【T・E・N】 第74話 KAO
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■TEN> このメッセージはいつごろ読むのかな夕食まえには読むのかな?
まあいいや(09.23-17:24:11)
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・・・あなたはどこでこのメッセージを書き込んだの?
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■TEN> 例のものはもう少しあとで渡すから(09.23-17:24:59)
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・・・何か今渡せない理由でもあるの?
やっぱり―――この屋敷にいるんじゃないの? 「TEN」さん。
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■TEN> 大丈夫、きっと成功するよ。絶対私のかわりにカタキをとってね
(09.23-17:25:40)
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・・・ここにいるんならなぜ、あなたがやらないの?
分からない。
分からない。
このTENという人物は、自分のことについては一切語ろうとしない。
私に約束をしてくれた。
「辻に逢わせてあげる」
そんな馬鹿げたことがあるのだろうか。辻はあの武道館の事件で、雲の上の
国へと旅立ったはず。
TENは確固たる証拠を、私に示してくれたわけではない。
簡単に信じることなどできない。その反面「もしハタチになった辻はどんな
感じなんだろう」と想像する自分がいる。
そしてTENが、その再会を実現させるために出した交換条件はひとつ。
「あの事件が起こることを事前に知っていながら、あなたたちの仲間を見殺し
にしたメンバーが今日集まる中に存在する」
「そいつを、あなた自身の手で裁いて」
・・・それはTEN、あなたのことなんじゃないの。
なぜそのメンバーを今になっても教えてくれないの。あれだけ綿密な計画だ
け指示しておきながら。
「黒幕を知って、あなたの決心が揺らぐといけないから」
TENはそう言った。
あなたが、あなたこそが、あの事件を起こした黒幕なんじゃないの。
そして関係ないメンバーを犯人にデッチ挙げて、私の手で殺そうとさせてい
るんじゃないの。
・・・・ ・・・・・・・
そしてあなたも元モーニング娘。のメンバーで今日、ここに来ているんじゃ
ないの!
TEN。
KAO。
辻希美。
そして、爆破事件を黙認したとされているメンバー。
この屋敷には、大きな蜘蛛の巣が張られている。
たぶん私も(本当にいるとすれば)辻もその巣に引っかかって、すでに身動
きがとれない状態なんだろう。
そして、巣の中央に身構えている蜘蛛。
胸騒ぎがする。
もしかしたら、蜘蛛なんていないのかもしれない。
TENが外から、次々と私たちを巣に投げ込んでているんじゃ・・・?
その真犯人と言われるメンバーですら。
お互い仲間内で疑心暗鬼に陥って殺し合うのを、外野から笑いながら見いる。
それがTENなんじゃあ?
私は、とんでもない間違いを犯そうとしているのかもしれない。
辻というカードさえ、握られていなければ・・・!
こちらが主導権を握るには、どうしたらいいだろう?
現時点では分からないことが、まだ多すぎる。
これだけ用意周到な計画を私に託したTENの尻尾を掴むのは、正直難しい
かもしれない。辻の居場所もこれだけ探して見つからないのだから・・・。
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■TEN> じゃ次のアクセスは10時ごろね。(09.23-17:27:16)
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私にひとつチャンスがあるとすれば、このNETによるTENとの繋がり。
10時までに、そのヒントを見つけなければ。
晩餐会で誰が仮面を被っているのか見当をつけなければ、それこそ都合いい
ようにTENの操り人形にされてしまう恐れがある。
誰がTENなのか?
辻はどこに隠されているのか?
そして一番許せない―――「あの事件」をあらかじめ知っていながら見過ご
したメンバー。
そんな奴がメンバーにいるというだけで・・・自分は、はらわたが煮えくり
返りそうになる。冷静にならなければ。蜘蛛が絡み付いて指一本動けない状態
になったって、私はあきらめない。最後まで抵抗してやる。
臨機応変。
何か小さなことでも見逃さないようにしなければ。
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<TENさんは退室しました(09.23-17:28:10)>
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