと用あって……」
「…ふーん……」

圭ちゃんがカオリに聞いてたけど、カオリの用事って…?
この誕生日に……
そこいらへんはお互いに聞かないことにしてるけどさ…

「矢口は?」
「おいらはこのあとまだ収録あるよ…DJマリーの」

『うーん…』と渋い顔した圭ちゃんがごっつぁんの方を見る。

「あたし? あたしはこれから歌とトーク収録だよー」

「いったい何なのよー?」

焦れたわたしは我慢できなくなって圭ちゃんに尋ねた。

「…時間あったらでいいんだけど……」
「うん」
「……フジテレビ行ってみない?」
「…え? フジって…裕ちゃんと紗耶香が出てるライブってこと?」
「…そう」
578名無し池:02/11/28 22:21 ID:ouVQj7/U

ごっつぁんと顔を見合わせてしまった…
今、紗耶香に面と向かって会うのは正直ためらいがある。
どんな顔をして会ったらいいのか…
ごっつぁんも同じようなもんなんだろう。
わたしと一緒で複雑な顔をしていた…
そんなわたしたちを見て圭ちゃんは、バレバレの気遣い…

「いや、いいんだ。時間ないの分かってたし。
 あたしもどうしても行きたいってわけじゃないから…」

…収録の終わったカオリと圭ちゃんとはそこで別れた。
圭ちゃんはきっとフジに行く…
一人じゃ行かないようなことを言ってたけど…


DJマリーを撮り終えて楽屋に引き上げる途中、
新曲のピンクの衣装に着替えたごっつぁんとすれ違った。
…リハがちょうど終わったところかな?
579名無し池:02/11/28 22:22 ID:ouVQj7/U

「ごっつぁん、どうすんの?
 終わったらフジ行く?」
「えー…、そんなこと聞かれてもなあ……」
「圭ちゃん絶対行ってるよ、あの調子だと…」
「うーん…、でもあたし、歌の後にもトーク収録があるから。
 キャイーンさんとのトークがさあ…
 どっちにしろ行くのは無理っぽいよ」
「そっかー…おいらどうしようかなあ」
「…………
 ……行ってきたら?」
「え?」

あれ?ごっつぁん、直前まで行かないことに同意してたような感じだったのに…

「いやあ、なんか今ふっと思った。
 あたしさあ、MUSIX!の収録ってあともう1回来て終わりなんだよね…
 だからなんか後悔しないようにしておきたいっていうか…
 これでやぐっつぁんに行くこと薦めなかったら、後で後悔しそうだなあとか、
 今突然思ったんだよね」
「もう1回で終わりなの?
 えー! そんなの聞いてないよぉ…」
「あたしもさあ、レギュラーだったのにはずれちゃうんだなぁとか考えたら
 ちょっとやっぱ寂しいなあとか思ったよ…」
「…そりゃあ寂しいよ。
 だって、ずーっと毎週のように通ってたんだもん…」
「…あたしの寂しい話はいいからさ、
 とにかく行ってきなよ、やぐっつぁん。
 いちーちゃんも、やぐっつぁんが行けばきっと喜ぶよ」
580名無し池:02/11/28 22:23 ID:ouVQj7/U

寂しさを振り払うようにごっつぁんはわたしに言う。
『いちーちゃん』か……懐かしい響き……
紗耶香に甘えてばかりだったごっつぁんが、今はこうしてわたしを諭すまでに強くなった。
ごっつぁんが大泣きしてた、あの武道館……
紗耶香と同じようにごっつぁんもモーニング娘。を旅立っていく……

「行ってこようかな…
 ごっつぁんがそう言うんだったら」

わたしが言うと、ごっつぁんはうれしそうに「へへ」と笑った…
いつもの照れが入った笑い方……


 ・ ・


 ・

581名無し池:02/11/28 22:24 ID:ouVQj7/U

天王洲を出る前に圭ちゃんにメールをしたら、池広場で待ってるからって…
あんな人通りの多いところで待ってて平気なの?
…疑問を抱きながらもタクシーを降りるとホントに圭ちゃんがフジテレビの噴水の前に立っている。
帽子を被って、サングラスをかけて……かなり目立つ…
近付いていって回りに気付かれないようにそーっと声をかけた。

「……圭ちゃん…」
「おー!矢口。ようやく来たかー」
「ちょっとー、圭ちゃん、なんでこんなところで待ち合わせなのよ…」
「あー、ゴメンね。先に謝っておくわ。
 来てもらって悪いんだけど、紗耶香と裕ちゃんの歌、もう終わっちゃった」
「えーー!! そんなー!!
 わざわざ急いで来たのにー……」
「ゴメンゴメン。
 あとちょーっと早く着けば裕ちゃんのには間に合ってたんだけどさ」
「それじゃー来た意味ないよー。
 せっかくごっつぁんの分まで見ようと思って来たのにー!」
「最後にさ…、9時くらいにもう一回紗耶香と裕ちゃん出てくるから。
 それまで、いいトコに連れてくから、それで機嫌直してよ、ね?」

圭ちゃんがわたしに手を合わせて謝っている…
いいトコねえ…
582名無し池:02/11/28 22:25 ID:ouVQj7/U

「…しょうがないなあ。
 終わっちゃったんじゃしょうがないよ。
 おいらが来るのが遅かったのがいけないんだし」
「お詫びにいいトコ連れてくからさ、いいトコ」
「なんでそんなに『いいトコ』連発してんの?
 なんか不安だなあ…
 『ドッキリ』とかじゃないでしょーね?」

圭ちゃんが『大丈夫、大丈夫』って言いながら、
あたしの両肩を後ろから押してくる。

「え、ちょっと、歩いていくの?」

圭ちゃんはうなずきもせず、どんどん押してくる。
それにつられてどんどん歩かされて…
関係者しか入れないようなフジテレビの裏の方へ…

「圭ちゃん、どこまで行くのよ?
 こんなとこ入ってきちゃっていいの?」
「うん。パスは持ってるから」
「いや、そういうことじゃなくてさあ…」
「ほら、着いたよ!!」

圭ちゃんが機材の搬入口みたいな大きな扉の前で立ち止まる。
灰色に塗られたの鉄の扉を重たそうに開いてわたしをその中に押し込んだ…
583名無し池:02/11/28 22:26 ID:ouVQj7/U

入ってすぐに気付く、そこに漂う香ばしい匂い…

…………

…………焼肉?

