矢口と保田からしてみたら、三本目となる木の下で、二人の少女が出会った。
「あいぼん!」
「梨華ちゃん!!」
お団子頭の小さな少女は、優しく微笑む少女の胸へ飛び込んだ。
加護はもの凄いスピードで走ってきたらしく、石川の胸の中で荒い息をしている。
「あっれぇ、何か急に疲れちゃったぁ…。」
(さっきまで全然疲れてなかったのに…。変やなぁ…。)
さらに石川の胸から離れた後は、寒いと感じていた周りの空気が、
むしろ暖かいような気がした。
「あいぼん、大丈夫?寂しかった?」
石川に泣いている事を指摘されたので、慌てて涙を手で拭く。
そしてヒマワリのような、とびっきりの笑顔で石川に言う。
「ううん、もうじぇんじぇん大丈V!(ここでVサイン)」
石川が高い声のトーンで笑ったその時、石川には劣るが、
同じ高いトーンの声が、少し遠くから響いた。
「石川ー!、加護ー!」
二人ともその聞きなれた声に、大声で返事をする。
「矢口さーん!」
「こらこらー!別にこっち来なくて良い…ワップ!」
同時に二人に抱き着かれ、矢口は倒れそうになる。
さらに後ろから保田も抱きついてきて、何だか大変な事になってしまった。
「あ〜、ぐるじいー!助けてごっちん〜。」
そんな矢口を見ても、後藤はクスクスと笑っているだけだった。
後藤が笑っているのを確認した加護は、矢口に唇を近づける。
「あー、こら加護、キスはやめろキスは!(笑)
あーーー圭ちゃんはもっと駄目だってばぁーーーーーー!(恐怖)」
保田もなぜか調子に乗り、矢口に接吻をせまる。
「そんなに拒絶しなくても良いじゃん矢口ぃ。」
「そりゃあ保田さんのキスは誰でも逃げますよ(笑)」
凄く笑顔でそういった石川が、矢口から離れると
「何〜?」
と言いながら、保田も矢口から離れて、石川を睨みつけた。
石川は凄い。
次の石川の行動で、保田は戦意を失ってしまった。
「コワーイ(ハート)」←ここでポーズ!
「…。(ガクッ!)」
保田のテンションは、一気に下がった。
石川と保田が矢口から離れ、だいぶ自由になった矢口は、加護に話し掛ける。
「ほーら加護ちゃん、いつまでもくっついてない!」
優しく離れるように言った矢口に、加護はまっすぐな瞳で見つめながら、問い掛けた。
「ねえ、ここどこ?」
この加護の問いに、誰も答える事ができなかった。
しばらくの間、全員が黙る。
加護は依然矢口を見つめたままだったので、矢口はゆっくり口を開いた。
「多分ね…。私たちは夢を見てると思うんだ。」
「夢?」
加護はよくわからないといった表情で、矢口を見つめている。
「でも、みんな交通事故に遭ったんだよねぇ。」
といって矢口は笑った。
「私たちも、よくわかんないんだ…。」
まるで何かを諦めたような顔をする矢口に、今度は石川が話しかける。
「あの…もしかしてここにいるのは、夢を見たメンバーじゃないんですか?」
加護は、また同じ単語を繰り返した。
「夢?」
そして案の定、よくわからないといった表情で、石川を見る。
石川が加護に説明をする前に、今度は保田が話し始めた。
「でも、加護は夢を見なかったんじゃなかった?」
加護は保田が話している間に、少し前にみんなが見た悪夢の事を思いだした。
そして保田と石川に問い掛ける。
「わかった!草原のおじいさんの夢?」
答えを返してきたのは矢口だった。
「そうそう、正解!よく覚えてたね。」
加護はそれを聞いて、驚いた表情になる。そして、みんなに黙っていた事を
伝えた。
「その夢、実はうちも見た…。」
一番早い反応をしたのは保田だった。
「なっ…じゃあ間違いなく…。」
「夢を見たメンバーしかここにはいない…。」
保田の言葉に、矢口が付け足す。
そして石川が、残りのメンバーを数えた。
「という事は、高橋、紺野、小川がどっかにいる…。」
後藤は全員の話を聞きながら、自分たちがこれから進むであろう一本道を見つめる。
独特の輝きを持った瞳は動かないまま、全員に話し掛けた。
「残りの木は一本。私達は、オーディションの順番に逢ってるよね?」
「あ…。」
保田がぼそっと呟いた。
「じゃあ、あの木の下に五期メンがいる!?」
矢口が大きめの声量で話す。
「よし、じゃあ三人を探しにいこーう!」
矢口以上の大声で叫んだのは、加護だった。
そして一人スキップしていく。
「早く…早く!」
「おいおい待てよ!」
矢口はしょうがないと言った感じで、加護の方へ歩いていく。
誰も三人を見つけた後、どうするか言わなかった。
連続更新しちゃいました。お話は佳境に入りつつありますね〜。
◎現 在 編
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>>418………最新は >416
◎現在編(平行世界)
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>>389………最新は >87
◎紺色の獅子
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>>456………最新は >454-455
◎こんこんの夏休み <完結>
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>>506………最新は >499-504
◎中学生日記
………作品はこちらから→
>>405………最新は >209,>211-212
◎不器用な恋心
………作品はこちらから→
>>405………最新は >286-289
◎格 闘 技 編
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>>406………最新は >307-312
◎レコーディング編
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>>390………最新は >42
◎昔 話 編
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>>390………最新は >64
◎はじまらない昔話
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>>406………最新は >228-229
「きっとみんな大丈夫。」
飯田は交信を終えて、最初にこう言った。
「なぜですか?」
吉澤が間髪いれずに聞いてくる。
「え?…うーん、理由は無いけど。」
ガードレールにもたれさせておいた安倍も、目を覚ましたらしい。
「大丈夫…なのかな?なんか…そんな気はするけど。」
何かを考えながらといった表情のまま、安部はゆっくり言った。
先ほど急に倒れた安部に、心配そうに新垣が言う。
「安倍さん、大丈夫なんですか?」
「ああ、なっちは全然大丈夫!」
明るく、眩しいくらいの笑顔で、安部は元気に答えた。
運転手やマネージャーたちは、必死に警察に何かを話している。
人が、どんどん集まってくる。
じっとしたまま、動かない少年。
飯田は、不安だった。
この事件は、報道されて良いものなのか。
物語がここから、一気に進んでいきます。
毎回作品をまとめて、さらに感想書いて下さる方には、心から感謝しています。
これから毎日、しかも一日に数回更新すると思うのですが、他の作者さんたちが
書かないのであれば、毎回まとめなくても良いと思うのですが、どうでしょう?
まとめるのが負担であれば、少し休憩してもらって良いですよ。
年内に終わらせる気なので、もう少し、付き合って下さい。
続けて更新してしまいます。
私が一番乗りで、木に着きました。
誰かいるかと思ったのに、誰もいません。
泣いてしまう直前でした。
浮かない顔をした天使が、私の前に現われたんです。
ストパーのかかった、奇麗な髪。
愛らしい、くりっとした瞳。
見間違える訳ありません。
「愛ちゃん!」
「あさみ…ちゃん?」
私は全速力で走っていき、思いっきり飛びつきました。
紺野は抱き着いたまま、高橋に話し掛ける。
「愛ちゃんも、ここにいたんだぁ。」
「うん、でも…ここはどこ?」
高橋は寝起きのような表情をくずすことなく、紺野に問い掛ける。
「え?…それは、私もよくわかんないけど…。」
紺野はそう言うと、高橋からゆっくり離れた。
暗い表情をしている紺野に、高橋はスグに次の質問をする。
「私たちって、今まで何してた?」
「え?…私、たちは…交通事故にあって……。」
紺野がゆっくりそう言うと、高橋は右手で頭を軽く押さえ、
何かを思い出す仕草をする。
そして、頭の中の何かがしっかりとつながった。
高橋が顔を上げた時、彼女の目ははっきりと開いていた。
「思い出した…。私たち移動中に事故にあったんだ!」
「うん…。」
紺野は力なく答える。
そう、それが現実なのだ。
変えられない現実。
「もしかして、ここは天国?」
目をパチパチさせて、周りを見渡す高橋。
「でも、見た事ある気がする…。」
ちょっととボケた話し方をする高橋に、紺野ははっきりと言った。
「きっと、夢で見た場所だと思う。」
「あー!」
高橋はなまった声で、大きく頷いた。
二人がそんな事を話していた時、一番不安定な精神を持った少女が、
ゆっくりと近づいてきた。
「まこっちゃん!」
高橋が大声で呼びかけるが、まるで無反応な小川。
ゆっくりと重い足取りで、木に近づいてくる様子は、明らかに変だ。
そして高橋の呼びかけに全く反応しなかった。
まるで、二人がそこにいる事に気付いてないような素振りだ。
「まこっ…ちゃん?」
紺野も呼びかけてみるが、無駄だった。
小川は、何かに操られている雰囲気をかもし出している。
(まこっちゃんもしかして、気を失ってる…?)
紺野は、自我が崩壊するような感覚を思い出す。
(きっと…そうだ…。)
紺野が小川の肩に手をかけようとした時、高橋が凄い勢いで先に小川の肩を掴んだ。
「…!」
小川の口が開いたが、何も言葉は発していない。
高橋は肩に置いた両手で、小川を揺さぶる。
「どうしたの?ねぇ!返事してよ!!」
そう高橋が言った瞬間、
小川は目を閉じて、高橋にもたれかかってきた。
「うわ…まこっちゃん?」
高橋は慌てて抱き留める。完全に力が抜けているようだ。
さらに、困った顔をして小川を支えている高橋にも、異変が起きた。
「…眠い…。」
(ええ!?)
高橋は小川を抱いたまま、後ろへと無防備に倒れていく。
紺野は急な事で驚き、小川とそれを支える高橋を全力で支えた。
そしてゆっくり、丁寧に二人を草むらに寝かせる。
二人とも寝顔が可愛いなとか考えていた時だった。
紺野も信じられない眠気に襲われた。
輝いているあの人にも、見えない涙がある。
私は、知ってる。
私じゃ駄目なんだ。あさみちゃんや愛ちゃんみたいにはなれない。
先輩たちには絶対おいつけない。
理沙ちゃんみたいに、私は強くない。
愛ちゃんみたいに、たくさんの人気はない。
あさみちゃんみたいに、おもしろくもない。
私も最初はそれなりのスタートを切ったのに、今じゃみんなにおいていかれて…
ぴちょっ!
