紺野あさ美のシンデレラ小説スレ

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331川o・-・)の夏休み
その日から、私は毎日彼女達と遊びました。
自分でもいつからこんなに活発になったんだろうと疑問に思うほどに。
彼女達の遊びに対する貪欲さは素晴らしく、いろんな事を知っていました。

そして、私が彼女達と出会ってから少し経った日。
私達は、この間とは別の、小さな小川のほとりへ遊びに行きました。
気持ちいい風に煽られて、服がびしょびしょになるほど遊びました。
しばらく遊んで、疲れた私達は小川のわきに腰を下ろし、
今度はくだらない話に花を咲かせ、いつのまにか日が暮れようとしていた時。

私達のいる場所から少し離れた場所に、車椅子に乗った少女と、
その母親らしき人が歩いているのが見えました。
一緒に遊んでいた子達もその子を知らなかったらしく、
また私の時と同じように声をかけようと走り出しました。
332川o・-・)の夏休み:02/08/29 06:02 ID:Ah8ti0UC
「ねえ、どこから来たの? いくつ?」
しかし、車椅子の少女は返事をしませんでした。それどころか私達をにらんで来たんです。
それを見て、私も他の子達も、思わず動けなくなってしまいました。

「麻琴ちゃん……。ごめんなさいね。この子、今機嫌悪いみたい……。」
その子の母親らしき人が、申し訳なさそうに言い、
同時にその子はぷいっとむこうを向いて車椅子を動かし始めました。
333川o・-・)の夏休み :02/08/29 06:07 ID:Ah8ti0UC
その次の日。私たちが空き地で鬼ごっこをやっていると、昨日の少女がまたやってきました。
今度は一人でです。私達は走るのを止め、その子の行動を見ていました。
すると彼女は、近づいてきて言いました。

「……昨日は、ごめん。」
その言葉に引き寄せられたように、私達はその子のところへ集まっていきました。
「別にいいよ。気にしないで。いくつ? 名前は何ていうの?」
「四年.名前は、小川麻琴。」
「じゃあ同い年だね。私は紺野あさ美。よろしくね。」
「私は五年の高橋愛。よろしく!」

それからみんな一通り自己紹介をして、麻琴ちゃんも遊びに加わりました。
鬼ごっこだと麻琴ちゃんが不利だと言うことで、野球を始めました。
その日も大いに盛り上がって、帰路についたのはいつもよりかなり遅くなってからです。
帰り道、私と麻琴ちゃんと愛ちゃんは方向が同じなので一緒に帰りました。
334川o・-・)の夏休み :02/08/29 06:12 ID:Ah8ti0UC
「ねえ、麻琴ちゃんは何で車椅子に乗ってるの?」
今なら、こんな事聞いちゃいけないのはわかるんですが、なにせその時は子供だったので……。
「……車にぶつかって、頭打っちゃったんだった。でも練習すればまた立って歩けるんだよ。」

「ふーん……。あっそうだ!あさ美ちゃんも麻琴ちゃんも、明日いいもの見せてあげる!」
「……いいもの?」
「そう。すごいよ。きっとびっくりする。」
「なにそれー。気になる!教えてよー。」
「だめー。明日までのお楽しみね。じゃーねー!」
そういって愛ちゃんは、自分の家のほうへ走っていってしまいました。
残された私たちも、土砂降りのように降り注ぐセミの声の中を歩き出しました。