紺野あさ美のシンデレラ小説スレ

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514シンデレラに憧れて

「ねえ、ごっちんも見たんだよねぇ?草原の夢。」
先ほどまでベッドで布団にくるまっていた石川が、急に口を開いた。
唐突だったが、吉澤と後藤は何を話していた訳でもないので、
石川に静かに耳をかす。
「えー?まあ…うん。」
後藤はあっさりと返事をする。
自分の見て無い夢は、会話をそんなに暗くするものなのか、と黙って聞いていた。
後藤はもともと返事のそっけないところはあったが。
「おじいさんが出てきたんだよね?」
「私の夢はね。でも、梨華ちゃんの夢にはでてこなかったんでしょう?」
「うん…。」
「だったら、たまたまみんなが悪い夢を見ただけだよ。」
後藤は、石川が疲れて眠いのだが、夢が恐くて眠れないといった心境を
すぐ理解したらしい。
そしてうまい具合にフォローをいれている。
やはり、彼女は人の気持ちに敏感なんだなと、吉澤は改めて思った。
「そうだよね。ありがとごっちん。」
そういうと、石川は静かに瞼を閉じた。
「疲れちゃったから、先寝るね…。」
「おやすみ。」
吉澤は、石川に優しくそう言うと、後藤をきりっとした表情で見つめる。
気づいていたのだ。わざわざ部屋にまで訪ねてくるなんて、
よほど酷い夢だったのだろう。
そして、夢の内容を聞いた吉澤も、不安を抱いた。
515シンデレラに憧れて:02/10/25 00:07 ID:telEACr2

自分の隣のベッドで、辻は気持ちよさそうに寝息を立てている。
結局自分は誰にも、見た夢の事は話さなかった。
誰かに相談しようかと何度も考えたが、加護の中の何かが、
それを何度も阻止した。

こういう夢を見た事ないわけやない。
たまたまみんなが似てる夢を見たんや。

加護は、心の中でなんども呟いていた。
まるで、自分に言い聞かせるように。

なにかあったら、ののを助けてやらなあかんなぁ…

そう考えながら、彼女の疲れた肉体は休息に入った。
516シンデレラに憧れて:02/10/25 00:09 ID:telEACr2

愛ちゃんはやっぱり、明るく振る舞っていたのだろう。
バスの中で仕事前だし、何より夢の事を深く考えたくないから。
きっと、私と同じ。
そう考えながら、横で寝ている新垣の顔をじっと見てみる。

やっぱりさ、私たちの加入って、必要じゃなかった事なの?
前の先輩たちのようにはなれないの?
私たちなんて、愛ちゃんやあさ美ちゃんより全然人気ないんだよ?

新垣の顔を見て、そんな事を考える。
しかし、自分は新垣よりは、まだ良い待遇である事は知っていた。
彼女は、自らが望んだユニットに入れなかったのだ。
それでも、普段からケロッとでしている新垣は凄いと思った。
純粋に、彼女の強さを認めていた。
そんな事を考えていたら、しだいに夢への恐怖は消えていた。

私だって、戦えるよね。

疲れた体が望むように、彼女も眠った。
517シンデレラに憧れて:02/10/25 00:10 ID:telEACr2



本当なの?圭ちゃん!?
私たちに命に関わる災害が降り注ぐって?
嘘だぁ…根拠がないよ!

あんなおじいちゃんの言ってる事なんて適当だって!
…本当なの?


518シンデレラに憧れて:02/10/25 00:13 ID:telEACr2

酷い。愛ちゃんがそんな夢を見ていたなんて…。
大丈夫。けど…まったく嫉妬して無いかって言われちゃうと…。
「酷い夢。あ…あのね、私が見た夢は、もっと違った夢だったの。」
泣き出してしまいそうな高橋に、紺野は優しく語り掛ける。
「私が見た夢は、おじいさんが草原で、‘気を付けろ’って言っていただけ
なの。だから、きっともうあんな夢は見ないよ。もう遅いし、寝よう?
大丈夫、きっと大丈夫!」
まったく筋の通っていない事を言ったのだが、話しただけで情緒不安定になって
いた高橋は、静かにうなずいた。
「うん、おやすみあさ美ちゃん。」
紺野は普段、活発でしっかりしている高橋のこんな姿は、
あまり見たくなかった。
だから、ちょっとだけ嘘をついてしまったのだ。
あんな事を言われたのは自分だけなのかもしれない。
紺野はなんだか、複雑な気持ちのまま目を閉じた。