雨はその後小降りになりやがてやんでしまった。
ずぶ濡れになり、雨の入った靴をぐしゅぐしゅ鳴らしながら俺は自転車を押す。
すっかり日が暮れてしまった街を、俺はあてもなくさまよっていた。
あいぼんへの恋しさと後悔を胸に子供の様にべそをかきながら....。
(バチだ!!バチがあたったんだ!!あいぼんの心をないがしろにした....。)
意を決した恋人達が次々と裏路地へと消えてゆく。そんな時間帯になってきた。
俺は、そんなカップルをチラと横目で見ながら、悲しみで一杯だった。
(俺はいつもそうだ....大切な物を....失って気づくんだ!!)
もう、繁華街は走りつくした....あと、二人がどこかに入ってしまったのなら、もう確かめ様もない....。
俺は、今晩、あいぼんへの恋情と嫉妬で身もだえながら眠るしかないのだろうか?
そんな事を考えていた時だった。
歩道脇の街灯の下にしゃがみこむ人影が見えた。近づいてみる....。
「ユ....ユウキか....。?」
俺が声をかけると、ユウキがゆっくりと顔をあげた。
なんて事だ....顔が青アザだらけである。
「 どうしたんだよ。ユウキ!で、あいぼんはどこにいるんだ!?」
142 :
さよ姫:02/09/12 00:04 ID:bZCigPmQ
すこし時間を戻す....。
カラオケボックスの中のユウキとあいぼん。
「わかってくれたんだね....いいね?いいね?ステップアップOKね?あいちゃん?」
と言いながら、ユウキはあいぼんの柔らかなウエストに手をかけた。
そして、唇をゆっくりと寄せながら、手は次第に、あいぼんの豊かな胸元へとスライドしていった。
その時 「 いやあ〜っ 」 と言ってあいぼんは両手でユウキの胸元を思いっきりつきとばした。
「何すんだよっ」 と立ち上がろうとするユウキ。
すると、あいぼんはDAMの分厚い曲リストを両手でつかむと、思いっきり振り上げ
ユウキの顔面めがけて振り下ろした!!
ガチャーン!!
と音を立ててユウキは、ガラス製のテーブルに顔面を強烈に突っ込んだ。
テーブルの脚が折れた! ポテトやグラスが中に舞い散乱した!
あいぼんは、はあはあと肩を上下させながら叫んだ!!
「あんたはただのスケベ野郎よ!!嫌い、だいっ嫌い!」
「あたしは先生が大好きなのよ。振られても大好きなの。馬鹿にするがいいわ!!」
そう言って、レシートをつかむと、ちょっと見て、
「勘定もあんたの払いよっ!!」
といってユウキにたたきつけた。
そして、個室のドアを押し開けると、表にだだだだと飛び出して行った。
143 :
さよ姫:02/09/12 00:06 ID:bZCigPmQ
「.....で、いやがる あいぼんに無理矢理キスを迫って、胸をさわろうとしたわけだな....。」
俺は目を伏せ、ユウキに問う俺....。
するとユウキは....
「 そうだよ。全くあんな、化石みたいな暴力娘は、こっちが願い下げ....。」
俺はユウキの胸倉をつかむと、コブシを固め思いっきりぶんなぐった。
ユウキは吹っ飛んで、金属製の街灯の柱に頭を思いっきりぶつけた。
カーン! と見事な金属音が周囲にひびいた。
ユウキはそのまま、失神し街灯に寄りかかったままずるずるとへたりこんだ。
俺は大の字になってコブシを震わせながらはき棄てる様に叫んだ!!
「 女の子がみんなおんなじだ なんて思うな!! 」
俺は、自転車に飛び乗った。ここから下宿へは一本道だ。
あいぼんが帰る途中ならきっとつかまるはずだ。
俺は自転車を立ちこぎで左右に揺らせながらむちゃくちゃに走らせる。
今日あいぼんは、俺には冷たくされ、ユウキには遊び女の様に扱われて
深く...深く傷ついているに違いない。