小説「七人の娘。」

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282カコイイ名無し
新垣は早速敵の動きを屋上から実況しだした。なるほど新垣の情報は正確で
役に立った。新垣の情報を元に安倍が指示を出し、飯田、後藤、加護、さら
に石川と高橋が部隊を機動させる。新垣は盗賊の侵攻状況を伝えると同時に、
ニセ情報で敵を巧みに撹乱した。手薄な所に伏兵がいるように見せかけたり、
逆に味方が待ち構える只中に敵を誘い込んだりした。ノリのいいBGMをか
け、軽い冗談を交えて楽しげに実況する新垣。
「まったく、気楽なもんだよなぁ」
吉澤が恨めしそうに屋上を見上げる。
283カコイイ名無し:02/10/16 22:50 ID:e5XTlXmo
 しかし、屋上は屋上で戦場だった。新垣の実況が戦況に影響大と察知した
敵は、屋上めがけて銃弾を立て続けに撃ち込む。何発かは至近弾であったが
新垣は恐怖を感じさせない口調で実況を続けた。たいした度胸だった。だが、
狙撃手の狙いすました銃弾がついに新垣を捉える。凶弾が新垣の額を撃ち抜
く寸前、右から差し出された鉄板がこれを弾いた。
284カコイイ名無し:02/10/16 22:50 ID:e5XTlXmo
「里沙ハ私タチガ守リマース」
留学生のミカとアヤカだった。混戦となっては投石器は使えない。彼女たち
は戦乱の中に自らの居場所を求めてここに辿り着いたのだ。二人は屋上入口
の鉄扉を引き剥がし、新垣を守るための盾となった。抱えた鉄の扉に銃弾が
当たり金属音を立てる。二人の意気に笑顔で応え、新垣は再び実況に戻った。

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