368 :
石後紺:
二日間のオフもすぐに終わってしまい、今日は仕事。
気分が滅入る。
仕事が嫌なわけじゃなくて、楽屋にいることに滅入るのだ。
一つの部屋に13人も押し込められ、とても息苦しい。
狭いわけではないが、隣を見れば誰か必ず傍にいる感じが堪らなく嫌。
特に私の隣は指定席だし…。
「でさぁ、こないだ里沙ちゃんが‥‥なんだよね。あと、安倍さんも‥」
絶対にまこっちゃんがいる。
さっきから何か話しているのだけれど、うわのそらで相槌を打っていたから内容はよく分からない。
まあ、適当に流しておけばいいと思う。
そんなことよりも、私は楽屋の隅にいる二人に、気が気でないのだから。
369 :
石後紺:02/10/03 15:41 ID:f14RnH7o
一つの雑誌を顔を寄せて見ている後藤さんと石川さん。
私が楽屋を嫌いな最大の理由。これ以上にはない理由。
楽屋にいれば嫌でも仲睦まじい恋人たちの姿が目に入る。
後藤さんを見る石川さんの瞳はとても甘くて、とろけそう。
石川さんに凭れかかられる後藤さんは表向きクールを装っているけど、彼女を見る瞳はとても優しくて、温かい。
たまに顔を見合わせては、二人だけにしか分からないアイコンタクトを交わしてクスッと笑う。
ダイキライ。
後藤さんなんてダイキライ。
370 :
石後紺:02/10/03 15:46 ID:/hbnz3ss
「ねえ、あさ美ちゃん聞いてる〜?」
心の底で唇を噛んでいる私に、まこっちゃんが頬を膨らませ、尻尾をパタパタと振る仔犬みたいに肩にじゃれつく。
「相手してよぉ」
特徴のある甘ったれなその声がウザイ。
耳に粘っこく絡む。 ……目障りだよ。
私を汚しておきながら、自身は汚れていないまこっちゃん。
ダイキライ。
まこっちゃんもダイキライ。
恋は私を嫌な女の子にさせる。
「どこ行くの〜?」
「‥‥トイレ」
不機嫌なのを隠さないで言うと、まこっちゃんはシュンとした顔になる。
無視して私は楽屋を出た。
廊下は楽屋より幾分か肌寒かった。
自分が着ている衣装は、茶色とか黒とか落ち着いた色が主体で、薄手の白いブラウスによく合う。
季節はもう秋なのだと実感する。
自分が苛立つのも、不安定なのも全部……秋のせい。
後藤さんのせい。
あれからもう少しで一年経つ。
371 :
石後紺:02/10/03 15:48 ID:9w6hu3Pf
よく言えば最高、悪く言えば身を引き千切られるような思い出。 普通の人からしてみれば最悪に分類される思い出なのかもしれない。
去年の秋、地方のコンサートでホテルに泊まった時に見た光景を私は忘れない。
否、忘れられない。 まだ、まこっちゃんとも普通の関係だった頃の話し。
その夜、私は相部屋の愛ちゃんを探していた。
居場所は分かっていた。
コンサートの興奮が冷めやまない愛ちゃんは、もう寝たいと言った私に大ブーイングで、まこっちゃんと里沙ちゃんの部屋を襲撃すると言って出ていったまま2時間経っても帰ってこなかったのだ。
372 :
石後紺:02/10/03 15:50 ID:/hbnz3ss
最初は、これでゆっくり眠れると思ったのだが、一人でいることに段々と心細くなり、静まりかえったホテルの廊下へと出た。
静か過ぎてドアの向こう側から誰かの寝息が聞こえてきそうだった。
不気味なくらい静寂に包まれた夜だった。 何故この時、愛ちゃんが二人の部屋で寝ているのかもしれないと一瞬でも考えなかったのか不思議だ。
愛ちゃんは遊び疲れてそのまま他の部屋に泊まることが多かったのに。
秋にしてはやけに冷えて、Tシャツの上にカーディガンを羽織っただけでは寒い。
部屋に着くと私はノックをしようと拳を作った。
そして、不意に、隣の部屋のドアを見た。 隣は、石川さんと後藤さんの眠る部屋。
今はまだ5期は5期で部屋割りされているけれど、いつか私も石川さんと……。
バカみたいなことを考えながらドアをノックした。
373 :
石後紺:02/10/03 15:52 ID:f14RnH7o
軽く2回ほど叩く。 乾いた木の音が空しく廊下に響いた。
反応はない。
もう一度、さっきよりも強く叩こうと拳を上げる。
そして、やめた。
本当に、本当に何となくだけれど、私はドアのぶを引いた。
カチリとのぶがスムーズに回り、ドアが開く。
