紺野あさ美のシンデレラ小説スレ

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295紺色の獅子
>>210の続き

みの「それでは今までの経過をVTRで観てみましょう」
会場の大画面ではこれまでのオーディションの様子が流れてた…
二次選考…寺合宿…・
所々で私が映るがどれもパッとしない。
−−映さないでよ
テレビの向こうでは親やクラスメイトも観るのだろう。
そう思うとなるべく目立ちたくなかった…
他のみんなの様子を見ると、真剣に画面を見てる人が多いけど
私のように半ば諦めてる様に見える人もいた。
VTRが終わり、画面につんく♂さんが出た。
いよいよ新メンバーの発表。

−−選ばれたい!選んで下さい!
いよいよ最後になってそれまでみたいに消極的な気持ちでなく
画面に映るつんく♂さんに必死にお願いしていた。
胸の鼓動が激しい…額からタラリと汗が流れた…
確か3人って言ってたっけ…
最後の一人でも良いからどうか私を選んで下さい…
296紺色の獅子:02/08/26 15:17 ID:qsFCCzGF

つんく♂「まずは……小川麻琴!」
違った…
でもしょうがないよね…
小川さんはダンス上手だったし…
まだ後二人残ってるもんね。まだ諦めちゃダメだよあさ美


つんく♂「次は………新垣里沙!」
また違う…
でもしょうがないよ…
新垣さん、元気だしスタイルも良かったからね…
後一人…
神様お願い!どうか私を選んで!


つんく♂「そして…………高橋愛!」
−−ダメだった…
でもしょうがないんだよ…
高橋さんは本当に歌が上手だったし…
所詮私みたいな子がモーニング娘。になりたいなんて
無謀すぎる夢だったんだよね…


諦めていたその時だった…
297紺色の獅子:02/08/26 15:37 ID:qsFCCzGF
つんく♂「最後にもう一人だけ…」
−−え?
つんく♂「モーニング娘。に入れたい子がいます」
−−え?えぇ?

つんく♂「その子は…紺野あさ美!」

−−私?…今、つんく♂さんは私の名前を呼んだの?

突然の事態に思考がついていかない…

つんく♂「この子は歌もダンスも演技も正直言って赤点。
      だけどインスピレーションを信じて選びました」

−−私…選ばれたの?

信じ切れない気持ちで頭の働かない中、先に選ばれた3人と
モーニング娘。のいる場所へ歩いていった…
そこに行くと、会場にいるみんなが私たち4人に向かって
「おめでとう!」
「頑張って!」
と声を掛けてくれていた。
それでも私はまだ信じ切れていなかった…
−−夢でも見てるのかなぁ?間違いじゃないのかなぁ?

でも、モーニング娘。の皆さんが周りに来てくれた時、
「おめでとう。これから一緒に頑張ろうね」
と声を掛けてくれて初めて実感が持てた…

この瞬間、は念願だったモーニング娘。に入れました…
298紺色の獅子:02/08/26 15:40 ID:qsFCCzGF
>この瞬間、は念願だったモーニング娘。に入れました…

この瞬間、私は念願だったモーニング娘。に入れました…

です…(鬱

当時のビデオ捜したけど無かったので、
記憶便りで多少の着色をしてあります…
299名無し募集中。。。 :02/08/26 16:02 ID:3IOkP8Kx
>>298
ありがとうございます。紺野、選ばれました、嬉しいです。
では、オーディション編を『紺色の獅子』というタイトルにします。
この後も続けてよろしくお願い致します。
なお、298を含めて記録しておきます。297のみ訂正されるのでしたら、
そのように、下の記録を変更いたします。
300☆全作品案内所☆ :02/08/26 16:03 ID:3IOkP8Kx

