紺野あさ美のシンデレラ小説スレ

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539シンデレラに憧れて
紺野はまだ早い時間に起きてしまった。悪夢を見たわけでも無く、今日のコンサートで
緊張してるわけでも無い。
昨日の夜、ホテルで保田と矢口の会話を聞いていなければ、こんな時間に起きる事はなかったのだろう。昨日の夜更けだった…


「ねえ圭ちゃん、最近は誰も夢を見てないのかなぁ?」
「みたいだねぇー。誰もあの話をぶりかえさないしね。」
「でも圭ちゃんにむかって言った、おじいちゃんの言葉が正しいなら…。」
「うん、そろそろ起きてもおかしくないかも…。」
「…明日大丈夫かな?」
「矢口も感じる?なんか…うまく言えないけど…。」
「…うん、気のせいだと良いけど…。」
「…何もないと良いね。」
そろそろ?どういう意味?待って矢口さん、保田さん!
心の中ではこう叫んでいるのだが、声に出なかった。
急いで自販機に駆け寄った時には,二人はすでにその場にいなかった。


同じ夢を、今さっき見ていた。カーテンの間から漏れる朝日が、紺野を照らしている。
「胸騒ぎがする…。」
隣では新垣が寝息をたてている。今の独り言は聞かれてないようだ。
鳥のさえずりが聞こえる。
起きる時間にはまだ早いので、もう一度寝る事にした。
540シンデレラに憧れて:02/11/09 18:06 ID:7sbXp8nQ

人通りが、ゆっくりと多くなって行く。
何をしていた訳でも無い。流れていく町と時間を、ゆっくりと見ていた。
気づいた時には、自転車を路上放置して、ふらふら歩いていた。
人は感じようとしなければ、感じられないのだと思う。
気づかなければ、一生気づかない事もあるんだろう。
何があったわけでもない。
ただ、自転車のスピードだと気づかない事がある気がして…。
ゆっくり歩くからこそ、見えるものがあると思う。
俺の中で、何かが変わっていく気がする。
何かを感じている。…何も無いのだけど。
ふと顔をあげるて見ると、信号が赤から青に変わった。車が動きだして行く。
ガードレールにもたれていた体をゆっくり起こす。

541シンデレラに憧れて:02/11/09 18:10 ID:7sbXp8nQ





回り出す歯車。夏の終わりに見る夢。
悪夢であるが、喜びと未来を生む。
青になる歩行者信号。
いつものように渡る少年。
ふらふらと歩く赤ん坊。
きちんと手をつないでやらない母親。
それなりのスピードで走るトラック。
その後ろには、有名な少女たち。

悲しみがそのすべてを引っ張っていく。
少年が運命の渦巻きを作っていく…。




542シンデレラに憧れて:02/11/09 18:14 ID:7sbXp8nQ



あーあの子まだちゃんと歩けて無いぞ。
お母さん、あんまり厳しい教育は良く無いと思うよ。
ほら、もっとしっかり手を握ってあげないと。
…やっぱり金髪のママって微妙だな。
あー転んじゃった!
あ、人形がひかれる!
おいおいシカトか?そこのおっさん!
おいママ!先行くなよおい…





いけない!そっちいったら駄目だ!危ない!








543シンデレラに憧れて:02/11/09 18:16 ID:7sbXp8nQ

人間とは、信じられない力を秘めていたりする。
少年の精神は一気に収縮して、そして膨張し、…爆発した。
少なくとも、少年にはそんな気がした。
少年は、すぐ行動に移っていた。5m程の距離をダイブして、一瞬の
うちに右手で赤ん坊を抱いた。しゃがんだまま、後ろを振り返る。
相手はトラックだった。
無駄だとわかっていたが、少年は横断歩道へ飛んだ。


…ぶつかる!


