そんな中、私は川へ向かいました。毎年お盆に来た時に泳いでいた場所です。
別に泳ごうと思ったわけではなく、なんとなくそこに足が向いたんです。
川では、地元の子らしき子供達が何人か泳いでいました。
私はそこから少し離れた川原に座って、それをぼんやりと眺めながらボーっとしていました。
それは、私がなんとなく川を流れていく木の葉に自分を重ねてみていた時の事でした。
「ねえ。」
後ろから女の子の声が聞こえました。
「ねえ。」
二回目で、自分が呼ばれていることはわかったのですが、
びっくりしたのと緊張で振り向けずにいました。
「ねーえ。」
三回目でようやく振り向いた私の目に映ったのは、同い年くらいのかわいらしい女の子でした。
「ねえ、どこから来たの?何年生?」
「あ……、北海道から。四年生……。」
答えながら私は、この近くの小学校は、
生徒が全学年で二十人くらいしかいなかった事を思いだしました。
つまり彼女達にとって見たことない子はどこかから来た子なんです。
「じゃあ私の一つ下だね。それより、一緒に遊ばない?」
「え?」
みると、女の子の向こうで、五人くらいの子供達が川から上がって着替えていました。
「うん……。」
返事をしたとたん、彼女はぱあっと顔を明るくし、
私の手を思いっきり引いて仲間が待つ所まで駆け出しました。
私は、苛められるようになってから、人に話し掛けることがなかなか出来なくなっていました。
話し掛けられても、最低限の言葉しか返しませんでした。
嫌われるのが怖かったからです。
でも彼女は私のそんな思いをするっと通り抜けてしまったように思いました。
「ねえ、一緒に遊ぶってさ!」
「ほんと!? よし、じゃ空き地行こう!」
「じゃ僕ボール持ってくる。」
それはもう、北海道にいた時とは世界が違うようにすら感じました。
初対面の子に、『一緒に遊ぼう』なんて言う事は絶対に札幌ではしなかったし、
団結力みたいなものがあるように感じました。
それと同時に、苛められていることがバカらしくも思えました。