頬に冷たい水滴が当たり、ゆっくり瞼を開ける。
辺りはまるで、黒い布を被されたように暗い。
どこかに壁があるのかもしれないが、人の目では確認できない。
紺野はゆっくり立ち上がってみるが、何も変わらない。
何も見えない。自分が誰なのかもわからない。
今わかる事は、自分の足元に足場があると言う事。
自分が寝ていただけの。
紺野は小さく震えながら、安定しているのかわからない足場に座り込んだ。
「もう…イヤだよ…。」
紺野の小さな呟きは、何も考えずに座り込んでいた高橋の耳に届いた。
「あさみちゃん!!」
紺野の耳に、先ほどまで一緒にいた少女の声が届く。
高橋の声が聞こえたおかげで、ここに壁がある事がわかった。
音が跳ね返ってくるのが確認できた。
勿論わかった事はそれだけじゃない。
高橋は、すぐそこにいる。
紺野は自分の頬に流れていた、先ほどとは別の水滴を手で拭い、
大声で返事をした。
「愛ちゃん、こっちこっち!」
「こっちって、言われても、見えなくて恐いよ〜!」
「えっと…じゃあ歌って!私も歌うから!」
「え…じゃあお母さんが好きな…」
「私もわかる歌にして!(笑)」
「えーっと…」
Do it! Now あなたが持ってる未来行きの切符
夢は叶うよ絶対叶うから
行こう…
(あ、壁がここに…。)
紺野が歌いながら、色んなほうをむいてみると、すぐそこに
壁がある事を発見した。
おそるおそる手を伸ばしてみる。
(…でっぱり?)
カチッ!パッ!
紺野と高橋が二人いた部屋に、光がともる。
ずっと暗かったから、とても眩しい。
よく見ると、そこにあったのは壁ではなくドアで、すぐ横のところに
電気のスイッチがあった。
「あさみちゃ〜ん!」
高橋は紺野が見えてすぐに、抱きしめにかけよってきた。
「びっくりしたー。今日は知らない場所に飛ばされすぎだよぅ…。」
高橋の体温を感じたまま、紺野は軽く愚痴る。
紺野は一人じゃなくて良かったと、高橋に感謝していた。
637 :
625:02/12/23 02:16 ID:NJKP9kto
>>627 了解です。確かに、物語を遮ってはいけない雰囲気を感じます。
他の方の作品が投稿された時に、作品案内を更新する事にします。
最後まで楽しませていただきます。頑張ってください。
「ねぇあさみちゃん、このむこうに何があると思う。」
高橋は少しドアを開ける。
「今日は、何が起きても不思議じゃないから…。」
(もう、何があっても驚かない気がする。)
ガチャ。
高橋はドアをゆっくり開け、中を覗き込む。
中はコンクリートの部屋とは違い、暖かみのある茶色の壁紙が見えた。
外は晴れているらしい。暖かそうな光が射し込んでいる窓がある。
その下には、ひざをかかえて座りこんでいる一人の少女がいた。
「あれ、まこっちゃん…。」
「…。」
小川は名前を呼ばれても、顔を上げようとしない。
「え、まこっちゃんがいるの?」
まだコンクリートの部屋にいた紺野は、高橋を押して部屋にはいろうとした。
高橋は抵抗せずに、押されるまま部屋の中に入る。
小川に声をかけようと言葉を探すが、何も浮かんでこない。
小川は、どうやら泣いているようだ。
紺野は、小川の前で困った顔をしている高橋を見ながら、ドアを閉めた。
そして、高橋の隣へ並ぶ。
高橋は一度紺野の顔を見て、悲しそうな顔をする。
紺野も同じような表情をすると、高橋は小川のほうへ向き直り、
しゃがみ込んで話しかけた。
「まこっちゃん…どうしたの…?」
「…。」
紺野は、小川はまた話してくれないのかと思った。
しかし、小川は泣いた後と思われる声で、ゆっくり喋り出す。
「ねぇ、私ってどうすれば良いの?」
「え…何が…?」
聞きたい事がよくわからないと言った様子で、高橋は優しく言った。
「どうすれば、みんなに追いつけるの…?」
「え…?追いつく?」
「なんかさ…私、みんなに置いて行かれた気がする…。」
「何で?そんな事ないよ!」
「愛ちゃんはセンターだし、あさみちゃんも今回メインだし、里沙ちゃんだって、
相変わらず元気いっぱいだし…。」
「まこっちゃんだってさ…」
「なんか、私置いてかれたみたい…」
「そんな…。」
高橋が再び反論しようとした時だった。
小川が、顔をふせたまま頭をかかえ、声をあげて泣き出した。
「んっく…うう…あああーーー。」
「まこっちゃん落ち着いて!」
高橋は小川の頭に両手を置いて、強めの口調で言った。
「まこっちゃん…どうしたの…?」
ずっと黙っていた紺野も、小川にそっと話し掛ける。
紺野は、次に小川の発した言葉を予想する事など、とてもできなかった。
鏡を見ても、自分でわからない自分の事なんて、山ほどあるのだ。
小川は泣きながら、自分の中にあったモヤモヤを吐き出した。
「最初はさ、私、自信があったんだ…。
名前呼ばれたのも一番だったし、何よりも、自分の事…信じてた。
でも、先輩たちは、みんな凄くって…。
TVで見るよりも全然輝いてて…。
最初は、みんなで先輩に追いつこうって頑張ったよね。
でも気がついたら、愛ちゃんはもう先輩たちみたいに輝いてた…。
やっぱり愛ちゃんには勝てなくて…。
最初はつんくさんが‘劣等生’って…後から思ったけど、それは酷いよね。
そんな事は良いんだけど、いつの間にか、あさみちゃんも輝いてた。
眩しいくらい。なんか、とっても可愛くなってて…。
里沙ちゃんはとっても強くて、自信に満ちてる…羨ましい。
なんで?いつからみんなそんなに輝いてたの?
私はどうすれば追いつけるの?どうすれば良いの?教えて…。」
その気持ち…私にもなんとなくわかる…。
とても思いつめた人がいて、自分を過小評価してる時、
なんて言葉をかければ良いのでしょうか。
どんな言葉をかけてあげても、きっと信じないんです。
「そうだね。」なんて絶対言えません。
自分が誉められていたら、なおさらです。
私が輝いている?まこっちゃんがそんな風に思っていたなんて…。
小川はそう言い終わると、泣くのもピタッと止めて、何も話さなくなる。
「まこっちゃん…?」
高橋がまた、優しく話し掛けた。
小川の声は、か細く、小さくなっていた。
「私は…誰?なんでここにいるの?私は何をすれば良いの?私は…誰?」
「!(様子が変…!)」
紺野は小川の肩を掴んで、強く揺さ振った。
「まこっちゃん!まこっちゃんはまこっちゃんだよ!大丈夫!?」
高橋はそんな紺野を唖然として見ていた。
小川は、激しく揺さぶられたのに反応して、顔を上げる。
「まこっちゃん…誰?何それ…?」
虚ろな瞳には、高橋や紺野の姿は目に入っていないようだ。
「私は…誰?…」
紺野はまた軽く揺さぶるが、小川の様子は変わらない。
「…まこっちゃん!」
「どうしたの!まこっちゃん!!」
高橋がヒステリックな声をあげる。
三人の心境など知らずに、一人の少年が三人の‘体’に近づいていた。
俺は誰だ?ここはどこだ?
俺は何がしたいんだ?
何がしたい…‘したい’?
俺は…何してるんだ…?
少年は何を考える訳でもなく、ただ歩いてきた。
道があったから、歩いてみた。
時々、歩くのが面倒になって座り込んだり、眠ったりした。
起きたら、やはりやる事がなくて、とりあえず歩いていた。
そして今、三人の眠っている少女達を見つけた。
どこかで見た事がある。
ただ、思い出せなかった。
不自然な格好で寝ている少女を横切り、
並んで寝ている二人の少女たちの横に座った。
きっと可愛いのだろう。顔を見てそんな事を考える。
(だろう…?いや、可愛いよな…。あれ、わかんねぇ…。)
座ってすぐに、三人の少女たちが目を覚ました。
少年の人生と、少女たちの人生は、確かに今交わった。
もうすぐ少年と老人、そしてモー娘。が勢揃いします。
| |/ _t__ \|
| | (( ) ) |
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
∬´◇` ∬
(∩∩)───────────────
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/
どうしてもこのマコが目に浮かぶ(w
>>647 うっ…つっこみありがとうございますw
更新します。
「あ、あそこにあさみちゃんがおる!」
加護はずっと変わらないスピードでスキップしていた。
信じられない体力の加護に、矢口は驚きの声をあげる。
「おーい、加護ちゃん、いい加減疲れない?」
「ぜ〜んぜん!矢口さんは、疲れると思うから疲れるんだよ!」
「え…?」
矢口は加護の意外な答えに、目をいつも以上にパチパチさせた。
そんな矢口に、後藤は声をかけに後ろから走ってきた。
「やぐっつあん、多分、本当だよ。」
「え〜?ごっつあんまで何を言って…。」
「だってここ、夢の世界だもん。」
「ん…まあ、そうなのかもしれないけど…。」
矢口が言葉に詰まると、石川も矢口のところまで走ってきて、会話に割り込んできた。
「でも、確証が無いですもんねぇ。」
一人になっちゃった!と言わんばかりに、後ろから大声で、保田が声をかけてきた。
「ちょっとー、待って〜!」
三人は保田の声を聞き止まろうするが、前から加護が大声をかけてきた。
「みんな〜!誰か、知らない人がいる!」
加護の大声に、紺野はすぐ反応した。
目をむけてみると、間違いない。
(あのシルエットは加護さんだぁ。)
そして、後ろにメンバーの何人かが一緒にいる事を確認すると、
思わず微笑んでしまった。
「愛ちゃん、みんなが来たみたい!」
「え…本当?」
高橋はちょうど木の影にいて見えなかったので、紺野の横まで来て確認した。
「本当だ…みんな〜!!」
少しなまった大声をあげた。
(それにしても…どうしよう…。)
紺野はいくつもの問題を解決しようと、必死に考えをめぐらせていた。
(まずまこっちゃんとこの男の子…廃人になってる…。どうしよう…。
それで、ここはどこ…。どうやったら帰れるの?
