【小説】(　´�D｀) 〜のの、の夏休み〜(　´�D｀)

夏休みに辻希美が体験するちょっと不思議な物語り。
れすよ。

「のの〜！、起きるべさー！！」
「う〜ん、、、。」下の階から呼ぶ安倍の大声で辻は目を覚ました。
「ふぁ〜、なっちの声はいっつも大っきすぎるよ〜。」ボサボサの髪でパジャマ姿のまま降りてきた辻に、安倍がまた大声で怒鳴る。
「ののがなんべん呼んでも起きないからだべさ！！ほら、早く食べないとなっち特製朝ご飯が冷めちまうべ。」
テーブルの上には食パン、いちごジャム、スクランブルエッグ、アイスコーヒーが並んでいる。
「らって、朝って苦手なんだも〜ん。いただきま〜す。」
いちごジャムをたっぷり塗ったパンに噛り付きながら辻が言った。「梨華ちゃんは〜？まだ寝てるの〜？？」
「梨華ちゃんはもうとっくに部活にいったべ、まったく夏休みだからってもう10時だべよ！」
「てへてへ。」「それより早く食べて着替えな、今日亜依ちゃんと遊ぶ約束してるべ？」
「そーだった！早く用意しないと、うぐ。」

「よし、これでおっけぃ〜。」朝ご飯を急いで食べ、ボサボサだった髪をポニーテールにセットする辻。
「おはよーさ〜ん！ののちゃん遊ぼー！」
着替えを済ませた辻をまたもや下の階から呼ぶ大きな声。
「は〜い！あいぼんオハヨー。」「今日はちゃんと用意できてんねんなぁ〜。」
辻と同い年だけどちょっとませてる加護がからかう様に言う。
「今日はが余計だよ〜、なっち弁当出来てる〜？」
奥から弁当箱を持って安倍がパタパタと出てきた。
「はいはい、なっち特製愛情たっぷりお塩弁当だべ〜（はぁと）。」
「な、なんやマズそうな名前やな〜・・・。」
「ちょっと！亜依ちゃん、そりゃどういう意味だべ！！」
「い、いや、、なんもあらへん。ののはよいこーー。」
「う、うん。じゃあ行ってきま〜す。」
玄関を急いで出る辻と加護。
「二人とも気をつけるべよ〜〜。」

「ふぅ、ほんま大きい声してて怖いわ〜。」「普段は優しいんだけどね〜（笑）」
辻の家から歩いて十数分、二人は田んぼ道を歩いていた。
「ねー、今日はどこを探検するの〜？」「そやなぁ〜、北の森はどうや？」
「え〜〜、あの森って確かお化けがでるお屋敷があるとかっていうし・・・。」
「なんやのの、お化け信じてんのんか？子供やな〜。」
「そ、そんなことないもん！じゃあ北の森で決定ね！」

たんぼ道を北に歩いてさらに数十分。その森はまだ11時すぎなのに薄暗く、
異様な雰囲気をかもし出していた。
「ね、ねぇあいぼん。ほんとに行くのぉ〜？」
「なんやののﾋﾞﾋﾞってもーて、ほらはよ行くでー。」
「ああ、待ってよ〜。」
辻を置いてスタスタと森の中へ入っていく加護とそれを追う辻。
ガサガサ森の中を歩いていく二人、森の中は鳥やセミの鳴き声で溢れていた。
「わ！蛇の抜け殻踏んでしもた！」
「あ〜、あいぼんアレ見てーでっかい蝶々〜。」
入る前は不気味だった森も案外楽しんでしまっている二人。
しばらく歩いていると突然大きな広場い出た。
目の前には、廃墟となって薄汚れた洋館が姿を表していた。

再び村に平和が訪れた｡ 完

(　´�D｀)今日はここまでれすよ。まだまだ続くのれす。（たぶん）

( ´_ゝ`)フーン

oﾉﾉﾊヽo
从 ´�D｀)＜ちょっと期待。

その洋館はさる名家の別荘だったが没落後、売りに出され取り壊しの工事中に
なんども事故が起こり、そのまま放置されたものだった。

「お次ぎはここやなぁ〜。」
「えぇ〜〜〜、あいぼんまさかここに入るつもりなの〜？」
「当たり前やん、さっ行くで〜。」

躊躇している辻を置いて扉を開ける加護。

「待ってよ〜〜！」

ギィィーー。屋敷の中は薄暗く今にも何か出そうな雰囲気だった。
バタン！！

「ひゃあ！」

扉が1人でに閉まり辻は思わず声をあげてしまった。

「・・・・・・。」
「か、風で閉まったんや。そやそや。」

気まずい沈黙を破る様に口を開く加護。
玄関を抜け、大広間に入った二人。広間にはボロボロになったじゅうたん、朽ちかけた大きなテーブル、
もう何年も使われていない暖炉、など当時の裕福な住人の裕福な暮らしぶりを覗かせていた。

「うわぁ〜ホコリだらけで汚ないな〜。どこから調べよか？」

辺りを見回すと、正面に奥へ続く扉、左手に二階へ続く階段が、そして右手には地下に続く階段が見えた。

「じゃあ・・・、奥の扉。」

余り乗り気でない口ぶりで辻が言う。
奥の部屋はキッチンだ。一般のそれよりは大きなキッチン、コックでも雇っていたのだろうか？
錆びた包丁や、古びた食器が散乱している。

「なんもあらへんな〜」
「そうだね、食べられそうなものないね。」
「・・・・・。」

残念そうに言う辻になかば呆れながら加護が部屋を出る。

「次は〜〜、地下行こか〜？」
「ええ〜〜！先に二階に行こうよ〜。」

二階に行くのも嫌だったが、地下に続く階段にはそれ以上に嫌な雰囲気を辻は感じ取っていた。

(　´�D｀)ﾉ

見てるよ、作者さん。
期待してます。

>>14
(　´�D｀) ありがとうれす。説明不足で稚拙れすいませんれす。
　　　　　洋館はバイオ１の様な感じで脳内補完してくらはい。

そんな辻の直感を感じ取ったのか、あっさりと辻の要望をきく加護。

「ほな二階行こかー。」
「うん。」

大広間の左手側、二階へと続く階段は木が腐り今にも崩れ落ちそうにギシギシと嫌な音を
立てていた。

「気ぃつけや、ゆっくり登るんやで。」

加護の言葉にコクリと頷く辻。同い年というよりまるで姉と妹といって感じだ。
丁度、階段の中間に来た辺りの壁に大きな肖像画が飾ってあった。
油が滲んではいるが描かれている人物はハッキリとわかる。
少しアゴのとがった美しい少女。辻や加護より少し年上だろうか。

ぼ〜っと絵に描かれた少女を眺めている辻の手を加護が引く。
床が崩れないようやっとの思いで登りきった階段。
二階には４っつの部屋があるようだ。

「まずはここ。」

一番近くの部屋に向かう二人。
誰かに壊されたのかドアがほとんど無い状態で部屋の中が丸見えだ。
入ってすぐ目についた本棚。棚にはたくさんの本が並んでいる。
辻には訳のわからない難しそうな本ばかりだ。
ほかにはホコリだらけのベットと机があるだけだ。

「次行くで〜。」

二つ目の部屋。

「わーーー！！」

ドアを開けた加護が突然大声をあげた。

「どうしたの？」
「い、今部屋の中に誰かおってん！」

ドアノブを強く持ったまま、目をつぶっている加護の肩から顔を出し
辻が中を覗く。

「なんだ、鏡じゃ〜ん。」

部屋の正面には大きな鏡付きの化粧台があった。
鏡に映った自分を他人と見間違えたのだ。

「へ？ほんまや・・・。」

屋敷の前では幽霊なんて信じてないと言っていた加護のあまりの
慌てように辻は少し可笑しくなった。

部屋の中はベット、大きな衣装タンス、ベットの近くに小さな台とその上に所々破損しているが
アンティークもののスタンドライト。

タンスの中は何もなく、ライトの電球は割れていた。

「なんやなんもあらへんやん、次いってみよぉ〜。」

三っつ目の部屋。

さっきのようなことがないよう、今度は慎重にドアを開ける加護。
今での部屋より少し広くてベットが二つある。
どうやら二人部屋のようだ。

小さな本棚には子供向けの絵本。湿気でクシャクシャになっている。
壁に手を繋いだ二人の女の子のラクガキがクレヨンで描かれている。
余り上手いとはいえないな〜と辻は思った。

「ちょっとのの来てみー。」

部屋の隅に置かれた机の前に立っている加護が呼ぶ。
加護の手には写真立てが持たれていた。ひび割れたガラスの向こうに見える写真。

いい感じですね。期待してます。

＞作者さん
小説総合スレッドで紹介＆更新情報掲載しても良いですか？
http://tv2.2ch.net/test/read.cgi/ainotane/1027284701/

oﾉﾉﾊヽo
从 ´�D｀)＜お疲れ様です。毎日更新ｲｲ!!

>>作者（職人）さん
いっつも新作おつかれさま。ありがとうございます。これからも頑張って・・・。
楽しみに拝見しております♪

結構ｲｲﾈ…期待かも

>>20>>24
(　´�D｀) あんま期待しないでー、でも読んでーｗ

>>21
(　´�D｀) バンバンやったてくらはい。

>>22
(　´�D｀) あう、すぐに記録打ち切り（毎日更新）

>>23
(　´�D｀) ありがとうれす、職人と呼ばれるの程書いてないれすっていうか
　　　　　初めて書いてるれすよ〜。

二人には見慣れない白黒の写真。右に関西の某おばさんタレントに似ている男性、
左にロングヘアーの綺麗な女性、真ん中に椅子に座った美人な少女、
写真の右端はロングヘアーの女性の胸辺りから斜めに破けているが
もう1人誰かの手が写っている。

「これって階段のとこに飾ってあった絵の女の子だ〜、ここに住んでた人達かな〜？」
「たぶんそうやろな。」

お父さんと、お母さん、その子供かな。もう1人は？
破けて顔の見えないもう１人の人物が辻は妙に気になっていた。

ここはあの絵の少女ともう1人の誰かの部屋だろうか？
今までの部屋とは違い、好奇心旺盛に辺りを探る辻。
二つ並んでいるホコリだらけのベットの下を覗き込む。

「あ、何かある。」

ベットの下にうす汚れた女の子の人形を見つけた。
汚れた人形の顔がどこか哀しげで、辻はホコリを払い
人形をベットの上に寝かせて部屋を後にした。

四つ目の部屋は丁度、廊下の突き当たりに行ったところにある。
突き当たりにある窓のガラスが割れている。
割れた隙間からヒューヒューと風の通る音が聞こえる。

部屋の中はベットと机以外なにもない。
どおやら客間のようだ。部屋の窓ガラスが割れている。
割れた隙間からヒューヒューと風の通る音が聞こえる。

「なんや幽霊なんか全然おれへんやん〜。ギャ！」

加護が勢いよくベットに腰掛けた瞬間、ベットが崩れホコリが宙に
ヒラヒラと舞い上がった。
ブツクサと文句を言いながらお尻に付いたホコリを払う加護を見て
辻がケラケラと笑っている。

「もぉー！はよ出てよ、こんな部屋。」

加護に促がされて部屋を出た辻、廊下の窓をふと見ると
屋敷から少し離れた場所に小さな湖があるのを発見した。

「ねぇ〜、見てあいぼんあんな所に湖があるよ〜。」
「あっ、ほんまや知らへんかった。グゥ〜〜〜。」

・・・・・加護の腹の中から大きな鳴き声がした。

「うう、そおいえば腹減ったなー。」

右手でおなかを摩る加護を見て、辻は肩から斜めがけにしたバッグの中
から携帯電話を取り出す。
携帯の待ち受け画面には13：10分の文字が表示されていた。

「もう１時過ぎてる〜。ねぇここホコリっぽいし、あの湖まで行ってお弁当食べない？」
「そりゃあーええアイデアやな。」

oﾉﾉﾊヽo
从 ´�D｀)＜更新ｷﾀ!!　乙れす。
　　　　　　　ちなみにこの話の中であいののは何歳ぐらいの設定ですか？
　　　　　　　　１１歳ぐらい？？

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_　;:;:.,;:∵∴
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　;:;:.,;:∵∴
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　;:;:.,;:∵∴
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∋oノハヽ.,;:∵o∈:;:.,;:∵∴
　　　　　　　 　ノノノハヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(;:: ﾟ ／∵∴;:;:.,;:∵∴
　　　　　　　　（ー｀●／⌒￣ `ヽ　　　　＿　　　　　　　　　　　　　　　　　　；∵∴　;:;:.,;:∵∴
　　　　　　　　　 ＼　 ＼　`ー'"´, -'⌒ヽ　　　　　　　　　　　　　　∵∴:;.,;／�Dﾟ)
　　　　　　　　　/∠＿,ノ　　　 _/_ 　　　　　　　　　　　　　　　（つ／;::::／　つ　
　　　　　　　　 /（　ノ　ヽ、＿/´ 　＼　　　　　　　　　　　　　（＿）;:;:.,;(＿）
　　　　　　　、（ 'ノ（　　　　　く　　　　 `ヽ、
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　　　　 ／　　　　　　 /＿_〉　　　　 `、＿_>
　　　／　　　　　　 ￣￣￣￣￣￣￣￣
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(　‘д‘)━〇）井　●´ー｀●）

気にせず続けられぃ！>作者

>>29
(　´�D｀) それくらいれすね、梨華ちゃんは中学生くらいで。
　　　　　　後、作中で家族の設定なのに名字が違うのは意味ないんで気にしないれくらはい。

>>30
(　´�D｀) ﾉ辻斬りSTOP！

>>31
(　´�D｀) ｱｲﾎﾞｿありがとうれす。

屋敷から東に歩いて５分弱、
森を抜けると原っぱに出て、水面に当たる日光をキラキラと反射させている湖に着いた。

「わぁ、けっこうキレイやん。よしここで食べよかー。」
「お腹空いた〜早く食べよ〜。」

湖の側に座り肩からバッグを外し地面に向けて乱暴にふる。
中からポケットティッシュ、携帯電話、ベットボトルのお茶、弁当箱
そしてポッキーやアメ玉、チョコレートなどお菓子が飛び出した。

「あぁ〜いっぱい出ちゃった〜。」

弁当箱とお茶、携帯電話をそばに置いて辻がバッグの中に
お菓子とテッシュを詰め込む。

「そんなお菓子ばっか食べてるから太るんやでー。」

「太る、太る言うんじゃねぇーよ！！」


！！！！!


辻の余りの豹変ぶりに加護は思った。
人には触れたらあかんことがあんねんな・・・・。

嫌な予感を持ちながら恐るおそる安倍に
作ってもらった弁当を開ける辻。

「はぁ〜やっぱり〜。」

白米とポテトサラダ、大学芋、サツマイモの天ぷら。
辻の弁当のおかずは見事に芋料理で埋まっていた。

「あ〜もう、なっちがハリキるとお芋料理ばっかりになるんだから〜。」
「・・・でも、おいしそうやん。」

そう言った加護の弁当に目をやると冷凍食品ばかりが並んでいる。
辻と違い働きに出ている中澤が一人で育てている加護はいつも
冷凍食品やコンビニ弁当ばかりなのだ。

「・・・じゃあさ、おかずとりかえっこしない？」
「ええのん？！」
「うん、こっちもありがたいし。えへへ。」
「ほんまー！ありがとうなー。」

気持ちのいいそよ風に乗って黄色い蝶がふわふわと飛んでいる。

「あーおいしかった。なっちって料理うまいんやなー。」
「そっかな〜いつも食べてるものだからわかんないや〜。」

弁当をたいらげペットボトルを口元から離しながら喋る辻。

「そやなー裕ちゃん料理の100倍は上手かったなー。」
「ウプｯ！それは裕ちゃんがかわいそうだよ〜。」

弁当箱とお茶をバッグに入れながら辻が笑う。

「かまへん、かまへん。あのババァ化粧といっしょで味付けも濃ゆいねん。」

そう言いながら加護が草むらに寝ころがる。
それを真似て辻も隣に寝ころんだ。

「気持ちいいね〜。」
「そやなぁー。」

ポカポカした暖かい陽気、風に吹かれて鳴る森の音。
二人はいつの間にか眠ってしまっていた。



シクシクシク、シクシクシク・・・・・・



女の子がうずくまって泣いている。


誰？

泣いているのは誰？

どうしたの、ねぇ顔を見せて。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_　;:;:.,;:∵∴
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　;:;:.,;:∵∴
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　;:;:.,;:∵∴
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　 ／

(；´�D｀) 間違って二回ageちゃったのれす・・・。（汗

>>36
(　´�D｀) ﾉ辻斬りSTOP！

任務を放棄する事が最善索としよう
ただし、"覚悟"と言う言葉の意味が
解っていればの話だ

>>38
(　´�D｀) ??

