小説「七人の娘。」

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225カコイイ名無し
 翌朝はのどかな鳥の声に始まった。安倍達の最初の仕事は、生徒達の緊張
をほぐすことだった。
 飯田は一人ひとりの手を握って士気を鼓舞した。手荒く握り返してきた小
川には、手が痺れるほどの力で応じた。一〇〇の言葉より心が通じた。
226カコイイ名無し:02/10/08 22:53 ID:dugwql0K
 保田は部下のそれぞれに声をかけた。食が細い者には精のつく食事を勧め
た。寝不足の者には熱いコーヒーを入れた。高橋には塗り薬を手渡した。
「あんた、これ塗っときなさい」
「これは?」
「ガマの油よ。練習のしすぎで槍を握る手がマメだらけでしょ」
高橋は慌てて両手を後ろに回した。
227カコイイ名無し:02/10/08 22:54 ID:dugwql0K
「隠したってダメよ。そんな手じゃあ本番で役に立たないわ。ガマの油はよ
く効くわよ〜」
ガマのような顔を真似る保田を見て高橋は吹き出した。
「ありがとうございます」
保田の心遣いに感謝し、高橋は深々と頭を下げた。
228カコイイ名無し:02/10/08 22:55 ID:dugwql0K
 加護は吉澤のもとに赴いた。吉澤は陣屋の屋根に寝そべって腹を掻いてい
た。自らの緊張をほぐすためか、加護は無意味な話をまくし立てた。やがて
話は後藤の武勇に及んだ。
「しかし、ごっちんはすごいでぇ。散歩にでも行くように飄然と出かけて、
敵のライフルを奪ってきおった。あんな凄腕、見たことないで。ありゃホン
モンのサムライや」
吉澤は面倒くさそうに耳をほじりながら応じた。
229カコイイ名無し:02/10/08 22:57 ID:dugwql0K
「うるせー、うるせー。私は眠いんだからあっちへ行ってろよ」
吉澤に邪険に扱われた加護は、言いたいことを言い終えたこともあって素直
にその場を後にした。加護の気配が去ったと見るや、吉澤はやにわに立ち上
がり、せわしなく身支度を始めた。陣屋の壁を叩いて石川を呼び出す。
「梨華ちゃん、ここは任せるよ」
「えっ! えっ!? 困りますぅ」
「もう裏門は大丈夫。敵なんか来ないよ〜」
そう言って吉澤はどこへともなく駆けだした。