あっちから走ってくるのは、加護さん、矢口さん、石川さん、後藤さん、保田さん…。
私たち、これで全員なのかな…?う〜ん。)
紺野がそんな事を考えている間に、ずっと無言で対峙していた少年が、言葉を発した。
「おまえら、誰だ?」
「え…?」
紺野は喋らないもんだと思い込んでいたので、少し驚いて聞き返した。
紺野が少年に答える前に、高橋が先に少年に話しかける。
「人に名前を聞く時は、自分から名乗るべきだよ!」
見た目からして、同い年か年下だと思った高橋は、少し強めにでた。
「名乗る…俺の名前…?」
「そう!」
高橋は少しオーバーに頷く。
紺野はそんな二人の会話を黙って聞いていた。
普通に会話ができれば、聞きたい事がいくつもある。
まず少年がどこから、どうやってここに来たか気になる。
小川と違い、まだ意識があるようなので少し期待していたが、
少年の口から出てきた言葉は、また驚かされるものだった。
「…わからない。」
「…え?」
高橋が少し高い声を出した。
紺野の帰れるかもしれないという期待は、すぐ打ち砕かれてしまった。
少年とそんなやりとりをしていると、加護を先頭にみんなが木の下にやってきた。
「愛ちゃ〜ん!」
加護は甘えた声で高橋に飛びついた。
「ああ、ちょっと今は待ってください、加護さん!」
「え〜!あさみちゃ〜ん、愛ちゃんが冷たい…。」
「あ、加護さん、ちょっと…。」
「加護、少し黙ってなさい!」
高橋に構ってもらえず、紺野に話しかけた事を矢口に叱られると、
加護は少ししゅんとした。
「矢口さん…残りのみんなはどこにいるんですか?」
紺野はまず、ここにいるのが全員なのか聞いてみた。
「あ…多分ね、大丈夫!」
矢口は少し自信がなさそうだったが、大きく頷いた。
(矢口さんが言うなら、多分大丈夫。)
紺野はそう自分に言い聞かせていると、保田が話し掛けてきた。
「ねえ、この男の子は誰?」
「私たちも知らないんです…。三人で夢を見ていたと思ったら、急に目が覚めて、
気付いたらこの人が愛ちゃんの隣に座っていたんです。」
三人という言葉で、加護は小川の異変に気付いた。
「あ、あれ?まこっちゃん、どうしたの…?」
「それもわからないんです。まこっちゃんとは会った時からそんな感じで、
夢の中でも…泣いてました。」
紺野は少し暗い表情で答えた。
「夢を見たって事は、私たちはやっぱり生きてるんじゃないかな?」
後ろで話しを聞いていた石川は、同じく黙っていた後藤に話しかける。
その時だった。いつか聞いたあの声が、再びここにいる全員の耳に届く。
「正確には、死んじゃいないが、生きているというわけじゃないのう…。」
俺のID、よく見たらもう少しで‘あや’w
すいません、ただの独り言です。
655 :
名無しの:02/12/24 01:47 ID:Icjw0++U
更新キターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!(^o^)/
>>655 毎回喜んでくださって、ありがとうございます。
更新します。
矢口の頭の中で、繰り返す悪夢。
「おい、じいさん、どこにいるんだよ!出てこい!」
ありったけの空気を肺から出した矢口に、その場の全員が固まってしまった。
「おお、相変わらずうるさい女じゃのう…。」
老人の声がまたどこからか聞こえると、ありえない事がまた起きた。
少年と小川から見ると正面に、そして紺野たちの真後ろに風が集まっていく。
ビュオオオイウウウーーー
その風のせいで木からたくさんの葉っぱが抜け、そして一点に集まると、
渦をまいてから飛び散った。
そして、その中には黒い服を着た老人が、笑顔で立っていた。
「言うならば、ここはあの世とこの世の狭間じゃ。」
「…何それ?」
保田がすばやく反応すると、老人は保田を見てニッコリ微笑み、また話し始めた。
「やはり、事故を防ぐのは無理じゃったか…。」
「交通事故だって言ってくれれば、防げたかもしれないわよ…。」
「まあ、若い女がそう恐い顔をするでない。特に金髪のちっこいの。」
矢口は‘ちっこいの’と言う言葉に切れる寸前だったが、
伊達に芸能界で生きていない。
見事に怒りを断ち切り、静かな表情で言った。
「それで、私たちは帰れるんですか?
他のみんなは無事なんですか?
…ていうか、あなたは誰なんですか?」
「……ふーっ…。」
矢口の問いに、老人は大きくため息をついた。
「おぬしら意外は、大丈夫じゃったよ。
ワシが誰か…話さねばならんかのぅ?」
老人は少し力の無い声で言った。
矢口は雰囲気の凄まじい変わりようから、間違いなく同一人物だと再確認した。
「いえ、帰してくださるのなら、無理にとは言いません。」
矢口の声には、相変わらず芯の強さが感じられた。
「帰りたいか…じゃがのう…。」
そう言うと、紺野と高橋を見つめて、そしてむこうに座っている小川を見る。
「今おぬしらが帰ると、あの子は確実に助からんぞ。」
それを聞いて、少年を除いた全員が、小川を見た。
「どうすれば…どうすれば助かるんですか!?」
「教えてください、お願いします!」
「おじいちゃん、どうしたら良いか知ってるの?」
高橋、紺野、加護が一斉に話し掛ける。
三人の勢いに、老人は驚いて後ずさりした。
「おお、三人とも元気じゃな。こうやってみると、可愛らしいもんじゃ。」
優しい口調でこういう老人に、残りのメンバーも話しかける。
「お願いです、助けてあげてください!」
「悪い人じゃないって知ってます!」
「お願いします。」
「小川を、助けてあげてください。」
保田、石川、矢口、そして後藤も頭をさげる。
「まあ…ちょっと落ち着いて聞いてくれるかのぅ?」
ピンと張り詰める空気。
老人が態度がまた改まったのに気付いた少女達は、静かに頷く。
少年は、少女達の後ろから、ずっとやりとりを見ていた。
「実はこの世に帰るのは、簡単な事なんじゃ。心の底から、帰りたいと願えば良い。
なんだかんだ言って、みんなそんな事考えなかったじゃろう?
雑念が邪魔していただけなのじゃよ。」
「…それで、どうしたらまこっちゃんは助けられるんですか?」
高橋の言い方は、小川を助けたいという気持ちでいっぱいで、
そんな事は後回しといった感じだった。
「実はな、この世界に来ると、自分が不安定になった人間は消滅する。
そう、それが死じゃよ。おぬしらは交通事故のショックで全員ここへ来たんじゃ。
ここで自我が崩壊すれば、間違いなく体も死ぬ…。」
「あっ…。」
石川が思い出したように声を出す。矢口はそれに少しつっこんでみた。
「どうしたの?」
「あの……私も危なかった…。」
石川は背筋がぞっとする感覚を、久しぶりに思い出した。
その感覚を思い出していたのは、実は石川だけじゃなかったが、
誰もその話の続きは話そうとしなかった。
「…それで、まこっちゃんは今大丈夫なんですか!?」
紺野が強い口調で話を進めた。
「そうだよ、まこっちゃんはもしかして今…。」
加護が泣きそうな声でそう言うと、老人は話を続けた。
「まだ大丈夫じゃよ…。ただ、もう一つ悪い知らせがあるのじゃが。」
悪い知らせと言う言葉に、全員が不安そうな顔を浮かべる。
「…悪い知らせって?」
保田が勇気を出して聞いてみると、老人は眉間にしわをよせ、小川を見つめて言う。
「元に戻るには、その子次第じゃ。もしかして失敗すれば、彼女は死ぬかもしれない。」
「それで…?」
矢口はさらに話を進めようとする。老人はすぐに続きを言い始めた。
「そう、ようはそこの少年の心に入り込む。
すると、もしかしたら、元に戻るかもしれない。」
「あの人に…?なぜ?」
高橋は小さな声で老人に尋ねた。
すると老人は深いため息をつき、小川を哀れみの目で見つめながら言った。
「おぬしらは、一度彼女の心の部屋に入ったんじゃろう?」
「…え?」
今度は、紺野が静かに返事をする。
「はい…。」
「それはな、彼女の心の部屋なんじゃ。
それで、おぬしらは彼女の心は取り戻せなかったんじゃろう?