(　´�D｀) ??
↑ののたん可愛い

oﾉﾉﾊヽo
从 ´�D｀)＜更新乙れす。
　　　　　　まー荒らされるのは優良スレの証しなんで気にせずに＞作者さん
　　　　　　　　　　　

すげぇ、おもしれぇよ。
久々にハマりそうだよ。
作者さん、がむばれ。

>>40
(　´�D｀) ののたんは天使れすね♪

>>41-42
(　´�D｀) ｱﾘｶﾞﾄｰなのれすよー。

ののー！起きろー！！


「ん、んあ、あいぼん。」

辻を呼ぶ大きな声とパチパチと頬を叩く誰かの手。
目を開けると、目の前にはアップになった加護の顔があった。

「もう夕方みたいやでー。はよ帰らな。」
「ほんとだ〜。」

空を見上げると綺麗な夕焼けに染まっている。
あのままずっと寝てしまっていたんだ。

バッグを手に持ち、先に歩き出した加護について行きながら、
辻はさっきの泣き声を思い出していた。
あれは夢だったのだろうか、今までみたことのない生々しい夢。
あの子は一体・・・。

屋敷まで来たところでキョロキョロと辺りを見回す辻。
誰かに見られている様な気がする、しかしすぐ前に加護がいるだけで他には誰もいない。
でもどこかから感じられる視線・・・。辻は屋敷を見上げた。

？？？

あの二階の突き当たりの割れた窓のところに人影が。

「えっ？」

目を二、三回コスってもう一度見てみると、窓には誰もいなかった。

「ののー、何してんのやー。はよ行くでー。」

辻がキョロキョロしてる間に少し先に進んでいた加護が振り返って呼ぶ。
寝ぼけていたのだろうか？目が覚めてから何分もたっているのに？


無性に気になってはいたが催促する加護と共に森の出口の方向へ・・・・・。

「ただいま〜。」

靴を脱ぎ捨て家にあがる辻。
が、　脱いだ靴をちゃんと並べるよう
注意する安倍の顔が浮かんできてすぐにピタっと足を止めた。
靴を並べ直しながら、石川の靴がないことに気づく。

「おかえりだべ、弁当箱台所に出しとくべよ。」

居間でニュース番組を見ながら安倍が言う。

「は〜い。梨華ちゃんまだ戻ってないの？」
「昼ごはん食べに戻った後また昼の練習にいったべ。もうすぐ戻ってくるべさ。」

弁当箱を水に浸け、冷蔵庫からジュースを出して飲む。
コップ一杯を一気に飲み干すと、二階の自分の部屋へ向かった。

バッグを机の椅子にかけ、ベットにうつ伏せに倒れこむ。
枕の柔らかい感触を顔いっぱいに感じる。

疲れた・・・、少しウトウトしかけた頃ふいにあの泣き声を思い出し、
ハッとして椅子にかけてあるバッグの中を探る。

「やっぱり・・・。」

携帯電話が無い。
おそらく湖で昼食を食べた時しまい忘れそのまま置いてきてしまったのだろう。

どうしようか？
空は薄紫色になっている。
走っていけば暗くなるまでに帰れるはず。
そう思い立つとすぐに部屋を飛び出した。

ドタドタドタドタ・・・

階段を勢いよく下り、玄関のドアを開け家を出る。

ハァハァハァ、急がないと・・・。

今帰ってきた道を猛スピードでさかのぼっていく辻・・・。

(　;´�D｀;) 後藤しゃんと保田しゃんが脱退するのれすね。。。
　　　　　　保田しゃんはこの作品にも出る予定れす。（チョイ役れすが）

更新乙です。
何かさみしくなりますね〜。
後藤は出ないんですか。

ごっあん、ケメ子。俺はお前達を｢Ah 一生忘れないｨ〜｡｣ぞォ〜。(涙)

こうゆうの初めて読みました。
目に浮かんでくるようで面白いです。
これからはＲＯＭします。頑張ってね！

http://mseek.obi.ne.jp/kako/gold/997368981.html

タイトル見て一瞬これのリメイクかと思っちまったよ
けっこうおもしろいから作者がんばって

oﾉﾉﾊヽo
从 ´�D｀)＜更新乙れす〜。なんか書き方が上手いれすよね。叙景的？

>>47
(　´�D｀)そうれすね・・・。 ごっちんはたぶん出ないのれす。

>>48
(　;´�D｀;)


>>49>>51
(　´�D｀) ありがとーごぜーますれす。てへてへ。

>>50
Σ(　´�D｀) 知らなかったのれす。偶然れすかね、ってよくありそうな
　　　　　　　タイトルれすよね。w

　
「あー疲れたぁ〜。早く部活休みこないかな〜。」

「ちょっと、部長の梨華ちゃんがそんなこと言ってていいの？」

部活の帰り道、
テニスラケットを肩に担いだジャージ姿の石川と吉澤。
練習の疲れのせいかどことなく足取りが重たい。

「だって夏休みだってのに毎日毎日テニスの練習ばっかり。
海にでも行きたいなー。」

「海かー、いいねぇ〜。そのためにもいっぱい汗かいて体型維持しないとね！
フフフ。」

「そ、そうね・・・。」

その歩行で地鳴りを起こせそうな吉澤の体を前にしながらも、
この時の石川にはまだ、維持できてないわよ！とは言えなかった・・・。

チリンチリンチリーン♪

えっ！何？！

突然の鈴の音と風を切る音。
前方からもの凄いスピードで二人に向かってくるナニカ。
その姿はまるで、

鬼！

鬼！！

鬼！！！

あまりの恐怖に石川はその場に立ち竦んでしまった。
横目で吉澤を見てみると同じ様に青ざめている。

キキィーーーーー

地面の擦れる音。
ギュッと目をつぶる石川。

｢よっ！二人ともこんな遅くまで部活？｣

そーーーっと目を開けると石川の体が軽くなり、血の気が戻っていく。
そこには自転車にまたがった駐在所の婦警、保田圭(21)彼氏募集中、がいた。

｢な、なんだぁー保田さんかぁ。ホッ。｣

｢っホッて何よ、っホッて！失礼ね、まったく。｣

その表情に般若の形相を垣間見た石川は慌ててフォローする。

｢い、いやぁ、いきなりだったからビックリしただけですよー。
ねっ、よっすぃ〜！｣

｢う、うん。それより保田さんは何してるんですか？｣

吉澤も同じ気持ちだったのか冷や汗を垂らしている。

｢パトロールしてたのよパトロール。みんなの平和は私が守らないとね♪｣


うっ！


保田のウィンクで危うく凍りつきそうになる二人。

｢あっそうそう、ついさっきののちゃんが森の中に入ってくの見たわよ。｣

｢えっ、ののが？｣

｢ええ、すぐに森に入っていちゃったから呼び止められなかったけど、
あの後ろ姿は辻ちゃんに間違いないわ。｣

｢こんな時間に何してるのかしら・・・のの。｣

(　´�D｀) 深夜にｺｿｰﾘ。
　　　　　　娘。なにやら大変なことになりました。ちょっと不安なのれす。。。

oﾉﾉﾊヽo
从 Ｔ�DＴ)＜ﾀﾞｰﾔｽ登場・・・更新乙れす。。。

保全。

>>56
(　T�DT)

>>57
(　´�D｀) ﾉ保全ありがとうれす！

「きゃっ！」

石川と吉澤が出会った頃の少し前の時間、
日の沈むのが遅い夏の御陰で真っ暗ではないが、
暗さの増した森の中を駆け抜けていた辻がつまずいて転んでいた。

「いたたたたぁ〜〜。」

ジンジンする膝を押さえると小さな手のひらに血がついた。
急がないと。
鈍く響く痛みをこらえ立ち上がりまた走り出した。


「ハァハァハァハァ・・・。」

湖まで着いた辻は立ち止まり呼吸を落ち着かせる。
鼓動のリズムがゆっくりになってきたところで辺りを捜した。

「あっ、あった〜。」

湖のすぐそば、昼間加護と寝ていたところに携帯電話はそこにポツンと置かれていた。
辻は膝をつきケータイを両手で抱きしめる様に拾い上げた。

「良かった〜。」

折りたたみ式の携帯電話を開ける、もう6時40分だ。
早く帰らないと・・・そう思って立ち上がろうとした時、湖の水面に自分の顔が映った。
少しぽっちゃりとした輪郭にダイエットしなきゃなぁ〜とため息をついて目を伏せる。

えっ！


もう一度水面に目をやった時、辻は声には出さなかったがギョッとした。
自分のすぐ後ろから覗き込む人の姿が映っていたからだ。

バッっと後ろを振り向くと、そこには透き通る様な白い肌の可愛らしい女の子が立っていた。
辻と同い年ぐらいだが初めて見る顔だ。
あ、あの・・・、そう言おうと辻が口を開きかけた時、先に女の子が声を発した。

「ケガ・・・してるの・・・？」

あっ！自分の膝に目をやる辻。
すっかり忘れてしまっていたが転んだ時についた傷は血で滲んでいる。

「ちょっと待ってって・・・。」

そう言い残すと名も知らぬ女の子は森の中へと消えていった。

しばらくすると女の子が手に何かを持ってこちらに駆けてくる。
近づいて来るにつれて手に持っている物が見えてきた。
少し古びた包帯と・・・葉っぱ。

「これ、持ってて・・・。」

辻の手に包帯と葉っぱを渡すと女の子は両手で湖の水をすくいとり、
辻の膝の傷にかけ血と土の汚れを取る。
そして傷口に葉っぱを貼りその上から慣れた手つきで包帯を巻いてくれた。

「あ、あの、どうもありがと。わたしは辻希美、あなたは？」

「わたしはあさ美・・・紺野あさ美・・・。」


目の前の女の子は恥ずかしそうにボソボソとこたえた。

ｺﾝｺﾝｷﾀ━━(ﾟ∀ﾟ)━( ﾟ∀)━( 　ﾟ)━(　　)━(　　)━(ﾟ 　)━(∀ﾟ )━(ﾟ∀ﾟ)━━━!!!
なちののに、あいののに、ののこんか。
すげぇ豪華だよ。作者さんガンガレ。

個人的には、いしのの絡みもあると嬉しいな。

保全

oﾉﾉﾊヽo
从 ´�D｀)＜更新乙れす〜。保全。

「あさ美ちゃんか〜ありがとー。包帯巻くの、上手だね。」

「わたし、よく転んだりしてケガしちゃうから・・・慣れてるの・・・。」

頬を赤らめる紺野。
白いブラウスに薄紫色のスカート、
今風とはいえない服装がなんだか妙な気品を漂わせている。

「この辺の子じゃないよね？」

「うん。夏休みに・・・パパと遊びに来たの・・・。」

辻にはわざわざ夏休みにこんな田舎の町へ遊びにやってくるなんて
よくわからなかったが、都会で暮らし慣れた人達にはこの町の空気やら
自然やらが癒しとかいうものになるということは聞いたことがあった。

「そうなんだぁ〜。」

ピピピピピピピ・・・

突然辻の携帯電話から着信音が鳴った。

誰からだろう？

ケータイの画面にはリカちゃん。の文字
石川からだ！辻は慌てて電話にでた。

「もしもし？うん、わかった。
うん、うん。わかったってば、じゃあね。」

電話の用件は予想通り早く帰って来いと言うものだった。
すっかり忘れてしまっていたがもう７時前、
ケータイを切ると辻は紺野の方に向いた。

「わたしもう帰らないと・・・。あさ美ちゃんケータイの番号教えてもらえる？」

「ごめんなさい・・・わたし持ってないの・・・。」

さっきよりさらに小さな声で申し訳なさそうに答える。

「そっかぁ〜。・・・じゃあ明日の3時頃ここで会える？」

「うん・・・いつもこの辺りで遊んでるから・・・。」

にっこりと笑う紺野に辻も笑顔で返す。

「それじゃあまた明日ここでね、バイバ〜イ！」

だんだんと遠くなっていく辻の背中を紺野はじっっと眺めていた・・・。

「ただいま〜。」

再び自宅に戻ってきた辻、今度は石川の靴もちゃんとあった。
玄関に腰掛け靴を脱いでいると居間から石川が顔を出した。

「いつまで遊んでたのよ、もう晩ご飯できてるわよ。」

シャワーでも浴びていたのか髪は濡れていてバスタオルを肩にかけている。

奥からのおいしそうな匂いにつられて居間へ入ると、
食卓には晩ご飯が並んでいて安倍と石川は既に座っていた。
辻が席に着くと伏せていた安倍がゆっくりと顔を上げた。
その顔は怒りに満ちている・・・。

「遅い・・・遅すぎるべ！なっちの料理が冷めちまったらどうするべさ！？」

「ち、ちょっと忘れ物しちゃって、えへへ。
いただきま〜す、あっこのコロッケおいし〜〜。」

「そうだべか〜？まだまだあるからいっぱい食べるべよ。」

辻のあからさまなお世辞に安倍の表情が変わった。
どうやら怒りもどこかへいってしまったようだ。

「忘れ物って？保田さんが言ってたけど森に入ってったんでしょ？」

茶碗を持ったまま箸を止めて聞く石川に口の中のものを飲み込んでから
答える。

「北の森に遊びに行ってたの・・・それでケータイ忘れちゃって。
でもなんで保田さんがぁ〜？なんだか怖い・・・。」

「こらぁ〜、顔は怖いけどいい子だべー圭ちゃんは。」

安倍と保田は同級生で仲が良いのだ。
ケラケラ笑っていた石川が笑いを堪えながら言う。

「北の森ってお化け屋敷があるとこでしょー？
そおいえばＡ組の柴田さん達が肝試しに行って幽霊を見たとか言ってたわね。」


えっ？


コロッケをつかもうとしていた辻の箸がピタッと止まった。
泣く少女の夢や窓辺の人影のことを思い出しゾッときてしまった。

「それってどんなお化けだったの・・・？」

「うーん、子供の霊だとか大男の霊だとかみんな言ってることバラバラだったから・・・。
まぁどうせ思い込みで何かと見間違えただけでしょ。」

大男なんて見てないけど夢の少女は・・・箸を口につけて考え込む辻。

「はいはい、片付け遅くなるから早く食べるべよ。
それとも二人が片付けてくれるんだべか？」

横から割って入ってきた安倍の言葉を聞いて二人は急いでまた晩ご飯を食べ始めた。



「はぁ〜〜〜、気持ちいい〜。」

モクモクと白い湯気の立つバスルーム。
お風呂に浸かりながら自然と出てしまった声がなんだかババ臭くて笑う。
包帯が濡れないよう右膝だけ湯船から出す体勢が少しツライ。

そおいえば包帯の間に挟まれた葉っぱはなんだったんだろう。
明日紺野に聞いてみようか。

お昼だったら幽霊も出ないだろうから一人で行っても大丈夫だ、
そう自分に言い聞かせ顔を湯船に沈めた。

>>61-63
(；´�D｀) ありがとーごせーますれす。
　　　　　更新かなり遅れてすんません。
　　　　　
>>61
(　´�D｀) 梨華ちゃんはなっちよりは絡むと思うれす。

