【小説】(　´�D｀) 〜のの、の夏休み〜(　´�D｀)

夜、辻は自分の部屋のベットの中で今日の出来事をもう一度考えてみた。

紺野はなぜあのお化け屋敷に入っていったんだろう・・・。


チッチッチッ


時計の秒針が3回と動かないうち布団を頭に被る辻。

（ダメだぁ〜、考えてもよくわかんないや〜。それに・・・。）

あの地下室での奇妙な体験を思い出すと体がブルブルと震えてくる、
辻が布団の中でうなだれるいると枕もとのケータイがメールの着信を知らせた。

『ののー元気でやっとるかー？』

「あいぼんからだぁ〜！」

布団から顔半分だけだしてメールを見ていた辻は嬉しそうに起き上がり、
枕に肘をついてメールを打ち返す。

『元気だよ〜、あいぼんこそ寂しいんじゃないの〜？』

『アホかー！こっちは食べもんもウマイし極楽やでー、今日食べたたこ焼きはおいしかったなぁ〜。』

（たこ焼き、ジュルジュル・・・。ハッ！）

辻が携帯の画面を見たまま固まっていると加護から続けてメールが着ていた。

『心配せんでもなんか美味しいもんお土産に買ってきたるから。
んじゃもう遅いからそろそろ寝るなー、おやすみーのの。』

『ほんとに〜？楽しみにしてるからね〜、おやすみ〜。』

加護とメールしたことでなんだか気持ちが軽くなった様な気がする、
屋敷でのことを加護に話そうかと迷ったが、心配をかけるといけないので辻は話さなと決めた。

（はやくあいぼんに会いたいな・・・。）

部屋の電気を消そうと起き上がり、ベットを出ようとした辻がまた布団の中へと戻る。

（やっぱり、電気つけたまま寝ちゃおう。楽しい夢みれたらいいなぁ。）

とびきりに明るい夢を夢見ながら目をつぶる辻・・・。

（あ、あれ？）

辻が目を開けるとそこは暗闇だった。
いや正確にいうとポツポツと光の点が浮かんでいるし、
大きな光る球体もあるし完全な闇ではなかったが辻の部屋のベットの上でもなかった。

（空の・・・上？）

下を見ると小さくなった辻の家やよく通る道が見える、辻はフワフワと空に浮かんでいた。

（あぁ、これは夢なんだぁ・・・。）

なぜだかはわからないがこれは現実ではなく夢だという強烈な実感があった。
見慣れた景色を上空から眺めているだけで自由に飛ぶこともできず、パジャマ姿のまま
空に浮かぶ辻。飛んでいければ月にも届きそうなのに、ただ見ていることしかできずにいた。

よりにもよって変な夢みちゃったなぁ〜、そんなことを思っていると突然周りの風景が動き出した。
もしかしたら辻が動いていたのかもしれない。
雲や星が吸い込まれる様に動いて行き、辻も吸い込まれる様に逆側へと動いて行く。

（もぉ〜こんな変な夢やだよぉ〜〜！）

声には出せずに辻がそう叫んだ時、空はピタっと動きを止めた。
気がつけばそこは湖の上空だった。近くにはあのお化け屋敷も見える。

（う〜〜、なんでこんな場所で止まるの〜。）

辻のぼやきはまた声に出せなかった。
お菓子の家にいっていっぱいお菓子を食べれる夢とかが良かったなぁ〜、
ふいに流れた星を見てそんなことを思う。

冷たい夜の風が吹くと下ろした髪が空にゆれる。

（あれ・・・なにかなぁ？）

湖の水面が波立っている。風のせいだろうか？
でも波立っているのは湖全体ではなく一部だけだ。

（ここからじゃよく見えないよ〜、もう少し近づければ。）

辻がそう思うや否やスーっと体が動き出した。
さっきと同じに飛んでるというより吸い込まれるという感じだったが、
さっきよりもずっとゆっくりな速さで地面に近づいていく。

頭から地上に落ちていくという味わったことの無い感覚に戸惑いながらもじっと目を凝らす辻。
地面に近づくにつれてだんだんはっきり見えてきた。

（誰かが溺れてる？！）

湖が波立っていたのは誰かが溺れていたからだった。
必死でもがいていた顔はわからないがどうやら子供のようだ。

（早く助けないと〜！）

足をバタつかせ空中を泳ぐ様な動きをする辻、しかし辻の意志は無視されて
体はエスカレーターに乗っているように思い通りにならない。

（あとちょっと、あとちょっとの距離なのに〜！）

湖の水面はもう目の前だ、辻はもうこれが夢だということも忘れてしまっていた。
必死に手を伸ばすとギュっと目を閉じて思い切り念じた。

（お願い、この手を掴んで！！）

がっ！

手を掴まれた瞬間、目がはっと覚めた。
起きたばかりではっきりしない頭の中ではっきりと覚えている今見た夢。
手には強い力で握られた感触が残っている。

しばらくベットの上でボーっとしていた辻は起き上がるとそそくさと着替え出した。
時刻はまだ6時を少し過ぎた頃だった。