「…はい。」
「それなら、きっともう一度やっても同じ事。
先輩の誰かが入れば、小川は立ち上がるかのぅ?」
紺野と高橋は顔を見あわせて、二人で暗い顔をする。
「…私たちじゃ駄目なの?」
矢口は悲しい表情で、高橋と紺野に聞いた。
「はい…多分駄目だと思います。」
紺野の答えを聞いて、場に暗い空気が流れる。
「それでじゃ、流石にワシにも彼女を立ち上がらせる事できないわい。
可能性が一番高いのは…きっとあの少年なんじゃよ。」
「なぜですか?」
矢口が間髪入れずに聞き返してきたが、老人はふっと笑い、
答えをはぐらかした。
「あのガキも、色々あるんじゃろう。」
「それで、どうやって心の部屋?とかいうのに入るんですか?」
保田が次の会話へと進ませる。
老人はまたふと笑い、一歩さがって言った。
「よし…じゃあ準備は良いか?」
「…準備ですか?」
紺野がすぐ聞き返す。
「何か、心構えがいるんですか?」
矢口が続けて尋ねた。
「最初の部屋にはな、トラップがあるもんじゃよ。
誰だって自分の奥の部分には、隠したいものがあるじゃろ?」
その一言を聞いて、紺野は小川の暗闇の部屋を思い出した。
「あの…まこっちゃんの心でさえ、それなりのトラップがありました。
最初は、気を抜かない方が良いと思います。」
紺野がそう言うと、高橋も頷いた。
二人の話が終わると、老人が再び話し出す。
「彼の心の部屋に入るのは簡単じゃよ。
彼の前で、私たち、モーニング娘。です。と名乗ってみるんじゃ。」
「よし、行こう!」
ずっと黙っていた加護が、元気よく言った。
「大丈夫かなぁ…。」
石川が、少し不安そうな声をあげる。
「大丈夫、きっと大丈夫。」
後藤が聞き覚えのあるリズムで言う。
そして、矢口が少年の前に立った。
少年は、先ほどからまばたきの一つでもしたのだろうか。
焦点のあってないその鋭い目は、何を見ているのだろうか。
紺野は、矢口が次のセリフを言うまでに、そんな事を考えていた。
「私たち、モーニング娘。って言います。知ってますか?」
夏の終わりに見る夢…。
667 :
名無し募集中。。。:02/12/26 02:38 ID:DI+aav2a
更新お疲れ様です。
668 :
平井堅 他:02/12/26 11:50 ID:VPOgs45h
ざろ〜んえんわいんでぃんろう〜
>>667 ありがとうございます。
>>668 この小説にあってるという事なんでしょうかw
残り2回、3回で物語りは幕を閉じます。
矢口がそう言った瞬間、少年の目に一瞬だが、生気がともった。
すると、前にいた矢口、加護、石川、と次々にみんな倒れていく。
隣の高橋は凛とした表情をしていたが、ゆっくり目を閉じて眠っていった。
そして、紺野にも眠気が襲ってきた。
少年はゆっくりと、木にもたれて座った。
紺野は気がつくと、西洋のお城のような場所にいた。
「ここは…?」
小さく、そしてトラップらしきものがない部屋に、紺野は驚いた。
(なんで何もないの…。それどころか…。)
そう、ここはまるで、客人を泊めるような部屋だ。
部屋自体はせまくて装飾も少ないが、高級感がある部屋だった。
(まだ…安心はできない…。)
紺野は気を抜く事なく、ドアノブに手をかけて、一気に開けた。
するとそこに見えたのは、今一緒に夢を見ている仲間たちだった。
「あさみちゃん遅い!」
可愛らしくなまった声で、高橋が笑って言う。
「紺野、小川より遅かったよ!」
同じく可愛らしい声で、石川は紺野に小川がいる事を伝えた。
小川の目は相変わらず死んでいたが、しっかりと、その場に立っていた。
八つの客室から出てきた少女たちは、一本道を歩いていく。
左右の石の壁にはろうそく以外何もなく、足元には絨毯がひいてある。
誰も何も話さない。
うつむきながら歩く紺野は、実は不安だった。
何かで読んだ事があるのだが、複雑な構造をしてないと言う事は、
確実に王を守れる何かがあるのだ。
(嫌な予感がする…。)
しかし人間の悪い予想は、時には外れてくれる事がある。
少女たちは、ついに広い部屋に出た。
一人の少年が、どっしりと、大きなイスに座っている。
顔を下にむけて動かないその姿は、寝ているようにしか見えなかった。
「モーニング娘。か…。」
「そうです。」
矢口が強い口調で答えたが、少年は何も反応しない。
矢口の事を無視するかのように、少年は続ける。
「良いな…。楽しそうだよ…なんか…。」
少年はゆっくりとした口調で続けた。
少女たちはどうすれば良いのかわからず、誰一人、何も言おうとしない。
しばし続く沈黙…。
この沈黙を破ったのは、やはり少年だった。
「紺野…だよね…?」
「あ…はい。」
紺野はいきなり名前を呼ばれ、少し驚いた。
「なんか…やっぱあんたは凄いよ…。」
「……え?」
紺野は今日、自分がこんなに誉められるなんて、思ってもいなかった。
いつだって自分はまだまだで、目標なんてとっても遠い。
全然駄目な子なのに、小川とこの少年が、なぜ誉めてくるのかわからない。
紺野はそんな考えを巡らせていた。
「良いな…やりたい事があって…しかも、それが楽しくて…。」
少年のこの一言に、今までまともに話さなかった少女が、ついに口を開いた。
「私たちだって…つらくないわけないよ…。」
小川の目は、焦点があってないように見える。
しかし、体は少年のほうを、確実に向いていた。
「私なんて…頑張って…頑張って…それでも駄目で…。」
小川のその言葉に、娘。たちはみんな、暗い表情をする。
そして、みんな次々と心の中で言う。
(そうだよね…頑張ってるけど…駄目なのかもしれない。)
しかし少年は、そんな娘。たちを、笑った。
「ははっ…頑張れれば、良いじゃないか。
頑張れる事があって、良いじゃないか。
じゃあ、誰か俺に教えてくれ…俺は、何をすれば良いんだ?何がしたいんだ…。」
少年の問いに答えられる人間は、誰もいない。
たとえ彼の事をよく知っている人間だとしても、それは不可能である。
全員が黙ると、少年はまた話題を変えた。
「なぁ、この世界でさ…何が本物で、何が嘘か、わからなくなった事はないか?」
「なにがヤラセでさ、なにがマジか…わかんねぇ。
…最近はさ、よくブラウン管見てたんだ。
あと俺…マンガとかそういうの好きで…。
自分のいる世界は、嘘なんじゃないかって…。
ヤラセかなんかじゃないのか?って…。
今、俺は夢を見てるんじゃないかって…。
これは、俺の本当の人生じゃないような気がして…。
そんな中でさ、高校選べだってよ…勉強しろだってよ…。
そんなの…やりたくねぇよ…。
うざいんだよ!全部、全部、全部が!!」
少年の奥底に潜んでいた暗闇は、次々と言葉を吐き出す。
少年が叫んだ後、またしばらくの沈黙が続く。
Do it! Now あなたが持ってる未来行きの切符
夢は叶うよ絶対叶うから
行こう…
Do it! Now あなたが持ってる未来行きの切符
夢は叶うよ絶対叶うから
行こう…
身近な人だから、小川には言えなかった。
えらそうだ!とか思われたくなかったのかもしれない。
でも…今度は、言ってあげられる。
きっと…きっとあなたも輝けると。
信じれば…頑張ればきっと…大丈夫だと。
…自分もそうだったのだ。
赤点とか、歌もダンスもヘタとか言われて…。
それでも、頑張ったら、輝いてるって言ってくれる人がいた。
関係ないよ、実力なんて。
どんな人だって、頑張って、それで努力して、
楽しそうに笑っていれば…輝いてるよ!きっと!
紺野は優しく微笑んで、ゆっくり言った。
「もっと、自分を愛してみませんか?」
少年はそう言った紺野を顔を上げて見た。
そしてまたゆっくりうつむくと、少年の姿が消えた。
いや、まわりの風景が変わっているようだ。
更新終了ですが…失敗した!w
>>677はひとつの予定でした。編集してくださってる方は、代わりに↓を使ってください。
Do it! Now あなたが持ってる未来行きの切符
夢は叶うよ絶対叶うから
行こう…
次々と、目の前の風景が変わっていく…。
でもみんな、心よく応援してくれている人たちばっかり…。
あ、ハロモニ見て笑ってる…けど服くらい着てください!!
ラジオ聞いて勉強してる…あー私のコーナーで笑ってくれてる。
…良くみると、私ってこんなふうに写ってるんだ…。
輝いてるのかなぁ…。
娘。たちは全員、気がつくと草原に戻っていた。
紺野が起きると、もう既にほとんどの人が起きていた。
また最後かと思ってあたりを見回すと、小川がまだ、変わらない格好で座っている。
みんなそれぞれ草の上に座り、小川を見ている。
紺野は失敗したのかと思った。
高橋は紺野がおきたのに気付くと、隣に近寄って座った。
「まこっちゃん、起きるかな…。」
高橋は小さな声で、紺野に話し掛けた。
「うん。きっと…。」
口では、失敗したかな?なんて言えない。
(そういえば、あの人はどうしたんだろう)
紺野は先ほどまで、自分が心に入っていた少年を見つめる。
その時だった…。
「んっ…。」
今まで自分の心の隅で座り込んでいた少女が、目を覚ました。
「ま…」
「まこっちゃ〜ん!」
「まこっちゃん!」
「小川…。」
「良かったー。」
「大丈夫?」
「心配したよー。」
七人が一斉に声をかける。
「あ…う…ごめん、ごめんね。なんか…私変な泣き言っちゃって。」
「良いよ別にぃー。」
「本当に良かった…。」
紺野と高橋は、いつのまにか涙が溢れていた。
他のメンバーたちも、次々と涙目になっていく。
小川も涙を流しながら、照れ笑いをして話す。
「なんか…あの人の心の部屋から急に変わったよね…。
そしたらさ…うっく…なんか、みんな私を応援してくれてて…。
良い人たちが私を楽しみにしてくれてて…。それで…。」
「もう良いよぅ…。」
高橋がそう言って、小川の体を抱きしめる。
「本当に良かった…まこっちゃん…。」
紺野も続けて抱き着いた。
「これで、みんな帰れるんじゃな。」
ずっと娘。たちと少年を見ていた老人が、穏やかな表情をして言った。
「ありがとうございました!」
高橋は照れもせず、大声で言い放った。
「フォフォフォ。まあ、みんなに悪夢を見せたのはワシじゃから、
おあいこじゃろう(笑)」
老人の今の一言に、矢口は食いついてみた。
「なんで、私たちにあんな夢を見せたんですか?」
「ん?なぜかって…まあ、そこの少年の頭の中が、おぬしらでいっぱいだったから、
気になったんじゃよ。何が良いのかと。」
「へえ…。」
矢口は、正確な答えじゃないように感じたが、それは言わなかった。
「あと…そうじゃ。」
老人は今思い出したような素振りで、また話始めた。
「帰る途中、きっとまた悪夢に襲われるが、負けないようにするんじゃよ。」
「え…またですか?」
石川が、少し裏返りそうな声で言った。
「そうじゃ。自分を誰か、決して忘れないようにするんじゃ。
特に、みんなに迷惑をかけた君!」
「あ…もう、大丈夫です!」
小川は天使のような、とびっきりの笑顔でそう言った。
「じゃあ、みんな帰ろうか。」
矢口が静かに言う。
「よし、カオリのとこまで戻ろう!」
保田は元気に言った。
「おじいちゃん、ありがとうね!楽しかった!」
後藤はなぜか、楽しかったと言っている。
「私は石川梨華、大丈夫!」
石川は、最後まで心配なようだ。
「よし、じゃあ加護が一番乗りでいきま〜す!」
加護は元気良くそう言って目を閉じると、なんと
奇麗に発光して、消えていった。
「凄い…。」
思わず、紺野は目を疑った。
これは現実の出来事だという事を、ほっぺたをつねり再確認した。
メンバーが次々と発光して消えていく。
「じゃあ、私たちも帰ろう!」
高橋がそう言った時だった。小川は紺野と高橋の服を掴み、二人を引き寄せた。
「なあに、まこっちゃん?」
紺野は目を丸くして、小川に問い掛けた。
「私、あの人が目を覚ますまで、帰れない…。」
小川の真剣な表情に、高橋と紺野も決心した。
もう、邪魔やって!
