どすん、という鈍い音がして、お尻に衝撃が走った。
イテテ…。
ちょうど座った格好で落ちてしまったようだ。
オイラはお尻をさすりつつ、真っ暗な中でゆっくり立ち上がってみた。
しばらくじっとして、耳を済ませる。
先に穴に入っていった二人の声は聞こえない。
目を凝らしてみると、うっすらと周りが見えた。
目が暗闇に慣れたみたいだ。
オイラはゆっくりと、前に進みだした。
はっきりと見えるわけではないが、なんとなくボンヤリと周りが見える。
どうやら通路みたいなところを歩いているようだ。
オイラは壁を手で触りながら少しずつ歩いた。
と、突然手になんの感触も無くなった。
さっきまで見えていた壁も見えない。
周りに何も無いのか?
さっきよりも更にゆっくりと前へ出てみる。
しかし、やっぱり何にも無いようだ。
突然オイラの目の前が真っ白になった。
明かりがついたのだ。
オイラは眩しくて、思わず目を閉じた。
そして、ゆっくりと目を開けてみると、何やら人影がボンヤリと見えた。
加護ぴょんか?
オイラの問いかけに人影は応じなかった。
目が明るさになれてきたので、もう少しよく見てみる。
目の前に立っていた人影は、加護ぴょんでは無かった。
誰?
オイラは誰だかわからない二人組みに囲まれていた。
二人は槍のような武器を手にもち、緊張した顔でオイラをじっと見つめていた。
どうしよう…。
オイラはその場で固まってしまった。
「オマエドコカラキタ?」
そのうちの一人がたどたどしい言葉で話し掛けてきた。
どうやら、コイツはオイラ達の言葉が理解できるようだ。
それだけでも少しほっとする。
オイラは、ぴょ〜ん星からやってきて、宇宙船が壊れて不時着して、ヤスダザウルスに追われて、ここへ紛れ込んだ事をなるべく簡単な単語を選んで話した。
二人は顔をみあわせて、聞いた事のない言葉でボソボソと会話していた。
「オマエドコカラキタ」
また同じ事を聞かれた。通じなかったらしい…。
オイラはさらに言葉を簡単にし、ゆっくりと一字一句づつ話した。
すると、また二人は顔をあわせて何か話し始めた。
「オマエドコカラキタ!」
今度は強い口調でオイラにたずねる。何度同じ事聞くんだよ。
突然、今まで話さなかった方がオイラの手を掴んだ。
何するんだよ!
オイラは抵抗し、その手を払いのけた。
カッとなった表情をしたその一人は、今度は物凄い力でオイラの腕を掴み、背後に回ってがんじがらめにした。
オイラは暴れた。
放せよ!
話をしていた方の一人がロープのようなもので全身をぐるぐる巻きにした。
そして、二人がかりでオイラの両肩を持ち、どこへやら引きずり始める。
その間、オイラはずっと大声で叫び続けた。
オイラが何したってんだよ!この魚顔野郎!
そんな言葉はもちろん全然わからないようで、二人は無表情のままオイラをしばらく引きずっていた。
そして、随分雑に作られた牢屋のような場所に閉じ込められた。
オイラは床に放り投げだされたままの状態で悪態をつきまくった。
馬鹿!阿呆!この頬袋野郎!
そんな叫びも通じなければむなしいだけだった。
さんざん怒鳴り終わると、疲れてきたのか急に不安になってきた。
なんでこんな目に…加護ぴょん達は一体ドコいっちゃったんだよ。
しばらくすると、また周りが暗くなり、よく見えなくなった。
暗闇はオイラの不安を更に加速させる。
心細くて泣きそうになった。
「あのぅ…」
突然背後から声がした。
半分泣いていたオイラは、その声に驚いて、大声で叫び声をあげてしまった。
「あぁぁぁごめんなさい」
後ろから聞こえる声は、おどおどとした口調で謝ってきた。
オイラは少し時間をかけて落ち着きを取り戻すように努力し、今度はオイラから声をかけた。
誰?
「あのぅ…私…チャーミー星のリカって言うんですけど」
「ぴょ〜ん星の方ですよね」
そうだよ…この格好見りゃわかるだろ。
「あ、ごめんなさい。そうですよね、見ればわかりますよね」
やけに低姿勢というか謝ってばっかりのやつだな。
「リカ」とかいうやつはそのまま話を続けた。
「あのですね、さっき走り去った二人とお仲間なんですか?」
走り去った二人?加護ぴょんと辻ぴょんか?
「あの二人、いきなりここへ入ってきて、プッチ星のあの二人の食事を持っていっちゃったんです」
そんな事したのか…アイツらどこでも食いものなのか。
「で、プッチ星の二人が怒って…そこへアナタがやってきて」
ああ、なるほど。それでオイラは敵だと思われてたわけだ。