無我夢中で受け身をとったが、無駄だった。
少年は左肩から、トラックと衝突した。


キイイイイイイイイイー!バン!
544シンデレラに憧れて:02/11/09 18:17 ID:7sbXp8nQ

少年はまだ、一瞬の世界にいた。
右手の赤ん坊を、空中で横断歩道の通行人に投げつけた。
時間が止まったみたいだ。
少年の顔は笑っていなかったが、おもしろくて仕方なかった。
「あー、死ぬのかな(笑)」
少年は右肩から落下して、意識を失ってしまった。
545シンデレラに憧れて:02/11/09 18:20 ID:7sbXp8nQ


トラックの運転手は、突然の出来事に驚いて大声をあげた。
「うわーっ!」
トラックもたまったものではない。赤ん坊は見えなかった上に、少年がぶつかる
様を目の前で見てしまった。急ブレーキを踏んだが、間に合うわけが無い。
ハンドルを横にきったが、すでに少年はアスファルトに真っ赤な血を
流していた。
しかもその行為は、確実に現状を悪い方向へと導いた。
トラックは派手に転倒し、交差点の丘となった。


そこに2台の変わった車が追突してきた。


外から中が見えないようになっているガラス。
大きめの車体。
芸能人が乗っているのではないかと、誰もが勘付くような車だった。


ガアアアアーーーーン!ガシャン!ガッシャン!





546シンデレラに憧れて:02/11/09 18:22 ID:7sbXp8nQ


「ああああ〜!!!」
「あー、うるさいよ!どうしたのよっすぃー!」
モーニング娘。の中でも、1、2を争えるほどうるさい吉澤と矢口が、
車内の沈黙を破った。
「ちょっと叫んでみたくなっちゃった(笑)」
いつものようにヘラヘラ言う吉澤に、石川が文句を言う。
「もう、急に叫ばないでよよっすぃー。」
勿論吉澤は、石川の文句など聞いたりしない。
「石川さんは黙ってて下さい(笑)」
「何よそれぇー!(笑)」
二人の会話に、矢口は割り込む。
「あー、ほらほら、二人がうるさいから、圭ちゃんがつり目になっちゃった。」
「これは元々ですー!(怒)」
吉澤が叫んだだけで、一気にうるさくなった。
女ばかりのバスなんて、そんなものなのだろう。
そんな中で、後藤は一人微笑していた。
みんなの会話を聞きながら、胸騒ぎと戦いながら。
朝からずっと、胸騒ぎが絶えないのだ。
数分後に、その理由がわかった時には、すでに手後れだったが。
547シンデレラに憧れて:02/11/09 18:24 ID:7sbXp8nQ


紺野の異常なまでのハイテンションは、いつのまにか終わっていた。
辻の持っていたお菓子を食べ終わった後、すぐにうとうとし始めた。
さっきまでの空気とは正反対の空気が、バスの中に充満する。
ここの全員は、静かに自分の世界に入っていった。
そんな時だった。前の年上メンバーが乗っている車が、派手な音をたてる。



ガアアアアーーーーン!ガシャン!



流石に紺野も目を覚ます。そして状況を把握しようとした。
しかし、覚醒したコンマ0、何秒後、紺野の体は、ぐったりとしていた。

ガッシャン!
548シンデレラに憧れている作者:02/11/09 18:27 ID:7sbXp8nQ
本当にすいません!>>540>>541の間に、この文章があります↓
549シンデレラに憧れて:02/11/09 18:28 ID:7sbXp8nQ


「今日のコンサートも完璧にやってみせる!」
なぜかハイテンションの紺野に、バスの全員はさっきから目が点になっていた。
「どうしたのあさみちゃん?なんか変なものでも食べたの?」
少しなまった声で、高橋はボケてみた。
「あさみちゃん最近食欲増してるみたいやしなぁ(笑)」
加護が続けていじる。しかし、まるで頭のネジがぶっ飛んだかのような
行動をする紺野には、大したダメージは与えられなかった。
「今日の私も完璧です!」
狭い車の中で両手を上げる。まるでスターを取ったマリオのようだ。
あまりにも変なので、小川は朝から一緒にいた新垣に、いつからこうなのか聞いてみた。
「ねえりさちゃん、いつからあさみちゃんこんな風なの…?」
「私が起きた時からずっと…(笑)」
「あさみちゃん本当にいつもよりおかしいよねぇ(笑)」
後ろで小声で会話している二人に、水を得た金魚のような紺野がかぶりつく。
「私は全然暗くない!」
「そんな事一言も…(笑)」
新垣のつっこみは、紺野の耳には全く入らなかった。
「あ、ののちゃん、そのお菓子おいしそう!(はあと)」