小説「七人の娘。」

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96カコイイ名無し
 翌日から本格的な訓練が始まった。保田が組んだカリキュラムは、安倍の
予想を遙かに上回る精緻な仕上がりを見せた。教える側の個性も考慮した上
で、時間割に従って教練が行われた。
 最も頻繁に行われた戦闘訓練は後藤を主任とし、吉澤と加護を補佐に付け
たが、折々に講師を交代して様々な戦い方を身につけさせた。生徒達は後藤
や飯田の洗練された戦闘技術に感心はするものの、そのような技がにわかに
身に付くはずもなく、結局は吉澤の無頼流がもてはやされた。
 戦術訓練では飯田が主になって部隊単位での移動や集団戦闘を学ばせた。
行進や駆け足を延々と繰り返す飯田の授業は生徒達から敬遠されがちだが、
飯田は損な役目を淡々とこなした。保田が補助に付いて次第に複雑な命令を
覚え込ませた。
97カコイイ名無し:02/09/18 23:02 ID:3pTqBnV9
 矢口は様々な工夫を凝らして学校を要塞化する一方で、弓箭兵、工兵、衛
生兵、補給部隊などの特殊兵科の面倒を見た。多方面で卓越したスキルを持
つ矢口はどんな事柄についてもある程度のレベルで教えることができた。
 安倍は各班のリーダーを集めて戦略的な講義を行い、全体構想における各
部隊の役割を個別指導した。それとは別に訓練の進行状況を取りまとめ、遅
れた部分を補った。
98カコイイ名無し:02/09/18 23:03 ID:3pTqBnV9
 それらの訓練に加えて、部隊とその統率者間の親睦を深めるような時間も
とられた。安倍や保田、矢口、また意外にも吉澤などは人好きのする性格で、
和気藹々と語り合う時間を容易に得られた。飯田、後藤は人付き合いが下手
で学生達も少し距離を置いてはいるが、その卓越した強さ故、篤い信頼を得
ていた。加護は当初、部下に舐められないように虚勢を張っていたが、やが
て自分自身その役柄に疲れ、同じ目線の同志として仲間意識を培った。
 保田の類い希なる管理能力により、学園の戦闘準備は着々と進んでいった。

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