>>274 「ねぇ…背中が痛いんだけど…」
私がそう言うと、すぐに愛ちゃんが見に来てくれた。
何とか荷物整理(専門用語でパッキングという)を終わらせ、ザックを背負った所、
どうも背中にゴツゴツとあたるのだ。
「ちょっと降ろして、見せてみて」
私は言われたとおりにした。
「ああ、ほらあこのペットボトルがあたってるんやよ」
「どうしたらいいかな」
「マットを背中側に持ってくればいいじゃない」
「あそっかあ」
「もう…しっかりしてよあさ美!」
「ごめんなさい」
――「愛ちゃん…ちょっと手伝って」
向こうから里沙が呼ぶ声がして、あいちゃんは「はいはい」と掛けていった。
――羨ましいな
ちょっとそう思った。
愛ちゃんは可愛いだけじゃなくて、とっても頼りになる。
オーディションが終わったばかりの頃はコンプレックスばかり抱いていたけど、今
ではすっかり頼ってしまっている自分が少し情けない。私は最初、後藤さんや安倍さん
など、先輩メンバーに憧れを抱いていたけど、今ではその対象に愛ちゃんも含まれてた
りする。
――本当に私なんかでいいのかな…
どんどんとネガティブな考えに浸透していく私の肩をポンっと誰かが叩いた。
「何ボーとしてんの?あさ美」
麻琴だ。
「あううん。…準備終わったよ」
「そ、じゃ行こ。――愛〜〜!!」
――「な〜に〜?!」
「あさ美も私も準備出来たよ〜」
――「は〜いよ〜!」
2人が大声で会話している中、私は1人気を引き締めなおした。