更新乙〜。いつも楽しみにしてるよ〜。
ﾏﾀｰﾘと待ってるから、がんがれよ〜。

oﾉﾉﾊヽo
从 ´�D｀)＜更新乙れす。癒されるな〜。

>>69
禿銅保全

(　´�D｀) 2、3日程パソコンいじれないのれす。
　　　　　帰ってきたら更新します。。(　´�D｀) ﾉ

癒し待ちhozen

一日一保全

保全

ほぜんれす

>>75上げなくても良くってよ。

ジージージージー・・・


湖のほとりに立つ辻。
うるさ過ぎるセミの声と昨日より強い日差しに額から汗が一雫垂れ落ちる。
辺りを見渡す辻の頭がキョロキョロと動いていた。
どおやら紺野はまだ来ていないようだ。

ふいに強い風が音を鳴らながらやって来た。
熱気を帯びた生温い強風に片目をつぶる。


「希美ちゃん・・・。」


背後からの声にビクっとして振り返ると、後ろには紺野が立っていた。
昨日と同じ格好で、白い肌は汗ひとつかいていない。
初めて会った時と同じ様な出会い方をして不思議な感覚を頭の中で味わう。

「なんだぁ〜あさ美ちゃんか〜。ビックリした〜。」

胸を撫で下ろす辻にうつむきかげんの紺野。

「・・・驚かせちゃってごめんなさい。」

「そんな謝んなくてもいいよ、それとののでいいよ〜。
あさ美ちゃんはぁ〜・・・えっとー、紺野だからこんこん！」

「えっ・・・？」

キョトンとする紺野。

「こんこん！」

「のの・・・ちゃん。」

少し微笑んだ紺野に辻は顔いっぱいの笑顔で応えた。


「ふぅ、ここならまだ涼しいね〜。」

木で出来た陰へと移動した二人。
手で汗をぬぐう辻に対して紺野は相変わらず涼しそうな顔をしている。
幹に腰掛けると辻の膝の包帯に紺野が優しく触れてきた。

「・・・傷、大丈夫？」

手から伝わる温度が冷たくて心地良い。
紺野がなんだか優しいお医者さんみたいだ。

「うん、もう全然痛くないよ。
あっ、そういえば包帯の間に貼った葉っぱってなんだったの〜？」

「あれはね、ドクダミの葉なの・・・。」

「どくだみ？」

ぽかんとしている辻を見て紺野が立ち上がった。

「・・・ちょっとついてきて。」

森の中へと進んでいく紺野の背中について行く。
しばらく歩いてから紺野が立ち止まった所には、白い花びらに見える４枚の
ほう葉とその中心に黄色の小さな花を穂につけた植物が群がって生えていた。

その葉を一枚、紺野がひきちぎった。

「これがドクダミ、傷に効くの・・・。」

スンスンと鼻を鳴らしながら辻が臭いを嗅ぐと独特の強い臭いがした。

(食べられそうにないなぁ・・・。)

「へぇ〜こんこんって物知りなんだね。」

うつむいて照れている紺野の様が可愛らしい。

他にも紺野の案内でアブラナが一面に咲く場所やウサギの親子の巣穴、
クワガタがたくさん落ちてくる木など辻の知らない場所ばかり案内された。
この土地で暮らしている辻よりも紺野はこの森に詳しかった。


湖の側まで戻ってきた頃には、
茜色の空でカラスが能天気に鳴いていた。

「そろそろ帰らなきゃ・・・。こんこんはどこに泊まってるの〜？
途中まで一緒に帰ろうよ。」

辻の問いかけに困ったような、悲しいような複雑な表情をみせる紺野。

「わたしもう少しここにいる・・・。」

「そっかぁ〜。」

「・・・ごめんなさい。」

「あ〜またそうやって謝るー。なんにも悪いことしてないじゃん。」

「わたしよくドジして叱られちゃうから・・・。ごめ・・・」

「ほら、また！」

辻が大声を出して指差したので紺野は言葉につまってへんてこりんな顔になった。
それが可笑しくて辻は涙が出るくらい笑った。
笑いながら紺野を見てみると、紺野もつられてクスクスと笑っているようだ。

「んふふふ、じゃあわたし帰るね〜。
家の人が心配するからこんこんも暗くなる前に帰るんだよ。」

辻が背を向けようと振り返る途中、悲しそうな顔の紺野が見えたような気がした。

「待って・・・！」

背を向けきった時、ふいに紺野に腕を捕まれ呼び止められた。

振り返る辻

目の前にオレンジの色を浴びた紺野の顔

空から降ってくるカラスの歌


「なんで・・・ののちゃんはわたしに優しくしてくれるの？」

「えっ？」

突然の紺野からの質問に面食らった辻だったが、
少しの間を置いて答える。

「ん〜〜〜っと、こんこんが優しくしてくれた・・・からかな。」

二人が向かい合ったまま、数秒か、数分かの時が過ぎた。

だた夕焼けに照らされた紺野の大きな瞳が
湖の水面みたいにキラキラと輝いている。

「また・・・ここであえるかな・・・？」

先に口火を切ったのは紺野のほうだった。

「うん！きっと。・・・それじゃあね、バイバイ！」

大きく頷きながら、辻。

歩き出した辻の後ろから、聞き取れない程の小さな声で紺野がつぶやいた。

「ありがとう・・・。」

(　´�D｀) 更新れす。保全してくれてた皆様ありがとうれした。

作者さん、お帰り〜。
今回も良かったよ〜。
ののこんマンセーッ!!

oﾉﾉﾊヽo
从 ´�D｀)＜やっぱ書き方がうまいなぁと。。。
　　　　　　　作者さん更新乙れす。

>>84
禿同。

情景の書き方がすごく上手だなぁと思います。
期待してます。保全。

hozem

カランコロンカラン

辻の手で揺らされるアイスコーヒーのグラスが子気味いい音を鳴らす。
コップの底から水滴が２、３粒椅子に座っている辻の太ももの辺りに落ちる。
ストローから唇を離しグラスを机に置くとまた夏休みの宿題へとりかかった。

下の階から安倍が掃除機をかける音が響いてくる。
シャーペンを走らせながら頭の中では違うことを考えていた。

（こんこん、今日もあの森で遊んでるのかな・・・。）

・・・ィ・・・ピィ・・・ピィピィーピィー

後ろの方から鳴る携帯電話の音にハッとして
ベッドの上にほうっていたケータイを取る。
誰からだろう。

『今からののん家に遊びにいってええか〜？』

関西弁のメール、加護からだ。

『うん、いいよー。』

すぐに打ち返すと加護からもすぐ返事が返ってきた。

『じゃあ、いまから行くから〜。』

「ののちゃんあそぼーーーー！」

メールが着いてから１分もたたない内に玄関から加護の声が聞こえてきた。

えっ、もう？
そう思いながら部屋のドアを開けて廊下に出ると下から安倍と加護の話し声が聞こえる。
階段のところまで行くと下から加護が元気よく階段を一段飛ばしで上ってきた。

「もー、ビックリしたよ〜。」

「えへへ、家の前から打っててん。あれ足どないしたん？」

紺野に巻いてもらった包帯を外しばんそう膏に貼り変えた辻の足を見て加護が言った。

「うん、ちょっと転んじゃって・・・。」

そうだ、あいぼんとこんこんを会わせたら・・・
二人ともきっと仲良くなるはず、そうすれば3人でもっと楽しく遊べる。

ガチャ・・・

そんなことを考えている間に加護が先にドアノブを回した。
部屋に入るとすぐに加護がベッドに倒れこんだ。

「あぁ〜涼しぃ〜。やっぱ夏はクーラーやなぁー。」

「ちょっとあいぼんー遊びにって家に涼みにきたの〜？」

「ううぅ、だってウチん家クーラー無いねんもん。シクシク。」

そう言いながら枕に顔を伏せた加護の体を掴んで辻がユサユサと揺らす。

「ウソ泣きしてないでね〜外にいこうよ〜。」

「えー、こんな暑い日にぃ〜。」

まだ十分に冷気を楽しんでいない
ためか不満そうに口をとがらせる加護。

「会わせたい子がいるの。」

辻がそう言うと加護は唇を平らに戻した。


汗でティーシャツをべっとり背中にくっつかせながら
湖に着いた二人。しかしそこに紺野の姿は無かった。

「なんや誰もおらへんやーん。」

「うん・・・いつもここで遊んでるって言ってたんだけど。」

熱気のせいか不機嫌そうな加護と残念そうな辻。
それからしばらく待っていても紺野は現れなかった。

「なぁ〜ののん家に帰ってゲームでもしようやー。
暑ぅて倒れそうや〜。」

「そうだね、こんこん居ないみたいだし帰ろうか・・・。」

「よっし！ほな帰ろーう。」

低いトーンで答える辻と急に元気なった加護。
ここに来る前の部屋とはまってく反対のテンションになってしまっていた。

こんこん、今日はたまたま来なかっただけだろうか・・・。
もしかしてもう帰ってしまったんだろうか・・・。
加護に後ろから肩を押されながら歩いていた辻が突然立ち止まった。

「ん？どないしたん？」

肩から顔を覗かせて加護が尋ねてきた。その顔を見ると少し気持ちが落ち着いた。

「なんでもないよっ。」

そう言い返すと辻はそそくさと歩きだした。

（またこの感じだ・・・。）

目の前にはあのお化け屋敷がそびえたっている。
誰かに見られているようなこの感じ、歩きながら二階の窓を見上げてみたが
今度は人影らしきものは見えなかった。

（あの突き刺すような視線は一体なんなんだろう・・・。
1人でこの森を行き来した時は感じなかったのに・・・。）

「ふ〜極楽やー。」

やってきた時と同じにベッドに倒れこんで言う加護の横で 辻は浮かない顔をしている。

「どないしたんや、のの〜？ほれジュースでも飲み。」

ベッドから起き上がりお盆からジュース取って辻に差し出す加護。

「それなっちがいれてきてくれた家のジャースでしょ、も〜。」

そうつっこむとイタズラっぽく笑っていた加護が急に真剣な表情をした。

「よかった、元気やん。」

「え？」

とまどう辻。
そう言った時の加護の顔はなぜか辻よりも２才も３才も年上に感じた。

「湖から帰ってる間のの元気なかったから。」

「そうだったかな・・・。」

「・・・うち明日から裕ちゃんの実家に行くねん。」

「そう・・・なんだ。どれくらい？」

「二日程泊まるらしいから、戻るんは明々後日やな、
お土産買うてきたるさかいエエ子にしとるんやで。」

「うん・・・。」

加護の喋りはとても穏やかで、辻の返事はぎこちないものだった。

その夜、布団の中で辻はなかなか寝つけないでいた。

（明日からしばらく寂しくなっちゃうな・・・、こんこんも帰えっちゃったんだろうか・・・）

「ん、んん・・・。う・・・ん。」

あまりの寝苦しさにパチッと開いた辻の目は底の見えない真っ暗な闇を見上げていた。
いつの間にか眠ってしまっていたのだろうか汗をびっしょりかいている。

チッチッチッチッチ・・・

時計の音だけがやたら耳につく。
たんだんと暗闇に慣れてきた目で首を動かし時計を見ると針は4時すぎを指していた。
体を半分持ち上げるとベッドの足元側の斜め右上に月明かりにかすかに照らされた窓が見える。
窓は全部開けられていてそこから冷たい風がスーっと入ってきていた。

（たしか寝る前は網戸は閉めていたはずなのに、どうして？）

辻の問いに答えてくれる者はそこにはいない。
窓を閉め鍵をかけ早足でベッドに戻り布団を被る辻。
朝まで起きているつもりでいたが睡魔に負けて再び眠ってしまっていた・・・。

次の朝、ベッドから起き上がると窓はちゃんと閉まっている。
朝の７時、下の階へと下りると安倍が朝食の用意をしていた。

「おっ、おはよーだべのの！今日は早起きだべね。」

「おはよー・・・。」

カラっとした安倍とは逆に浮かない表情の辻、なんだかぐっすり寝た気分ではなかったのだ。
安倍は皿を並べていると大きなあくびをしながら石川が上の階から下りてきた。

「おはよーだべ、梨華ちゃん！」

「おはよー、梨華ちゃん・・・。」

「ふぁ〜〜。おはよ〜。」

何時も朝は機嫌が悪い石川だが今朝はいつにもまして不機嫌な様に見える。
椅子に着いて一息入れてから石川が辻の顔をじっと睨んできた。
その鋭い目にたじろぐ辻。

「ののー夜遅くまで電話するのやめなさいよねー。うるさくて寝れないじゃない。」

「えっ？！・・・わたし昨日の夜電話なんてしてないよ・・・。」

「うそ、ののの部屋から話し声が聞こえてたけど・・・。テレビの音か・・・寝言・・だったのかな。」

不可解そうな顔をする石川・・・がそれ以上に辻の顔は困惑していた。

>>84-87
(*´�D｀)あいがとーれす。てへてへ。

更新乙れす。
相変わらずｲｲ感じですね。
このﾏﾀｰﾘ小説は素朴でﾎﾉﾎﾞﾉしてる感じがｲｲ(ﾟ∀ﾟ)!!

ﾊヽo
�D｀)＜更新乙！！

更新ｷﾀ━━━━━(ﾟ∀ﾟ)━━━━━!!!!

初めて読んだのですけど、面白いですね。
ただ、なっちの北海道弁が凄く変・・・。

100GET保全

>>99
oﾉﾉﾊヽo
从 ´�D｀)＜それは俺もｵﾓﾀけど他がいいから気にならないっす。
　　　　　　　そもそもなっちの北海道弁も変なわけですが・・・
　　　　　　　　

ho

机に肘をついてぼーっとしている辻。
夏休みの宿題が広げられてはいるが今朝の石川の一言が気になってなかなか進まない。

石川の言っていた話し声は開いていた網戸と何か関係があるんだろうか。
いや、もしかしたら北の森で感じた視線や湖で見た泣いている女の子の夢とも・・・。

「ののーー！梨華ちゃーん！ちょっと来るべさーーー！」

いきなり安倍の大きな声が下の階から聞こえてきた。
なんだろうと思いながら下の階へといく。

「なに〜どうしたの？」

台所に立って何かをしている安倍の後ろ姿に辻が聞く。

「梨華ちゃんが来たら話すべ。」

何をやっているんだろうと覗き込んでみるとの安倍は菊の花を新聞紙で包んでいた。
そうこうしている内に石川がトタトタと階段を下りてきた。

「何〜？せっかく部活が休みなのに掃除手伝えとか言うんじゃないでしょねー。」

「違うべさー、10時半くらいになったら三人でお墓参りに行こうと思って。」

「あぁそっか、今日からお盆だったね。」

お墓参り？そう思った辻の疑問に安倍の代わりに石川が答えてくれた。
辻はすっかり忘れてしまっていたがこの時期になるときまって墓参りに行ったものだった。

（確かお盆には亡くなった人達が帰ってくるって昔なっちに聞いたっけ。）

そんなことを思い出していた。

「じゃあ二人ともちゃんと用意しておくんだべよ！」



町の外れにあるお寺の裏の墓地。
セミが忙しなく鳴く坂道を三人で登っているとちらほらとすれ違う家族連れらしき人達もいた。


途中水汲み場で手桶に水を汲む。
ピチャピチャと地面に跳ね返る水が半ズボンから飛び出した足にかかって冷たい。
ばんそうこうが剥がされた辻の膝は、傷跡はまだ残っているが痛みはもうまったく無かった。

墓に着くと安倍が線香を立て花を供えて回る、その間に石川と辻が墓石に水をかけて回った。
たわいのないことなのに退屈な辻には水をかけるのがまるで遊びみたいで少し楽しかった。

「はい、みんな手合わせてー。」

安倍のかけ声で二人は墓石の前で目をつぶり合掌した。
辻が薄目を開けてみると安倍も石川もしっかり目をつぶって手を合わせていた。
この時の辻の頭の中は日頃の感謝やご先祖様へのねぎらいなんかではなく
今日の昼ご飯はなんなのか、だったということは内緒である・・・。