ののも心配しとるし、早く帰らして!
私を誰やと思ってるん?
加護亜衣や加護亜衣!
ソロになるのが、不安じゃないわけない。
恐いよ。一人になって、売れなくなったら嫌だよ…。
でもさ、自分を信じてるから。
駄目だったら、それはそれで良いよ。
覚悟は、できてる…。
そうだよね。
たんぽぽとか、がんばらないとね。
うん、そのとおりだよ。
私って本当に歌下手だな〜。
でも、これから、これから!
私も卒業が決まっちゃったなぁ…。
これから大丈夫かって、そんなのわからない。
これからモーニング娘。で何をしよう?
やっぱ花火みたいに、派手に散りたい…。
時間は残り少ないんだから、はやく帰してよ!もう!
これからも、自分信じて進んでいく!
それで全部OKだよね。
なんだか、良い経験した気がするなぁ。
矢口もミニモニ卒業かぁ…。
大丈夫かな〜、あいつらでやっていけるかなー。
よし、いっちょキッズと頑張るか!
もう、夢は早く覚めて!
いつかは、終わる夢。
小説も残すところ、更新一回分となりました。多くの方が見てくださっているのでしょうか?
ストーリーがこのように進む事を予想できた方はいますか?…いそうだなぁw
最後まで楽しんでくださると、ありがたいです。
老人は、帰ろうとしない紺野、高橋、小川に問い掛けた。
「少年が目覚めるまで、帰らぬ気か?」
「はい。」
小川は間髪いれず、力強く頷く。
紺野はそんな状況を見ながら、少年を目覚めさせる方法を考えていた。
(まこっちゃんの時もわからなかったけど、どうやったらああいう人は目覚めるの?
私も精一杯の言葉をかけてみたけど…。)
「でもまこっちゃん、もしあの人起きなかったら…」
「そんな事はないぞい。」
老人は、最悪のケースを言おうとした紺野に、笑って言った。
「シンデレラがきちんと、ワシにきっかけを作ってくれたからのう。」
そう言うと老人は、紺野にウインクをする。
小川と高橋は、紺野の顔を見て、口をそろえて言う。
「そうそう、かっこよかったよ!あさみちゃん。」
「ホント!やるときはやるねー。」
紺野は顔を赤らめ、照れて下をむいた。
「え…だってまこっちゃんもあの人も…。」
言いたい事がまとまらずに、下をむいた。
「さて、そこでお嬢さん方、お願いがある。」
老人は悪夢を見せた時のような、険しい表情を見せる。
「これから何が起きても、何も聞かず、黙っていてもらえるかの?」
紺野は老人の目に、今までとは違う怒りの感情を見た気がした。
三人は老人の迫力に圧倒され、黙って頷く。
「良い子じゃ。……おい、とっとと起きんかこのくそボーズ。」
三人は老人の低く攻撃的な声に、恐怖すら感じた。
しかし少年には全く動じる様子は無い。
自分を失いかけているせいもあるとは思うが、あの少年は凄いと紺野は感じていた。
動じるどころか、攻撃的な視線で老人を見つめている。
ここからでは老人の表情は見えないのだが、やはり老人も睨んでいるはず。
あんなに強い人が、なぜ自分を失いかけているのか紺野には不思議だった。
色々な事を考えていると、今度は少年が口を開いた。
そして老人と少年の口論が始まる。
「なぁ……どうしたら自分なんて愛せるんだ?」
「そのぐらい、自分で考えたらどうなんじゃ?甘えるのもいい加減にしたほうが良いぞい。
それにしても、やはり好きな女の子には心のトラップは無しかのぅ(笑)」
老人は三人の方をむいて笑ったが、少年は老人の行動を無視した。
表情を変えず、強い口調で続ける。
「自分に好きなところなんてひとつもない。
どうやったって好きになんてなれない。
自慢できる事っつったらそれぐらいだし…。」
「ふ…それは自分が何も努力をしてこなかったからじゃろう?」
少年の目は相変わらず輝きを持たないが、紺野には怒りの炎がともったように見えた。
激しい怒りの感情をあらわにしたまま、老人をさらに睨み付ける。
「小さい頃、自分で何を頑張っておいたら良いなんて、わかんないじゃないか。」
「と言うか、別に何かに優秀じゃなくても、自分を愛せると思うがのぅ。」
少年は老人のその言葉に何かを感じたのか、一度うつむいて、また顔を上げる。
「無能なまま人波に飲まれて、何もできずに死ねって事か…?」
「ふむ、まあそういう人生もありじゃのう。」
紺野は老人のそのセリフに驚いた。
落ち込んでいる人間に、そんな言葉をかけて良いのかと。
しかし黙っている約束をしたし、明らかに自分が話せるような状況じゃない。
「なんだよ…くそう!それじゃあ死んだほうがマシなんだよ!」
老人はここぞとばかりに少年に近づき、声を張り上げた。
「…そう、その考え方が…お前がここに来た理由なんだよ。
まあもともと死相が出てたけどな!
俺はそんなおまえをここへ一度呼び出してやった。
危険がせまってるって忠告してやったろ?
お前は心を取り戻したらすぐ帰れるんだよ!
帰りたいと思えばすぐ帰れるんだぞ!
お前の体は、まだギリギリ生きてんだよ!くそったれ!」
紺野は自分の目を疑った。
なんと、今さっきまで老人だった人が、急に若返ったのだ。
年齢は…そう少年と同じくらい。
自分と変わらないくらいだ。
さすがに少年も驚いたらしく、目を少し大きく開いている。
老人は姿だけでなく、声も少し若返っている。
「なぁ…お前みたいなやつに限って、
本気で自分を好きになるように努力なんてした事ないだろ?ああ?
言ってる事は間違ってねーし、それだけタチ悪いんだよ。」
少年は老人の変わりように驚いているのか、黙ってまま口を開こうとしない。
少年が反論する気配が無いのを確認すると、老人だった少年は再び話しかける。
「あんまり驚いてんじゃねーよ。
ここではな、強く思った事が現実になるんだ。
まあ、俺の本来の姿はこっちなんだけどな。」
(もう、何がなんだかわからない…ここに来た時からそうだけど…。
そういえばおじいさんは、矢口さんが誰って聞いた時、名乗らなかった。
神様か何かだと思ってたけど、違うのかな…。)
おじいさんだった少年は、もう神々しいオーラはまとっていなかった。
その代わり、とても悲しそうな目をしていた。
「なぁ…人が死ぬときっていつだと思う?」
おじいさんは…いえ、おじいさんだと思っていた人はそう言うと、
自分を失いかけている人だけでなく、ずっと黙って立っていた私たちも見たんです。
誰も喋ろうとしません。
私は色々考えているうちに、ある事をひらめいてしまいました。
「あ!…。」
私は思わず、声を出してしまいました。
まこっちゃんも、愛ちゃんも私の顔を見ています。
それだけでなく、自分を失いかけたあの人まで見てる…。
「シンデレラ様、何かご意見が?」
おじいさんだった人は、優しい目をしてそう言いました。
「いえ…なんでもないです。」
「そんな謙遜なさらずに、どうぞ思った事を言って下さい。」
「あの、本当になんでもないんです。」
私は必死に嘘をつきましたが、
おじいさんだった人はそれを見透かしているみたいでした。
私が喋るつもりがない事もきっと見透かしていたんでしょう。
「それで、おまえはどう思う?」
おじいさんだった人は、自分を失いかけたあの人に向き直りました。
「…そりゃあ、人が死ぬときって…死ぬときだろ…。」
自分を失いかけた人も、きちんとした答えはだせないみたいでした。
そんな自分を失いかけた人に、そして私達に、おじいさんだった人は言いました。
「それじゃあ、植物人間って生きてると思うか?」
…やっぱり。そういう事だったんだ。
一番この世界で苦しんでいたのは、この人だったんだ。
悲しみが姿を現す。
…植物人間?
あんたがそうだって事か?…そんな事言われても…なんだって言うんだよ…。
「帰りたいと思えば、いつでも自分の体に帰れる。
でもな、帰っても何もできない。
なぁ、頑張ってどうにもできないみたいなんだ。
…俺はどうしたら良い?」
かけられる言葉なんて無い。
「もう、何年も経ったんだ。
俺も何歳になったのか…60歳くらいかな。」
「おまえくらいの時だったよ。
事故に逢ってな。
両親は、そこで死んだ…。
俺にはさ、親戚とかいなくて…何年も病院に一人でいるんだ。」
「何回か死のうと思った…。
けど…俺は忘れられない!俺の名前を!忘れられるわけない…。」
「…実はさ、俺もおまえみたいに、‘死んでも良い’とか思ってた時に事故にあった。
でもさ、少し時間がたってから沸いてくるのは後悔、後悔、後悔なんだよ!
