紺野あさ美のシンデレラ小説スレ

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429シンデレラに憧れて

「ああー気持ち良いな〜。」
矢口はまた独り言をつぶやき、大の字になって草の上に寝転ぶ。
ゆっくりと雲が流れていくのを見ながら、このまったりとした空間を
楽しむ。
「毎日忙しいんだよなー。地方とかいっても全然遊べないし。
オイラは楽しいけど、やっぱ普通の子はやれないでしょ〜。」
「やっぱモーニング娘。ってのは忙しいのかね?」
「そりゃあ一年中コンサートやってるし、歌や踊りだって…ってあれ!?」
「どうかしたのかね?」
「いやいや、おじいちゃん誰?」
とても自然に会話に入ってきて、まるでコントでもしているようだ。
確かに先ほどまでは、人の気配は無かったのだが。
「わしか?わしの事は良い。それよりそなたは多分…」
名前を言うだけで5分かかりそうな口調に、矢口はすぐ様、
会話を速めるように答えた。
「矢口真理です。」
「おお、そうじゃそうじゃ。本当に小さいのぅ。」
な、なにさ、いきなりそんな事言わなくたって…
と頭の中でだけつっこみを入れていると、
先ほどの話し方やトーンとは全く違う声で、老人は
質問をしてきた。
「おまえは今、何のために生きているんだ?」
430シンデレラに憧れて:02/09/14 20:04 ID:SYJ1GjuT

「え、あ、うーん…ええ?(笑)」
笑ってごまかしたのだが、老人の鋭い視線に、すぐ矢口は失笑した。
「え?今何のために生きているかって…?」
それは色々考えてはいるが、人に言えるようなものは…
と少し悩んだが、老人に真剣に話す必要もないという結論が、
矢口のコンピューターからくだされた。
「なんだ、そんな歳でそんな事も考えずに生きているのか?」
「いやね、おじいちゃん、私だって何も考えてないわけじゃないんだよー。」
「だろうな、見ればわかる。野心が見え隠れする強い心が…。」
以外な答えに、矢口は少し返答に困った。誉められたのかも、けなされたのかも
わからないからだ。ただ思ったのは、老人は凄く頭がきれるのではないかと
いう事。話し方や声のトーンで威圧感をコントロールしているのだ。
矢口が次に口を開く前に、老人は口を開いた。
「しかしじゃ、自分を貫くのも良いが、もうちょっと他人の評価を気にした
らどうじゃ。」
「…え?」
別に気にしてない事はないし、インターネットなどでも、
自分の人気を探ってみたりする。
それは良いとして、なんで老人がそんな事を言ってくるのか、訳がわからなかった。
「何、おじいちゃんは矢口の事嫌いなの〜?」
「自分を貫く時は、人にもっとやさしくしてやるもんじゃ。」
穏やかなふりをしていたが、まるで自分を物凄いわがままのように
いう老人に、矢口もいい加減腹がたってきた。
「おじいちゃん、あんまり人の事わがままみたいに言わないで。」
老人はふっと微笑し、また口を開く。
「だったら、少し見せてやる。」
景色が、ラジオの収録場所へと変わっていった。
431シンデレラに憧れて:02/09/14 20:08 ID:SYJ1GjuT
先ほどまでいた場所…なのだが、矢口はびっくりしていた。
「あああー、浮いてる〜!(笑、泣)」
世間で言う、幽体離脱のようだ。
自分の体がその辺にあるのではないかと、天井に張りついたまま
探してみるが、それはこの部屋には存在しなかった。
矢口が慌てていると、下にいるラジオのスタッフたちが話しているのが
聞こえてくる。
「まったく、ホントあの女はアドリブきかないなぁ。」
「しょうがねえよ。アイドルなんて、顔だけの能無しばっかりだ。」
「え、でもあいつ可愛いか?ただのチビじゃん。おまえロリか?(笑)」
「馬鹿言うなよ、あんな整形してもブスなやつ好みじゃねえっつーの!」
「おまえはいい歳こいて加護ちゃんだもんな。十分ロリだ!(笑)」
「加護ちゃんはなんだ…赤ん坊が可愛いのと一緒なんだよ!」
「だったら胸でけえとか話してくるなよな(笑)」
「う…、まあ、あんなわがままでチビで能無しより全然良いの!」
「まあな。あんなうるさくてわがままで、頭悪いのよりは良いかな(笑)」
矢口は、腹の底から怒りが込み上げるのを感じていた。
「あんたら人がいないからって何を好き勝手に…!」
矢口が大声で叫ぼうとしたとき、なんと地面にむかって落下し始めた。
「!!!〜!?」