紺野あさ美のシンデレラ小説スレ

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730紺野大好き
いま私がいるのは、駅前のバーガーショップだ。ロータリーを行きかう人の姿が、この窓際の席からはよく見える。
空は、抜けきって高い。あまりの蒼さに胸が痛くなる。頬杖をつき、花壇に植えられたコスモスが満開なのを眺め回した。
花の群れが風に揺れて波打つのを見つめているうちに、ひとりで催眠術にかかってしまいそうだ。店内に流れるヒット曲のインストゥルメンタルと、エンドレスで鳴り響く横断歩道のか<通りゃんせ>が混じりあうのを聴いているとなおさら。
731紺野大好き:02/12/30 21:39 ID:b7TdBlwS
花の海から目をそらし、あまりにぎやかとは言えない商店街を見やる。狭い道路のはるかつきあたりには、壁のような山々がそびえている。
遠く離れたこの駅で、迎えを待つこと三十分、到着時間にあわせて来てくれるはずだった迎えの人がいつまでたっても現れないので電話してみると、
<あ、こりゃいけね、忘れてた>
申し訳ない、すぐ迎えに行くからそのへんで待っててくんな、とそのおじいさんは言った。受話器口をふさいで周りと話している感じではどうもオーナーではなさそうだったから、たぶん宿で働いているスタッフの一人なのだろう。
732紺野大好き:02/12/30 21:49 ID:b7TdBlwS
<あさ美もさあ、もっと素直に、思ってること口に出せばよかったんだよ>
あの夜、電話の向こうの愛ちゃんは情け容赦なく続けた。
<あさ美って、いやなことでもめったにいやだって言わないし、怒ってる時でも怒ってないとか言って黙っちゃから。やせ我慢っていうか、そういうのって、ほんとの優しさとは違うと思うよ。なんでもわがままきいてやるだけじゃ、誰もついてこなくなるよ>

真夜中だった。とつぜん携帯が鳴り響き、今度こそまこっちゃんだろうと意を決して手に取ったら愛ちゃんだったのだ。
733こんこんの夏休みを書いた人:02/12/30 22:15 ID:xYpEAeF/
>シンデレラに憧れての作者さん
素晴らしかったです。感動しました。
是非作者さんの他の作品が読みたいっす。
ほんとにありがとうございました!
734728:02/12/31 00:49 ID:J93qSmJ0
>>732
ありがとうございます。>>724の続きでしょうか? そして、タイトルを
「紺野大好き」とします、ということでしょうか。それがハッキリしないと
作品案内を更新できないのですが…。違っていたら訂正願います。
作品案内の更新は1日延ばします。
作品の続きをよろしくお願いいたします。
735紺野大好き:02/12/31 06:17 ID:JwIQpaX5
ごめんなさい。
別に紺野大好きはタイトルではありません。
ごめんなさいm(__)m
736紺野大好き:02/12/31 07:09 ID:xa8rXyOH
まだ山の中にいるんだとばかり思ってた、と私が言うと、その山の中からわざわざかけてやってんじゃないの、と愛ちゃんは言った。
夏休みを利用して、愛ちゃんは民宿だかペンションだかのアルバイトをしている。愛ちゃんがそこでバイトを始めたのは去年の冬休みが最初あで、その時点での目当てはスキーだったわけだけど、この春夏とまた同じところに舞い戻ったのはもちろん別の目的でだった。
<リゾート地のバイトって最高だよ>と、開口一番、妙に明るい調子で愛ちゃんは言っていた。