紺野あさ美のシンデレラ小説スレ

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587シンデレラに憧れて

「嫌!まだ死ぬなんて嫌や!」
加護は、木にむかってひたすら走っていた。
寒い。まるで真冬のような体感温度に、彼女は泣きそうになっていた。
「ののは…みんなはどこやねん!」
全力で走っているのに、疲れないうえに暖まらない。
「ここは…どこや!」
寒さと寂しさで涙が出てくる。視界が悪くなったせいで、小石につまずいて
転んでしまった。
「痛い…。」
痛みと寒さ、寂しさ、そして、自分がなくなっていくような感覚が、
彼女を追いつめた。
「…みんなぁ…えっく…」
地面に座り込んだまま、彼女は泣いてしまった。


しかし、すぐ様立ち上がり、泣きながら走りだした。
「絶対、誰かおる!」
彼女は不安と戦いながら、ひたすら走っていった。
588シンデレラに憧れて:02/12/08 23:57 ID:lpeKOC7l


保田と矢口は、二人一緒に歩いていた。
二人は、お互いに違う道から歩いてきた。
そして数分前、はるか後方に見えるあの木の下で逢った。
まるで、彼女たちの人生のように。
そう、一度木の下で逢えば、他にも木の下に誰かいると思うだろう。
むこうに何本かの、似たような木が見える。
そこに誰かいるような気がして、二人はもくもくと歩いていた。
「矢口…。」
「何?圭ちゃん?」
「私たちってやっぱ死んだのかな…。」
「うん…そんな気もする。」
「おじいちゃんが言ってた事、当たったね…。」
「…うん。おじいちゃんは神様か何かなのかな…。」
「私たちだけかな…。
みんないて欲しいような、欲しくないような…。」
「うん…。」
もうすぐ、二人は一本目の木に着く。
二人はほとんど会話をしなかった。

589シンデレラに憧れて:02/12/09 00:00 ID:xPaJklgo


紺野は、歩きながら色々な事を考えていた。
ここは夢で見た場所だという事。そして、夢に関係があるという事。
もしかしたら、自分は死んだかもしれない事。
他のみんなが、ここにいるかもしれない事。
あのおじいさんが、鍵を握っているという事。
その結果出た結論は、これだけじゃ何もわからないという事。
彼女は、きっとみんな木の下にいると思った。
人間は、多分、この状況ではあそこにいくしかないからだ。
どこか高い土地が近くにあれば別だが、そんなものはどこにもない。
何よりも、道は木へとしか進んでない。
絶対とは言えないが、信じるしかない。
発狂しそうな自分がいる事には気づいている。
しかし、紺野は必死になりながらそれを押さえた。
自分に負けたら、自分を失う。
そんな気がしていた。