紺野あさ美のシンデレラ小説スレ

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595シンデレラに憧れて


保田と矢口は、お互い黙ったまま、一本目の木に着いた。
そこには、奇麗な茶色の髪をした少女が座っていた。
「ごっつあん!」
矢口は思わず、駆け寄って抱きしめた。
「うわ、何!?やぐっつあん!?」
それに続けて、保田も二人を抱きしめる。
「後藤〜!あ〜!」
「ちょっとちょっと二人とも!」
二人に抱擁された後藤は、流石に窮屈なので振り払った。
「もう、二人とも無事だった…。」
この現状が無事と言えるのかと思い、後藤の声は小さくなった。
矢口は後藤の言葉にうつむき、二人に問い掛ける。
「私たち…無事…なのかな?」
さきほどまでと同じ沈黙が、三人に訪れる。
この沈黙を破ったのは、後藤だった。
「何か…考えてもわかんないよ。死んでるなら、きっと天使さんたちが
こっちだよー!とか言ってくれると思うし。」
後藤の能天気な答えに、保田は少し突っ込んだ。
「でも、天国じゃないなら、ここは一体どこ?…。」
暗い空気が三人を飲み込もうとした時だった。
後藤と再会して持ち前の明るさが戻ってきた矢口が、声を張り上げた。
「よーし、わかんないから、ここではないどこかへ行こう!!」
そんな矢口を見て、二人は微笑んでいた。
ミニモニの時のテンションに近いものがあるな、と。
保田は、矢口にはやはりミニモニは似合っていると、心の中で呟いていた。
三人は、次の木のへ、ゆっくりと歩いていく。
希望と絶望の狭間で。

596シンデレラに憧れて:02/12/11 23:51 ID:xyot+EvJ


近づいてくるサイレンの音。
泣きながら、自分の子どもを抱きしめる母親。
大量の血を流し、アスファルトの上で動かない少年。
人が…集まってくる…。
飯田は、今自分がどんな状況にいるかわからなかった。
わかりたくないだけかもしれない。
吉澤と辻は、車の中からメンバーを運びだしていた。
自分の意志で車から出てきたのは、安倍、辻、吉澤、新垣、そして飯田の5人だった。
あとの8人は…これ以上何かを考えると、自分は壊れてしまう。
飯田は今、自分がどんな状態なのか気づいていた。
新垣と安倍が、隣で絶句したまま突っ立っている。
二人も今、自分と同じ状況なのだろう。
597シンデレラに憧れて:02/12/11 23:52 ID:xyot+EvJ



…何も考えたくない。何も言わないで…。


598シンデレラに憧れて:02/12/11 23:53 ID:xyot+EvJ


とりあえず、全員を運び出した時だった。
ついに新垣が、ぽつりと言葉を発した。
「みんな…嘘だ!嘘だよね!!死んじゃったりしてないよね。」
この言葉に、辻と安倍も次々とメンバーに話かける。
「あいぼん!寝たふりは良いから、起きてよ!!ねえ…ののに何か言ってよ!」
「そうだよ、早くなっちーって抱き着いてきてよ!ねえ矢口もほら!」
返事は、勿論なかった。
二人の一方的な会話を聞きながら、吉澤は加護の手首を調べてみる。
(脈は…ある。まだ死んでないのかな…。みんな酷いケガはしてないみたいなのに…
でも…なんでみんな起きないの…?外からじゃ原因がわからないケガ…?)
そう、どこから見ても、意識の無いメンバーに派手な外傷は無い。
まるで童話の、眠り姫のようだ。
(まさか…植物人間……嘘だ!そんな…)
飯田に話し掛けようと、彼女の方へ目をやる。
飯田はいつものように、激しく交信していた。
それだけなら、いつもと変わりはなかった。
しかし、辻が安倍の異変に気づく。
「ああ!安倍さん!どうしたの!?眠いの?」
焦点が合わぬ目を開けたまま、安部が辻にもたれかかっていた。
吉澤の混乱は、ピークに達しそうになった。