バタン

自室のドアを閉めると辻は部屋の中央にある小さめのテーブルにへたりこんだ。

（うう・・・苦しい。っうぷ）

お昼に出たそーめんを食べ過ぎてしまった。

（そっか、お盆だったたからあいぼんも・・・。そういえば
あいぼんはまだ小さかった頃に引っ越してきたんだっけ。）

チリーン　　　チリーン・・・

石川の部屋の風鈴の音が風に乗って辻の部屋の窓から入ってくる。

（・・・こんこんもお盆だから帰っちゃったのかな。
昨日は少し早すぎたのかも。４時くらいになったらあそこに行ってみようかな・・・。）

バタン！

起き上がり部屋から飛び出た辻は急いでトイレに駆け込んでいった。

>>96-102
(　´�D｀) ﾉ

なっちの北海度弁・・・やっぱり？（汗
よくわかんないけど、だべーとか付けとけばいいかなとか思ってｗ

作者しゃん更新乙。
北海℃弁・・・がんがって（w
ﾏﾀｰﾘと応援sage

oﾉﾉﾊヽo
从 ´�D｀)＜更新乙れす〜。

hoz

hoze

hozen

ほぜん

保

素晴らしい(･∀･)！

森の前にの脇道に仁王立ちする辻。
お化け屋敷のあるあの森に行くのは本当のところ嫌だったが、紺野と会える可能性のある場所をあの湖しか知らない辻は気持ちを抑え森の中へと進んで行く。

カサカサと木の枝をすり抜けながら森を歩くちっちゃな女の子。
蜘蛛が空中に仕掛けた罠も辻の身長の前には意味が無い。

湖が見えてくると同時にほとりに立つ紺野の後ろ姿が見えた。
白いブラウスに薄紫色のスカート・・・

「わっ！」

音を立てずに紺野のすぐ後ろまで来た辻がポンと優しく背中を押した。
が、辻の期待とは裏腹に紺野は声も上げずゆっくりと振り返り微笑んだ。

「・・・こんにちは、ののちゃん。」

「なんだービックリしなかった〜？」

紺野の落ち着いた様子に残念そうに口を尖らす辻。
それを見てふふふと笑う紺野。

「また会えてたね〜！昨日もあいぼんと来たんだけど会えなかったから。」

すぼめた唇を横に広げて言う辻。

「あい・・・ぼん？」

「わたしの親友なの、こんこんに紹介しようと思ってたんだ〜。
おもしろくて楽しい子だよきっとこんこんもすぐ仲良くなるよ〜。」

「でも・・・わたし人見知りしちゃうから・・・。」

紺野は少し怪訝な表情を見せたが辻はそれに気付かずに話しを続ける。

「でもよかったよ〜、お盆だからこんこん帰えっちゃったのかと思っちゃった。」

「お盆って・・・？」

辻の言葉にキョトンとした紺野の顔を見て辻の顔もキョトンとなった。

「知らない？お盆になると死んだ人がに帰ってくるからお迎えしなきゃならないんだって。」

一呼吸置いてから辻が続き話す。

「なっちが言ってたんだけどね、人が死ぬと良いことした人は天国でゆっくり疲れを取って、
悪いことした人は地獄でえんまさまにお説教されて、それからまた生まれ変わるんだって。
でねその人達がお盆になるとお家に戻ってくるんだって。」

「・・・そう・・・なんだ。」

辻の目を見ずに俯きかげんで言う紺野。

「お化け信じてるなんて子供っぽいかな、えへへ。
でも、死んだ人全員が生まれ変わった家はお盆の時どうするんだろうね。」

「そうだね・・・天国にも地獄にも行けない人達もどうするんだろう・・・。」

その時、辻の瞳に映った湖を見つめる紺野の瞳は目の前にある湖の底より暗く、深く感じた・・・。


湖の辺で膝を伸ばし座っている二人。
流行りの歌やドラマ、家族や加護の話し、紺野は辻の話しを聞くだけだったが
そんな他愛のない話で時間はあっという間に過ぎていった。空には一番星が見えている。

「ねぇーそろそろ帰らない？」

星を見上げていた顔を下ろし辻が言った。

「ん、・・・わたしはもう少しここにいるね。」

「そっかぁー・・・わかった。じゃあね、こんこん。」

いつかと同じ答えに紺野は滞在先にあまり帰りたくないのだろうかと思ったが、
深く詮索せずに辻は手を振り湖を後にした。

薄暗い森でちょうど屋敷と森の出口の中間辺りにさしかかった時ふいに辻は足を止めた。

（あの様子だと暗くなるまで帰らないのかも・・・。
心配だしやっぱりこんこんともう少しいようかな。でもいまから戻っていったら暗くなっちゃうかな。）

今いる場所を行ったり来たりする辻、こんなことしてる間に時間がたってしまう！
そう思い進んでいた方向に背を向け今通って来た道を戻っていく。

あのお化け屋敷が見えるところまで戻ってきた。

（さっき通った時はなるべく見ないように急いで通り過ぎたのにまた通るのイヤだなぁ。）

辻が憂鬱な気分に浸っていたその時・・・

えっ！？

屋敷に扉を開き誰かが入って行く、あの後ろ姿は・・・紺野！

（なんでこんこんあんな所に・・・）

もう少し近い位置から屋敷をじっと見る辻。
しばらく見ていたが二階の廊下の窓には紺野の姿は映らなかった。
一階にるのだろうか？しかしここからじゃ中の様子がわからない、辻は屋敷の方へと歩いていった。

ギィィィィ・・・

嫌な音を出す扉から辻が顔を出し中を覗き込んだ。
屋敷の中は時間帯のせいか以前来た時よりも薄暗く感じる。

「こんこーーん・・・。」

近くにいないと聞こえない程の小さな声で呼びかけるが当然返事は無かった。
音がならのように扉を慎重にそーっと閉め、ゆっくりと屋敷の中へ踏み込んだ。

（二階には行ってないみたいだったからとりあえず一階を捜してみよう。）

大広間、辺りを見回すが紺野の姿はない。
大テーブルの脇をすり抜け奥へと続く扉を開く。

「こんこーんいないのー・・・？」

厨房へと続く短い廊下でまた呼びかけてみたが何も聞こえてこない。
もしかしてあれは見間違いかなにかだったのだろうか、
いやそんなはずはないあれは確かに紺野の後ろ姿だった。
短い廊下を通る間、辻の頭の中で同じ問いがぐるぐる回りながら厨房に着いた。

ジャリ、ジャリ

床に散らばった食器の破片が辻が歩く度に音を鳴らす、パッと見てみると紺野は居ないようだ。

冷蔵庫・・・

部屋の隅にある大きな冷蔵庫の冷蔵室のドアが少し開いている。

（もしかしてあの中に隠れてたりして・・・）

じりじりと冷蔵庫に近寄っていく辻。
ドアに手をかける、電気が通ってないからだろう中から冷気は感じなかった。

「きゃっ！！」

そーっとドアを開けたその時、中から何かが飛び出してきて辻は思わず声を上げてしまった。

ニャー

猫、茶色の毛をした猫がこちらを向いて一声鳴いた。

「もぉーービックリしたぁ〜。」

バタバタと足を踏む辻、そのたびに床の破片も音を立てる。
当の猫はそしらぬ顔で開けっ放しにしていたドアから厨房の外へと消えていった。
背中に嫌な汗をかいたが辻は少しほっとしていた。出てきたのがだたの猫だったから・・・。

「う〜んいないなー。」

大広間に戻った辻が汚れた暖炉の中をしゃがんで覗きこんでいた。
立ち上がり辺りを見回すが相変わらず人の気配はしない。
辻の目の先は右側の地下へと続く階段に向けられていた。

ゴクッ

飲み込んだ唾の音がやたら大きく聞こえた。
加護と一緒に初めて来た時同様に一際異様な感じがする。

（やっぱりあそこはなんかいやだなぁ・・・でもまだ捜してない場所はあの場所だけだし・・・）

汗ばんだ手にギュッと力を入れると辻は階段の方へと進みだした。
階段の前まできて下の階を見下ろすとそこにはいっそう深い闇が待っている様な気がする。
ゆっくりと階段に足をかけるとギシっという音がしたが、二階に続く階段よりは丈夫そうだ。

階段を下りてみると広い部屋に出た。
部屋の中はほとんど何もなく、部屋の隅にタルとロープそして壁に猟銃と小ぶりの斧が架けられている。そして正面には茶褐色に変色した鉄製のドア。

ひとしきり部屋を見回すと辻はゆっくり前へ出た。
辻の目は正面のドアを見つめている、なんだか解らないがあのドアの向こうに何かがある気がする。
一歩、二歩ドアへと歩み寄って行く。音も光もほとんど入り込まめないこの空間の中で
辻の鼓動が少しずつ、少しずつ大きくなっていく。

ﾄﾞｸﾝﾄﾞｸﾝﾄﾞｸﾝﾄﾞｸﾝ・・・

すーーっと伸びた小さな手がドアノブを掴んだ。ザラついた感触。

ドクンドクンドクンドクン・・・

ガッ！

ゆっくりと回した辻の手が抵抗で遮られる・・・ドアには鍵がかかっていた。
緊張が解け肩の力が抜けていくドアノブに手をかけたまま辻は目を閉じうつむいて
ふぅ〜っと息を吐いた。
しかし次に辻が目を開いた瞬間、辻の体がまた硬くなった。

薄暗い部屋だけど、目の前のドアはちゃんと見えているのに、壁にかかった斧は見えているのに、部屋の隅にあるタルは見えているのに、

辻の足首から下だけが真っ暗でなにも見えない！

背筋がゾワゾワとしてくるとこの場にいることが急に怖くなってきた。

（帰らないと、早くここから帰らないと！）

逃げるようにその場を去る辻、乱暴に階段を上り屋敷を飛び出す。

こころなしか入った時より外は暗くなったようだ、１つしかなかった星の数が増えていた。
屋敷を振り返ることなく走り出す辻。

もう紺野のことは頭になかった、こうしている間にもなにかが追いかけてくる気さえする。
辻はまるで逃げるように森を駆け抜けていった。
どれくらい走っただろうか、木の葉の向こうに光が見えた。

（街灯だ！あと少し、あと少しで・・・。）

「きゃっ！」

森を出た瞬間辻は大きな何かにぶつかって辻はしりもちをついた。

「いたたたぁ〜、大丈夫？」

聞いたことのある声。
差し出された手の向こうを見上げるとそこにはジャージ姿でタオルを肩にかけた吉澤が立っていた。

(；´�D｀)更新遅くなってすみませーん。なるべく夏休みまでに終わらしたかったな・・・って。
　　　　　保全しててくれた人ありがとうです。

イイ!!イイよ！イイ感じだ。
盛り上がってきましたね〜。
これからも楽しみにしてますよ。
がんがれ作者さん！

・・・この小説そんなにおもしろいか？

この手の小説は、文章上手い人が書かないとおもしろくないと思う。

おもしろいよ、文章も下手ではないし、なにより辻主人公の話は少ないので、
あたしにとってはとってもありがたいのです。

oﾉﾉﾊヽo
从 ´�D｀)＜更新おつ〜。

おっ！新キャラ？
期待保全

保全

保全
（　´�D｀）ﾉ＜がんがってくらさい。

∋oノハo∈
　川o・-・）＜　ほ

「あれ？ののじゃん。」

石川の友達の吉澤ひとみ。
スラッとした背のの高いショートカットのお姉さん、辻も何回か遊んだことがある。

今にも泣きそうな顔の辻とは対照的な能天気な顔の吉澤、そんな吉澤を見ていると
辻はだんだんと安心してきた。我慢していた涙がつぶらな瞳から溢れてくる。

「よっすぃ〜〜。・・・ううう、うわぁ〜〜ん！」

辻は泣きながら吉澤に抱きついた。

「ちょっとちょっと、いきなりどうしたの〜？！」

突然に行動に吉澤が慌てている様子が伝わってくる、でも・・・今はこうしていたかった。
あんなに走ってきたのに冷たい辻の体を吉澤の体温が温めてくれる。

「もう落ち着いたかな？」

葡萄酒色の空と大きな背中、吉澤におんぶされて帰る道。
いつも見ている景色も吉澤の目線から見るとなんだか違った風に見えてくる。

「もう、大丈夫だから。」

鼻水をすすりながら辻は吉澤の背中から降りて地面に足を付ける。
泣き止んでしばらくたつと、おんぶされてることがなんだか恥ずかしくなってきたんだ。

「いきなり泣き出すからびっくりしたじゃん、どうしたの？」

吉澤の言葉に辻は少し戸惑って、答えた。

「ん、森で遊んでたら・・・迷っちゃって。」

いつもよりずっと低いトーンの声。
辻はウソをついた、いや辻の口からも屋敷での体験を上手く説明できないでいたのだ。
上目づかいで見た吉澤の瞳は辻のウソを見透かしている様な優しい目だった。

「よっすぃ〜は何してたの？」

「わたしはランニングしてたんだぁ、部活が休みの間に体がなまっちゃいけないからね。」

フンッと力こぶを作ってみせる吉澤、辻にはその姿がかっこよく、凄く頼りがいある様にみえた。

結局、家の前まで吉澤について来てもらってしまった。

「じゃあね、あんま遅くまで遊んでちゃダメだぞ。」

「うん、あの・・・ありがとう。」

申し訳なさそうに言う辻に吉澤はポンっと頭を軽く叩いて優しく笑うと自身の家の方へと走っていった。

>>125-132
(　´�D｀) ありがとうごぜーます。精進するのれすです。

更新乙れす。今回も良かったです。
昨日のハロモニのよしのの姿が目に浮かびますね！
この作品はののたんの良さが上手く書かれているので
ののヲタとしては嬉しい限りです。
これからもガムバッテくらさい。

oﾉﾉﾊヽo
从 ´�D｀)＜更新乙です。。。

よっしーかっけー！
今後、本筋とどう絡むのか？
それともﾀﾞｰﾔｽばりに放置?!

