小説「七人の娘。」

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249カコイイ名無し
 それを最後に敵の攻勢がやんだ。安倍は戦況に生じたこの奇妙な間を訝し
く思う。用心のため各部隊を所定の配置につけたとき、とんでもない情報が
安倍の元に飛び込んできた。
「師匠、大変や。新垣からの連絡で、駅前ロータリーに敵の増援部隊が集結
中やて。その数、およそ……ひゃ、一二〇!」
250カコイイ名無し:02/10/12 22:34 ID:/djeIUXl
加護の報告を受けて安倍は指令台に陣取る新垣のもとに急いだ。新垣はパソ
コンを前に頬杖をついて眉間に皺を寄せていた。安倍がモニターを覗き込む
と、確かに駅前ロータリー周辺が真っ赤に光っている。
「これは間違いないデータだべか?」
「間違いありません。FLAME、W−indsをはじめ、関東一円の盗賊
が集ってしまったようです」
安倍は膝を屈して地面を見つめた。
「これまでだべ……」
251カコイイ名無し:02/10/12 22:36 ID:/djeIUXl
砂を掴んで茫然自失する安倍に新垣が声を掛ける。
「魔法の時間ですか?」
安倍は以前新垣が言ったことを思い出し、指令台の上を仰ぎ見た。
「何か対策があるんだべか?」
「ええ、一応」
「なんでもいいべ。できることがあったら何でもやって欲しいべ」
「はい!」
指示を受けた新垣はものすごい勢いでキーボードを叩きはじめた。額にうっ
すらと汗が浮かぶ。ときどき舌打ちしたりガッツポーズをしたり、安倍には
さっぱり分からないが、やがて派手に勢いをつけてEnterキーを弾いた。
「完了しました!」
新垣は満面の笑みで言った。
252カコイイ名無し:02/10/12 22:36 ID:/djeIUXl
 吉澤は空に向かって鼻を鳴らした。
「クンクン。なぁ、なんか空気変わったんじゃない?」
問われた石川も吉澤に倣って空気を嗅ぐが、小首を傾げて答える。
「別に何も……」
253カコイイ名無し:02/10/12 22:38 ID:/djeIUXl
 正門前では加護が飯田の頭を指さして腹を抱える。
「ハハハ、飯田さん髪の毛立っとるやん」
「何だ、あいぼんだって……」
254カコイイ名無し:02/10/12 22:39 ID:/djeIUXl
 東広場では南の空を呆然と眺める紺野を後藤が見咎めた。
「紺野、何見てんの?」
「後藤さん……来ます!!」
「んぁ?」
後藤もつられて空を見上げる。
255カコイイ名無し:02/10/12 22:40 ID:/djeIUXl
 駅上空の雲が大慌てで逃げ出し、空に丸い大きな穴があいた。天空を貫い
て、巨大な光の槍が地に刺さる。数瞬遅れて轟音と突風が巻き起こる。
「な、なんだべ」
つむじ風に煽られながら安倍が尋ねる。駅方向の空が赤黒く染まり、一帯が
焦土と化したことを物語る。
「軌道レーザーです」
新垣はそう言ってノートパソコンを閉じた。
「もう衛星にアクセスできません。私の出番は終わりです」
新垣はパソコンを脇に抱えて、少し寂しげに微笑んでから自分の教室に戻っ
ていった。
「あ、ありがとう……」
安倍は言い忘れた礼を新垣の背中に投げかけた。多分、新垣には聞こえてい
なかった。

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