【小説】(　´�D｀) 〜のの、の夏休み〜(　´�D｀)

「きゃっ！」

石川と吉澤が出会った頃の少し前の時間、
日の沈むのが遅い夏の御陰で真っ暗ではないが、
暗さの増した森の中を駆け抜けていた辻がつまずいて転んでいた。

「いたたたたぁ〜〜。」

ジンジンする膝を押さえると小さな手のひらに血がついた。
急がないと。
鈍く響く痛みをこらえ立ち上がりまた走り出した。


「ハァハァハァハァ・・・。」

湖まで着いた辻は立ち止まり呼吸を落ち着かせる。
鼓動のリズムがゆっくりになってきたところで辺りを捜した。

「あっ、あった〜。」

湖のすぐそば、昼間加護と寝ていたところに携帯電話はそこにポツンと置かれていた。
辻は膝をつきケータイを両手で抱きしめる様に拾い上げた。

「良かった〜。」

折りたたみ式の携帯電話を開ける、もう6時40分だ。
早く帰らないと・・・そう思って立ち上がろうとした時、湖の水面に自分の顔が映った。
少しぽっちゃりとした輪郭にダイエットしなきゃなぁ〜とため息をついて目を伏せる。

えっ！


もう一度水面に目をやった時、辻は声には出さなかったがギョッとした。
自分のすぐ後ろから覗き込む人の姿が映っていたからだ。

バッっと後ろを振り向くと、そこには透き通る様な白い肌の可愛らしい女の子が立っていた。
辻と同い年ぐらいだが初めて見る顔だ。
あ、あの・・・、そう言おうと辻が口を開きかけた時、先に女の子が声を発した。

「ケガ・・・してるの・・・？」

あっ！自分の膝に目をやる辻。
すっかり忘れてしまっていたが転んだ時についた傷は血で滲んでいる。

「ちょっと待ってって・・・。」

そう言い残すと名も知らぬ女の子は森の中へと消えていった。

しばらくすると女の子が手に何かを持ってこちらに駆けてくる。
近づいて来るにつれて手に持っている物が見えてきた。
少し古びた包帯と・・・葉っぱ。

「これ、持ってて・・・。」

辻の手に包帯と葉っぱを渡すと女の子は両手で湖の水をすくいとり、
辻の膝の傷にかけ血と土の汚れを取る。
そして傷口に葉っぱを貼りその上から慣れた手つきで包帯を巻いてくれた。

「あ、あの、どうもありがと。わたしは辻希美、あなたは？」

「わたしはあさ美・・・紺野あさ美・・・。」


目の前の女の子は恥ずかしそうにボソボソとこたえた。