わかるか!?そんなの一時的な感情なんだよ!」
「…生きろ。」
気がついたら、私は涙を流していました。
まこっちゃんも、愛ちゃんも…。
私たちは、自分が軽やかに階段を登っているときは、気付かないんです。
自分がとても輝いている事を。
そして自分がつまずいて転んだとき思うんです。
ひたすら階段を登っている人が、輝いていると。
「まず生きてみろ。苦しめ。苦しんで苦しんで苦しめ。
それで、本当に死ぬときに死ね。お前はまだ死んじゃいない。
…おまえは誰だ?」
俺は…そうだ……………………俺の名前は…………
夢は、いつか覚める。
少年のまわりに、空気が流れていく。
少年は目を閉じたまま、空を見上げたかと思うと、深呼吸をした。
息をはくのと同時に、ゆっくりと輝いた目を開いた。
シンデレラを見た目は力強く、希望に満ちているように見えた。
「で、じいさんはこれからどうするんだ?」
少年の問いに、老人だった少年は強い口調で言う。
「俺の勝手だ。とっとと帰れ。」
ぶっきらぼうな答えに、少年は穏やかに笑った。
そしてシンデレラたちを見て、また笑って言う。
「ああ、モーニング娘。の皆様はどうするんですか?」
急に声をかけられたので、三人は顔を見合わせる。
先ほどまであんなふうだった少年に、なんて言葉をかければ良いかなどわからなかった。
「それじゃあ、お先…。」
少年はそう言うと、静かに光って、消えていった…。
少年は、目を覚ました。
体中が痛い。
とても長い夢を見ていた気がする。
横を向いてみる。
やはり、ここは病院らしい。
母親が置いていったのだろうか、ラジオがおいてある。
僕の奥の方 熱は量を増して 途切れず加速して 光を目指して
輝いているあの人にも見えない涙がある
走りつづける僕の胸に熱い命がある
駄目な自分を愛せはしない 強く生まれ変われ
やると決めたら背伸びはしない 体ひとつでぶちあたれ
少年と同じ病院で、何年も入院していた脳死の患者が、今日この日に亡くなった。
まだまだ階段は終わらない。
彼女は、自分がシンデレラだと気付いてないのだろう。
ガラスの靴をはいても、きっと満足しない。
大人の階段上るシンデレラ。
これからつまずき、時には転落してしまうかもしれない。
それでも、あなたはシンデレラだと思う。
その後少年がどうなったのか、誰も知らない。
〜あとがき〜
これでこの話は終わりです。楽しんでいただけましたか?
この板に駄文が書きたい子よりも早くいて、それでこの話が始まって見なくなった人には、
とてもとても申し訳ないと思っています。
そして、毎回まとめてくださった方、保全をしてくださった方、読んでくださった人たちへ。
本当にありがとうございました。
実はですね、この話はだいぶ圧縮しました。
大まかな流れは何も変えてないのですが、最初の予定よりだいぶ短くしましたね。
まとめてくださる方に、これは長編になりますね。みたいな事を言われたときに気付きました。
おいおい、俺にはそんな時間が無いぞと。
それに自分の文章能力の無さに気付きましたし。
まあ、そんな理由で話をコンパクトにしました。
後から読んでみると、きっとミスや誤字脱字が多いでしょう。
だから見ませんw
つっこみとかあったら、書いてやって下さい。
◎現 在 編
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>>418………最新は >416
◎現在編(平行世界)
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>>389………最新は >87
◎紺色の獅子
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>>456………最新は >454-455
◎こんこんの夏休み <完結>
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>>506………最新は >499-504
◎中学生日記
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>>405………最新は >209,>211-212
◎不器用な恋心
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>>405………最新は >286-289
◎格 闘 技 編
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>>406………最新は >307-312
◎レコーディング編
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>>390………最新は >42
◎昔 話 編
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>>390………最新は >64
◎はじまらない昔話
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>>406………最新は >228-229
723 :
紺野LOVE:02/12/29 17:16 ID:Ku7DGtGP
なにが起こったんだろう……
……ここは何処なんだろう?
目の前にいる子は誰?
(……あなたよ)
え……?
(……あなたは、私……)
……な、なにを言ってるの?
(現実から目を背けないで)
(私は、あなた自身……)
私……自身……?
(そう。私もあなたも、紺野あさ美なの)
そんなの変! 私は私!
あなたは、誰!?
(だから……私は、あなた自身。
あなたのココロのな……)
もう、
「ヤメテー!!」
ジリリリリ……
紺野が叫んだと同時に、枕元の目覚ましが鳴った。
724 :
紺野らぶ:02/12/29 17:30 ID:YomJOhVx
(ココは何処?)
ココは、あなたのココロの中……
(あなたは……誰?)
私は、あなたよ
(……私?)
そう……あなた自身
(そ、そんなの、変!)
……ヘ…ン?
(だって、私は私。あなたな訳無いもん!)
でも、あなたは、私を見たことがある……
(無い!あるわけな……)
紺野の目の前の女性が、甲高い声で笑いだした。
身動き一つ取れない。
ゆっくりと、目の前の女性が顔をあげる。
あと、数センチ顔をあげると、目が合うて言うところで、紺野は、目が覚めた。
725 :
名無しの:02/12/30 02:47 ID:qpWQFd5q
新小説キターーーーーーーーーーーーーー!(^o^)/
◎現 在 編
………作品はこちらから→
>>418………最新は >416
◎現在編(平行世界)
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>>389………最新は >87
◎紺色の獅子
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◎こんこんの夏休み <完結>
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◎中学生日記
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◎不器用な恋心
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>>405………最新は >286-289
◎格 闘 技 編
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>>406………最新は >307-312
◎レコーディング編
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>>390………最新は >42
◎昔 話 編
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◎はじまらない昔話
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>>406………最新は >228-229
729 :
728:02/12/30 03:19 ID:MFCUkpfw
>>719 「シンデレラに憧れて」
作者さんが言われますように、物語の後半になって、圧縮された作品
というイメージを時々持ちました。もっと細かく描写して数倍の長さに
なっているのが、この作品の本来の姿ではないかという気がします。
モー娘。に深く感情移入するからこそ生まれてくる楽しい会話場面が
たくさんありました。
会話が面白いと物語も面白くなりますよね。
視点が次々と違うメンバーに移るのは、これだけ長い作品ですから、
読む側として集中力を維持するのが大変であると感じました。
ですから、この作品をモー娘。が実際にドラマとして演じて、それを私たちが
見ると、数倍楽しめるように出来ている小説であると思います。
このスレを支える大長編を書いてくださり心から感謝します。
意外なストーリー展開で4ヶ月以上も楽しませていただきました。
本当にありがとうございました。
当スレの残りを考えますと、ここからの長編連載は難しいので、なにか
短い作品が閃きました時は是非よろしくお願い致します。
730 :
紺野大好き:02/12/30 21:30 ID:HepSEqxj
いま私がいるのは、駅前のバーガーショップだ。ロータリーを行きかう人の姿が、この窓際の席からはよく見える。
空は、抜けきって高い。あまりの蒼さに胸が痛くなる。頬杖をつき、花壇に植えられたコスモスが満開なのを眺め回した。
花の群れが風に揺れて波打つのを見つめているうちに、ひとりで催眠術にかかってしまいそうだ。店内に流れるヒット曲のインストゥルメンタルと、エンドレスで鳴り響く横断歩道のか<通りゃんせ>が混じりあうのを聴いているとなおさら。
731 :
紺野大好き:02/12/30 21:39 ID:b7TdBlwS
花の海から目をそらし、あまりにぎやかとは言えない商店街を見やる。狭い道路のはるかつきあたりには、壁のような山々がそびえている。
遠く離れたこの駅で、迎えを待つこと三十分、到着時間にあわせて来てくれるはずだった迎えの人がいつまでたっても現れないので電話してみると、
<あ、こりゃいけね、忘れてた>
申し訳ない、すぐ迎えに行くからそのへんで待っててくんな、とそのおじいさんは言った。受話器口をふさいで周りと話している感じではどうもオーナーではなさそうだったから、たぶん宿で働いているスタッフの一人なのだろう。
732 :
紺野大好き:02/12/30 21:49 ID:b7TdBlwS
<あさ美もさあ、もっと素直に、思ってること口に出せばよかったんだよ>
あの夜、電話の向こうの愛ちゃんは情け容赦なく続けた。
<あさ美って、いやなことでもめったにいやだって言わないし、怒ってる時でも怒ってないとか言って黙っちゃから。やせ我慢っていうか、そういうのって、ほんとの優しさとは違うと思うよ。なんでもわがままきいてやるだけじゃ、誰もついてこなくなるよ>
真夜中だった。とつぜん携帯が鳴り響き、今度こそまこっちゃんだろうと意を決して手に取ったら愛ちゃんだったのだ。
>シンデレラに憧れての作者さん
素晴らしかったです。感動しました。
是非作者さんの他の作品が読みたいっす。
ほんとにありがとうございました!
