小説「七人の娘。」

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88カコイイ名無し
「イヤ〜、今日はさすがのオイラも参ったよ」
初日の夜、教練を終えて詰め所に戻った矢口の口から最初に漏れた言葉がそ
れだった。そしてそれは、そこに集まる全員の気持ちだった。
「私たち、単純に考えていたわね。だけど、女学生を戦士にするって並大抵
じゃないわよ」
「あ〜、分かります。なかなか思い通りに動いてくれないんですよね」
「もーっ! 弓道部とアーチェリー部はなんであんなに仲が悪いのよ!」
「アーチェリー部のレギュラー三人は弓道部の柴田さんを妬んでるようです
よ。柴チャン美人だから」
89カコイイ名無し:02/09/17 23:04 ID:oVIfwqmH
「あの高橋っていう子、一年生で生徒会書記ってだけあってしっかりしてる
べ。だけども訛りがきつくって、何言ってるんだかさっぱり分からないべさ」
「そうそう、何年東京にいるんだ!って思いますよね」
「カーッ、あそこのスーパー、なんでベーグル置いてないんだよ〜」
「あそこは品揃えが悪いですよ。ホントは隣町に行けば大きな量販店がある
んですけどね」
「……」
「交信中ですか。小川さんはいい子ですよ」
「んぁ〜」
「あ、悩んでますね。紺野さんでしょ? あの人、ボーッとしているようで
結構頑固ですよ」
「って、お前誰だよ!」
90カコイイ名無し:02/09/17 23:04 ID:oVIfwqmH
先ほどから当然のようにこの部屋にいて、人の話に相づちを打っている少女
を矢口が見咎めた。誰も彼女には見覚えがないのだが、矢口に指摘されるま
で彼女の存在に疑問を持つ者はいなかった。
「あ、私は新垣里沙です」
「新垣里沙です、じゃね〜よ。何であんたここにいるワケ?」
「いえ、別に。ただ、皆さんの大ファンで、何か役に立てたらと思いまして」
「どうしてみんな、この子に気付かなかったのさ〜」
「あ、どうしてだろ。そういう矢口だってしばらく気付かなかったじゃん」
「だから腹が立ってるの!」
91カコイイ名無し:02/09/17 23:05 ID:oVIfwqmH
「まあまあ、みなさん。私のことでケンカしないでください」
「ケンカじゃね〜し、自分で言うなよ! 早く自分の部屋へ帰れ」
そう言うと、矢口は新垣の襟首を掴んで詰め所から叩き出した。憤然として
部屋に戻ると、自分の寝台に腰を下ろし、鼻息荒くまくし立てる。
「まったく、なんであんな子がオイラ達の中にいるのさ〜」
「まあ、本人に悪気があるわけじゃないんだし、第一怒ると身体に毒ですよ」
ギョッとして横を見ると、追い出したはずの新垣がニッコリ笑っていた。矢
口は拳を固く握りしめた。

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