……

…目に飛び込んでくる漢字。

……叙々苑?

…何、ここ?
フジテレビの中でしょ?

セットだかなんだか分からないけれど、
「料理の鉄人」みたいな厨房と「叙々苑」って書かれた看板がそこには並んでいる。
テーブルにイス、かなり簡易な作りだったけどお店みたいに見える。
天井が高くて雰囲気は違うけど…
しかもけっこうな人の数…中には本当にお肉を食べてる人までいた。

圭ちゃんを振り返って聞いてしまった。

「どこ? ここ?」
「叙々苑」

圭ちゃんが笑って答えてる。
584名無し池:02/11/28 22:27 ID:ouVQj7/U


「矢口ーー!!」


来た…! いつものあの声……

「裕ちゃんまでいるのー?」

裕ちゃんはわたしの目の前まで来ると、お皿に盛られたお肉を箸で一切れつまんで
あたしの口に持ってくる。

「ほら、あーん」

思わず口を開けてお肉を食べてしまった…
…口の中の広がるお肉の味を楽しみながら聞いてみた叙々苑の謎。

「なんでこんなところに叙々苑があんのさー?」

圭ちゃんと裕ちゃんが代わる代わる答えてくれたところによると…
夏休みの間、臨時に叙々苑がフジテレビの池広場に屋台を出店してるとか。
で、今日はそれを利用して閉店した後にここに屋台の道具を運び込んで
ライブの打ち上げに使う腹づもりらしい。
わざわざ本店からお肉はおろかコックさんまで連れてきて…
ここまでやるか?ふつう…
まあテレビ局だからこんなのすぐに用意できるんだろうけど。
それにあの遊び好きのきくちさんが主催だし……
辻のためにファミレスまで貸し切る人だしね…
585名無し池:02/11/28 22:29 ID:ouVQj7/U

「裕ちゃん、お酒飲んでないでしょうね?
 まだ1曲残ってるんでしょ?」
「あー、もう、かろうじて我慢してる。
 お肉もなんとか…
 一切れだけつまんじゃったけど…」
「裕ちゃーん…、歌う前に油モンはよくないよ…」
「分かっとるよー…でも一切れくらいエエやんか。
 圭ちゃんだって同じ立場やったら絶対一切れくらい食うとるって。
 もう…わざわざ7階から降りて来たのに冷たいわー、ホンマ…」

圭ちゃんに咎められていじけて見せる裕ちゃん。
でも途中でコロっと表情を変えると…

「まあ、ええわ。
 こんなバカやってゆっくりもしとられへんし。
 ここの本番はライブ終わってからやしな。
 そんとき思いっきり飲んだるわ。
 …あー、あれやろ? 矢口は今日ニッポン放送でラジオやろ?」
「うん。そうだけど」
「ま、ここで腹ごしらえでもしてきぃや、圭ちゃんと。
 ここならギリギリまでいられるやろ?
 あたし、もう戻らなあかんねん」

そう言って裕ちゃんは持っていたお皿をわたしに渡すと小走りで去っていく。
裕ちゃんホントにわたしに会いに来ただけか…

「裕ちゃーん! あとで見に行くからねー!!」

わたしが叫ぶと裕ちゃんは後ろ向きに手を振って返してくれた。
586名無し池:02/11/28 22:30 ID:ouVQj7/U

裕ちゃんが歌う9時まであと40分くらい。
そんなに時間はないけど焼肉の誘惑には勝てず、圭ちゃんと一緒に焼肉をほお張る。
圭ちゃんに『んまいんまい』言いながら食べてたら誰かに肩を叩かれた。
振り向くとあたしの頬に食い込む指…
こんな子供みたいなイタズラするのって…

「…はやかー!!」

…口に入ったお肉と頬に突き刺さった指とでうまくしゃべれなかったけど、
そこにはまぎれもない紗耶香の姿が……

「おっす!矢口っ!」

左手を軽くおでこに持っていって、軽い感じでする挨拶。
変わってないなあ…

「紗耶香、何やってんのよ! こんなとこ来てていいの?」
「うん、風が強くてさー。
 機材が倒れちゃったんだよね。
 そんで遅れてんの」

風で髪が乱れた後頭部を掻きながら話す紗耶香。
その軽い口調にわたしの複雑な思いも幾分かほぐれた。
587名無し池:02/11/28 22:31 ID:ouVQj7/U

「紗耶香…、この前ありがとね……」
「え、何がー?」

そう言いながら圭ちゃんのお皿からお肉をつまみ取ろうとして、
圭ちゃんに手をはたかれている…

「あんた、これから歌うんでしょ!」
「いいじゃんよー、一切れくらい。
 ねー?矢口」
「あ…あのさ…この前のMステのこと…」
「あー、いいって、あたしが好きで勝手にやったんだし」
「…あ、うん……でも、うれしかったよ、紗耶香…
 それだけは言っておきたくて…」
「いいって、いいって」

手をわたしに向かってひらひらとさせながら、
今度はわたしのお皿からお肉をひとつまみ…

「紗耶香ーー!!」

圭ちゃんが咎める前に紗耶香は歩き出し、上を向きながら肉をのどに流し込んでいる…
588名無し池:02/11/28 22:32 ID:ouVQj7/U

「ほんじゃーね」

紗耶香の後ろ姿にわたしは声をかけた。

「紗耶香!あのさ…今日迷ってたおいらがここに来たのは
 ごっつぁんに言われたからなんだ。
 …ごっつぁんも紗耶香に言いたいこといっぱいあるけど
 きっとうまく言えなくて悩んでる…
 あんな風に見えても強がってるだけだから、ごっつぁんは……」

…紗耶香は立ち止まると、今度はおもむろに圭ちゃんのお皿に手を伸ばし
またお肉を取ってのどに流し込んだ……

「…じゃあ、行ってくる」

お肉を噛みしめながら紗耶香が去っていく……


「まったく…、何しに来たんだか…あのコ……」

そう言いながらも圭ちゃんはうれしそうだった。
わたしもなんだかうれしい
素直に紗耶香へ言葉が出てきたことに…
ごっつぁんのことを少しでも伝えられたことに……
589名無し池:02/11/28 22:34 ID:ouVQj7/U