734 :
728:02/12/31 00:49 ID:J93qSmJ0
>>732 ありがとうございます。
>>724の続きでしょうか? そして、タイトルを
「紺野大好き」とします、ということでしょうか。それがハッキリしないと
作品案内を更新できないのですが…。違っていたら訂正願います。
作品案内の更新は1日延ばします。
作品の続きをよろしくお願いいたします。
735 :
紺野大好き:02/12/31 06:17 ID:JwIQpaX5
ごめんなさい。
別に紺野大好きはタイトルではありません。
ごめんなさいm(__)m
736 :
紺野大好き:02/12/31 07:09 ID:xa8rXyOH
まだ山の中にいるんだとばかり思ってた、と私が言うと、その山の中からわざわざかけてやってんじゃないの、と愛ちゃんは言った。
夏休みを利用して、愛ちゃんは民宿だかペンションだかのアルバイトをしている。愛ちゃんがそこでバイトを始めたのは去年の冬休みが最初あで、その時点での目当てはスキーだったわけだけど、この春夏とまた同じところに舞い戻ったのはもちろん別の目的でだった。
<リゾート地のバイトって最高だよ>と、開口一番、妙に明るい調子で愛ちゃんは言っていた。
737 :
紺野大好き:02/12/31 12:26 ID:JwIQpaX5
えー、タイトルを決めました。
『雲』にします。これからは、名前のところに、『雲』と表示します。勝手ですみませんm(__)m
738 :
『雲』:02/12/31 14:00 ID:5bs3zNog
<いろんな人と出会えて、しかも自然と触れあえる。どう、あさ美。あなたもこっち来ない?そっちでのことはしばらく忘れてさあ>
そう言えば、この夏間じゅうずっと山の上にいたはずの愛ちゃんが、どうしてこっちの事情を知ってるんだろう? そう思って問い詰めてみたところ、案の定だった。まこっちゃんから電話が行ったのだ。なんでもまこっちゃんは、愛ちゃんに頼んだそうだ。
<私が言わなきゃいけないんだろうけど……愛ちゃんから謝っといてくれないかな>
739 :
『雲』:02/12/31 14:11 ID:JwIQpaX5
ほんの半年前まで、小川麻琴は私や愛ちゃんと同じグループの仲間だった。ひょんなことから、私は笠松祐介と言うグループ内でも人気のある彼と、つき合うことになった。つき合いはじめてから、結局私たちが恋人同士だったのは一年足らず。
──恋人同士。
少なくとも私のほうはそうだと思っていた。休みのたびに待ち合わせて映画を観たり、学校帰りに互いの買い物につき合ったりして、腕を組んで街を歩き、夜の公園でキスしをし、明日また逢えるというのに長電話する……
740 :
『雲』:02/12/31 14:21 ID:xa8rXyOH
そういう関係を<恋人>と呼んでいいならばの話だが。
でも、その関係ももう終わった。考えられる限り最悪のかたちで終わってしまった。
祐介君は、別の女性を好きになり、私には「友達と旅行にいってくる」と嘘をついてその女性と出かけた。
その嘘を、彼がどんな気持ちで口にしたのかはわからない。わかりたくもない。いずれにしても私は、ひとかけらの疑いもなく祐介君の言葉を信じていた。二人の乗ったバスがスリップ事故を起こしさえしなかったら、今でもまだ信じ続けていただろう。
741 :
『雲』:02/12/31 14:29 ID:DU5UC9V0
幸い、事故自体はそれほどの大事には至らなかった。
単独事故だったし、死人も出なかった。
祐介君のほうは顎の骨折とむち打ちで入院、まこっちゃんは右腕の骨にひびが入ったものの他はかすり傷で済んだ。
<気持ちはわかる……なんて簡単に言われたらよけい腹が立つだろうけど>愛ちゃんの声も、さすがに沈んでいた。
<でもね、あさ美。あなた達三人の中で一番つらいのは、もしかしたら、間にはさまれた麻琴かもしれないよ>
私は黙っていた。
742 :
『雲』:02/12/31 14:37 ID:5bs3zNog
<麻琴だってあさ美のこと、裏切ろうと思って裏切ったわけじゃないずじゃない。祐介君だってそうだと思うよ。
あなた達昔から仲良かったんだし、親友の恋人なんか盗りたいと思って盗るわけないよ。
もう、どうしようもないとこまで来てたんだろうと思う。だからさ、しょうがないよ。人を好きになるってそういうもんだし……>
そういうものだ、ということくらいは私にだってわかってた。それでも、どうしても納得できない。
あんなに私を好きだって言ったのに。
あのときの言葉も、みんな嘘だったのかな。
743 :
『雲』:02/12/31 14:46 ID:xa8rXyOH
いつから二人で私をわらってたんだろ。
そんな卑屈な考えばかりが頭の中でぐるぐる回ってしまうのを、自分でも止められないのだ。
祐介君が旅行だと言った週末、まこっちゃんはまこっちゃんで私に、急におばあちゃん家に行ってくると嘘をついて出かけていた。
そんないくつもの後ろめたい嘘を、まこっちゃんと祐介君が二人で相談して用意しているところを想像すると気が狂いそうになった。
嫉妬と怒りで体がねじ切れるかと思った。
744 :
『雲』:02/12/31 14:54 ID:lugw3cin
<そっちも少しは涼しくなってきたんじゃない>と愛ちゃんが言う。
私は、携帯を耳にあてたまま網戸のそばへ這っていった。夜風が入ってくる。
灯籠の足もとあたりで鳴くコオロギの声に混じって、軒下の風鈴が針の落ちるような音をたてた。
「うん、少し」と私は言った「そっちはどう?」
<朝夕はセーターが欲しいくらいよ。山の空気は澄んでるし湿気も少ないから、昼間の熱を貯めないんだ。だから夜にるとぐっと冷え込むって言ってた>
かなり長い沈黙が続いた後、再び口を開いたのはやなり愛ちゃんだった。
745 :
『雲』:02/12/31 15:05 ID:JwIQpaX5
ふだんとは別人のように低い声で、愛ちゃんは言った。
<あさ美、麻琴が退院してきたらどうする気?>
「どうって……」
<いくらあさ美が鈍感でも、いま顔合わせるのは気まずいでしょ>
<ねえ。あさ美、冗談抜きでこっち来ない?>
「こっちって……どっち」
愛ちゃんが、深々とため息をついた。<分かってるでしょ>
「だって、もうすぐ学校始まるよ?」
<わかってるよ、そんなこと。けど、そんな状態で学校行ったってどうせ何にも頭にはいらないだろうし。
麻琴が退院してきたらどうすんの?>
『シンデレラに憧れて』
あまり、物語を深く読む事は苦手なんですけれども、
小川のエピソードで泣きました
それと少年の心境が自分と似通っていて
色々と考えさせられました
あと、チャコフィルの曲がイイカンジだとか思ってみたり
いち読者より
一応sageときます
747 :
『雲』:02/12/31 15:47 ID:oZbQ+izD
<しばらく休んで、落ち着くまでこっちでバイトしてればいいじゃん。ちょうど来週末に私が抜けるから、かわりの人募集してたんだよ。>
私が黙っているのをためらっていると受け取ったのか、
<ね、あさ美来なよ>愛ちゃんは熱心に言った。<学校なんかちょっとくらいやすんだって大丈夫だって。あさ美なら進級だってちゃんと出来るよ>
しばらく考えて、その思いつきみたいな愛ちゃんの提案を受け入れてしまった。
とにかくココから離れたい。祐介君とまこっちゃんの気配を感じないで済むとこならどこでもいい。
748 :
『雲』:02/12/31 15:59 ID:xa8rXyOH
そういう状態にあった私は、愛ちゃんの誘いがただ一筋の光明のように思えた。暗闇の中で光<非常口>の案内版みたいに。
「……ちゃん」
シャツのそでを引っぱられて我に返った。自分がどこにいるのか思い出すのに、ちょっと時間がかかった。
見れば、椅子の横に立ってしげしげと私を見つめているのは三歳くらいの男の子だった。
小さな左手で私のシャツをつかみ、溶けかけのソフトクリームをしっかり握っている。
「かーちゃん」と、男の子はくり返した。
749 :
『雲』:02/12/31 16:07 ID:lugw3cin
自慢じゃないけど、三つにもなる子どもに母と呼ばれる覚えはまったくない。迷子かな? とあたりを見回したその隙に、何を思ったか、敵はひざによじのぼってきた。
「あ、ちょ、ちょっと待って」押し止めようとしたものの、どこをどう触っていいものやら見当がつかない。「ねえ、違うって、どこあなたのお母さん」
聞いていない。ひざの上で向きをかえようとした拍子に、彼がにぎっていたソフトクリームがべっちゃりと私のシャツについた。
若い母親らしき人が駆け寄ってきたのはその時だっあ「何やってんの、健太……!」
750 :
『雲』:02/12/31 16:17 ID:hz1hiv4H
白いTシャツに色あせたジーンズ、無造作にはねたロングヘアー。年の頃は21、2といったところだろうか。すっきりとあか抜けた目鼻立ちと背の高さのせいで、周囲からえらく目立っている。
テイクアウト用の紙袋をテーブルに放り出し、母親は私のひざからこどもを抱き上げようとした。
「うわあぁぁぁぁん、かーちゃん!」
「母ちゃんじゃないでしょうが、この人は」
「かぁぁぁぁちゃぁぁぁん!」
しがみつこうとする男の子の手の中でソフトクリームのコーンが握りつぶされ、ドロリとした白い液体が私の、スカートーに落ちた。
751 :
『雲』:02/12/31 16:25 ID:DU5UC9V0
(あ、あ、あああ)
「あ、ばか、何てことを」とうとう本格的に泣き出してしまった子どもを肩の上にゆすりあげた母親が、「すみません。この子ったら、ちょっと目を離した隙に……」
言いながら初めて私を正面から見おろしたとたん、目を見ひらいた。
一瞬の間に、彼女の表情は複雑きわまりない変化を一巡した。驚き。喜び。懐かしさ。あきらめ。哀しみ。非難。自制……。そんなふうなもねがめまぐるしくその目の中を出入りするのがわかった。
最後には値踏みするような目つきに落ち着いて、ひとの顔をまじまじ見ている。
752 :
『雲』:02/12/31 17:40 ID:DU5UC9V0
「あの……何か?」
「ああ、ごめんなさい」彼女は、少し照れくさそうに笑った。「ほんとに似てたものだから」
誰に、とは聞かなくても想像がつく。……あれ? ってことは、この人は母親じゃ、ない……。
「待ってて。いま何か拭くもの借りて来るから」
いいと言うより先に、彼女はカウンターのほうへ行ってしまった。ぐずっている男の子を砂袋か何かのように肩をかついだまま。
とりあえず、手近にあった紙ナプキンで、シャツとスカートについたソフトクリームを拭った。甘ったるいバニラの匂いにつられて奥歯が痛くなる。
753 :
『雲』:02/12/31 17:46 ID:oZbQ+izD
テーブルの上に残された紙袋からはフライドポテトの匂い。庶民のささやかな幸福を象徴するような二つの匂いが、柔らかな窓越しの日差しのなかで入り混じる。
ふいに、鼻の奥がつぅんと痛んだ。このところ、ちょっと油断するとすぐこれだ。
自分では何とかコントロールしているつもりなのに、ほんのささいなきっかけから感情のエアポケットのようなところにはまりこむと、自制心をガクガク揺さぶられ、上も下もわからなくなってしまう。
そのたびに私は、必死でどこかつかまりところを探した。
754 :
『雲』:02/12/31 17:56 ID:DU5UC9V0
でも、つかまれるものなんか何もなかった。
まるで巨大な貯水槽の底に落っこちたみたいな感じだった。
はい上がろうとしても手に触れるものはつるつる滑るばかりで、爪の先すら引っかからない。夜は夜で、いやな夢ばかり見た。叫んでも叫んでも助けが来ない。
水の底から何か邪悪な意志を持った触手が伸びてきて、私の足にからみつき、ゆっくりとなぶるように引きずりこまれ、息が続かなくなり、鼻と口の両方から吸い込んだ水が肺にあふれ、やがて私はすべてをあきらめる……。
755 :
『雲』:02/12/31 18:04 ID:WDCkqqNO
夢を見るからにはいくらかは眠っているのだろうが、眠ったという実感はまったくなかった。
きっと、まこっちゃんと祐介君を憎めば少しは楽になれるのだろうが。
でも、もともと私は誰かを憎んだりするのがあまり得意ではないのだ。
努力なんかしなくてもそういった感情を持続できる人間がうらやましいほどだった。
それでもやはり、恨めしい気持ちはあった。あの二人を赦せる日が来るとはとても思えない。
以前のように仲間みんなで笑いながら遊んだりする日がもう一度来るなんて想像もできない。絶対に無理だ。
756 :
名無し:02/12/31 22:35 ID:xa8rXyOH
327>頑張れ
757 :
名無し:02/12/31 23:30 ID:1Ip93msF
新作はじまってる!!!