よっしーと言えばさっきの美教�U。
扇子片手にポーズを決めて…。
ん〜、かわいいんだけどなぁ。
こないだ偶然、ハロモニの５期メン歓迎企画の
回を録画したのが発掘されたんだけど、
よっしーが今よりめちゃｘ２かわいかった…。

夜、辻は自分の部屋のベットの中で今日の出来事をもう一度考えてみた。

紺野はなぜあのお化け屋敷に入っていったんだろう・・・。


チッチッチッ


時計の秒針が3回と動かないうち布団を頭に被る辻。

（ダメだぁ〜、考えてもよくわかんないや〜。それに・・・。）

あの地下室での奇妙な体験を思い出すと体がブルブルと震えてくる、
辻が布団の中でうなだれるいると枕もとのケータイがメールの着信を知らせた。

『ののー元気でやっとるかー？』

「あいぼんからだぁ〜！」

布団から顔半分だけだしてメールを見ていた辻は嬉しそうに起き上がり、
枕に肘をついてメールを打ち返す。

『元気だよ〜、あいぼんこそ寂しいんじゃないの〜？』

『アホかー！こっちは食べもんもウマイし極楽やでー、今日食べたたこ焼きはおいしかったなぁ〜。』

（たこ焼き、ジュルジュル・・・。ハッ！）

辻が携帯の画面を見たまま固まっていると加護から続けてメールが着ていた。

『心配せんでもなんか美味しいもんお土産に買ってきたるから。
んじゃもう遅いからそろそろ寝るなー、おやすみーのの。』

『ほんとに〜？楽しみにしてるからね〜、おやすみ〜。』

加護とメールしたことでなんだか気持ちが軽くなった様な気がする、
屋敷でのことを加護に話そうかと迷ったが、心配をかけるといけないので辻は話さなと決めた。

（はやくあいぼんに会いたいな・・・。）

部屋の電気を消そうと起き上がり、ベットを出ようとした辻がまた布団の中へと戻る。

（やっぱり、電気つけたまま寝ちゃおう。楽しい夢みれたらいいなぁ。）

とびきりに明るい夢を夢見ながら目をつぶる辻・・・。

（あ、あれ？）

辻が目を開けるとそこは暗闇だった。
いや正確にいうとポツポツと光の点が浮かんでいるし、
大きな光る球体もあるし完全な闇ではなかったが辻の部屋のベットの上でもなかった。

（空の・・・上？）

下を見ると小さくなった辻の家やよく通る道が見える、辻はフワフワと空に浮かんでいた。

（あぁ、これは夢なんだぁ・・・。）

なぜだかはわからないがこれは現実ではなく夢だという強烈な実感があった。
見慣れた景色を上空から眺めているだけで自由に飛ぶこともできず、パジャマ姿のまま
空に浮かぶ辻。飛んでいければ月にも届きそうなのに、ただ見ていることしかできずにいた。

よりにもよって変な夢みちゃったなぁ〜、そんなことを思っていると突然周りの風景が動き出した。
もしかしたら辻が動いていたのかもしれない。
雲や星が吸い込まれる様に動いて行き、辻も吸い込まれる様に逆側へと動いて行く。

（もぉ〜こんな変な夢やだよぉ〜〜！）

声には出せずに辻がそう叫んだ時、空はピタっと動きを止めた。
気がつけばそこは湖の上空だった。近くにはあのお化け屋敷も見える。

（う〜〜、なんでこんな場所で止まるの〜。）

辻のぼやきはまた声に出せなかった。
お菓子の家にいっていっぱいお菓子を食べれる夢とかが良かったなぁ〜、
ふいに流れた星を見てそんなことを思う。

冷たい夜の風が吹くと下ろした髪が空にゆれる。

（あれ・・・なにかなぁ？）

湖の水面が波立っている。風のせいだろうか？
でも波立っているのは湖全体ではなく一部だけだ。

（ここからじゃよく見えないよ〜、もう少し近づければ。）

辻がそう思うや否やスーっと体が動き出した。
さっきと同じに飛んでるというより吸い込まれるという感じだったが、
さっきよりもずっとゆっくりな速さで地面に近づいていく。

頭から地上に落ちていくという味わったことの無い感覚に戸惑いながらもじっと目を凝らす辻。
地面に近づくにつれてだんだんはっきり見えてきた。

（誰かが溺れてる？！）

湖が波立っていたのは誰かが溺れていたからだった。
必死でもがいていた顔はわからないがどうやら子供のようだ。

（早く助けないと〜！）

足をバタつかせ空中を泳ぐ様な動きをする辻、しかし辻の意志は無視されて
体はエスカレーターに乗っているように思い通りにならない。

（あとちょっと、あとちょっとの距離なのに〜！）

湖の水面はもう目の前だ、辻はもうこれが夢だということも忘れてしまっていた。
必死に手を伸ばすとギュっと目を閉じて思い切り念じた。

（お願い、この手を掴んで！！）

がっ！

手を掴まれた瞬間、目がはっと覚めた。
起きたばかりではっきりしない頭の中ではっきりと覚えている今見た夢。
手には強い力で握られた感触が残っている。

しばらくベットの上でボーっとしていた辻は起き上がるとそそくさと着替え出した。
時刻はまだ6時を少し過ぎた頃だった。

(　´�D｀) ﾉ

川o･-･)<私にもたこ焼きを・・・

作者さん、乙！
なーんか
映像が頭に浮かんでくるわー。

更新乙です〜。

作者さん、更新乙れす。

（　‘д‘）＜導かれし、かと思ったやんか

>>150 空�dでるから？

はい。

>>152 あの大作と違い、ほのぼの系れす。

川o･-･)＜ホ

まだ日が昇りきっていない朝の森を辻は歩いていた。
いつもはセミの声でうるさい森も今は辻の足音だけが響いている。
周りは明るいけれど静か過ぎることが少し薄気味悪かった。

「やっぱり誰もいないよね・・・。」

しゃがんで湖を覗き込む辻,水の鏡に自身の顔が映った。
なぜここに来たのだろうと自分でも思ってはいたが,
昨夜の夢のせいだろうか湖に行かないといけないような気がしていたのだ。

時々、鳥の鳴き声が遠くで聞こえるたびに辻は顔をあげる。
待っていても何も現れるわけでもない。

もう帰ろうか・・・、そう思って辻が立ち上がった瞬間だった。
さっきまでとは違うピンと張り詰めた様な空気、そして感じる人の気配。

（後ろに誰かいる・・・？）

それはあの屋敷で何度か感じた視線と同じもの。
そしてあの時よりずっと近くで感じる。
ぷつぷつと聞こえていた鳥の鳴き声もぷっつりと聞こえなくなった。
まだ肌寒いのに脇の下の辺りが汗ばんでくる。


ののちゃん・・・

たったの一声だった。
たったの一声で張り詰めていた空気が崩れる。それは紺野の声。

振り返った辻は穏やかな紺野の表情で少し安堵したがすぐ別の緊張が襲ってきた。

「なん・・・で？」

なんで待ち合わせもしてなにのにこんな時間にいるの？

なんで足音もたてずにすぐ後ろにいるの？

なんであのお化け屋敷で消えちゃったの？

なんであの時感じた視線がこんこんと同じなの？

辻は知らず知らずに後ずさりしていた、
畏怖する物を見る様な辻の目を見て紺野の表情が変わっていく。
紺野が何か言をうと口を開きかけた時、辻が背を向けて走り出した。

紺野の声は聞こえない、鳥の鳴く声も聞こえない、自分の足音だけが聞こえていた。


一度も振り返ることなく家に戻ってきた辻はバスルームに飛び込んだ。
頭上から振る湯に打たれながら辻は何度も繰り返していた。

なんで、なんで、なんで…

「ののーー！亜依ちゃんが来てるべよ〜！」

安倍の呼ぶ声でベットからのっそりと起き上がる辻。
あれから何をすることなくもう夕暮れ時になってしまっていた。

寝起きみたいに重い体を動かし階段を下りていくと玄関で加護が待っていた。

「元気やったかぁ？」

3日前と変わらない加護の顔を見て辻の顔がほころぶ。少しだけ涙目になった。

「うん!」

今の精一杯で声を張って応える。

「今帰ってきたところなんやー、これお土産やで。」

加護から差し出された袋から中身を取り出すと、
ブサイクな人形のキーホルダーとたこ焼き・・・まんじゅうが出てきた。

「ありがと・・・、ねぇ良かったら上がってかない？」

「ん〜、今日は疲れてるしまた明日でも遊びに来さしてわー。」

本当はもっと一緒に居て欲しかった、でも言えなかった。

「そっか、じゃあね・・・。ゆっくり休んでね。」

加護を見送った後いつもならすぐに手をつけるお土産のお菓子を安倍に預けて
辻は自分の部屋に戻った。

お土産の人形をぎゅっと握り締める、ピエロみたいな人形の顔を見ていると少し、元気が沸いてきた。

>>146-154
(　´�D｀) ありがとうございまふふ。

更新乙れす〜。
先の展開が気になりますね。

更新乙！！

ほぜ〜む

重複スレなので移動してください。。。

のの美の成長を見守るスレ
http://tv2.2ch.net/test/read.cgi/ainotane/1020656521/l50

「ハァ・・・。」

辻の家に寄った後の帰り道、加護が年齢に不釣合いなため息をついた。
旅行帰りで疲れてはいたがそれだけではなかった。

（ののに会えるんは嬉しいけど、明日からまた裕ちゃん忙しくなるんやろなぁ・・・。）

アパートの階段の前でいったん立ち止まる加護。
中澤に情けない顔を見せないように気を引き締めてから階段を上り始めた。

一段上がるたびに鉄製の階段がカン、カン、カンと音を立てる。
寂しく響くその音を聞いているとまた気持ちが沈んできた。

カン

加護が階段を上りきった時だった、加護の背後で音が鳴った。

「なんや？」

後ろを向いて下方を見る加護、しかし誰もいない。
まるで昼間に吹くような生暖かい風が通り過ぎた。

なんだったんだろう、そう思って再び前を向こうと思った瞬間だった、
加護は誰かに強い力で背中を押された！

（ひぁっ！）

ガタガタｶﾞﾀｶﾞﾀｶﾞﾀ…

声を出す間もなく階段を転げ落ちる加護。
地面に打ち付けられ遠くなる意識の中でカン、カン、カンと近づいてくる音だけが聞こえた・・・。

夕食後、食卓でくつろいでいる安倍辻石川の所に一本の電話がかかってきた。

「はいはい〜い。今でるべよ〜。」

「もーしもし。・・・なんだ裕ちゃんだべか。・・・えっ？・・・うん、ちょっと待って。」

電話の相手は中澤らしい、受話器を顔から離し辻の方を向いた。

「のの、亜依ちゃんがどこにいるかしってるべか？」

「えっ・・・知らないよ。どうしたの？」

安倍の表情からあまり良くない知らせだと読み取れる。

「まだ帰ってないらしいんだべ。」

再び中澤と話し始める安倍、辻は気になるのかじっと安倍を見ている。

「あいぼん、どうしたんだろ・・。」

「ののみたいに迷子になってるんじゃないの？」

辻がぽつりとつぶやくと、
横で聞いていた石川が笑いながら意地悪そうに言ってきた。

「な、なんで知ってるの〜？」

「よっすぃ〜に教えてもらったの〜。」

辻の顔を赤くしながら石川を無視して加護に電話をかけてみたが、加護は電話にでなかった。

夜寝る前に辻は加護にメールを送ってみた。
しかし返事はすぐには返ってこず辻は返事が来る前に眠りについてしまった。

　　　/＿/＿/＿/＿/＿/＿/＿/＿/＿/＿/＿/＿/＿/＿/＿
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　 　 　 ／　￣￣￣ 　 （　　　 つ旦　 　 （ouuo）
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出た━━━(ﾟ∀ﾟ)━( ﾟ∀)━( 　ﾟ)━(　　)━(　　)━(ﾟ 　)━(∀ﾟ )━(ﾟ∀ﾟ)━━━!!!!
あいぼむあぼ〜ん。南無…

それから作者さん更新乙れす。

保全。
作者さん、陰ながら応援しています…。面白いです。

ぽぜむ

oﾉﾉﾊヽo
从 ´�D｀)＜更新乙〜。

更新乙彼です。
そして保全。

保全します

保全。

もじもじほぜん

イ呆

プルプルプル、プルプルプル…

「だめだぁ〜、またでないや。」

電話の向こうで空しく鳴り続ける呼び出し音を止めた辻。
朝起きてすぐに携帯電話を確かめたが加護からのメールはきていなかった。
それから何度も何度も電話をかけてみたが、
加護が電話にでることはないまま時刻は夕方になる頃だった。

（もしかして昨日からずっと帰ってないの？）

ピンポーン

その思った時、辻の家のチャイムが鳴った。そしてチャイムの音と同時に、辻は
昨日加護が「明日にでも遊びに行く」と言っていたことを思い出した。

（誰？もしかしてあいぼん？）

少しの期待を抱えた辻は部屋を出ると階段の上から下の階を覗き込む。
安倍が応対してるのは中澤だった。しょんぼりしていた辻だったが中澤の様子がおかしい・・・。
いつもと違いどこか元気が無いように見えた、それに目が一晩中泣いた後みたいに腫れている。

二人が居間に入った後辻は下の階に下り、壁にはりつき部屋の外から聞き耳を立てる。

壁の向こう側から二人の話し声が聞こえてきた。

「・・・や、もし誘拐でもされてたら・・・。」

「大丈夫だべよあ〜ほら、ちょっと家出して帰りづらくなったりとか、山で遭難してるとか、×××に拉致されたとか。」

どんどん悪い方へ持っていく安倍に割って入りたくてムズムズする気持ちを押さえる辻。

「うぅ・・・うちが仕事ばっかりでかまってあげれへんかったからやあぁ〜！」

中澤が泣いている、いつも気丈で少し怖いくらいの中澤が泣いている。

「捜索願いも出したし大丈夫だよ、圭ちゃんもすぐ見つかるって言ってたし・・・きっと・・・。」

中澤の悲痛な声に辻はいたたまれなくなり、階段を音を立てないように上がり部屋へ戻った。
携帯電話のメモリーから加護を選択するとさっきの声がまだ離れない耳に当てる。

「あいぼん、どこにいるの・・・でてよ、ねぇあいぼん・・・でてよぉ〜。」

プルプルプル、プルプルプル…

電話の向こうの加護はいつまでもでず、鳴り続ける呼び出し音を辻は止めれなかった。

「う・・・うう〜ん。」

一瞬、まだ目が覚めていないのかと思ってまぶたをパチパチとしてしまった。
加護が目を開いてもそこが変わらず暗闇だったからだ。
何も見えない中、背中の感覚で仰向けに寝かされているのがわかった。
動こうとすると体中がキシキシと痛む。

「なんなんやぁ、ここ・・・どこやねん。」

ぼんやりとした頭で必死に事態を理解しようとする。
そうだ、家に帰る途中に誰かに押されて階段を転げ落ちたんだ！

（もしかして・・・うち死んでしもたんやろかぁ・・・。死んだらこんな真っ暗なるんかなぁ。）

結構冷静にそんなことを考えているとだんだんと暗闇に目が慣れてきた。
どうやらここは屋内らしい、よく見えないがあまり大きい部屋ではないようだ。
最初、床にでも寝かされているのかと思ったが加護の体は台の様な物に寝かされている。

（ウチまだ生きてるみたいやなぁ。死んでたらウチを殺した犯人のとこに化けて出たろ思てたんやけど・・・そうや！ウチの背中を押した奴はどこにおんねん！）

その時加護のすぐそばでポゥっと灯りが点いた、いやロウソクを持った少女がすぐ側に現れたのだ。

加護はヒィッと叫びそうになったがとっさに堪えた。
その少女は見た感じおとなしそうでとても加護を迎えにきた死神の様には見えなかった、
しかし扉が開く音もしなかったし足音もしていなかったのに一体どこから現れたんろう。
だいたいロウソクを持って近づいてきたのならもっと早くに気付いてもいいはずだ。

「あ、あんた誰やねん！」

加護が声を震わせながら怒鳴ったが、ロウソクの灯で浮かび上がった少女の顔は無表情のまま変わらない。


「ごめんね・・・あなたがいるとののちゃんと一緒にいられないもの・・・。」

「のの？のののこと知ってんのか？！。」

加護はとっさに起き上がろうとしたが体に痛みが走って起き上がれなかった。
少女は何も答えずにそっと右手を振りかざした、
すると今まで見えていなかったが手には斧が握ってあるのが見えた。

「う、うそやろ・・・？」

助けを乞う様な加護の表情を見ても少女は眉一つ動かさない。

「いややーーーー！！！」

加護がギュッと目を閉じると少女が勢いよく斧を振り下ろし風を切る音が聞こえた。
痛みは無かった、しかし加護の意識はプツリと途絶えまた暗闇の底へと落ちていく。


プルプルプル、プルプルプル…


ロウソクの灯だけが照らす部屋で携帯電話の呼び出し音が響きだした。

(　´�D｀) すいませんれす！！！４日くらい前から串規制に引っかかってほぼ全板に書き込まなかった
　　　　　　のれす。。。今日書き込めるようになってすげーうれしいれす。
　　　　　　保全してくれてた人ありがとうです。更新待っててくれた人ごめんです。

更新乙れす〜!!!
こんこんの悪役、以外とイイっすね。
続きが楽しみです。頑張って下さい！

小野ｷﾀ━━━━━(ﾟ∀ﾟ)━━━━━ !!!!!

