高橋愛のルーズソックス萌え

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414鮪乃さしみ ◆VnvDQxEgzk

【T・E・N】 第85話 加護

「どうした加護?」

「ううん、何でもない、よっすぃー」

 隣の席の加護がどことなく沈み込んだので、吉澤は心配して話しかけた。

「よっすぃー」

 保田が、まじまじと吉澤を見つめながら声をかける。

「ん?」

「噂には聞いていたけど・・・オットコ前になったよなぁ」

「ふふん」

「でしょ? “かっけぇー”でしょ!?」

 石川も、自分のことのように喜んでいる。ちなみに「かっけー」は「カッコ
イイ」の意味で、元々は吉澤が言い出してメンバーの中で流行った言葉だ。

「で、今はバーを経営しているんだって?」

「まーね。ちょっと普通のバーじゃないけど」

「もしかして、よっすぃーみたいなのがいっぱいいるバー?」

 吉澤は無言でひとり納得したかのように、何度もうなずいてワインを一気に
あおった。
415鮪乃さしみ ◆VnvDQxEgzk :02/10/28 07:53 ID:+pkSzWhE

「・・・スゴイなぁ」

「そーかな」

 吉澤は何も考えずに行動してしまう。
 それは自分の生き方だし、昔から変わっていない。そもそも、モーニング娘。
に入ろうとオーディションに応募しようとしたきっかけですら、思いつきだっ
た。その性癖を誉められても、ただ困惑するしかない。

「やっぱ5年もたつとミンナ変わるよなぁ」

「何言ってんの圭ちゃん、自分が一番変わったクセに」

「かなぁ」

「ルックス的には一番・・・かな?」

 矢口も、吉澤の意見には同意する。

「ホントホント。最初別人だと思ったもん」

「別人は言い過ぎでしょ。ちゃんとホクロの位置も変わってないでしょ?」

 保田は自分の口の左下を指差す。

「でも・・・マジで・・・キレイになったよ・・・」

 吉澤のその言葉に、多くのメンバーが無言で首を縦に振る。
 保田はそう言われることに慣れていないのか、リアクションに戸惑っている
ようで、ただうつむいて口元を緩めるのみ。
416鮪乃さしみ ◆VnvDQxEgzk :02/10/28 07:53 ID:+pkSzWhE

「う〜ん、私的に見た目一番変わったってのは・・・」

 上目遣いにテーブルを取り囲んでいるかつてのメンバーを見渡す。

「よっすぃ〜は確かに変わったけど、ハマりすぎってのはあるし・・・」

 短髪茶髪の吉澤だが、在籍時も男前キャラのイメージが強かったので、それ
ほど現在のルックスも意外性を感じない、ということを言いたかったらしい。

「カオリンは相変わらずゴージャスだし、黒髪も似合うなぁ・・・」

 後期に加入したメンバーにとってやや違和感があるものの、保田にとっては
懐かしい気分を思い起こさせてくれる今の飯田の髪。

「矢口は予想通り! カワイイなぁ」

「やめてよ、もう25なんだからぁ! この歳になるとカワイイよりキレイ、
 って言われたほうが嬉しいんだけど・・・なかなかそうゆうわけにもいかな
 くて・・・」

 矢口が、ついさきほど「世間の抱くイメージと、自分が目指すイメージが、
かけ離れていることが悔しい」といったことを発言していたことを思い出した。
 しかし保田は、素直に今の矢口を見て「カワイイ」と思った。
 矢口の抱えている問題は、複雑である。
417鮪乃さしみ ◆VnvDQxEgzk :02/10/28 07:54 ID:+pkSzWhE

「石川も・・・ある意味、ぜんっぜん変わってないわね・・・」

「なんですか保田さん、その『ある意味』ってのはぁ!」

「だって・・・そのメイド服は、えーと、何? サービス?」

「え? 似合ってませんかぁ? コレ?」

「いや・・・似合ってるよ・・・うん、間違いなく・・・」

 石川に関しては、いまだにお人形というかマスコットのような雰囲気を漂わ
せている。誰が見てるわけでもないのに、アイドルとして捉えられる事を意識
しているような・・・そんな幻想すら抱いてしまう。

「加護も変わってないかな」

 というより、5年の月日を経ているにも関わらず「変わらなさすぎる」こと
が不気味だった。加護にしても、石川にしても。彼女らは事故後もお互い交流
があったそうだが、二人の間に時間は流れていたのだろうか。これは保田だけ
でなく、他のメンバーも皆思っている。

「私が思うに・・・一番変わったのは・・・やっぱりなっちかな」

「え? 私?」


【85-吉澤】END
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