◎現  在  編
 >>74-75>>91>>135>>143>>206-207>>274

◎現在編(平行世界)
 >>74-75>>79>>87

◎紺色の獅子
 >>18>>107>>177>>210>>295-298

◎こんこんの夏休み
 >>169-171>>194-195>>233-234

◎中学生日記
 >>209>>211-212

◎不器用な恋心
 >>250-253>>286-289

◎シンデレラに憧れて(現在)
 >>257-258>>263>>271-272>>280-282

◎格 闘 技 編  ◎レコーディング編  ◎昔  話  編
 >>83          >>42           >>64
 
◎はじまらない昔話
 >>228-229
301名無し募集中。。。:02/08/26 20:09 ID:rj8LJvYt
紺色の獅子は凄くイイ!
302シンデレラに憧れて:02/08/26 21:36 ID:vlT1G+1j
俺が目を覚ました時、時計はすでに11時を過ぎていた。
いつもなら時間がもったいないと思い、9時には起きるのだが、
今日は9時を知らせる目覚ましを止めた後、二度寝した。
変な夢を見て一度起きたのだが、今はもう思い出せなかった。
母親は仕事に行ったらしい。
台所には朝食というより、昼食のような料理が置いてあった。
それを静かに食べ終えた俺は、勉強する気にはなれなくて自転車に乗ってでかけた。
少し強い風に吹かれながら、町の中心へとむかう。
町並みが変わってくるにつれて、外を歩いている人間も少し変わってくる。
この辺りには男にも人気な、洋服のショップなどもあるらしい。
少ない友達にも洋服が好きなやつとかいるが、あんな高い服買うなら、もっと
実用的な物を買えば良いのにと思う。
さほどの興味もないので、その辺りは素通りした。
なんとなくCDがみたくなったので、いつも行くお店に自転車にとめる。
ぷらぷらと店内を見てみる。
なんだか最近はラップやらインディーズやらが流行って
きてるらしい。前とは扱いが変わってるのがすぐわかる。
売る側の扱いで、全然売れなかったバンドが急に売れたりするのでは?
自分も情報に流されてたりするのかなぁと、ふと思った。
303シンデレラに憧れて:02/08/26 21:39 ID:vlT1G+1j
それにしても、人間って不思議だ。
何でもない出来事が、自分の奥底にあった何かを呼び覚ます。
女性アイドルの欄で、ふとあるものが目に入った。
堂々と、一つのコーナーになっている一角。
モーニング娘。とハロープロジェクトのCDたち。
CDだけでなく、DVDや写真集までもがおいてある。
自分でもわからなかった。なぜこんなに気になるんだろう?
昨日の夜、曲を聞いたからなんだろうか。
昨日コンビニで聞いたあの曲が頭に流れる。
コンビニに行く前にラジオで聞いた曲より、深く頭に残っている。
ここで足をとめている自分がいた。
だから、顔が良いだけだって。
たいして歌上手くねーじゃん。
テレビで頑張ってる姿とかも、きっとやらせだって。
自分の頭のどこからか、こんな声が聞こえてくるにも関わらず、
俺はDo it! Now のCDを手に取り、じっと見つめていた。
304シンデレラに憧れて:02/08/26 21:44 ID:vlT1G+1j

テレビ収録の前の楽屋での事。新垣、小川と話していた紺野は、
移動のバスの時話題になった夢の事が、どーうしても気になり、
頑張って先輩の誰かに聞いてみようと、二人と話しながら考えていた。
三人の会話がふと止まり、そこに矢口がやってきた。
「ん?何々??三人共、矢口がきていきなり会話やめないでよー(笑)」
そんな事言われても、ちょうど話が一段落ついたとこに来ただけで、
ある意味自信過剰なんじゃ…と新垣は思ったが、口にも顔にも絶対出さなかった。
チャンス!紺野はためらわず、夢の話を持ち出した。
「矢口さん、昨日の夜ってどんな夢見ました?」
「え?昨日の夢??昨日は…そーいや変な夢見たんだけど…あー、あー、う〜
…思いだした!なんか変なおじいちゃんに人生どーのこーの言われた(爆)」
その答えを聞き、小川、紺野、新垣は驚きの声をあげた。
「えー!矢口さんも!?」
「信じられない!」
「矢口さんもかぁ…」
三人のあまりにも大きな声に、楽屋のメンバー全員が注目した。
「どうしたの?何かあったの?なっちにも教えて〜。」
「何?なんか面白いことでもあったの?」
矢口、阿部、保田をきっかけに、三人を中心にして夢の話が始まった。
305シンデレラに憧れて:02/08/26 21:47 ID:vlT1G+1j