（　＾▽＾）＜「血がﾄﾞｳﾞｧｰって出るの好きなんですぅ」

作者さん更新乙！
てゆーか、この後の展開が読めない・・・
まさか死人はでない・・・よね？

ま、とにかく続きを期待！

更新乙彼です。
いつも続きを楽しみにしてます！
今後の展開を期待しつつ・・頑張って下さい！

更新お疲れ様。待ってましたよ、作者さん。
どきどきしますね〜。こういうこんこんも新鮮でいいです。
完結まで頑張ってくださいねー。

「ただいまぁ〜。」

くたびれた様子の声を聞いてか、辻が自宅に帰ってくると奥から安部が出迎えにきた。

「お帰り、今まで捜してたんだべか？」

「うん・・・。」

「・・・そうだべか。」

座って靴を脱いでいる辻の隣に安倍が座って逆に靴を履き始めた。

「なっち今から町の人達と見回りにいってくるから、
梨華ちゃんが帰ってくるまで一人で留守番頼んだべよ！」

しょんぼりした辻の様子を察してか知らずか、ポンと辻の背中を軽く叩くと安倍は何も言わずに家を出て行った。

安倍が閉めたドアをしばらくボーっと眺めていた辻はフラフラと奥へと向かった。
居間に入りイスに着くとすぐに崩れてテーブルに頬をくっつける。

二人でよく遊んだ空き地も学校の裏山に作った秘密基地も加護とよく行った場所をを捜したけれど、
結局加護は見つからなかった。
一日中捜し回っていたせいだろうか、ウトウトとしてきて辻はうつろな瞳を閉じた。

（明日は隣町まで行ってみようかなぁ・・・。）

だって私にはそんなことぐらいしか出来ないから・・・。
ぼんやりと考えながら、辻はテーブルのベットで眠りに落ちてしまっていた。

ジャージ姿の石川・吉澤と二人とは不釣合いな制服姿の保田が並んで夕暮れの道を歩いている。

「亜依ちゃん、まだ見つからないんだって？」

吉澤が隣の保田の顔色を窺う様に尋ねる。

「うん・・・町の人達にも協力してもらって捜してるんだけどね・・・。」

保田は自転車を押す手に少し力をいれて答えた。

「もしかして・・・もう死ん」

「梨華ちゃん！」
「石川！」

二人に怒鳴られて石川は途中まで言いかけた言葉をつまらせた。

「アハハ・・・冗談だってばー！でもこの町で事件なんて滅多に起きないわよね。」

「だから、まだ事件かどうかはわかってないんだってばぁ。」

笑ってごまかそうとする石川につっこむ吉澤。

「そういえば・・・。」

「どうしたの保田さん。」

意味ありげに呟いた保田に話をそらしたい石川がくいつく。

「この加護ちゃんの事、家の家族で話してたらケメ子おばぁちゃんが前にもこの町で加護ちゃんと同い年くらいの女の子が突然いなくなったことがあったて。」

「この町の子だったの？」

吉澤も興味津々に聞いてきた。

「ううん、その子のお父さんはこの町の出身だったらしいんだけど。ちょうど今くらいの季節の時はその子を連れて帰省してきたんだけど、子供だけが突然いなくなっちゃったって。」

「で、その子はどうなったの？」

急かす様な石川に、ウンと一呼吸おいて保田が続けた。

「結局見つからずに神隠しだって言われたんだって、もうずいぶん昔のことらしいけど。」

もしも加護もその女の子みたいに見つからなかったら・・・、
そう思ってしまったのか三人とも黙り込んでしまった。

「じゃあ私と保田さんはこっちだから。」

分かれ道にさしかかった所で吉澤が一人だけ別方向の石川に声をかけた。

「うん、バイバイ。」

「辻によろしくねー。」

保田に言われ頷きながら二人に手を振った。

さっきは冗談っぽく言っていたが、加護はやぱり事件に巻き込まれているんじゃないんだろうか。
携帯電話を持ってるから連絡をとりたいなら自分から電話してくるはずだ。
それともさっき聞いた保田の話のように神隠し？
いいや神隠しなんて迷信だ、話の女の子も加護も何か原因があっていなくなったんだ。
そう、変質者による誘拐・・・。
こんな田舎でなら人通りの少ない場所で小さな子を誰にも見られずに、
車か何かで連れ去るなんて簡単に出来そうなことだ。
加護みたいな愛らしい少女なら身代金の要求をしてこないことも頷ける。

そんなことをまるで探偵にでもなったかの様に、一人で考えながら歩いているともう家の前まできていた。
その時だった、石川のケータイがメール着信を知らせた。

『北の屋敷にひとりだけで来て。お願い。』

（う、うそ。イタズラじゃないよね？？）

メールは加護のアドレスからだった。

（なんで私に。まさか誘拐犯が加護ちゃんから凄い美少女がいることを聞き出して私までさらおうとしてるんじゃ〜。）

突然の事態に混乱して変な妄想をしながら家の前でオロオロとしている石川。
そうだとりあえず安倍に伝えよう、そう思い家のドアを開いた。

「なっちちょっと来てーーー！」

あまり声の大きくない石川が精一杯絞り出して叫んだが家の中は無反応でシーンとしている。
一瞬テレビのミュートの様に家の中の音が消されてしまったのかと錯覚してしまった。

「やだ、こんな時になっちどこ行ってるのよ。
ののーー！出てきてーーー！」

二度目の呼びかけにも誰も出てこない。
本当はすぐそこの居間に辻が居るのだが眠っている辻には石川の声が届いていなかったのだ。

「もぉー、なっちはケータイ持ってないしののに。のの、アンタでもいいからでて・・・。」

二度三度四度と鳴るベルを聞きながら呼び出しを待っていたが、すぐに出ないことにイライラしてきてブッチっと電話を切る。

（どうしよう・・・私が行かなかったせいでもしも加護ちゃんが殺されちゃったら・・・。）

焦っていた石川は家に上がって本当に誰も居ないのか確認することも
警察に連絡することも忘れ、荷物を置くと外へと飛び出していった。

>>183-186
(　´�D｀) あ〜い、ありがとうごぜーます。

(　´�D｀) ぎゃっ抜けてしまったのれす。>>182さんもありが�d。

交信乙。

（　＾▽＾）＜ﾁｬｰﾐｰもﾚｲｰﾌﾟされちゃいますぅ
（　´�D｀）＜ そんなことより、ﾓｰ通の巡査のｱｯﾌﾟは耐えら(ry

石川はどうなるんだろう・・・ﾏﾀｰﾘ待つとするか。

更新乙れす。
石川あぼーんの予感…。

oﾉﾉﾊヽo
从 ´�D｀)＜更新乙！

続きが楽しみです。
ほぜん

あぼーん

200!
期待です。
尊敬です。

ほじぇん。

「う、う〜ん・・・。」

いけない、眠ってしまっていた。
うたた寝から目覚めて辻は考える前に口の右端から垂れ落ちているよだれを拭取った。
部屋の中は電気も点いていず、夕日も落ちきったのか外からの日の光も届かずに暗くなっている。

次に辻は携帯電話を確認した。寝ている間に加護が連絡してきていないか、
起きたら確認するのがこのところの辻の習慣になっていった。

1件の着信ありの文字、しかし辻が見たのは石川からのものだった。

なんだろう・・・？

別に石川が帰ってきた後に電話の用件を聞いてもよかったのだが、
その時の辻には無性に気になり薄暗い部屋の中から電話をかけてみた。

呼び出し音が2回鳴らるか鳴らないか石川はすぐにでた。

「もしもし、梨華ちゃん？」

「・・・のの？もー急に電話してこないでよねっ！ビックリしたじゃない。」

その口調とは裏腹にﾋｿﾋｿ声で話してくる石川。何かがおかしい。

「どうしたの？なんか変だよ。」

「今、北のお化け屋敷にいるのよ。」

なんで石川があの場所に？！
自分が寝てしまっていた一時間にも満たない時間に何があったんだ。
混乱する辻にかまわず話を続ける石川。

「それでね、今から加護ちゃんときっ、きゃあ〜！！」

「もしもし？！梨華ちゃん〜！！どうしたの！！梨華ちゃんっ・・・。」

石川の悲鳴と物音が聞こえた後会話は通じなくなった。
石川が言いかけた言葉、加護があの場所にいるのだろうか。

加護が見つかったかもしれないという喜びより不安の方が押し迫ってくる。
もし、以前自分が体験した様なことが今二人の身に起きているんだとしたなら・・・。

「あいぼん、梨華ちゃん待っててね。すぐに行くから。」

森の入り口の前で一息つくようにつぶやいた辻。
森の中に踏み入ろうとした時、誰かがこちらに向かって走ってくるのが見えた。
近づいてくる人影がだんだん見えてくる、あれは・・・吉澤？

「ハァハァ・・・。あれーのの？どうしたのよ。」

「よっすぃ〜こそ、なんでここに。」

走ってきたのだろうか吉澤の額には少しの汗が光っている。

「梨華ちゃんから電話があって。なんか慌ててたみたいでよくわかんなかったけど、
加護ちゃんがどうとか言ってから急いで来たんだよ。」

「もしかしてののも？」

辻はコクリと頷き、石川との話の内容と悲鳴の後に電話が通じなくなったことを伝える。
それを聞いた吉澤は少しの間、口元を手で抑えると辻の両肩を掴んで言った。

「私今から駐在所に行って保田さん呼んでくるから、ののはここにいて！わかった？」

「う、うん。」

いつもは見せない吉澤の真剣な表情に辻は気圧される様に同意した。
掴んでいる肩にギュッと力を入れた後、吉澤は休む間もなく走っていった。

吉澤の姿が完全に消えて、辻は森の中で一人ぽつんとしていた。

（早く戻ってきて〜、こうしてる間に梨華ちゃんに何かあったら。
それにあいぼんも見つかるかもしれないのに・・・。)

辻の頭のはるか上で街灯がチカチカと点灯してる。

吉澤はまだ、来ない。

辻は吉澤がやってくるだろう道に背を向けて森に足を踏み入れた。

｢よっすぃ〜ごめんね。約束・・・破っちゃう。」

>>194-201
(　´�D｀) ありがとーなのれす！

>>199
(　´�D｀) 一体だけのマスオしゃん・・・。

更新ｷﾀ━━━━━━(ﾟ∀ﾟ)━━━━━━ !!!!!
真相究明まであと少しか？

交信ｷﾃﾀ━━━ヽ(ヽ(ﾟヽ(ﾟ∀ヽ(ﾟ∀ﾟヽ(ﾟ∀ﾟ)ﾉﾟ∀ﾟ)ﾉ∀ﾟ)ﾉﾟ)ﾉ)ﾉ━━━!!!!
夜更かしした甲斐があったというもんですな。

なかなか良い読み物。
作者さん、がんばって！！！！！

ほぜむ

ほぜむ

ほゼん

ほ

↑スミマセン。。。

>>214
ﾄﾞｿﾏｲ。
作者さん応援ﾎｾﾞﾑsage

ほぜん

続きが楽しみですね。
ﾏﾀｰﾘ待ってます。保全。

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三三||　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　 .||三三|　|:: :: :: :: :::オカムーランドにもう一度行きたいな・・・
三三||　　　 　　　　　　　　 　　　　　　　　　　.||三三|　|:: :: :: :: :: :: :: :: :: :: : :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: ::
三三||　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 .||三三|　| : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
三三||　　　　　∋０ノハヽ０∈ 　　　　　　　　.||三三|　|:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　. :　
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￣|￣￣|￣￣|￣￣|￣￣|￣￣|￣￣|￣￣|￣￣|￣￣|￣|::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

ho

ｵｶﾑｰﾗﾝﾄﾞ…。
あの頃の辻加護は良か(ry

(　´�D｀)＜さべりば

ｈｏ

(　´�D｀)＜おばちゃんのすべて

(　´�D｀)＜はんらごてめーかー

保全

∋oノハヽo∈　　
（　´�D｀）
∪ーーー∪
　｜ 保 ｜
　｜ 全 ｜
　ーーーー

ほぜーん

（　´�D｀）＜ほぜん

　∋oノﾉハヽ
　　　川/・-・)/　＜ﾎｾﾞﾝ
　　　|　｜紺｜
((　(◎＝◎)三)

ほったらかされて約1ヶ月、2chではよくある事ですが…。
もうそろそろ続きが気になってきますよね。

作者さん、続きをうｐしてくれるとありがたいのですが、どうでしょう？
まぁ〜、他の人でも良いので誰か書いてくれ〜。(願い)

小説書いてくれないかな〜？作者さ〜ん！

次の夏休みまで書かないつもりじゃ･･･。

>231
(･∀･)ｿﾚﾀﾞ!・・・って、ヽ(｀Д´)ノｵｰｲ!

　|-`)作者さん・・待ってるよ。

　|-`)ageちまったのでsage・・・

　|彡ｻｯ

これ面白いね。　ドラマにしたら受けるかも？
更新待ってます。

(　´�D｀)＜ho!

(　´�D｀)＜きのうは、つまみぐいれきなかったのれす。

(　´�D｀)＜しょうちゅうのめいがりゃ

更新まだ？

ほぜーん

(　´ｖ｀)＜ほ・ぜ・ん。

保全ってどれ位の時間でやればいいのか知らんのだが
余りに下がってるんで恐いなぁ(^^;sageで大丈夫なのかな？

>>242
ここ読んで見て
http://tv2.2ch.net/test/read.cgi/ainotane/1027284701/365-369

>>243　サンクス！
ってなんやら難しい話なんでつね。単純に見た目で下がってるから保全、では無いんですね。む〜ん。
上級者の方におまかせしまふ(^^;で、作者さ〜〜ん！！まってま〜〜す！

hi-ho

.

作者さんｶﾞﾝｶﾞﾚ

hozenage

作者さ〜ん。
安否情報だけでも書いて下さ〜い。
そうじゃないと、ウチが一本短編を書いてまうで。

sage忘れた……

>>249
否だったらカキコ出来ないという罠。不謹慎ｽﾏｿ

>>251
ﾜﾗﾀ　不謹慎ｽﾏｿ（´・ω・｀）

復帰を願い、作者さんに捧げます。

『くいしんぼう　のの』

「のの！　起きて！」

もう〜！
うるさいれすよ！
ののは、今とっても最高の気分なんれす！
見た事のない、豪華なご馳走がある夢なんて、めったに見れねーのれす。
このまま寝かせてくらはい！

「希美！　いつまで寝てんだよ！　起きろよ！　それで目覚まし止めて！　うるさい！」
２段ベッドの下れ寝てるお姉ちゃんの文子が、文句を言って下からベッドを叩いてくるのれす。

「うぅ〜ん」
ののは、ベッドの中から手を延ばして「アイ〜ン、アイ〜ン」って、朝から元気に騒いでるバカ殿のちょんまげのボタンを押して、音を止めたのれす。

「これれいいれすか？」
文子は返事もしてくれねーのれすよ。れも、いつもの事なのれ、全く気になんねーのれす。

あ〜ぁ、夢に中れ、せっかく干し芋が食べれる所らったのに！

食べれそうれ、食べれないのは、よけーに腹が減るんれすよね。
こんな時は、起きて腹いっぱいご飯を食うのが一番れすね。

「おっはよ〜、はらへったのれす」
リビングに行って、元気に挨拶をしたのれす。らって、元気がいいのがののの持ち味なんれすから。

「あら希美、今日は日曜日なのに、起きるのが早いわね」
キッチンれ朝食の用意していたお母さんが、いつも寝坊するののが早く起きたのれ、鳩が豆鉄砲を食らった顔をしてるのれす。

「らっておねーちゃんが、ベッドの下から叩くから、起こされちゃったんらもん」
口を尖らせてお母さんに文句を言ってもしょうがないけろ、言ってみたのれす。

「あらあら、それは大変ね」
れも、お母さんは苦笑いを浮かべながら、そう言うらけらったのれす。

お母さんが用意してくれたご飯を食べていると、電話が鳴ったのれす。

「はい、もしもし、辻でございま〜す」
お母さんは、いつもより５オクターブ高い声を出して話しているのれす。

そんなに高い声を出したら、マロンが犬笛らと思って走ってくるのれすよ。

「ワン、ワン」
本当に来ちゃったのれす……

「希美、亜依ちゃんから電話よ」
「ふぁ〜い」
口の中のご飯を飲み込みながら、電話に出たのれす。

「あいぼん、おーはー」
「あっ、のの、おーはー。これから買いもん行こう思うねんけど、一緒にいける？」
「いいれすよ。じゃあ、待ち合わせは駅前の時計がある所れ」
「おーけー、それじゃ、３０分後な」
「へーい」