時間ぎりぎりまでお腹いっぱい食べて、7階に上がるとものすごい風が吹いていた。
マイクが風の音を拾うくらいの強い風。
昔『抱いてHOLD ON ME!』を歌ったときくらいの強い風。
あのときは冬だったから鼻水が凍りそうなくらい寒かった…
そんな中、今日は紗耶香と裕ちゃん、そしてソニンちゃんやともえちゃんまで歌ってた…
わたしが今まで聴いたことがなかった『この素晴らしい愛をもう一度』って曲を
坂崎さんのギターにのせて…

わたしのタイムリミットが来る。
紗耶香や裕ちゃんにもう一回会えないまま、わたしはその場を後にした。
圭ちゃんはそのまま残って二人とあの焼肉会場に戻るんだろうけど…
これから2時間の生放送、今日ばかりはラジオがあることを恨めしく思った。
先週でさえ、そこまでは思わなかったのに…

オールナイトニッポンのスタジオに入ったのが本番30分前。
小走りでスタジオに入ったら、焼肉のせいもあってお腹が痛くなってきた。

うぅー、死にそう……

生まれて初めて死にそう……

あ、またリスナーから投書がくる、こんなこと言ったら……


590名無し募集中。。。 :02/11/29 22:09 ID:AGl4dumq
保全。
591名無し募集中。。。:02/11/29 23:57 ID:5m6bO68/
592名無し池:02/11/30 16:37 ID:/s7aE2X0


     ◇      ◇      ◇

                       矢口真里編(4)-2
593名無し池:02/11/30 16:38 ID:/s7aE2X0

仙台でのコンサートのリハーサル。
1曲終わったあとに、りんねがなっちのところに急いで近付いてきて聞いてた。

「なっち、体調悪いの?」
「そんなことないよー。なんで?」
「だってモニターで見てたら、なっちの顔真っ白なんだもん」
「いや違うってりんね…
 りんねの顔も充分白いって」
「えー? わたし体調悪くないよー」

なっちは手を伸ばしてりんねの頬をこするとその指先をりんねに見せた。

「日焼け止め塗り過ぎ!!」
「あー! そっかあー」

相変わらずボケボケなりんね。
なんかりんねが牧場に戻ってないとかそんなことを石川が言ってたけど…
体調不良じゃないってことはなんなんだろう…
…そんなことを思いつつも自分自身、今日のコンサートを乗り切れるか不安だった。
かなり体調が戻ってきたとはいえ、この暑さ、この陽射し…
先週みたいに倒れちゃったらどうしよう……
594名無し池:02/11/30 16:39 ID:/s7aE2X0

リハーサルが終わり、控え室に戻ってかき氷を食べようとしたら、
すでにかき氷機の前に行列が出来ている。
まあ、並んじゃう原因は分かってるんだけど…

「こらー、加護ー、早くしろー!」

あたしが言っても、かき氷機の回りで高橋や新垣と一緒に
キャーキャー言いながら作ってるから全然聞こえてない。
またシロップのかけ合わせとかしてるんだろう、まったく…

「もう、いいや。氷のまんま食べてこようっと」

つぶやいたら、ミカちゃんがわたしを気の毒そうな目で見てた。

控え室に戻って冷凍庫から氷をひとかけら。
体の中に冷たさが染み込んでいくのが気持ちいい。
もう1個つまんだわたしの横ではなっちと辻が扇風機の取り合いをしてた。
595名無し池:02/11/30 16:40 ID:/s7aE2X0

「ちょっと、ののー! 自分の方ばかりに向けないでよー!」
「ふぇ? だって暑いんだもーん。あちーーー!!」

辻が舌を出して扇風機に向かって叫んでる。
なっちは構わずに自分の方にくるりと向け直した。
するとまた自分の方に向ける辻…
そんな二人がなんだか見てて微笑ましかった。

「今日はなっち念入りにリハやってたねー」
「えー? そうかなあ?」
「またまたー、隠しちゃって。
 誕生日だから気合い入っちゃってるんでしょ?」
「うん、まあちょっとはさ…」

なっちももう21歳。
カオリと違って全然21には見えないけど、
制服着ればまだまだ高校生に見えるけど、
わたしよりも年上なんだよなあ。
なっちとカオリと圭ちゃんはもう3人でお酒を飲んだりできるのに、
わたしだけ置いてけぼり…
実際はあの3人で集まって飲むことなんてないのは分かってても、
MUSIX!のBARのコーナーにわたしだけ呼ばれなかったり、
うたばんであの3人が別格に扱われているのが、わたしは寂しかった。
あと一つ年上だったらなんとか3人と一緒にしてもらえたかもしれないのに…


 ・ ・

596名無し池:02/11/30 16:45 ID:/s7aE2X0

8月10日の仙台。
異常なくらい暑かった。
40℃近い気温、ステージ上は照明の熱も手伝ってさらに暑い…

コンサートは順調に進みアンコール前の『恋のダンスサイト』。
先週みたいにふらふらにならないように何とか気を張っていた。
曲ももう少しで終わる。
ごっつぁんが「こーいーのーダーンースーサーイートーー」って歌っていた……

ああ…ようやく一休みできる……

……ちょっと気を抜いた瞬間、
わたしの視界が歪んだ……

カオリのびっくりした表情と斜めに見えた立ち姿。
それがわたしの見た最後の記憶だった…


…………


…………
597名無し池:02/11/30 16:46 ID:/s7aE2X0


……


…うっすら目を開けると…カオリとなっちと圭ちゃんの声、
それにスタッフさんたちの声も何人か…、
わたしの耳にぼんやりと聞こえてきた…

…わたし寝かされてる……
そのことに気が付いた…

学校の保健室みたいな白い天井と薄暗い蛍光灯の明かり。
横目に仕切りのカーテンみたいなものも見えた…

…わたしどれくらい寝かされていたんだろう?

