【小説】(　´�D｀) 〜のの、の夏休み〜(　´�D｀)

「う、う〜ん・・・。」

いけない、眠ってしまっていた。
うたた寝から目覚めて辻は考える前に口の右端から垂れ落ちているよだれを拭取った。
部屋の中は電気も点いていず、夕日も落ちきったのか外からの日の光も届かずに暗くなっている。

次に辻は携帯電話を確認した。寝ている間に加護が連絡してきていないか、
起きたら確認するのがこのところの辻の習慣になっていった。

1件の着信ありの文字、しかし辻が見たのは石川からのものだった。

なんだろう・・・？

別に石川が帰ってきた後に電話の用件を聞いてもよかったのだが、
その時の辻には無性に気になり薄暗い部屋の中から電話をかけてみた。

呼び出し音が2回鳴らるか鳴らないか石川はすぐにでた。

「もしもし、梨華ちゃん？」

「・・・のの？もー急に電話してこないでよねっ！ビックリしたじゃない。」

その口調とは裏腹にﾋｿﾋｿ声で話してくる石川。何かがおかしい。

「どうしたの？なんか変だよ。」

「今、北のお化け屋敷にいるのよ。」

なんで石川があの場所に？！
自分が寝てしまっていた一時間にも満たない時間に何があったんだ。
混乱する辻にかまわず話を続ける石川。

「それでね、今から加護ちゃんときっ、きゃあ〜！！」

「もしもし？！梨華ちゃん〜！！どうしたの！！梨華ちゃんっ・・・。」

石川の悲鳴と物音が聞こえた後会話は通じなくなった。
石川が言いかけた言葉、加護があの場所にいるのだろうか。

加護が見つかったかもしれないという喜びより不安の方が押し迫ってくる。
もし、以前自分が体験した様なことが今二人の身に起きているんだとしたなら・・・。

「あいぼん、梨華ちゃん待っててね。すぐに行くから。」

森の入り口の前で一息つくようにつぶやいた辻。
森の中に踏み入ろうとした時、誰かがこちらに向かって走ってくるのが見えた。
近づいてくる人影がだんだん見えてくる、あれは・・・吉澤？

「ハァハァ・・・。あれーのの？どうしたのよ。」

「よっすぃ〜こそ、なんでここに。」

走ってきたのだろうか吉澤の額には少しの汗が光っている。

「梨華ちゃんから電話があって。なんか慌ててたみたいでよくわかんなかったけど、
加護ちゃんがどうとか言ってから急いで来たんだよ。」

「もしかしてののも？」

辻はコクリと頷き、石川との話の内容と悲鳴の後に電話が通じなくなったことを伝える。
それを聞いた吉澤は少しの間、口元を手で抑えると辻の両肩を掴んで言った。

「私今から駐在所に行って保田さん呼んでくるから、ののはここにいて！わかった？」

「う、うん。」

いつもは見せない吉澤の真剣な表情に辻は気圧される様に同意した。
掴んでいる肩にギュッと力を入れた後、吉澤は休む間もなく走っていった。

吉澤の姿が完全に消えて、辻は森の中で一人ぽつんとしていた。

（早く戻ってきて〜、こうしてる間に梨華ちゃんに何かあったら。
それにあいぼんも見つかるかもしれないのに・・・。)

辻の頭のはるか上で街灯がチカチカと点灯してる。

吉澤はまだ、来ない。

辻は吉澤がやってくるだろう道に背を向けて森に足を踏み入れた。

｢よっすぃ〜ごめんね。約束・・・破っちゃう。」