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着地した瞬間、二人のうちの一人と目があってしまった。
「まずいところ見られたな〜」
少女――加護があたしに近づいてくる。
「あいぼん、まつのれす」
辻が止める。
っていうか、どこにいってもこの二人ってののとありぼんなわけ?
ここで辻さん加護さんとか呼んでたら面白かったのにな。
「なんや、のの?」
「人質にするのれす!」
人質!?
っていうか、なんで?
考えて思い当たることがあった。
そういえば、なんで辻って血がついたナイフなんて持ってるわけ?
あたしは、恐る恐る辻を見る。見間違いじゃない。
確かにそれは辻の手の中に・・・さらにいうと服にも血がついてる。
で、このビルって宝石店のビル?
そんなのあるのか分かんないけど・・・・・・きらびやかなウィンドウから察すると高級そうなお店だ。
これから推測すればこの二人って――
「もしかして、強盗?」
「もしかしてれすと?」
あたしの言葉にキッと睨みつけてくる辻。
辻のくせに・・・・・・いや、いいんだけどね
「ごっちん、あかんって。うちらは陽気な通りすがりや。逃げよ」
みっちゃんがこそこそと耳打ちする。
陽気な通りすがりって意味わかんないんだけど。
まぁ、確かに逃げたほうがいいか。
そう思って二人に背を向けた瞬間、バッと暗くもないのにスポットライトを浴びせられた。
スポットライトじゃないのかな?警察がよく使うあのライト。
ともかく、まぶしくて思わず目を細めてしまう。その中でこんな声がした。
「逃げるで!のの」
「オッケーれす!アイボンは人質連れていってください!!」
「は!?」
気がついたら加護に腕を掴まれていた。みっちゃんも同じように。
そして、そのまま店の脇にある細い路地に連れて行かれる。
「いややー!!助けてーな!!」
みっちゃんが叫ぶ。
別に心配しなくても警察がいるから大丈夫だって、みっちゃん。
あたしがそう思ったその時、辻の声が聞こえた。
「こっちには人質がいるのれすよ〜撃ったら殺しますよ」
言っていることと口調がまったく噛み合ってないけど・・・・・・マジで!?
「ほら、ちゃっちゃと歩いて。悪いようにはせえへんから」
加護が、あたしを押しながらどんどん歩いていく。
みっちゃんは、すでに抵抗すらしていない。
――あたしたち、これからどうなるんだろう?