外の静寂さからいってコンサートがもう終わってしまったことは分かった…

…起きようとしたけど体がいうことをきかない。

…仕方がないからみんなが話す声に耳を傾けていた……
598名無し池:02/11/30 16:47 ID:/s7aE2X0

「夜は12人でやるしかないね…。矢口はこの状態じゃ無理でしょ……」
「でもさーなっち、今さら全部のパート割り直してる時間なんてないよ…
 ダンスはそのまんまでいいとしても歌のパート割りが……」
「大丈夫でしょ。わたしたち3人で分ければさ……
 ね、カオリ?」
「うーん…、娘。とタンポポはそれでなんとかなるかもしれないけど、ミニモニ。がねー…
 口パクでやってるからさあ、矢口なしじゃ変なことになるよ。
 今さらののとあいぼんに生歌でやれて言っても無理な話だし……」
「じゃあミニモニ。は全部ナシ?」
「…でもミニモニ。削ると小さい子たち…
 ミニモニ。目当てで来てる子がいっぱいいるから…」

3人が真剣に話す声…
わたしは聴いてて胸が裂けるような思いがした。
わたしのせいで…わたしのせいで……
みんなに迷惑かけてる……
599名無し池:02/11/30 16:48 ID:/s7aE2X0


「…おいら、できるよ……」


カーテン越しに声をかけた…

すると…カーテンがレールを滑り、窓からの陽射しが白い布団の上に差し込んだ…
わたしの顔の真上に圭ちゃんの顔が覗く…

「矢口! 気付いたの?」

「あー…うん……おいら、どのくらいここで寝てた?
 …次のライブまであとどれくらいある?」

「まだ2時間くらいあるよ…次の回までに…」

「…じゃあ大丈夫だよ。回復するって。
 おいらやれるよ、次の回」

「そんなこと言ったって、あんたちょっと前にステージの上で倒れたんだよ。
 これ以上無理してもしょうがないでしょ。
 またあんた倒れるよ…」

「大丈夫だって。夜だし…
 少しは気温も下がるでしょ?」

言いながら起き上がろうとしたけど、やっぱりダメだった…
圭ちゃんに手伝ってもらってやっとベッドの上に起こしてもらった。
600名無し池:02/11/30 16:54 ID:/s7aE2X0

部屋を見渡すと、そこにはわたしを見つめるなっちとカオリの心配そうな顔…

「…おいらが倒れたあとどうなったの…?」

3人から返事はなかった。

「ねえ、聞かせてよ…どうなったのか…」

カオリが重々しく口を開く…

「…あたしの真横で倒れて…、
 あたし、矢口が転んだだけだと思ったから起こそうとしたんだけど、
 矢口が全然自分から起きてくる力がなくて……、
 呆然としてたら、下手からスタッフの人たちが出てきて矢口のこと運んでいった…」
「…その後は?」
「…先週と一緒。動揺してるメンバーをなだめて、パート変更決めて…
 あとはMCとかはいつも通りに…」
「会場の反応は? 何にも問題なかった?」
「…分かんない。あたしたちも台本通りに進めるので精一杯だったから。
 会場の反応までいちいち気を配ってなんていらんなかったよ…」
「それで、今までおいらはここに寝かされてたってわけか…」

『でっかい宇宙に愛がある』も歌えず、お客さんに挨拶も出来ず、
中途半端に終わらせちゃったってことか…
それになっちの誕生日だったのにこんなことになっちゃって……
601名無し池:02/11/30 16:56 ID:/s7aE2X0

「ゴメンね、なっち。…それにカオリも…
 せっかくの誕生日のコンサートを台無しにしちゃって。
 今週はスタミナつけたりして体調には気を使ってたんだけど…」

「いいよ別に…、気にしなくて。
 …それより次の回、どうするか結論出さないと……」

「やるよ、おいら」

スタッフさんにも向き直して言った。

「やりますからね。出ますよ、わたし」

「矢口…、あんた少しは自分の体、大事にしなさいよー。
 無理する必要ないでしょー!」
602名無し池:02/11/30 16:57 ID:/s7aE2X0

「…あるよ。
 ここで頑張らないでどうすんの?
 ここでおいらが次に出なかったら、ファンはやっぱりなって思うよ。
 わたしたちに対して夢も希望もなくなるよ。
 そんなこと思わせちゃったらモーニング娘。失格でしょ?」

「でもさ…」

「圭ちゃんだって、なっちだって、カオリだって、
 おいらと同じ立場だったら、絶対に『出る』って言うよ。
 歌える機会を自分から放棄するわけないでしょ?みんなさ…」

「…………」

みんな歌が大事なのは分かってたから…
ステージが大事だって分かってたから…
603名無し池:02/11/30 16:59 ID:/s7aE2X0

結局2回目のライブはミニモニ。の『アイーン!ダンスの唄』と
アンコールの『本気で熱いテーマソング』を減らすことを条件に参加を許された。
わたしは最後までこの2曲を減らされることに抵抗したけど、
なっち・カオリ・圭ちゃんの3人もこの2曲を削らなければ
わたしの参加を認めないって言ったから……

2回目の夜公演が終わって…、結果的に2曲削ったことは正解だったんだろう。
わたしたちが2回目のことで話し合ってる最中に、雷雨があったことや
夜になって気温が下がったことも理由だったけど、
どうにかわたしは倒れることなく夜公演を乗り切ることが出来た。

ただ…、わざわざ仙台まで足を運んでくれたお客さんたちには申し訳なくて……
しかも今日はなっちの誕生日、夏休みでもあったし、
全国各地から遠征してきたような人が多かった…
それなのにわたしのせいで、コンサートは台無しになってしまって…

メンバーは気にするなって言ってくれたし、
なっちのファンもなっちの誕生日を祝えたことだけで満足できたみたいだったけど、
わたしの心は晴れなかった…

歌をきちんと歌いきれなかったこと…
自己管理ができなかったこと…

そんな自分がイヤだった…


604名無し募集中。。。 :02/12/01 17:16 ID:MhU4eg90
ほぜん。
605名無し募集中。。。 :02/12/02 14:47 ID:pLmCzj5u
606名無し池:02/12/02 22:24 ID:AwKhNiY5


     ◇      ◇      ◇

                       矢口真里編(4)-3
607名無し池:02/12/02 22:24 ID:AwKhNiY5


…またあの子供たちがスタジオにやってきた。

24時間テレビを3日後に控えた今日、
わたしたちはいつものスタジオでハロモニの収録。
ゲームの1本目、ハロプロキッズの子たちがチョロチョロと
スタジオをうろついていてメチャクチャ目障りだった。
それはこの子供たちを見るたびに思う…
ゲームも玉入れや風船割りなんていう、こんなの放送してていいの?って内容で…
裕ちゃんもボソッと
「なんか、ホント夏休み企画って感じ」
ってイヤミを言ってたし。
なっちが映画の撮影に行ってていなかったから、
わたしにチームリーダー役が回ってきたらどうしようって思ってたけど、
今回は辻加護に回って何とか難を逃れた…
608名無し池:02/12/02 22:25 ID:AwKhNiY5

