収録が終わり「お疲れさまでした」と、私はスタジオを後にした。すれ違うスタッフの
人たちに挨拶しながら、楽屋へと狭い廊下をてくてくと歩いていった。その床は機材のコ
ードがひしめき合い、時々足を取られてしまう。
「ひゃ!」
短い悲鳴と共に、肩に誰かが被さってくるのを感じた。
「あさ美?大丈夫?」
私は、足に絡んだコードと格闘している紺野あさ美に声を掛けた。
「うん――ごめね愛ちゃん」
「怪我しなかった?」
「うん平気」
2人して歩いていくと、自然と明日からのオフの話になった。から、と言っても2日間だ
けだが…。
「愛ちゃん、何処か行く?」
「う〜ん。まだ決めてない。あさ美は?」
「だったら、一緒に何処か行かない?」
「うん…いいけど」
「こないだ、辻さんと、まこっちゃんと、里沙ちゃんと、下北行ったんだけどさ――」
「ああ。里沙ちゃんのお母さんも来たって?」
「うん。でさ――愛ちゃん居なくて寂しかったからさ」
あさ美は、そう言うと、意味深な視線を私に送る。全くわかりやすい。
「いいよ。――じゃ明日ね」
そう言うと、あさ美はまだ何か言いたそうに私の目を見る。――その目。やっぱりか。
「今日、あさ美の家泊まってもいい?」
うんと、頷いた彼女の顔は、紅く染まっていて、ぷにっとしたその頬は紅く染まってい
て。いたたまれなくなった私は、そのわずかに湿った唇に一瞬チュっとキスをした。
あさ美は、紅くなっていた顔をさらに紅くして、
「もう!誰かに見られたら――」
「だってあさ美が可愛い目して誘うから」
「そんなこと言って――」
「明日何処行く?」
「ちょっと愛ちゃん話すり替えないで」
「何処行きたい?」
「愛ちゃんってば」
ぷーと頬を膨らました顔がやっぱり可愛くて、私はもう一回唇を重ねた。
「もう…ちょっとは…」
私はクスっと笑うと、楽屋に小走りでかけていった。
「お邪魔しますっと」
私はあさ美の部屋に入ると、荷物を隅に置き、ベットにポンっと飛び乗った。
彼女の臭いがして、なんだかくすぐったくなる。
「あさ美?――何してるの?」
何時までも扉のところでもじもじ躊躇している。まだ恥ずかしがってるのか?あさ美とは、
もう何回も体を重ねているが、彼女はいつも恥ずかしがる。ある程度まで進むと、むしろ
積極的になるんだけど。
「ねぇ?明日何処に遊び行く?」
「うん。いいよ何処でも――そんなことより早くおいでよ」
「うん…」
おずおずと近づいてくるあさ美が、ベットの横に来たとき、私は彼女の腕をぐいと引っ張
った。「きゃ」っと可愛い声を上げて、スプリングで少し揺れる。
私は仰向けになったあさ美の上に、腕立て伏せのように被さると、腕を使って、ゆっく
りと顔を近づけた。