【小説】(　´�D｀) 〜のの、の夏休み〜(　´�D｀)

プルプルプル、プルプルプル…

「だめだぁ〜、またでないや。」

電話の向こうで空しく鳴り続ける呼び出し音を止めた辻。
朝起きてすぐに携帯電話を確かめたが加護からのメールはきていなかった。
それから何度も何度も電話をかけてみたが、
加護が電話にでることはないまま時刻は夕方になる頃だった。

（もしかして昨日からずっと帰ってないの？）

ピンポーン

その思った時、辻の家のチャイムが鳴った。そしてチャイムの音と同時に、辻は
昨日加護が「明日にでも遊びに行く」と言っていたことを思い出した。

（誰？もしかしてあいぼん？）

少しの期待を抱えた辻は部屋を出ると階段の上から下の階を覗き込む。
安倍が応対してるのは中澤だった。しょんぼりしていた辻だったが中澤の様子がおかしい・・・。
いつもと違いどこか元気が無いように見えた、それに目が一晩中泣いた後みたいに腫れている。

二人が居間に入った後辻は下の階に下り、壁にはりつき部屋の外から聞き耳を立てる。

壁の向こう側から二人の話し声が聞こえてきた。

「・・・や、もし誘拐でもされてたら・・・。」

「大丈夫だべよあ〜ほら、ちょっと家出して帰りづらくなったりとか、山で遭難してるとか、×××に拉致されたとか。」

どんどん悪い方へ持っていく安倍に割って入りたくてムズムズする気持ちを押さえる辻。

「うぅ・・・うちが仕事ばっかりでかまってあげれへんかったからやあぁ〜！」

中澤が泣いている、いつも気丈で少し怖いくらいの中澤が泣いている。

「捜索願いも出したし大丈夫だよ、圭ちゃんもすぐ見つかるって言ってたし・・・きっと・・・。」

中澤の悲痛な声に辻はいたたまれなくなり、階段を音を立てないように上がり部屋へ戻った。
携帯電話のメモリーから加護を選択するとさっきの声がまだ離れない耳に当てる。

「あいぼん、どこにいるの・・・でてよ、ねぇあいぼん・・・でてよぉ〜。」

プルプルプル、プルプルプル…

電話の向こうの加護はいつまでもでず、鳴り続ける呼び出し音を辻は止めれなかった。

「う・・・うう〜ん。」

一瞬、まだ目が覚めていないのかと思ってまぶたをパチパチとしてしまった。
加護が目を開いてもそこが変わらず暗闇だったからだ。
何も見えない中、背中の感覚で仰向けに寝かされているのがわかった。
動こうとすると体中がキシキシと痛む。

「なんなんやぁ、ここ・・・どこやねん。」

ぼんやりとした頭で必死に事態を理解しようとする。
そうだ、家に帰る途中に誰かに押されて階段を転げ落ちたんだ！

（もしかして・・・うち死んでしもたんやろかぁ・・・。死んだらこんな真っ暗なるんかなぁ。）

結構冷静にそんなことを考えているとだんだんと暗闇に目が慣れてきた。
どうやらここは屋内らしい、よく見えないがあまり大きい部屋ではないようだ。
最初、床にでも寝かされているのかと思ったが加護の体は台の様な物に寝かされている。

（ウチまだ生きてるみたいやなぁ。死んでたらウチを殺した犯人のとこに化けて出たろ思てたんやけど・・・そうや！ウチの背中を押した奴はどこにおんねん！）

その時加護のすぐそばでポゥっと灯りが点いた、いやロウソクを持った少女がすぐ側に現れたのだ。

加護はヒィッと叫びそうになったがとっさに堪えた。
その少女は見た感じおとなしそうでとても加護を迎えにきた死神の様には見えなかった、
しかし扉が開く音もしなかったし足音もしていなかったのに一体どこから現れたんろう。
だいたいロウソクを持って近づいてきたのならもっと早くに気付いてもいいはずだ。

「あ、あんた誰やねん！」

加護が声を震わせながら怒鳴ったが、ロウソクの灯で浮かび上がった少女の顔は無表情のまま変わらない。


「ごめんね・・・あなたがいるとののちゃんと一緒にいられないもの・・・。」

「のの？のののこと知ってんのか？！。」

加護はとっさに起き上がろうとしたが体に痛みが走って起き上がれなかった。
少女は何も答えずにそっと右手を振りかざした、
すると今まで見えていなかったが手には斧が握ってあるのが見えた。

「う、うそやろ・・・？」

助けを乞う様な加護の表情を見ても少女は眉一つ動かさない。

「いややーーーー！！！」

加護がギュッと目を閉じると少女が勢いよく斧を振り下ろし風を切る音が聞こえた。
痛みは無かった、しかし加護の意識はプツリと途絶えまた暗闇の底へと落ちていく。


プルプルプル、プルプルプル…


ロウソクの灯だけが照らす部屋で携帯電話の呼び出し音が響きだした。