子供たちとの収録が終わると続けて2本目の収録。
収録の準備の合間に石川に聞かれた。

「あれ? いつもの黒いマイナスイオンリングどうしたんですか?
 珍しいですね、付けてないなんて」
「…あー、あれね…
 付けててもいいことなかったから…
 2回も倒れちゃったし…
 なんか、どうでもよくなって外しちゃった。
 …気分転換にもなると思って」
「…そうなんですか……」
「おまえが暗くなるなよー」
「だってぇ…」
「いいんだよ、近い内に外そうと思ってたから。
 なっちとの話の手前、付けてただけで…
 丁度いいきっかけになったよ」
「…………」

それ以上話は続かない。
続けたくもなかったから、早々と辻にちょっかいを出して遊ぶことにした。
石川もそれにのっかってハシャいでいる。
気持ちの切り替えの早さはもうわたしよりも遥かに早い石川だった…
609名無し池:02/12/02 22:26 ID:AwKhNiY5

2本目は味覚を試されるゲームだった。
目隠しをしていろんな食べ物を食べさせられて…
クラッカーの上に乗せられた食べ物を当てるゲーム、
豆腐とキムチが乗っかってるのに、紺野がイチジクとザクロで迷ってた。
しかも、もう一つの答えがマーガリン!
さんざん迷ってて答えを決めないから、ちょっと注意する。

「紺野、早くしなさいよ」

そしたら裕ちゃんがさらに一言。

「どっちでもいいよ!
 どっちみち違うから。
 知らないよこんな味音痴!」

うわっ、裕ちゃんきっつー。
紺野も言われてぽかーんと口を開けてしまった。
問題が終わった後に裕ちゃんが紺野に聞いてた。
610名無し池:02/12/02 22:27 ID:AwKhNiY5

「どれがマーガリンで、どれがザクロだって思ったの?」

紺野は自分の回答がかなりショックだったみたい。
自分がただの大喰らいで味覚がないことが…
これからはもっとちゃんと味わって食べますって決心してた。
マジメに答えてる紺野を見て裕ちゃんは大笑いしてたけど。

勝利チームへの御褒美で出てきたミラクルフルーツにはみんなビックリ!
それを食べるとレモンがミカンみたいな味がするようになって…
加護や紺野はそれが面白かったらしく収録が終わった後もずーっと食べてた。
辻なんかエンディングを撮ってるのも構わずにずーっと…
番組の途中で「お前はキッズ以下だな!」って言ってやったけど
辻は全然気にしてなかった。
最近はなっちの言うことじゃないと聞かないんだから…
611名無し池:02/12/02 22:28 ID:AwKhNiY5

3本目の収録はプッチモニのラスト…
圭ちゃんたち3人がプッチモニの衣装に着替えてスタジオに入ってきた。
発表されてからまだ2週間しか経ってないのに、
この2週間あっという間だったのに、
プッチモニはもう最後を迎えなければならない。
これが電波にのる放送の最後の収録…

変声機を使って声だけで圭ちゃんを当てるゲームで
プッチモニとしての最後の意地を3人に見せつけられた。
ごっつぁんとよっすぃーは8人の出題者の中から
一発で声を出した圭ちゃんを当てた。
よっすぃーがそのワケを説明する。

「5番がね、出だしに『はいっ』って言ったの」
「あたしわざと『はいっ』ってつけたんだよ」
「圭ちゃん、ラジオとかね、絶対『はいっ』って最初に言うから…」
「クセなんだよー『はいっ』って言うの」

3人でやってきたラジオがあったから…、
わたしたちに見抜けないクセを知ってたんだ…
やられちゃったな、3人に…
612名無し池:02/12/02 22:29 ID:AwKhNiY5

…最後に裕ちゃんが聞いていた。
3人それぞれにとってプッチモニとは何だったのか、
どういう場所だったのか…

「自分にとって本当に自分を大きく変えられた場所だったから…
 すごく大切なところだった…」

圭ちゃん、話し終わると大きく息をはいてた。
いっぱいいっぱいだったんだね…

「モーニング娘。で全然出来なかったことをー…
 プッチモニで年齢に合った後藤をみんなに見せることができてー、
 …自分を自己主張できるようになったところ……
 すごい居心地の良かった場所でした…」

ごっつぁんの話のまとまりのなさが、かえってプッチモニへの思いの大きさが分かり…
教育係の紗耶香と、プロとしての意識を教わった圭ちゃんと、
後から入って娘。の中での親友になったよっすぃー。
プッチモニで得た人間関係には思い出がいっぱいあるよね?ごっつぁん。

「今までのプッチモニを、胸においてー……
 新しいプッチモニだけど今までやってきたことを忘れないで、
 元気なプッチモニを残してやっていきたいなって思います」
613名無し池:02/12/02 22:31 ID:AwKhNiY5

よっすぃーが限界だった。
今まで一滴の涙も見せずに、常に笑顔で乗り切ってきたよっすぃーが
圭ちゃんとごっつぁんのコメント、自分への励ましの言葉を聞いて…

それ以上話したら泣いてしまうと思ったんだろう。
裕ちゃんがよっすぃーの言葉を遮るように
「みんな期待してるからね」
って言って、それ以上よっすぃーに話させないようにして…

収録のOKの合図が出ると裕ちゃんがよっすぃーの両肩を優しく包んでる…

「よぉ、頑張ったな。最後まで泣かんと…」

「……はい…」

二人の姿を見ていたら…わたしが泣きそうになった……
切なくて、切なくて……
隣にいた石川も同じような表情で見ていた…

これからこの先どんどんごっつぁんの卒業に向けた番組が増えていく。
そしてわたしもタンポポとしての収録が最後になる日も近付いてくる…
…たぶんダメだ…わたし……
よっすぃーみたいに泣くのを我慢するなんてできない、きっと……


