小説「七人の娘。」

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275カコイイ名無し
 決戦の朝は観測史上例を見ないほどの大雨であった。安倍は味方を集めて
作戦を確認する。
「残る敵は全て校庭に引き入れるべ。正門部隊は敵が通り過ぎるのを待って
追撃、指令台付近で待ち伏せた本体とで挟み撃ちにするべさ。この一撃が勝
負だべ」
276カコイイ名無し:02/10/15 23:28 ID:2pbN01KZ
作戦は理解したものの、決戦に挑む一同の顔はおしなべて固い。小川ですら
笑おうとしたその顔が引きつっている。安倍は砕けた口調で味方の緊張を解
す。
「さあ、いよいよ本番だべ、みんな元気出して。特に加護は頑張らなくっち
ゃダメだべ。何せ大事なオトモダチがいるんだからさ」
一同が破顔する。禁断の友情とは言え所詮は人ごとである。一夜明ければ笑
い話だ。ただし当の加護だけは体裁が悪く、後頭部を掻いて苦笑するしかな
い。
「まったく、イヤやなぁ」
277カコイイ名無し:02/10/15 23:29 ID:2pbN01KZ
 吉澤は降りしきる雨の中を駆けだして、武器庫から引きずり出した一〇本
余りの刀を指令台の脇に突き刺していった。
「よっすぃー、どうした」
飯田に問われ、吉澤はまくし立てた。
「一本の刀じゃ五人と斬れやしない!」
それは自分が二、三〇人も斬ってやろうという気概が言わせた科白であった。
飯田は決戦に挑む吉澤の心意気を良しとし、自らも覚悟を新たに部署へ急い
だ。
278カコイイ名無し:02/10/15 23:29 ID:2pbN01KZ
 風向きが変わり、空気が変わった。吹き付ける風雨に向かって吉澤が吠え
る。
「さあ、どっからでも来やがれ!」
吉澤が招いたわけでもなかろうが、正門に怒号が起こり、決戦の火蓋が切っ
て落とされたことを告げる。安倍は愛用の弓を取り出し弓弦を張った。飯田
と加護は顔を見あわせ頷きあった。後藤は鯉口を弛め、高橋は槍をしごき、
小川は指を鳴らし、紺野は謎の装置の電源を入れた。それぞれに戦闘準備を
完了する。
279カコイイ名無し:02/10/15 23:30 ID:2pbN01KZ
 その先に待ち受けていたのは混沌とした乱戦であった。狂乱した盗賊団が
校庭になだれ込み、指令台前で安倍の率いる部隊と対峙する。後背から駆け
つける飯田・加護隊に尻を煽られ盗賊の群は四分五裂する。安倍の狙い通り
敵を分散させた。各個撃破に一縷の望みを託すのみだ。
280カコイイ名無し:02/10/15 23:31 ID:2pbN01KZ
 安倍は弓を引き絞り、攻め入る敵に狙いをつける。弓弦が唸るたびに豪雨
を縫って白羽が飛び、一人、また一人と地に落ちた。
 傍らの吉澤は泥まみれになりながら刀を振るい続ける。行き違ったバイク
を後ろから追いかけて、その背に太刀を浴びせる。自刃も辞さないケンカ殺
法に敵も味方も恐れをなした。

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