「絶対に噛み付いたりしないから大丈夫。ね、可愛いでしょ?」
ミカヅキは、愛ちゃんたちの所にくるなり、
まるで犬のようにおなかを見せてゴロンと転がりました。
それを見て愛ちゃんが何か言いながら、おなかを撫でます
。それが終わると、今度は麻琴ちゃんの方に寄っていって、
同じように仰向けに転がりました。
それを見て麻琴ちゃん、おそるおそるおなかに手を伸ばし、
少しぎこちない手つきで撫でてやりました。
「……かわいい。」
「でしょ? すっごい甘えん坊なんだよ、この子。」
愛ちゃんはさも自分のことのように嬉しそうでした。
麻琴ちゃんとひとしきりじゃれた後、今度は私に近づいて来ました。
腰の辺りに擦り寄ってきて、撫でてやったらまた、仰向けになって『もっと撫でて』と催促します。
その姿がたまらなく可愛くって、思わず抱きしめてしまいました。
その日も、ミカヅキとじゃれたり秘密基地の中で遊んでいると、
あっという間に時間は過ぎて行きました。
けれど、私にはその日、もう一つ楽しみにしていたことがあったんです。
麻琴ちゃんと、愛ちゃんの家に泊まりに行くことになっていたんです。
愛ちゃんの家に着いたのは、
ヒグラシの声と共に夕日が山の向こう側に隠れようとしていた頃でした。
すぐにお風呂に入って、ご飯を食べて、夜が来ました。
私は、その夜三人で話したことを今でも忘れることが出来ません。
布団に入ってしばらくして、壁の大きな時計が鳴り響いた後、私は打ち明けました。
――私は、学校でいじめられていると。
初めはこんな事言うつもりはありませんでした。
なぜいってしまったのか今でもよくわかりません。
「私、学校でいじめられてるの。みんな私のこと嫌いなの。」
重い空気の中を一瞬の沈黙が走りぬけました。
すると愛ちゃんは寝転がったまま襖を開け、
そのままほふく前進のようにして廊下に出て雨戸を開けました。
私と麻琴ちゃんにこっちへ来いと合図します。
私たちがそこで目にしたものは、
――星でした。
信じられないほどたくさんの星が輝いていました。
例えようもないほど綺麗でした。
愛ちゃんは、私たちが魂を抜き取られたように星に見入っているのを見て、
満足そうに言いました。
「ここだと、都会よりは多く見えるかもしれないけどね、
人間の目って暗さに慣れるのに10分から30分かかるんだって。
だから、あと10分も見てればもっと多くなるんだよ。」
今にして思えばそれは愛ちゃんの励ましの言葉でした。
けれど私はあまりの星空の美しさにうわのそらでした。
結局、虫が入ってくるといけないのですぐ雨戸を閉めてしまいました。
電気を消して、30分くらいしてからまた見ることにしたんです。
三人が感動を胸に溜め込みながら布団に戻ってすぐ、
愛ちゃんがいつになくゆっくりと言いました。
「私、夢があるんだ。」
この言葉を言った時の愛ちゃんはすごく前向きな目でした。