攻め手が校門の前に集まる。固く閉ざされた門扉、突き出た逆杭、その向
こうで身構える決死の形相の生徒達を見て、盗賊どもは学園の決意を察する。
バイクのエンジンを吹かしていたリーダーらしき人物が手を振って何やら指
示を出す。賊の一団は二手に分かれて塀を巡る。飯田は加護を連絡に走らせ
る。
「敵は二手に分かれて西門と裏門に向かったで。西に一五台、裏には二五台
や」
運動場の校舎寄りに設えられた指令台に陣取った安倍に加護が報告する。
「ライフルは?」
「三丁」
「じゃあ、圭ちゃんとよっすぃーにも知らせて。ライフルのことも忘れない
で」
「ラジャー」
加護は西門に向かって自転車をこぎ出した。
加護の報告を受けてから程なく、西門に敵影があった。狭い西門は木材で
できたバリケードで完全に塞がれ、その前に堀を作って水を張ってあった。
賊の一人がバイクを降りて、堀に木の棒を突き立てて水深を測る。
「弓箭兵!」
保田の合図で弓道部とアーチェリー部の精鋭四人が前に出る。毎年全国大会
上位を誇るアーチェリー部では村田めぐみ、齋藤瞳、大谷雅恵の三人が今年
も好成績を収めている。一方、柴田あゆみは卓越した才能で、これまで大会
と縁がなかった弓道部を一躍全国レベルに押し上げた。新進の弓道部に話題
をさらわれ、アーチェリー部は愉快ではいられなかった。そのような訳で柴
田と村田ら三人との間には確執があった。しかし、合同での訓練を通して四
人は次第にうち解けていった。保田が間に入ってとことん話し合わせた結果
わだかまりが消え、互いに認め合いライバル視することで力を増していった。
「射て!」
保田が手を振って合図すると四本の矢が同時に空を切り、四本とも標的の胸
に刺さった。水深を測っていた男は物も言わず倒れた。
「やった!」
村田、齋藤、大谷、そして柴田さえも一緒になって喜んだ。
「あんたたち、やったじゃない。最初の手柄よ」
保田が誉めると齋藤が得意げに鼻を鳴らした。
「現代によみがえるロビン・フットってところですか?」
「え〜、でもリンゴを射落とす自信はないですよ。まあ、メロンぐらいなら
何とか」
柴田の意見に他の三人も笑いながら頷く。保田はがっかりした顔で一言。
「あんたたち、根本的に間違ってるわよ」
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