もうちょっとご飯を食べたかったけろ、あいぼんを待たせる訳にはいけねーのれす。

部屋に戻ってベッドを見ると、文子はまら寝てるんれすよ。
それれ、ちょっとイタズラをして、おでこに「文」って口紅で書いてやったのれす。
れも、文子は起きなかったのれす。ののはそんな文子に関心してしまったのれす。


時計を見ると約束の時間まれ１０分らったのれ、最近お気に入りのタオルを頭に巻いて、土建屋ファッションれお出掛けなのれす。

駅前に着いて信号が変わるのを待っていると、車がビュンビュン通る道の向こうに、あいぼんの姿が見えたのれす。

あいぼん、ののは間に合ったれすよ。

れも、この信号は、なげーのれすよね。
ののが悪いのか、いっつもここの信号に引っ掛かるんれすよ。

日頃の行いを見直して、良い事をしなきゃいけねーのれすね。

「ミャー、ミャー」
信号の変わるのを待ってると、ろこから来たのか、ののの足元に子猫がなついてきたのれす。

「可愛い子猫ちゃんれすね〜」

ののが手を延ばそうとしたら、子猫ちゃんが驚いて走りらして、道に飛び出したのれす。

「あっ！？　あぶねーのれす！」
ののは、良い事をするチャンス！　らと思わなかったけろ、猫ちゃんと助けようと、道に飛び出しちまったのれす。

「のの！　起きて！」
「希美！　お願いだから、目を覚まして」

うるさいれすよ！　ののは、今とっても最高の気分なんれすよ！
見た事のない、豪華なご馳走がある夢なんて、めったに見れねーのれす。

「希美！　いつまで寝てんだよ！　起きろよ！」
また文子なんれすね。
いっつもいい所れ起こすんれすよ。

ののは、ご馳走を食べたんれすけろ、この前の仕返しれ、おでこに「希」なんて書かれたらいやなんれ、ご馳走はあきらめるしかねーのれす。

ののがゆっくり目を開けると、ののを囲むようにお母さん、お父さん、文子、あいぼんが、ののの事を涙を流しながら見てるのれす。

何れ泣いてるのか意味が分かんないけろ、ののはみんなの顔を見て元気に言ったのれす。

「おっはよ〜、はらったのれす」

この話で「〜〜れす。」の口調は変だろう。
でも良くぞ書いた！乙！

>>264
「れす」表現にするか、普通にするか迷って、「れす」で書いちゃいました。ﾃﾍ
次に書く機会があれば、その辺りを見直します。

本編の作者さ〜ん。
早く戻ってきてね〜。
そうじゃないと、またウチが短編を書いてまうで。

保全

249さん、乙彼ですた。
漏れは「〜れす。」でもｵｹｰｲかな？
本編作者しゃんは、多分来年の夏まで帰ってこねーのれ、
また短編書いてつないでくらさいなのれす。

保全

南半球は夏間近。そろそろ復帰かな？
お言葉に甘えて書かせてもらいます


『星のかけら』

「のんちゃん、この話、信じる？」

病室のベッドで、白いパジャマ姿のいいらさんが身を起こして、見舞いに来たの
のに童話の本を見せてくれた。

いいらさんが見せてくれた「ほしのかけら」という童話は、
「空から降ってきた星のかけらを見つけた人は、どんな願い事でも叶う」
という、ののでももう読まない、子供向けな内容だった。

「いいらさん、そんな話を信じるんれすか？
もう、ホントーに子供なんれすね〜」

ののは、クスッと笑って、いいらさんの顔を見た。

「でもねぇ、のんちゃん。もしこれが本当だったら、どうする？」

いいらさんが、ののの目を、夢見る少女のような瞳で見つめてきた。
ののは、そんないいらさんの目を見て「あっ、可愛い」と思ったら顔が熱くなり
、ポッと赤くなった。
そうしたら、心臓もドキドキしてきたので、椅子から立ち上がり、プイッといい
らさんに背を向けて、窓の外を見て言った。

「そ、そうれすねぇ、ののらったら、いっぱいのお菓子と、いっぱいのご飯と、
いっぱいのアイスと……」

「のんちゃん、食べ物ばっかり願って。そんなに食べたら、太っちゃうよ」

ののは肩を震わせ、
「太る太るいうんじゃねーよ！」
と言いたかったけど、女、子供と病人だけには優しくするのが、のの家の家訓。
だからののは、喉まで出かかった言葉を飲んで、振り上げようとした拳もグッと
こらえた。

（フッ、ののは大人なのれすよ）

♪ゆうや〜け、けやけ〜の、赤トンボ〜

夕暮れに染まる外を眺めていると、病室の天井にはめ込まれてる薄汚れたスピー
カーから、テープが伸びきったような音で、「夕焼け小焼け」が流れてきた。

「いいらさん、これなんなんれすか？」

ののが窓の方から振り返ると、いいらさんは寂しそうな顔だった。

「面会時間が終わりって事を知らせる音楽なの。圭織、この曲は嫌い」

とっても音楽が大好きないいらさんでも、この曲だけは嫌いみたい。

「明日も来るのれ、そんな顔しねーれくらはいよ。
いいらさんが悲しい顔をすると、ののまれ悲しくなるのれすよ」

ののの言葉に、さっきまで寂しそうだったいいらさんが、ニコッと笑ってくれた
。

（その笑顔こそ、いいらさんなのれす！）

「じゃあ、また明日きますね〜」

ののは、いいらさんに向かって体全体を大きく揺すって手を振り、病室を出て行
った。

ののは病室を出て、他の患者さんに面会に来た人達に交じって歩き、ボーッとい
いらさんの事を考えた。

テレビ番組の本番中に突然倒れて、
1ヶ月の面会謝絶が続いて、
やっと今日いいらさんの笑顔に会えて、
子供みたいに童話を信じて……

「飯田さんの検査結果、どうだったの？」
「それが、もう症状がかなり進んでしまってて、手が付けられないみたい」
「それで、面会謝絶が解けたんだ」
「顔色だって、全く健康な人と変わらないのにね」
「あと、どのぐらいだって？」
「先生の話を立ち聞きしたんだけど、検査した時点であと1ヶ月だったって」
「それじゃ」
「うん……」

突然のの耳に、そんな看護婦さん達の会話が飛び込んできた。

えっ？

いいらさんが？

１ヶ月？

ののの、ゆっくりと回るメリーゴーランド並の頭でも、意味が分かった。

ののは、病院を出て、何かを振りはらうように、街が一望に見渡せる小高い丘ま
で、全速力で走った。

ののが丘の上までくると、いつの間にか辺りは真っ暗で、目に入るのは家族が集
う暖かな街の灯と、満天に輝く星空だけだった。

いいらさん、なんれれすか……

いいらさんは、ののの師匠なのれすよ

らから、ずぅ〜っとののと一緒にいてくれるんじゃないのれすか……

いいらさん……

いいらさんの笑顔が頭の中に浮かんでるはずなのに、止めどなく涙が込み上げて
きた。

そして、頭に浮かぶ優しいいいらさんの顔以外、暖かい街の灯も、満天に輝く星
空も、全てが霞んで見えた。

ポヮー

ののの頬を伝って落ちた涙が足元の草の上で弾けた瞬間、その涙が淡く光り輝い
た。

ののは、溢れ出る涙を手でこすり、しゃがんでその小さく光る真珠のような玉を
、両手で優しく包み込むように持ち上げた。

「これなのれすか？……」

ののは、いいらさんに見せてもらった「ほしのかけら」という童話の挿絵が思い
浮かんだ。

「これれきっと、いいらさんが助かる！」

あの時ののは、いいらさんに「そんな本を信じるなんて、ホントーに子供れすね
」って言った。
でも、ののの頭は高性能でだから、都合良く忘れる事が出来る。
ののは、その「星のかけら」を大事に胸に抱えて、病院に向かって走った。

病院に着いたののは、面会時間が終わって人がいなくても、病院の入口は開いて
るんだね。でも、不用心にも程があるよ。
そんな事を思いながら、病院の建物の中に駆け込んだ。

病棟の中を息を切らせながら走って、いいらさんの病室に向かった。
すると、看護婦さんや白衣を着た先生が、ののと駆っこをするように、後ろから
走ってきた。

ののがいいらさんの病室に入ると、いいらさんのベッドの回りには、一緒に駆っ
こして、あっという間にののを抜き去った先生や看護婦さんがいた。

「はい、飯田さん、頑張って下さいね」

走った事と、この状況で心臓が痛い程高鳴っていたののは、いいらさんの顔を早
く確認しようと、看護婦さんや先生の間から覗き込んだ。
隙間から見えたいいらさんは、酸素マスクをして、ののが一度も見た事のない、
とてもつらそうな顔だった。

「先生！」
「うむ」

先生と看護婦さんが指示を出し合って、何かを言ってるけど、ののには意味が分
からない。

でもそんな処置よりも、今の、ののの方が、いいらさんを治す事が出来る事は分
かってた。

ののは、ピンボールの玉のように弾かれながらも、看護婦さんや先生達をかきわ
けて、苦しんでるいいらさんのそばに行った。
それで、病人だって事を忘れて、いいらさんの暖かい手を、ののの馬鹿力でギュ
ッと握って言った。

「いいらさん、これれす！　願いが叶う、星のかけらなのれす！」

興奮してるののの声に、いいらさんが気が付いてくれた。

いいらさんは、自分の手で酸素マスクを外し、額に汗を浮かべた苦しい顔をしな
がも、優しい眼差しをくれた。そして、汗と涙でぐちゃぐちゃなののの変な顔を
見て、いいらさんが微かな笑みを浮かべ言ってくれた。

「のんちゃん、良かったね。でも、食べ過ぎちゃ駄目だよ」

辛いはずのいいらさんが、ののの事を心配させないようにと言ってくれた言葉が
痛かった。

「いいらさん、何言ってるのれすか！　いいらさんの為に持ってきたのれすよ！
」

その時、ののの願いが通じたのか、いいらさんの苦しいそうだった顔が、いつも
の、ののが大好きな優しいいいらさんの顔にパァーっとなっていった。

なのに……

ピーーー

病室の中に、携帯電話の電池が切れた時のような、高い音が鳴り響いた。

「いいらさん？」

「いいらさんってば！」

「これ、願いが叶う、星のかけらなんれすよ」

「いいらさんがいなかったら、のの一人じゃ、まら何にも出来ねーのれすよ……
」

「変顔をいっぱいするのれ、いつもみたいに笑ってくらはいよ……」

「ねぇ、いいらさん」

「いいらしゃ〜〜〜ん！」

「ママ〜、着替えて来るね〜」

「ママのとっても大事な人の所に行くんだから、ちゃんと可愛い服を選んでね」

「は〜い」

「ふぅ〜、あの子も一人で着替えられるようになったんだね」

そう呟いてソファーに座り、冷蔵庫から出したアロエヨーグルトを一口頬張って
、テレビの上にある写真立てを見た。

あれから、もう１５年が経つんだよね……

写真立てには、ロングへアーが綺麗で、背が大きく、優しい笑みを浮かべた女の
人と、
その女の人の腕にギュッと抱きつく、髪をツインテールにして、八重歯をのぞかせて
テヘテヘと笑っている小さな女の子の写真が飾ってある。

「ママ、用意できたよ。早く行こう」

写真の中の小さな女の子にそっくりな、ツインテールの髪形をした女の子が、後
ろから肩を前後に揺すってきた。

「そうね。それじゃ、行きましょうか」


玄関に向かいツインテールを揺らして走っていた女の子に、写真立ての横からペ
ンダントを取って、声をかけた。

「圭織〜、お守り忘れてるよ」

「あっ、は〜い」

走って戻ってきて、ひょこっと首を突き出した圭織に、手に持っていた小さくて
淡く光る真珠のような玉が付いたペンダントをかけてあげた。

本当にお星様になったいいらさんが、自分の為じゃなく、ののに残してくれた、
この星のかけら。

これからもそばで、ずぅ〜っと見守ってくださいね。

それが、のののたった一つの願い事なのれすから。

人の心の優しさや希望・願いや思い出などは、次の世代へと受け継がれて行くと言う事なのでしょうか？

星のかけらは大切な誰かを思う心の中にある、輝きの結晶なのでしょうね。

･゜･(ﾉД｀)･゜･

もう、ただただ感動。
ありがとう、また自作を期待してます＞２４９さん

保全のつもりでスレを開いたら思いがけずいい話を読むことが出来ました。
ありがとー。

>>285
同上

>>283
そう感じ取ってもらって、とてもうれしいです。

>>284-286
ありがとうございます。

推敲中にストーリーを気にし過ぎて、誤字脱字に気が付かなかった所が幾つかあった事をお詫びします。

保全。

ho!

>>249
前回の『くいしんぼう　のの』といい・・今回の『星のかけら』といい・・いいもん読ませてもらいました。
本当に乙です。
そして他の作品はまだあるのでしょうか？あればｷﾎﾞﾝしたいです。

ｽﾚ違いｽﾏｿ。

聖な〜る　鐘が鳴り響く夜〜

ちょっと早いけど、このスレへのクリプレは、本編作者さんの復活？

またまたおじゃまさせていただきます。

『小さなサンタの贈り物』

♪ジングルベール　ジングルベール　鈴が鳴る〜

この季節、色とりどりなクリスマスのイルミネーションが光り輝き、老若男女を問う事なく、街行く人々みんなが暖かく幸せな気持ちに包まれている。

そんな街の喧騒から少し離れた場所に、古い木造建築の２階建てアパートがある。
そのアパートの２階の一室で、目に涙を浮かべた女の子が、ボロボロになった本の最後のページを開き、滲んで黒くなった文字を指でなぞっていた。

その女の子の名前は、紺野あさ美。小学４年生。

彼女はどんな事でもそつなく完璧にこなし、学校でも担任の教師から褒められる事が多かった。
しかし、そんなあさ美の何でも完璧にこなす態度を、クラスの一部の女子からは「先生に取り入ってる」と感じられていた。
あさ美はそんな女子達からイジメられる事があり、今日も学校でこんな事があった。

５時間目の授業が終わり、すぐに家に帰りたくなかったあさ美は、放課後３階の教室の窓際にある自分の席に座って本を読んでいた。
廊下から下校する生徒達の賑やかな声が聞こえる中、突然教室の前にある引き戸が手荒くガラッと開けられ、クラスメイトの女の子が入ってきた。
あさ美は、その子が忘れ物でも取りに来たのかと思い、一瞬目を向けるもあまり気にする事なく、また本に目を戻して続きを読んでいた。
しかし、彼女は自分の席を通り越し、あらかじめ決めていたかのように、真っすぐにあさ美の席の近付いてきた。

「ねぇ、あさ美ちゃん。なに読んでるの？」

あさ美の席まで来た彼女は、優しい口調とは裏腹に、机の上に広げていた本を乱暴に取りあげた。

「あっ、返して下さい」

あさ美は椅子をサッと引いて立ち上がり、彼女が中を読むでもなく、ただパラパラとページをめくる本に手を出した。

「あっ、ゴメンね〜。手が滑っちゃった〜」

あさ美の出した手よりも一瞬早く、彼女は開いていた窓から本を放り投げ、あさ美の顔を見て鼻をフンッと鳴らして含み笑いをし、教室から出ていた。


彼女が教室から去った後あさ美は、彼女が出ていった開けっ放しになってる教室の引き戸をじっと見つめ、体を震わせ必死に込み上げてくる涙にたえていた。
そして、大きな涙の波を一度たえたあさ美は、引いた椅子を机に戻し、ロッカーから鞄を取り出して両手で胸に抱え、本が放り投げられた中庭に向かって走って行った。