614名無し募集中。。。 :02/12/03 03:39 ID:SZNmjpYM
615名無し募集中。。。 :02/12/04 06:02 ID:Y9i2Svn5
(0゜―゜0)<………ザクロ。
616名無し福ちゃん。:02/12/05 20:24 ID:q2uGZGuM
保全。
617名無し池:02/12/05 22:03 ID:VvuMHeKW


     ◇      ◇      ◇

                       矢口真里編(4)-4
618名無し池:02/12/05 22:04 ID:VvuMHeKW

「矢口! 元気ー?」
「あー、紗耶香。今来たのー?」
「おう!ちょっと前にね」

言いながら紗耶香がキョロキョロと回りを見てる。
誰かを探すように…

「……後藤は?」

やっぱ、ごっつぁんか…

いつものMUSIX!のクイズの収録。
紗耶香のユニットは今日の1本目の収録に参加することになっていた。

「ごっつぁんなら今ドラマのロケに行ってるよー。
 2本目には帰ってくる予定だけど」
「…ふーん、まいっか……」
「何が?」
「いや…今日は会わない方がかえって良かったか…」
「何なのよー!」
「内緒なんだけどさあ…」

紗耶香はそう言うと回りを窺って声を潜める。
619名無し池:02/12/05 22:05 ID:VvuMHeKW

「後藤の卒業特番やること決まったでしょ?テレ東の。
 あれにあたし出れることになったから。
 シークレットゲストで」
「マジで? よくOK出たねえ。
 今まで番組中の会話すら許されなかったのに」
「ほら、この前の焼肉のとき。
 矢口は出らんなかったけど、あのとき和田さんもきくちさんもいてさ、
 それに裕ちゃん付きのスタッフさんたちもいっぱいいたから…
 なんとか後藤とあたしのけじめを9月23日までにつけたいって言ったら
 無理してねじ込んでやるって言ってもらって…」
「…そんで、出れるんだ?」
「そうみたいね。
 あのとき裕ちゃんも圭ちゃんもかなりけしかけてくれたからさあ…
 まあ今さらあたしがモーニングと一緒のステージに立つのも恥ずかしいんだけど、
 でもこれが最後の機会だからねえ…」
「恥ずかしいなんてことないよ。
 本当だったら紗耶香が立ってなきゃいけないステージなんだから……」
「いやあ、今さらさあ…
 特に4期のコたちとは顔合わせづらいし。
 今日だって石川と吉澤と一緒でしょ?
 やりづらいんだよねー、トシも近くて」
「ツいてないねー紗耶香。
 よりによって今日はおいら以外誰も残ってないもん、昔のメンバー」

なっちはエンジェルハーツのドラマロケ。
カオリと圭ちゃんは映画撮影。
ごっつぁんはなっちと途中まで一緒で、MUSIX!の2本目だけ参加。
さらに今日はエンジェルハーツのチアリーディングの大会があって、
そのせいで年少組がごっそりそちらに行ってしまっていた。
だから残ったのはわたしと石川とよっすぃーだけなんだけど…
620名無し池:02/12/05 22:07 ID:VvuMHeKW

「紗耶香ぁ…ごっつぁんのときに出れるんだったら
 来年の圭ちゃんのときもどうにかならないの?
 圭ちゃんだってずーっと待ってるのに」
「分っかんないよー、そんなこと。
 この先どうなるか知れたもんじゃないしさー。
 案外あたしと圭ちゃんでユニット組まされたりするかもよ」
「えー! そんなのズルいよー!
 二人が組んでるときにおいらは子供のお守なわけー!?」
「例えばだって。
 矢口だっていきなり子供たちとのユニット解消されて
 新しいユニット組まされたりするかもよ」
「そんなもんかなあ?」
「そんなもんだって。
 だいたいなんであたしが今ユニット組んでると思ってんのよ?」
「ちょっと紗耶香…」
「…いや、今はもうわだかまりないからいいんだけどねー」

本当はソロでやりたかったのに、一人でやりたかったのに、
ユニットを組まされた紗耶香…
本心ではどんな思いで今の活動をしているのか…
それは圭ちゃんにすら話したことはなさそうだった。
621名無し池:02/12/05 22:08 ID:VvuMHeKW

「あたしさあ、来週ライブで旭川行くから、
 時間あったらあそこに寄ってみようと思って」
「あそこ?」
「ふるさと」
「ああ…」
「ま、時間あったらっていうか…ライブが終わっちゃえばヒマなんだけどさ」
「そんなこと言うなよー…」
「とにかくもう一回あそこに行ってこようと思って。
 あたしが復帰してきたときに最初に歌ったのも、
 モーニングを辞める前にいろいろ考えるきっかけをくれたのも、
 やっぱ『ふるさと』だからさ…」

明日香が辞める直前から『ふるさと』を経て『ラブマ』までの濃密な時間。
タンポポのアルバムを作って、
モーニングのアルバムを作って、
海外にPVや写真集の撮影に行ったり、
タンポポで単独のライブをやったり、
そして歌番組には『真夏の光線』や『ふるさと』で出たり…
もう過ぎ去った思い出だけど、やっぱり紗耶香も大事にしている思い出…
『ふるさと』を歌ってた頃にはごっつぁんとの出会いもあった…

「紗耶香、本当はわたしたちと歌……」

…それ以上言えなかった。
聞いてしまったら紗耶香はウソを言うしかなくなる…
わたしのせいで紗耶香にウソをつかせるようなことしたくない。
ココロの中で分かり合ってればいいことだね…

 ・ ・
622名無し池:02/12/05 22:09 ID:VvuMHeKW

2本目のMUSIX!の収録が終わると石川とよっすぃーと一緒に
急いで竹芝のホテルインターコンチネンタルに移動した。
これからごっつぁんのMUSIX!最後の収録。
ごっつぁんはわたしたちがここで待っていることは全然知らない。
なっちがドラマの収録と偽ってここまで連れてくるはずだった。

なっちとごっつぁんがスタッフさんたちをいっぱい引き連れてやってくると…
なっちがドラマ仕立てでドッキリを仕掛けて…
ごっつぁんにスペシャル番組の収録であることを告げた。
ワゴンから飛び出すわたしたち3人。
でも石川とよっすぃーとじゃ足の速さが違う…
わたしだけどんどん置いていかれて…

