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「ちょっとマジに自首するの?」
階段を下りながらあたしは前を歩く加護に小声で訪ねた。
加護は、聞こえていないのか答えない。
「・・・平家さん」
ドアの前で辻がみっちゃんを呼んだ。
「なんや?」
「これ、ののだと思って大切にしてください」
そう言って、みっちゃんになにかを差し出す。
暗くてそれがなんなのかよく分からないがみっちゃんは「おおきにな・・・」と素直に受け取った。
「それじゃ、行こうアイボン」
辻が振り返る。加護は頷く。
「加護・・・・・」
あたしが呼ぶと加護は足を止めた。顔だけをこちらに向ける。
「後藤さん、平家さん、ごめんなさい」
「え?ちょっと、どういう意味?」
「加護ちゃん!?」
あたしたちが、加護の言葉に驚いてたずね返すよりも先に二人は外に飛び出していった。
ごめんなさいって・・・・・・まさか二人とも死ぬ気!?
天下の強盗だと自負していたぐらいだから、捕まるなら死を選ぶのかもしれない。
不意に思い付いてあたしは二人の後を追いかけて外に飛び出した。みっちゃんも同じように考えたのか外へと飛び出す。
「加護!!辻!!」
その瞬間、あたしの目に飛び込んだのは警官に保護されながらあたしたちを指差している二人の姿とそれに答えるように銃を構える警官の姿だった。
――ッキュン
聞きなれない音がした。
そして、「・・・あぅっ!!」という鈍い悲鳴。
ドサリとみっちゃんが崩れ落ちた。
あたしは、驚いて目を見開く。あたしたちの元に駆け寄ってくる警官隊。
なんで?なんで、みっちゃんが撃たれるの!?
信じられない思いだけが心をしめて動けずに立ち尽くしているうちに
あたしは警官隊に押さえ込まれていた。そのままパトカーへと引きづられていく。
どんどん倒れているみっちゃんから離されていく。
みっちゃんはピクリとも動かない。
「ちょっっと!!みっちゃん!!!みっちゃんってば――っ!!」
あたしは、泣き叫んで抵抗した。
だけど、男の力に敵うわけがない。無理やりパトカーの中へと押し込まれる。
パトカーが動き出す。あたしは、後ろの窓を叩いた。
騒然としている現場。
最後に視界にうつったのは警官の隣で辛そうに顔を歪めてあたしを見ている加護の姿だった