高橋、加護、辻、石川、吉澤がトイレから戻って来ると、
楽屋には変な空気が漂っていた。
5人が状況をつかめず、不思議そうな顔をしていると、
リーダーの飯田が口を開いた。
「ねえ、高橋。あなたも草原で変なおじさんに説教される夢をみたの?」
「あ…はい。そうですけど、それがどうかしました?」
「メンバー内でね、内容は少しずつ違うんだけど、ほぼ同じ夢を見た人が
何人もいるの。紺野、小川、高橋、ごっつあん、矢口、圭ちゃん。」
その話を聞いて、石川も驚いた。
「え…飯田さん、多分…私も…。」
「石川も??」
「はい。声だけで、おじさんの姿は見てないけど、低い男の人の声で…」
「なんか言われたんだ?」
「はい。」
「そっか…誰かにこの事言ったほうが良いのかなぁ?」
飯田の誰に言うようなわけでもない、
独り言のような質問に、矢口はすばやく答えた。
「大丈夫でしょ。別に恐い夢じゃなかったし。ね、圭ちゃん♪」
「うんうん、そう。みんな疲れてるし、たまたまだと思うよ。きっと!」
根拠のない保田の一言、そして慌てた矢口の素振り。
夢を見たメンバーの表情の暗さ。
加護は心の中で確信していた。やはり、みんな似た内容の夢を見たんだと。
そしてそれは確かに、‘恐い’夢ではないけれど、泣きたくなるような夢
だったんだろうという事。
そして、夢の内容は誰にも言えない、言いたくないという事。
加護は思い出しただけでも、身震いし、泣きたくなった。
306シンデレラに憧れている作者。:02/08/26 22:01 ID:vlT1G+1j
>>続きってのを作るの忘れました。
すみません。
しばらく更新をストップします。
読んでいる人は少なそうですが…。
307格闘技編:02/08/26 22:50 ID:nNukOnZv
立ち上がり腰を落として構える。
(でも・・・)
軽い気合と共に、正拳突きを放った。
静寂を破り、大気に波紋を作っていく。
木葉が一枚舞い落ちた。
(こんなことができたって)
俯いて拳を見つめる。
(結局、何もかも中途半端なんだ)
歌もダンスも演技も、何一つ飛び抜けた物はない。
そんな思いが、紺野の心を追いつめていた。
ヒュウゥゥゥゥ
金切り声のような音と共に、突如、突風が吹き抜けた。
思わず、後ろで束ねた髪を押さえる。
落ち葉が闇夜に吸い込まれて行く。
(さっきまであんなに静かだったのに)
肌寒く感じて、胴着の胸元を深く重ね直した。
(もう帰ろうかな・・・)
心の迷いが晴れるのではないかと思い、
何かに惹きつけられるように、この森にやって来たが、
結局何も見出せなかった。
紺野は重い足取りで、スポーツバッグが置いてある方へ向かった。
308格闘技編:02/08/26 22:52 ID:nNukOnZv
「そこのお嬢ちゃん」
突然、後から声をかけられ、驚いて振り返えった。
暗闇の中に小さな影が見える。
「どこかで見たことあると思ったら、やっぱりあさ美ちゃんかい」
嬉しそうに話しかけてくる。
話し方や、声の調子からして、それなりの年齢の女性のようだ。
「だれ?」
紺野は少し警戒しながら、
目を凝らして闇の中を見つめた。
影はフォッフォッフォと笑い、
「おや、こないだわたしの作った饅頭が美味しいと、散々言ってたじゃないか」
そう可笑しげに呟いた。
確かに紺野には聞き覚えのある声だった。
いつの間にか消えていた月明かりが戻り、
辺りを景色を映し出す。
声の主にも光が当たり、その姿を浮き上がらせた。
そこには和服姿の白髪の老婆が立っていた。
目元に厳しさが感じられるが、
全体的に優しい雰囲気を感じる。
その顔を見て、紺野は思わず呟いた。
「麻琴の・・・おばあさん?」
目の前にいるのは、メンバーであり、
親友である小川麻琴の祖母だった。
家に遊びに行っては、何度かお菓子などをご馳走になっている。
「そうだよ、わたしに気付かないなんてねぇ」
老婆はからかうように苦笑いをしてみせた。
309格闘技編:02/08/26 22:54 ID:nNukOnZv
「・・・何で、ここにいるんですか?」
こんな夜中に森の中で、老婆が一人でいるのは明らかに不自然だった。
紺野は相手が知人だったので、少し安堵して尋ねた。
その質問には答えず、老婆は口を開いた。
「この森は、死してなお戦いを求める強者の魂が集まると場所と言われているんだよ」
そう言って目を細める。
