正直とか親切とか、そんな普通の道徳を堅固に守る人間こそ、
真の偉大な人間というべきである。
byアナトール・フランス
1
「犯人に告ぐ!抵抗をやめてでてこい!!」
外から拡声器でひび割れた声がする。
窓の隙間から見ると大勢の機動隊とパトカー。
あたしは、額ににじんでくる汗を拭きながら後ろに立ってなにやらコソコソと話している二人に視線を動かした。
「ちょっと・・・マジやばいって」
なんでこんなことに巻き込まれてしまったんだろう?
いまさらながら思う。
みっちゃんなんて生きる屍状態になってしまった。
つまり、放心してるってこと。
あたしもみっちゃんみたいにどこかに現実逃避したいよ・・・まったく。
「ねぇ、どうすんの?」
もう一度、二人に尋ねる。
「後藤さん、心配しすぎですって」
少女が答える。
「そうですよ、このぶりうんの教科書に逮捕なんて言葉はないのれす」
それをいうなら辞書じゃないのかな?
なんて突っ込みはおいといて、どう考えてもこの状況――ふるいプレハブ小屋を取り囲む制服の集団――から
誰一人捕まらずに逃げられる方法なんてないような気がするんだけど・・・・・・
二人は余裕綽々と言った感じにさっきまであたしが見下ろしていた窓から外の様子を眺めている。
その後ろ姿を見てあたしはもう一度さっきと同じことを思った。
――なんでこんなことに巻き込まれてしまったんだろう?
2
事の発端は、新しい街に入ってすぐのことだった。
あたしたちは、なんのあてもなくまったくノンキに街並みを歩いてたんだ。
「今日は、ここに泊まる?」
「んぁ〜」
なんてすごく気だるい会話をしながら・・・別にケンカしてるわけでもなく
単なる旅疲れってやつなんだけど。いい子なみっちゃんまでだらだらしてた。
「ねぇ、それでここに泊まるの?」
「どうするかな。今の時間やったら次の街も行けそうやしな」
「んぁ〜まだ明るいしね」
あたしたちは、さっきからずっと同じ会話をしながら歩いていた。
この街は、あたしてきにはたいしてなんの印象もうけなかった。まぁ、現代的な感じ。
こう現代的な街が続くとこれといった感動も薄れるらしい。
だから、みっちゃんが次に行きたいんだったら行ってもいいし休みたいんだったら休んでもいい。
珍しくそう思っていた。
みっちゃんは、困ったように「どうするかな〜?」と空を見上げた。
その瞬間、「うわっ!?」とみっちゃんが悲鳴を上げて横に飛んだ。
横にってことは!?
「んぁっ!?」
もちろん、横を歩いていたあたしにクリティカル・ヒット!!
あたしはみっちゃんのタックルで地面にしりもちをついた。
「いった〜・・・なに、みっちゃん?」
「ご、ごめん、ごっちん。あんな、空から空からこう人が降って来て・・・」
「はぁ?」
みっちゃんは、パニックに陥っているのか意味が分からない。
っていうか、意味は分かるんだけど空から人なんて降ってくるわけがないからね。
あたしの声にみっちゃんは手をバタバタさせて、それから思い当たったように空を指差した。
つられてその先を見る。
「は!?」
ありえない人影にあたしの口から思わず声が漏れた。
空からは、まるでスパイダーマンのようにビルの壁をピョンピョンと縄を伝って降りてくる子供が二人。
ありえない・・・・・・あたしは、自分の目を疑った。
だけど、子供たちがもう地面に到着するのも間近で――その二人の顔を見てあたしはさらに目を疑った。
見覚えのある二人組み。
それも一人はなぜか血のついたナイフを持って――