自分がしたことなのに、私はそれが勝手に起きたことのように思い、息を呑んだ。
不用心だな…。
体がぎりぎり通れるくらいまで開けると、恐る恐る中に踏み込んで行った。
部屋の中にいるのは仲の良い同期なのだから 緊張する必要もない。
でも、緊張で上手く呼吸が出来なくて。
374 :
石後紺:02/10/03 15:54 ID:hituqyvI
壁のひんやりとした温度を確かめるように手を這わせて奥に進んだ。
ぼんやりと薄暗い茶色のランプが点っているのが見える。
天井には二つの黒い人影が。
「ごっちん……そんなとこダメだよぉ……ぁ…あんっ…」
なまめかしい喘ぎ声が耳に届いた。
二つの人影は重なり合い、一つの塊と化し、うごめく。
息を殺して私は そっと柱のカゲから奥を覗いた。
それは偶然ではなく、必然だったのかもと思う。
部屋を間違えた、などと言い訳はしない。 偶然目撃したのだとも。
無意識的に、確信犯的に、私はきっとこの部屋のドアの前に立ち止まったのだ。
375 :
石後紺:02/10/03 15:56 ID:0BozDCuT
それがイケナイコトだと頭では理解していた。でも、好奇心や欲望に勝てなくて、私はベッドの上にいる石川さんと後藤さんの行為に食い入った。
好きな人を他人に抱かれる嫉妬は生まれなかった。
ただ、見たかった。 普段は見られないような石川さんの姿を。 これを逃したら永遠にチャンスは巡ってこない気がした。
ベッドに横たわるパジャマ姿の彼女にまたがり後藤さんは胸を服の上から揉んだ。
「梨華ちゃんてホント胸おっきいよね」
後藤さんはもどかしそうに、慣れた手つきパジャマを脱がせる。 ピンク色の石川さんらしいブラジャーが見え、ゴクリと生唾を飲んだ。
着替えの最中に何回も見たことがあるのたが、ドキドキしてしまう。
376 :
石後紺:02/10/03 15:58 ID:SksJNMRV
「柔らかいし‥‥おっきいし‥サイコウ」
「‥ぁん‥気持ちぃぃ‥ごっちん‥‥はぁ‥大好きぃ‥」
ずらしたブラジャーからピンクの蕾が勃っているのが分かった。 褐色の肌にポチっと勃ち上がっている可愛らしい乳首。
後藤さんは不敵な笑みを零すと、おもいっきり胸の蕾に吸いついた。
くわえこんで蕾を舐めまわす。
「あ‥ん‥‥っぁん‥‥いいよぉ‥ぁ‥‥あん‥」
もう片方の胸も後藤さんは手のひら全体で容赦なく揉み上げる。 二人の荒い息遣いに合わせて 私も深く息を吐き出した。
胸や頭が熱く、ドロリとしたものが溢れそう。
377 :
石後紺:02/10/03 16:04 ID:/hbnz3ss
切なそうに顔を歪めて悶える石川さん。 下着ごとパジャマのズボンを剥ぎ取り、後藤さんは彼女の膝を立てさせた。
その部分へと顔を埋める。
「ふぅん‥‥あぁあ‥‥もっとぉ‥」
華奢な肢体が跳ね上がった。
背中が反り返り、ベッドシーツを掴む手にも力が入ってシワを作った。
卑猥な濡れた音を立てて石川さんを堪能した後藤さんが舌をそこから離すと愛液がツーっと糸をひいた。
照明の下で厭らしく光る。
それを指で拭うと後藤さんは石川さんに見せた。
「ねえ‥見て梨華ちゃん。こんなに濡れちゃってるよ。‥‥エッチ」
「やだぁ‥イジワルしないでよぉ‥‥」
「梨華ちゃんが可愛いのが悪いんだもん」
愛しくて堪らないといった様子で後藤さんは石川さんの顔や首筋に執拗に口づけた。 音を立てて何度も何度も。
378 :
石後紺:02/10/03 16:06 ID:9w6hu3Pf
唇が重なると、石川さんの手が後藤さんの首にまわされて 深い口づけとなった。
お互いを貧り合う情熱的なキス。
存分に互いを味わい、唇が離れた。
蒸気して薔薇色に染まった石川さんの裸体はとても綺麗だった。 与えられる快楽に喜ぶ表情が美しかった。 もっと近くで感じたい。石川さんの吐息や、潤んだ瞳を。
後藤さんの手が自分の手だったら……あの唇が、あの瞳が…後藤さんが自分だったら。 その後、どうやって自分の部屋まで戻ったのかは不鮮明。
タオルを顔にあててベッドに倒れ込んでいた。
私は泣いた。
涙で顔がぐちゃぐちゃになるほど。
喉もカラカラになるくらい。
下着の中が気持ち悪くて、そっと触って見ると濡れていた。
それが自己嫌悪をさらに誘って 私はもっと泣いてしまった。