ってかsageた方が良いのでは?&改行してくれた方が読み安い
◎現 在 編
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◎現在編(平行世界)
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>>389………最新は >87
◎紺色の獅子
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>>456………最新は >454-455
◎こんこんの夏休み <完結>
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>>506 ◎中学生日記
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>>405………最新は >209,>211-212
◎不器用な恋心
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>>405………最新は >286-289
◎格 闘 技 編
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◎レコーディング編
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◎昔 話 編
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◎はじまらない昔話
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760 :
名無しの権兵:03/01/01 05:22 ID:9N5KqOnQ
かまかまかま
761 :
名無しの権兵:03/01/01 05:22 ID:AnUEFmA4
かまかまかま
762 :
名無し:03/01/01 05:29 ID:7wOWZPF9
あかまか
sage
新作来たー
763 :
顔無し:03/01/01 05:38 ID:AnUEFmA4
俺も書いてみようかなぁ……
764 :
顔無し:03/01/01 05:39 ID:upg7ioZi
俺も書いてみようかなぁ……
765 :
隣の席の紺野ちゃん:03/01/01 19:41 ID:KCUvWjyq
ボクの席のとなりに転校生が来た。
芸能人らしい。北海道から来たその女の子は紺野ちゃんという。
彼女はいつもぼんやりと笑っている。彼女を表現する言葉でみんなが思いつくのはぼんやりとか、ふんわりとか、曖昧な感じの表現だろう。
ボクの思いつく表現もそんな程度だ。自分のボキャブラリィのなさに笑ってしまうけど。
今日はちゃんと授業に出てきている。
たまに早退したり、欠席したりする。
芸能界にまったく興味がなくて、どんなことをやっているかは知らないけど、
766 :
隣の席の紺野ちゃん:03/01/01 19:53 ID:AnUEFmA4
紺野ちゃんはとても人気のあるアイドルグループに入っているらしい。ボクの興味のあることといえば、カーレースとパソコンとゲームだけ。
インターネットも少しするけど芸能人関係にはまったく興味ない。
隣の席にいるボクをみんなうらやましがるけど、芸能人と一緒にいるという感覚はボクにはないので、よく理解できない。
今日の紺野ちゃんは、いつもと違って、ぼーっと窓の外の景色を眺めていない。
一生懸命にノートに何か書いている。
珍しいこともあるものだと、ボクはノートを覗いてしまった。
767 :
隣の席の紺野ちゃん:03/01/01 21:15 ID:WYRLVapg
紺野ちゃんは絵を描いていた。
なんか猫の絵みたいだ。
絵の下に「キティちゃん」の文字が無かったら、とてもそれが「ハローキティ」とは気づかなかったと思う。
ボクの視線に気づいた紺野ちゃんが笑った。ボクは恥ずかしくて、慌てて視線をそらした。
その時、先生が紺野ちゃんの名前を呼んだ。
今は数学の授業だ。ヤバイと思った。
紺野ちゃんが、ゆっくりと立ち上がって黒板を見つめている。
ちょっと下を向いた。もうだめだと思い、同じように下を向いたボクの耳に紺野ちゃんの自信なさそうな声が届く。
768 :
隣の席の紺野ちゃん:03/01/01 21:26 ID:WYRLVapg
「解はx=3です」
先生は忌々しそうに唇の端を曲げると語気荒く言った。
「よし、正解!次、吉田、解いてみろ!」
紺野ちゃんは、とても頭のいいコなんだと思った。
ボクは尊敬してしまった。
すぐ後の給食の時間、デザートに出たイチゴのケーキを食べている紺野ちゃんが、とてもかわいく見えて、ボクは意地悪したくなった。
ボクは横から手を伸ばして上に乗っていたイチゴを横取りすると食べた。
紺野ちゃんの顔がびっくり顔になる。でも、予想に反して笑った。
「イチゴ、嫌いなの。食べてくれてありがとう」
769 :
隣の席の紺野ちゃん:03/01/01 21:32 ID:7wOWZPF9
ふんわりと笑う紺野ちゃんの顔を見つめてボクは確信した。
ボクはこのコに恋しているって。
次の日も、その次の日も紺野ちゃんは欠席した。
コンサートツアーで遠いところにいっているらしい。隣の席のぽっかり空いた机の上がやけに広く見える。
午後から授業がホームルームだけの日、紺野ちゃんは午後から登校してきた。
ボクなら一日休んでしまうのにと思った。
紺野ちゃんが、クラスの女の子たちとなにやら騒いでいる。
自分の席で机に肩肘ついてぼんやりしていると、
770 :
隣の席の紺野ちゃん:03/01/01 21:40 ID:upg7ioZi
紺野ちゃんがいきなりボクのほうへ振り向きざまに蹴りをした。短いスカートが勢いよくひるがえる。
友達に空手の型を見せていたようだ。
真っ赤になったボクと紺野ちゃんの目があった。
紺野ちゃんもみるみる真っ赤な顔になると、みんなを置き去りにして教室から駆けだした。もうすぐホームルームが始まるというのに。
ホームルームが終わってボクはすぐに下校の道へと向かった。
後ろから紺野ちゃんに声をかけられた。
「一緒にかえりませんか?」
はにかむの笑顔の紺野ちゃんが立っている。
771 :
隣の席の紺野ちゃん:03/01/01 21:48 ID:p0yl7M9R
「でも、紺野の家って逆方向じゃなかったっけ?」
精一杯に平静を装ったボクは言う。
「ロケバスが迎えに来るんです。ちょっと場所がわからないので一緒にいってくれませんか?」
とても丁寧にお願いする紺野ちゃんにボクはうなずいた。
一言も話をせずにボクは紺野ちゃんと並んで歩いた。
でも、なんかとても楽しい。
このままロケの現場まで送って行きたいと思う。
突然、紺野ちゃんがつまずく。
ボクに寄りかかってきた。しがみつかれてボクは動けなくなった。
恥ずかしそうな、申し訳なさそうな紺野ちゃんが
772 :
隣の席の紺野ちゃん:03/01/01 21:54 ID:upg7ioZi
とてもかわいかった。
自分の気持ちを抑えきれないボクは自分でもびっくりするぐらいに大胆になった。
紺野ちゃんの手を握って、子どもを案内するように歩き始めた。
振りほどこうと思えば軽くほどけるぐらいにしか握らなかった。でも、紺野ちゃんは振りほどかなかった。
紺野ちゃんの様子を伺った。
ボクの顔を見て紺野ちゃんは恥ずかしそうに笑った。
「嫌じゃない?ボクはとてもうれしい。だって、紺野のこと好きだから」
ボクは思いっきって言ってしまった。
773 :
隣の席の紺野ちゃん:03/01/01 21:59 ID:upg7ioZi
後悔した。やめておけばよかったと思った。
「嫌じゃないよ、私も……」
聞き取れなくなるほど小さくなった紺野ちゃんの声だったけど、ボクにはちゃんと聞こえた。
信じられないぐらいうれしい一言が。
ロケバスが止まって待っているのが見え始めたあたりで、ボクは紺野ちゃんの手を離した。
途端に紺野ちゃんが駆けだした。
後ろ姿を見送っていたボクに紺野ちゃんが振り向いて立ち止まった。
774 :
隣の席の紺野ちゃん:03/01/01 22:04 ID:p0yl7M9R
とても大きく三回ほどボクに手を振ると、とてもかわいい笑顔をくれた。
そして、ロケバスに向かって再び駆け出す。
ボクの隣の席に転校生がきた。芸能人らしい。北海道から来たその女の子は紺野ちゃんという。
いつもぼんやりとふんわりと笑っている彼女はボクのガールフレンドだ。
『隣の席の紺野ちゃん』
終
>>774 パァーン!や、やられた!って感じです
くやしいけどかなりツボ入りますた(笑)やっぱ
り純情な感じが似合いますね。
しっかし、主人公がうらやますぃ〜
ね(笑)
◎現 在 編
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◎現在編(平行世界)
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>>389………最新は >87
◎紺色の獅子
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◎こんこんの夏休み <完結>
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>>506 ◎中学生日記
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◎不器用な恋心
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◎レコーディング編
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◎はじまらない昔話
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>>406………最新は >228-229
>>778 その小説のところにたどり着けないんですが。
何かおかしなことが起きてしまったと言う事でしょうか?
780 :
778:03/01/02 03:28 ID:cO+m2AIT
781 :
777:03/01/02 15:04 ID:c+Nemsqu
>>780 どうもありがとうございます。
複数作品を同時に進行するのは、どうやら限界に達したかもしれません。
読者は各作品の感想を言いづらく、作者は手ごたえを感じづらい。
やはり1スレ1作品、少なくとも1つの作品が終わるまでは次の作品を
スタートしないのが正解かも知れません。
次スレが立つことがあるならば、そういうルールが必要と思います。
「紺野あさ美のシンデレラ小説スレ2」というタイトルよりも、
「紺野あさ美のシンデレラ小説スレA」「紺野あさ美のシンデレラ小説スレB」
「 〃 〃 C] …… などとして、新作を始めたい場合は次々と新スレを
立てていけばよいと思います。
過去ログには、前スレとしてこのスレを、必要ならば別スレとして
「……A」「……B」…を載せておくと良いのではないでしょうか。
ということで、このスレに書いて下さる作家さんのオリジナル作品ではなく、
出所不明の作品まで登場してしまったからには、もう作品案内は
更新できません。
このスレの中の作品の続きを書かれる場合も、その作品を新スレに
コピペしてから始められると良いと思います。
782 :
名:03/01/02 17:35 ID:B2thWmjs
「シンデレラに憧れて」も、パクリですよぉ
783 :
ななしの:
保全