「ちょっと待ってよー!」

わたしがごっつぁんのところに着いたときには、
石川とよっすぃーの突然の登場に驚いたごっつぁんがすでに泣いていた。

「なにー? 何なのよー?」
「いいからごっつぁんこっち来てー」

わたしはごっつぁんの手を引いて桟橋の方まで連れていく。
片方にはごっつぁんの手、もう片方にはなっちの手、
こんなこと滅多にないなあ…
なんだかうれしい…
623名無し池:02/12/05 22:10 ID:VvuMHeKW

桟橋に停泊している船にわたしたちが乗り込むと、すぐに船は動きだす。
ごっつぁんの最終回スペシャルだっていうのに取れる時間はごくわずか…
すべてを駆け足で移動する大急ぎのロケだった…

わたしたちの乗った船は2階立てのそんなに大きくない船だったけど…
その2階に上がると東京湾の鮮やかな夜景がわたしたちを迎えてくれた。

品川や新橋あたりの高層ビルの明り。
レインボーブリッジやフジテレビを始めとするお台場のイルミネーション。
それに雲一つない夜空に浮かぶ満月。

「きれー!!」
「すごーい!!」

みんな口々に叫んでた。

暑さの残る東京の夜…
強い海風と潮の香りがわたしたちを吹き抜けて…
それもまた気持ち良かった…

さっそくごっつぁんと石川とよっすぃーがタイタニックを真似て遊んでる。
そんな3人を置いて、なっちと一緒にわたしは下の階に降りた。
これからなっちに最後のことばを書いてもらわなくちゃ…

「なっち、寄せ書き書いてね、ごっつぁんへの。
 さっきおいらと石川とよっすぃーは書いたから。
 あとはなっちだけだよ」

スタッフさんから色紙とペンを受け取るとなっちに手渡す。
わたしは何を書くか思案してるなっちを横目に
みんなが書いた内容をじーっと読んでいた…
624名無し池:02/12/05 22:11 ID:VvuMHeKW

  ごっちん LOVE
  大すきー ごっちんといるとなぜか落ち着くのよ
  同じ空気が流れてるからかしら?
  また一緒にたこたこーーって踊ろうね(笑)
  応援してるわ!!         よっすぃーより。

  ごっちんのマイペースなトコロ大好きよ。
  これからもマイペースに後藤真希でいてネ。
  いつまでも応援してるよ
  ごっちんならできるさ!!
  信じてるよ。          かおりより

そしてわたしはといえば…

  ごっつぁんへ
  モーニング娘。として、一緒に過ごした3年間
  本当に楽しかったよ!! ありがとうごっつぁん!
  これから一人で大変だと思うケド、いつまでも
  みんなの憧れでいて下さい! がんばれ!
  ごっつぁんの無邪気な笑顔が大スキだよ。
  その笑顔を忘れないでネ。   矢口!

そんな風なメッセージが、カオリが描いたごっつぁんの似顔絵を中心に
ズラーっと並んでいた。
みんなの空き時間に回しつつ、ちょこちょこと書いていったもの…
なっちがペンを持って書き始めようとしたけど、手を止めた。
625名無し池:02/12/05 22:12 ID:VvuMHeKW

「ちょっと矢口ー、見ないでよー。
 恥ずかしいんだからさー」
「見てないよー。
 他の人のを読んでるんだよー」
「いいからー、あっち行っててよぉ」

なっちは大きな色紙を抱え込むようにして後ろを向いてしまう。

「いいよーだ。どうせあとで覗いてやるからー」

そう言ってなっちの側から離れた。

2階に上がると、ごっつぁんと石川とよっすぃーの後ろ姿が見える。
船の舳先で手すりにもたれ掛かり…
3人で夜景を見ながら話す姿が寂しく目に映った。
あの3人だけの時間もあとわずか…
邪魔しちゃ悪いと思って、一人で遠ざかっていくレインボーブリッジを眺めていた…

「なーに黄昏れてるんだよ!」

なっちに色紙で軽く頭を叩かれる。

「ほら、書き終わったよ。
 これどうすんのさ?」
626名無し池:02/12/05 22:13 ID:VvuMHeKW

差し出す色紙を受け取りながら、そっとなっちの書いたところを読んだ…
ブルーとピンクのサインペンで書いたかわいい字…

  ドラマのトキはだましちゃってごめんよー
  これから先いろんなコトがあると思うけど、
  自分を信じてファイトだよー!
  淋しくなったら帰ってくるといいさ。
  LOVEだべさ         なちみより

……『帰ってくる』か…
なっちはずーっとみんなが帰ってくるのを待っている。
みんなが帰ってくる場所を守っている。
…でも帰ってきた人はまだ誰もいない。
いつまでなっちは待ち続けるのか…
わたしにはとてもなっちの真似は出来そうになかった…
その寂しさに耐えられる自信がなかった…

「なっち…この前も言ったけど…
 おいらのこと置いてかないでよ…
 おいらも一緒に待ち続けるからさ……」

「……やめようよ今日は、そんな話…」

「……そうだね…」

船のエンジンが止まり、水をかき分ける音だけが聞こえてくる。
ほんの数十分の船の旅…
警笛が旅の終わりを告げていた…
627名無し池:02/12/05 22:14 ID:VvuMHeKW

船が日の出埠頭に戻るとわたしたちはさっきのホテルに逆戻り。
これからみんなで野外バーベキュー。
ホテルからコックさんたちまで呼んでなかなか本格的。
会場にはチアリーディングの大会を終えて、ようやく駒沢体育館から
戻ってきた年下チームも合流しているはずだった…

「お腹空いたーー!」

わたしたちが着くなり辻と加護が代わる代わる叫んでる。
聞けば、大会が終わったあと着替えとメイクと打ち合わせとで
昼前から何も口に入れてないんだとか。

「早くバーベキューしようよー!!」
「ごっちんが来てからね」

駄々をこねる辻をなっちがなだめている。
ごっつぁんはまたドッキリを仕掛けられるために後から来ることになっていて…

ごっつぁんの乗ったバスが着くと、ごっつぁんはアイマスクをつけたまま
手を引かれて降りてきた。
ごっつぁんがアイマスクをはずすと同時にわたしたちは一斉にクラッカーを鳴らす。
それをきっかけにバーベキューが始まった。
カオリと圭ちゃんも遅れながらもなんとか合流でき、13人全員が揃う。