走って中庭に降りたあさ美は、涙こらえた目でキョロキョロと辺りを見回して本を探した。
しかし、葉の落ちた銀杏の木の枝や、枯れかかった芝生の上のどこを見ても本は見つからなかった。
どこを見も本が見つからないあさ美は、どんどん不安な気持ちが募り、胸が張り裂けそうになっていた。

中庭の隅々まで見て歩いたあさ美は、今までずっと避けて探していた、校舎のすぐそばにある池に歩み寄った。
あさ美が池の縁まで近付くと、銀杏の枯れ葉や誰かのテスト用紙、牛乳のテトラパックのゴミが浮かぶ、へどろが溜まった汚い池の水の底に沈んでいる本を見つけた。
一番あって欲しくなかった場所で見つけたあさ美は、焦る気持ちで池の中から本を拾いあげようと、服も靴も汚れる事を気にする事なく、冷たく底がドロドロになっている池に足を入れた。

池の深さはあさ美の膝下ぐらいだが、あさ美が池の中で足を動かす度に幾分透明な池の水が、沈んでいた泥や藻を巻き上げ茶色く濁っていった。
あさ美はその透明度が全く無くなった滑りやすい池の中をすって歩き、本が沈んでいた辺りで服の袖を肘まで捲り上げ、底の泥をさらうように手を動かして、藻と泥で汚れた本を拾い上げた。

「あさ美ちゃん、本が見つかって良かったね〜。
ていうか、そんなに大事だったら、学校にもってくんなよ。ばーか」

池の泥水で汚れながら、必死に拾い上げた本を胸元に抱えているあさ美の姿を見て、本を放り投げた彼女、離れた場所からあさ美を嘲笑っていた。

彼女の声にまた涙が溢れそうになったあさ美は、足を滑らせながら池から上がり、服やＧパンから泥水を垂らしたのずぶ濡れのまま鞄と本を持った。そして、水で重くなった靴で彼女の横を通り、走って家に帰った。

夕暮れの中、誰もいない家に着いたあさ美は、いつもの通りポストの中から家の鍵を取り出し、玄関の鍵を開けた。

あさ美の父親は、あさ美が幼稚園の卒業が間近だった春先に、あさ美と公園に遊びに行く途中、道に飛び出した子供を助けようとして交通事故に合い、帰らぬ人になっていた。
それから４年間、あさ美は母親と二人で暮らしている。
そして最近は、母親が始めた仕事が深夜遅く続き、母親が帰って来るまでの間、一人ぼっちで過ごす毎日だった。
そんなあさ美は母親に心配をかけまいと、いつでも気を張って弱音を吐く事もなく、何でも完璧にこなそうと自分の心に誓っていた。

夕日が窓から差し込み、オレンジ色に染まった部屋に入ったあさ美は、汚れた服のままで、泥水で濡れた本を机の上に置き、タンスから洗いざらしのタオルを取り出して、一所懸命に本を拭いた。

「お母さん、ごめんなさい。お母さん、ごめんなさい。」

あさ美は本を拭きながら涙をぐっとこらえ、うわごとのようにそう呟いてた。

「なんか、後ろ姿が、とっても悲しそうなのれす……」

本を拭くあさ美の後ろ姿を、子供達のプレゼントを調べ歩いていた、真っ赤な服に身を包んだののサンタが、夕日を背に浴び、空に浮かぶソリに乗って見ていた。

「そんなん、一軒一軒子供のいる所で感情入れてるから、プレゼントを調べんのに１年中世界を飛び回らなあかんようになんねん。
ちょっとはソリを引く、こっちの身にもなれっちゅうの！」

ののサンタのソリを引く、首に鈴をつけた関西訛りな犬っ鼻のトナカイが、やれやれという感じで首を振り、小声で愚痴っていた。
自分に対する褒め言葉といやみ、そしてお菓子の袋を開ける音にはとても敏感な耳を持つののサンタは、その犬っ鼻のトナカイ、通称みそじのお尻を掌で軽くパチンと叩いた。

「これが、ののの心を込めたプレゼントを送る秘訣なのれす！
あんまりごちゃごちゃ言ってると、みそじの夕飯まれののが食っちまーのれす！」

ののサンタの言う事が冗談じゃない事を知っているみそじは、口をつぐんでいた。
ののサンタは、段々と薄暗くなる部屋であさ美が必死に拭いている、びちょびちょになった本のタイトルを、首にかけたプリクラがいっぱい貼ってあるピンクの双眼鏡を使って覗き、
ソリの小物入れから油性ペンを取り出して、みそじのお尻に大きく書くと、シャンシャンと鈴の音を鳴らして空へと消えていった。

陽が落ちていき、部屋の温度も段々と寒くなっていく部屋で、あさ美は電気も暖房もつけずに本を拭いていた。
あさ美が本をめくり丁寧に拭いていくと、濡れてくっついたページがあった。あさ美は、そのページを破かないようにと、慎重に両手を使ってゆっくりと剥がしていった。

「あっ」

しかし、水に濡れた本はあさ美がさほど力を入れずとも、ページの端から真ん中辺りまで、音もなくもろくも破けてしまった。
その瞬間、あさ美は体を震わせ、堰を切ったように、今まで耐えていた涙が溢れ出した。そしてあさ美は、声を押し殺しながら泣いた。


いつしか泣き疲れて眠ってしまっていたあさ美が目を覚ますと、いつの間にか汚れた服から水玉柄のパジャマ姿に着替えさせられて、暖かい布団の中に入っていた。
居間と寝室兼あさ美の勉強部屋の二間続きの部屋で、あさ美は泣き腫れた瞼をこすり、布団の中から目を細めて薄いカーテンで仕切られている居間の方を見た。
そこには、あさ美を起こさないようにと気を使い、電気を薄暗くしたままで一人遅い夕食を食べている母親の姿が見えた。
あさ美は、その母親の後ろ姿を見た瞬間に顔が熱くなり、破れた本の事を思い出してまた泣いた。
もちろん、弱音を吐かないあさ美らしく、布団の中に頭までもぐり、枕を顔にギュッと押し付けて、泣き声が母親に届かないようにしながら。

あれから数日が過ぎ、学校は冬休みに入った。
あの日からあさ美は、本を机の引き出しの奥にしまい、母親に後ろめたさを感じながらも、破れた本の事を隠していた。
そして、１２月２３日。
今日は、子供も大人も楽しいはずのクリスマスイブだというのに、あさ美の母親は仕事に出掛け、深夜まであさ美が一人で過ごす事になった。

夜になり、あさ美は隣の家から聞こえてくる、家族で歌うクリスマスソングや笑い声が交じった楽しげな会話に、目と耳をふさいで布団の中にもぐっていた。

シャンシャンシャン

布団の中で耳を両手で押さえて、小さく丸まっているあさ美の耳に、テレビやラジオからではなく、窓の外の方からはっきりとした鈴の音が届いた。

「ののサンタさん。着いたで〜」

忙しくプレゼントを渡し歩くののサンタは、時折体をピクッと痙攣させながら、ソリの中に横たわり、プレゼント袋を枕にして寝ていた。

「ちょっとあんた！　寝てへんでちゃんと起き！　仕事中やで！」

みそじの怒鳴るような声に渋々目を覚ましたののサンタは、口から垂れたよだれを手でこすり、両手を雲ひとつない夜空に大きく延ばして体をほぐした。

「ふぇ〜？　もう着いたんれすか？　んじゃちょっと行ってくるのれ、待っててくらはいね。
あっ、ののがいない間に、ソリにある“みるくポッキー”を食べたら駄目れすよ！」

寝起きでも、自分には甘く、食べ物には人一倍厳しいののサンタは、キッときつい目でみそじを睨んだ。

「んなもん、食うか！」

みそじは漫才のツッコミのように、間髪を入れず前足をののサンタの方に振っていた。

ののサンタは、あさ美の家の寝室になっている部屋の窓にソリを横付けし、窓にかかっている鍵を、魔法を使ってポーッと光った人差し指をピンッと弾いて開けて、音を立てないようにそっと静かに窓を開けた。

「おじゃましま〜す。ののサンタなのれ〜す。
別に怪しいもんじゃねーのれすよ〜」

煌々と電気が点いた、二組みの布団が敷かれた部屋に、ののサンタは小声で誰に言うでもなく、決まり文句のように言って入っていった。


（えっ？　一体誰なの？）
部屋の中とは違って暗い布団の中で、あさ美は目を大きく見開き、鈴の音と共に現れた、怪しい者じゃないと言う、あからさまな不審者に体をブルブルと震わせていた。
そして、その不審者が布団の外で何かを物色している物音や、足音が近付いたり遠ざかったりする度に、あさ美の心臓は激しく脈打った。

「あっ、この引き出しに本が入ってるのれすね」

部屋にあるお菓子に気を取られながら部屋を物色していたののサンタが、本がしまわれているあさ美の机の引き出しをガタガタと開けた途端、二組み敷かれていた布団の片方がガバッとめくり上がり、中からあさ美が飛び出してきた。

「そこは開けないで下さい！」

ののサンタが引き出しに手を入れ、泥水が乾いてボロボロになった本に手をかけた瞬間、ののサンタの横からあさ美が勢い良く引き出しを押し閉めた。

「いってーのれす！」

見事に右手を引き出しに挟まれたののサンタは、あさ美が両手でギュウギュウと押し閉める引き出しから、力任せに手を抜き取った。
そしてちょっと涙目になったののサンタは、赤く引き出しの跡が付いた手に、フーフーと息を吹き掛けて手を振った。

「あ〜もう！　箸持てなくなったら、ろう責任取ってくれるんれすか！
最近の学校はゆとり教育とか言って、あんま勉強しねーから、年上への配慮とかがなってねーのれす！」

激しくまくし立てるように怒鳴る、顔も服も手も真っ赤なののサンタに圧倒されたあさ美は、驚いて体を硬直させ頭を下げた。

「ごめんなさい。でも、そこだけは駄目なんです」

ののサンタは、挟まれたジンジンと痺れる手をさすりながら、顔を真っ赤にして机の前に立ち、後ろ手に引き出しを押さえるあさ美に近付いた。

「え〜っと、紺野あさ美ちゃんれすよね？　ののは、じゃなかった、ののサンタはれすね、ボロボロになったあさ美ちゃんの本をクリスマスプレゼントとして、新しい本に交換してあげよーと思って来たんれすけろ……」

あさ美は俯いたま首を振るだけで、ののサンタの言葉には答えなかった。
そんなあさ美の前にしゃがみ込んだののサンタは、目と口をギュッと閉じて俯くあさ美の顔を下から見上げた。

「あの本に何かあるのれすか？
良かったら、ののサンタが聞いてあげるのれすよ」

優しい眼差しで語りかける、不審者だと思っていたののサンタの言葉が、何故か心に優しく響いたあさ美は、引き出しの中から本を取り出して机の上に置き、椅子を机の下から引き出して座った。

「この本は、私がずっと前から欲しかった本なんです。
それで、お母さんが私がテストで１００点を取った時に、あさ美が良く頑張ったご褒美だよって、一所懸命に働いたお金で買ってくれた、私の大切な宝物なんです……
だから、例え同じ本でも、違う本になるのは駄目なんです！」

あさ美の前にしゃがんでいたののサンタは、唇を震わせて涙をこらえながら話す、あさ美の母親に対する気持ちの優しさに、涙をポロッとこぼしていた。

「のの、新しければ喜ぶと思ってたけろ、間違ってたのれすね……
分かったのれす。あさ美ちゃん、ちょっとその本を、ののに貸してくらはい」

涙を服の袖で拭ったののサンタが、八重歯を覗かせてテヘッと笑顔であさ美に微笑むと、あさ美は少し不安げな表情を浮かべながら、本をののサンタに渡した。

「ちょっと布団を動かしますね。それじゃ、せ〜の、
のんのんのんのんっ！　のんすとっぷ！　のんのんのんのんっ！　のんすとっぷ！」

ののサンタは両手で本を頭の上に掲げ、呪文を唱えながらクルクルとその場で回転し始めた。

「えっ？　なに？」

回ってるののサンタが眩しい程の光りに包まれ、本からもピカピカと部屋中に散らばるように光りが放たれた。
そして、何度か回ったののサンタの回転と呪文がゆっくりと止まっていくと、ののサンタを包んでいた光りも弱くなり、部屋中に散らばっていた光りが吸い込まれるように、また本に集束していった。
体を包んでいた光りがおさまり回転が止まったののサンタは、手で口を押さえ、足をフラフラさせながらあさ美に近付いた。

「うぇっぷ。ちっと、気持ち悪りーのれす……
あさ美ちゃん、これれ、元通りの奇麗な本になったのれすよ」

まだほのかに光りが残る奇麗になった本を渡されたあさ美は、何かを確かめようと、震える手で本の最後のページを開いた。
するとそこには、濡れてから滲んで読めなくなっていた文字が、元通りの母親の柔らかい字の「紺野あさ美」に戻っていた。

「じゃあののは帰るのれ、その本は大事にしてくらはいよ。一回魔法を使うと、めちゃくちゃ腹が減るのれすから。
あっ、それとあさ美ちゃん。たまには弱音を吐いた方がいーのれすよ。いつも“完璧れす”とか言ってると、疲れちまうのれすから」

ののサンタは奇麗になった本を潤んだ瞳で見ているあさ美の顔を見ながら、まだ少し目が回ったヨロヨロとした足取りで、入ってきた窓に向かった。

「あの、本当にありがとうございます」

今までに無い程の弾むような声に、ののサンタは出て行こうとした窓の桟に片足を掛けたまま、身をよじって上半身だけをあさ美の方に向けた。

「お礼なんていらねーのれすよ。らってののはサンタなのれすから。
それに、ののもあさ美ちゃんから、大切なプレゼントをもらったのれす」


ソリに戻ったののサンタは、窓から落ちそうな程身を乗り出して大きく手を振るあさ美に両手で手を振り返し、シャンシャンと鈴の音を響かせながら夜空へと消えて行った。

あさ美が夜空に上がっていくののサンタのソリを小さくなるまで見つめていると、外の廊下の方からカツカツと靴音が聞こえ、ちょうどあさ美の家の玄関の前で止まった。

「あさ美、ただいま〜。今日はクリスマスイブだから早く帰っていいって言われたからさぁ、クリスマスケーキ買ってきたよ」

玄関から母親の声が聞こえたあさ美は、奇麗になった大切な本を胸に抱え、「お母さ〜ん」と叫びながら玄関に向かって走り、母親の体にギュッと抱きついた。
そしてあさ美は、暖かい母親の温もりを感じながら、何年か振りに大声で甘えるように泣いた。

色とりどりなクリスマスのイルミネーションに包まれた街に、今年１年の全ての汚れを覆い隠すように、空から真っ白な雪が落ちてきた。
今年の初雪となるその雪は、何故か甘〜いミルクの味がしていたという。


「ちょっと、ののサンタ！　あんた、ボロボロお菓子のカス、こぼさんとき！」

「あーい」

便宜上、紺野を小学生に設定しました。
悪しからず、ご了承下さい。

いやー、よかったです
加えて、メンバーは誰も死ななくて
ただ一言だけ言わしてちょ、イブ→１２／２４。

>>309さんのレスを見て、めっちゃ顔が熱くなりました…

カレンダーの23日が赤くなってるのを見て、そのまま書いてしまった100%天然です。

いやはや、お恥ずかしい限りです。

>249
中澤トナカイの設定にﾜﾗﾀ
辻と中澤の組み合わせも新しくてかなりおもしろかったです

他力本願だけどまた書いてください。

大切なのは心...。

ベタなネタですけど、忘れちゃいけない事ですね。

それと、ののサンタとみそじのキャラクター・漫才のような掛け合い、とても良かったです。

機会があったら、またやって下さい。

>>311-312
ありがとうございます。

保全