「あさ美ちゃんも何かに惹かれて来たんじゃないのかい?」
確かにその通りだった。
気を晴らすために、久々に空手をやろうと家を出たが、
どうやってこの森に来たのか、まったく記憶がなかった。
気付いたときには、この縄文杉の前に立っていたのだ。
「一試合、するかい?」
突如、老婆の足が地面を蹴った。
飛び込むと同時に右手が伸びてくる。
(貫き手!)
紺野は反射的に身構えて、後に飛んだ。
一回転して着地する。
ピッという音と共に、髪留めが切れて黒髪が宙に流れた。
空気を切り裂くような一撃。
紺野は思わず首筋に手を触れた。
(避けなかったら、やられてた)
目の前の老婆はすでに構え直している。
身長はゆうに10cmほども低い老婆が、
今は巨大な戦士に見える。
310格闘技編:02/08/26 22:56 ID:nNukOnZv
背筋が凍りつくような恐怖。
しかしその中に、一片の別の感情が混ざっていた。
(ドキドキ・・・してる?)
心の底から湧き上がるような昂揚感。
緊張したときの鼓動とは違う、
もうずいぶん長い間忘れていた気持ちだった。
(最後に感じたのは、そうだ、デビューしたときだ)
5期メンバーとして加入して、これからすること、出来ること、感じること。
未来の出来事を想像しては、いつも心弾ませていたあの頃。
(そっか。忘れてたのは、これだったんだ)
掌で顔をパンパンと叩いて、目の前の老婆を見据える。
(自分に出来る精一杯のことをする。それが私)
右手を引いて中段に構えた。
「良い眼をするじゃないかい」
老婆は嬉しそうに顔を歪めてから、
やや後屈気味の構えをとった。
(結果は、結果は・・・)
「結果は、自分次第!」
前に飛んで左手を突き出す。
軽く払われる。
左足を主軸に、右の正拳を放った。
やはり受け止められるが、勢いを止めずに右の上段蹴り。
「クッ!」
老婆の顔から余裕が消える。
払いきれずに、両手でガードしたため体勢が崩れた。
「つぁッ!」
軽い発声と共に体を捻って地面を蹴る。
(これが今の私の精一杯だ!)
回転する視界。
攻撃が決まったのか否か確認する前に、
紺野の意識は闇に溶けていった。
311格闘技編:02/08/26 22:59 ID:nNukOnZv
朝焼けの空にぼんやりと月が浮かんでいる。
背中に感じる落ち葉の質感が気持ち良かった。
額にはぬれたタオルがかけられている。
「まったく、着地も考えずに胴回し回転蹴りを使うなんて」
近くで溜息混じりの声がした。
「ごめんなさい」
紺野は反射的に謝ってしまった。
「おや、気付いたかい」
老婆は紺野の顔を覗き込んだ。
「ホントに無茶する子だよ。ウチの子もそうだけどね」
そう言って苦笑すると、額のタオルを交換してくれた。
(そっか、私負けたんだ・・・)
しかし心はなぜか清々しかった。
「よいしょっと」
紺野は体を起こすと縄文杉に寄りかかった。
「さっきまでとは全然違う顔してるよ」
「えっ?」
老婆の言葉に、紺野は思わず顔を上げた。
「最近ずっと浮かない顔をしてただろ?麻琴が初めて連れて来た頃のあさ美ちゃんは、いつも目をキラキラ輝かせてたのに」
紺野は黙って老婆を見つめる。
「あの子もずいぶん心配してたんだよ。最近あさ美が元気ないってね」
老婆は横に腰掛けると、紺野の頭に手を乗せ、ポンポンと叩いた。
「今はまだ頑張るだけでいいんだよ。評価なんかは後から着いて来るよ。それよりも、精一杯頑張れる紺野あさ美を忘れないことが大切だよ」
「・・・はい」
思わず目頭が熱くなり、紺野は手で顔を覆って、小さく頷いた。
(そっか、追いつめてたのは私自身だったんだ)
腕で目をゴシゴシと擦って立ちあがった。
312格闘技編:02/08/26 23:01 ID:nNukOnZv
「私、もう行きますね」
スポーツバッグを肩にかける。
「気をつけてね」
そう言って老婆は片目を瞑ってみせた。
「はい!」
紺野は背筋を伸ばして空を見た。
その目にもう迷いはなかった。
東の空にはもう朝日が昇っている。
「あ、そうだ。おばあさん・・」
振り返るとそこに老婆の姿はなかった。
「・・・おばあさん?」
辺りを見まわしても人影はない。
しばらくポカンとしていたが、気を取りなおして息を吸い込んだ。
「ありがとぉ〜〜〜〜!!!」
紺野は、思い切り叫んで笑顔になると、
縄文杉に背を向けて走り出した。