小説「七人の娘。」

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319カコイイ名無し
 辻はバケツを持って右往左往していた。
「火事なのれす、火事なのれす」
賊が放った火矢がカーテンを燃え上がらせた。トイレに行こうとしてこれを
発見した辻は、動転して人を呼ぶことにも気付かず、バケツを持って水道と
火災現場を往復した。しかし、小さな身体で大きなバケツを運ぶ辻が火事の
現場に着く頃には、バケツの水は半分ぐらいに減っていた。
「わ〜ん、ダメなのれす〜。水が足りないのれす〜」
辻が泣き声をあげた。
 煙に気付いて教室に飛び込んだ養護教諭の石井は、カーテンに向かってパ
ンツを降ろす辻を見つけ、呆れた声で言った。
「辻ちゃん、多分届かないと思うよ」

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320カコイイ名無し:02/10/23 22:26 ID:zQSiZisO
 新垣の声が賊の再結集を告げる。敵に立ち直る機会を与えてはならじと、
高橋は犬部隊を率いて指定ポイントに急行する。きらめく銀槍を手に狼犬を
引き連れて疾駆するその姿は、戦士の魂をヴァルハラへ導くワルキューレさ
ながらであった。
 前方に飯田の部隊を発見し、高橋は合流するべく歩みを早める。だが、ど
うしたことか、飯田隊の進軍速度は思った以上に速く、犬の脚をもってして
も追いつけなかった。高橋は飯田の部隊運営能力に舌を巻いた。
 当の飯田の方ではいささか状況が違っていた。部隊は飯田の常人離れした
速度に必死で食らいついているのだが、飯田自身は部隊の指揮どころではな
い状況だった。
「犬! 犬! 犬〜!!」
怖い物など無いような飯田だが、犬だけは苦手であった。

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