「はいっ、今日はここまで!おつかれー」
夏の声に皆、一様にほっとした様子で挨拶を返す。
「おつかれさまでしたー」
「ありがとうございました」
特に今日は厳しかった。
なかでも小川は心底やれやれという感じだ。
「うわぁー、疲れたねー」
隣の紺野に話しかけながら共に腰を下ろそうとしゃがみ込んだ瞬間、
うっ、と右の足首を庇いながら膝を突いた。
しかし、紺野は何に気を取られているのか小川の異変には気付いていない。
小川も苦痛の表情は一瞬で何も無かった様に仕上げのストレッチにかかった。
今のレッスンで痛めたのだろうか。
「おがわ…」
声を掛けようとしたところを夏に呼びとめられる。
「飯田、ちょっといい?」
「あ、はい…」
ダンススタジオの片隅で次回の打ち合わせをする。