「自分にはそんなつもりがなくても、
他人にはそう見える事があるってことじゃ。」
何も言えなかった。ペタンって座って、夢の中で泣く寸前だったの。
「良いか、所詮人間は自分のために生きとる。」
「…。」
「だから、まあ自分が好きなように生きるのが一番じゃ…」
「…。」
「でもな、あんまり人に恨まれるような事はするなよ…」
…切れちゃった(苦笑)
「大きなお世話!どっかいってよ!馬鹿!あなたじゃない!
人の気持ちひっかきまわしてるの!」
「…まきこまれるぞ。気をつけな。」
なんか…ぼそってそう言われて…小声で良くわかんない事言うもんだから、
むかついて叫んでやったの。
「うるさい!」
「そうか…人の好意くらいうけとりな。本物の悪夢を見せてやるよ。」
そう言われたすぐ後だった…。
そしたら…、思いだしたくない…。
色んな…多分ファンの人たちだったんだけど、
私の事ブスだって叫んでたり、私でやらしいことしてる人がいたり、
…アイドルやめろ、モーニング娘。やめろって言ってた。
私の前に出てきた人たちは……。
そこで、いやーって叫んで、目が覚めたの…。
「あーあ!どっこいせ!」
自分の部屋から3っつほどの近い部屋なのだが、矢口は
今日の仕事で疲れて、たったこれだけの距離を歩くのもしんどいようだ。
一番最後に座った矢口は、今から何をするのか、なんとなく
わかっており、それをして一体どうしたいのかがわからなかった。
みんなを心配した飯田が、お姉さんメンバーを自分の部屋に呼んだのだが…
矢口はもう夢の話はしたくないと思っていた。
「はい、みんなに集まってもらったのは、今日の楽屋で話題になった夢について
話したいからです。」
矢口がベットに座ると、飯田は話をスタートさせた。
しかし、一言目を言った後、すぐ矢口のすぐ横に目線をむけた。
矢口の隣に座っている阿部は、もう眠る寸前だった。
「はいはい、なっち、私たちは夢見て無いから普通に寝れるけど、
矢口も圭ちゃんもきっと今日は眠れないんだから!」
「んんー…」
目を2、3度こすり瞼を開ける阿部。
飯田の話に、まあ私はそんな事ないけどと、
矢口は心の中でつぶやいた。
しかし、この後話始めた保田の話しを聞いた後、
さすがに矢口も、不安と恐怖にかられる事になる。
矢口の見た夢。
「んんーあー、疲れたー!」
けのびをして独り言。矢口は自分で独り言が多いと自覚している。
部屋から出て、放送の色々をしてくれていたスタッフに挨拶をした。
中々良い人たちである。芸能界はドス黒いとか、
アイドルは所詮、体を売らなければならないとか言われるけど、実は
そんな事はあんまり無いのだ。
矢口がラジオでミスした時も、笑いながら励ましてくれるし、
からかってはくるけど、全然嫌になるタイプのそれじゃなかった。
オールナイトニッポンスーパーが終わり、ジュースを買いにとさらに
もう一つのドアを開けた時だった。
突風が吹いた。
冷たい、まるで北風だった。
その瞬間、矢口は自分の目を疑った。
どこまでも広がる、とても広い草原が目に写ったからだ。