13人全員での初めてのバーベキュー…
そして花火…
もう少し時間があればいいのに…
バーベキューを始めてからたった4,50分で9時をまわってしまった。
メンバーの年齢上、テレビカメラは回せないし、
わたしもニッポン放送に向かわなくちゃならない…
まだみんなが食べてる中、わたしはバーベキューの会場を離れる。
628名無し池:02/12/05 22:15 ID:VvuMHeKW

「矢口さんの分まで食べとくよー」

加護の声が聞こえてきたから言い返してやろうと思ったけど、
なっちと圭ちゃんがわたしに早く行けって、手で合図する…

「いいよーだ。今日はRAG FAIRと会えるから。
 見てろよー加護ー!!
 おまえの芸なんか及ばないくらいのボイパの達人になってやるんだから」
「はいはい頑張ってくださいねー」

加護がお肉をつまんだ箸ごと手を振っていた。
くっそー、なんだってこうお肉とオールナイトニッポンは相性が悪いのかなあ。
巡り合わせに恵まれてないっていうか…
しかもゲストが来るのに服に染みついた炭と火薬のイヤな臭い…
向こうに着いたら着替えなきゃダメだな、こりゃ……


 ・ ・


 ・

629名無し池:02/12/05 22:16 ID:VvuMHeKW

ラジオの収録が終わって、RAG FAIRの土屋さんとおっくんに
「来週の横浜アリーナよろしくお願いします」
なんて挨拶をして別れると、マネージャーさんに1枚のCDを手渡された。
「これ明日のラジオの収録で使うから、一通り聴いてきて」
そう言って手渡された黄色いジャケットのCD。

「あ…、タンポポ…
 …出来たんですね……」

ジャケットには今まで出したシングルの写真がずらりと並んでいた。
『ラストキッス』と『王子様と雪の夜』の写真が大きく載せられて…
わたしの昔の写真…彩っぺの写真まで載っている…

フジテレビの玄関で帰りのタクシーに乗るとCDの封を開ける。
ケースの中の黄色一色のCD…
わたしはそのCDをさっそくウォークマンにセットした。

耳に流れてくる『乙女 パスタに感動』。
今でもコンサートで歌うこの曲…
CDを久しぶりに聴いたらみんな声が若かった。
石川なんか今よりももっとヘタクソで…
630名無し池:02/12/05 22:17 ID:VvuMHeKW

クルマがレインボーブリッジを渡る頃には曲も
『恋をしちゃいました!』に変わり……

橋を渡りながら外の景色に目をやった。
みんなでバーベキューをした波打ち際のホテル。
それに船でのクルージング…
数時間前に船の中からわたしは一人この橋を眺めていた…
その橋をまた一人寂しく渡っていく…

そんなことを考えていたら急にせつなくなって…
『恋をしちゃいました』をレコーディングしながら泣いたことを思い出して…
…今も泣きそうになったから…曲をとばした…

ヘッドホンからは『Motto』や『聖なる鐘がひびく夜』が流れてくる…
CDのブックレットに視線を落とせばそこには昔のわたしたちの姿。
富士山やサンフランシスコにまで行って撮った写真。
真っ赤なルージュを塗りたくり、濃いアイシャドウ…
アーティスト気取りだったわたしたち……

……『I&YOU&I&YOU&I』…
わたしたちが最後にレコーディングした曲。
カオリが言ってたっけ、5人で歌ってるみたいだって…
…今なら分かるよ…その意味……
あの3人の頃があって、寂しかった2人の頃があって、
そして悩んだ4人の頃…
それらすべてがあってタンポポなんだ。
ずーっと成長してきたわたしたちがあったから最後にこの曲にたどり着いたんだ…
彩っぺが水や光になってくれたから今のわたしたちがある…
わたしたちがいるから水や光も意味があった……
631名無し池:02/12/05 22:18 ID:VvuMHeKW

曲は最後の『たんぽぽ』のグランドシンフォニックバージョン……

…カオリが言ってた『約束』って……
あの改編を聞かされた日に『あたしは約束を守れない』って言ってた意味……
…わたし、今それにようやく気が付いた。

カオリと2人でいい歌を歌って、感動で人を泣かす…
歌を大事にするタンポポを続けていく……

そんな約束を彩っぺが辞めるときに
わたしたち3人で交わした…

だから彩っぺは『あたしは水や光になる』って言って……

カオリはその約束をずーっと忘れずに、片時も忘れずに今日まで来たんだ…
石川と加護が入ってきたときに泣くまで悩んだカオリ…
そして今『約束を守れない』って悩んでいて…
他人には弱いところを見せまいとするカオリだったけど……
きっとこのことが引っかかっていたんだ……

それに石川と加護……
カオリとわたしに受け入れてもらえない中、
2人なりに精一杯無理して大人ぶって……
歌えないことに苦しみながらも必死にレコーディングについてきて……
632名無し池:02/12/05 22:19 ID:VvuMHeKW

イヤホンから聴こえてくる『たんぽぽ』……

カオリ…

わたし…

石川…

加護…

そして彩っぺ…

5人の声が重なり合い『たんぽぽ』を作り出す……


タンポポの4年間が…

タンポポの4年間の歴史がぎゅっと詰まって…

4年の間にあったいろいろなこと……

たくさんの思い出が蘇ってきて…………

…………

……涙を一粒流したら……

……そのあと止まらなくなった。

止めどもなく涙が溢れて……
633名無し池:02/12/05 22:20 ID:VvuMHeKW


   どこにだって ある花だけど
   世界中に夢を運ぶわ
   どこにだって 咲く花みたく
   たとえ悲しくたって 大丈夫
   信じ合い支え合って
   希望に変えていくわ
   たんぽぽの様に 強く

   どこにだって ある花だけど
   風が吹いても負けないのよ
   どこにだって 咲く花みたく
   強い雨が降っても 大丈夫
   ちょっぴり「弱気」だって
   あるかもしれないけど
   たんぽぽの様に 光れ
           (「たんぽぽ(Grand Symphonic Version)」より)


……やだよ……

わたしこのままタンポポを終わらせたくない……

わたし、もっと歌っていたいよ……

わたしが大好きだったタンポポを…………


634名無し募集中。。。 :02/12/06 20:17 ID:NX3SMHfr
保全。
635名無し募集中。。。
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