紺野あさ美のシンデレラ小説スレ

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398こんこんの夏休み
「夢?どんな?」
「……歌手になること。高校生になるまでにオーディション受けて、歌手になるの。」
「え……じつは、私も!」
そういったのは麻琴ちゃんでした。
「私もちっちゃい頃から、歌手になりたかった!」

「そうなんだ。あさ美ちゃんは夢とかあるの?」
「え……。」
正直な話、ここ最近そんなこと考えたことは一度もありませんでした。
10年や20年も先の未来などまったく考えず、
明日もあさってもみじめに過ごすだけだと言うことばかり考えていました。
その時私は始めて、目の前の闇の向こうにあるはずの光り輝く未来を感じることが出来ました。

「まだ決まってないかな……。」
と私は返しました。けれどすぐ言い直しました。
「まって。やっぱ変更。私も歌手になる!愛ちゃんとおんなじオーディション受ける!」
「あ、いいね。それ。じゃあ、私は中学3年生の時受けるから、麻琴ちゃんとあさ美ちゃんは中2で受けてね!」
「うん!」

今からすれば、本当に呆れるばかりの会話ですが、その時は真剣でした。
それから私はその日の約束を糧に生きていたんです。
399こんこんの夏休み:02/09/07 21:25 ID:dsHzTRKg
「……そろそろ、もう一回星見てみる?」
「そだね。」
そういわれて私は体を起こしました。
さっきは見えなかった襖の模様がぼんやりと見えています。
確かに、目が暗闇に慣れてきているようでした。

ガラガラと、大きな音を立てて雨戸が開きました。
「わあ……。」
少し青の混じったような夜空に、手の届きそうな所で無数に輝く星たち。
確かにさっきよりもさらに数が増えてより美しくなっています。

また、胸がいっぱいになるような不思議な感覚になりました。
胸をときめかせた物は、ため息となって夜の闇に溶けていきました。

「これが、本当のあさ美ちゃん。
 さっきのは、あさ美ちゃんのクラスの人が見たあさ美ちゃん。
 その人たちも、時間がたてばあさ美ちゃんのよさをわかってくれるよ。」
「愛ちゃん……。」
「実はね、私が嫌なことがあって落ちこんでた時に、友達におんなじ事言われたんだ。
 だから、今度は私があさ美ちゃんにと思って。」
愛ちゃんらしい、暖かい毛布のような優しい優しい言葉でした。