798 :
辻っ子のお豆さん:
この三人がウンコをするはずがない。じゃあ誰が?一体誰がうんこをしているというん
だ。思いっきり扉をノックする。中からの返事は…
「入ってまーす!」
うん?この声は…。聞き覚えのある声に私はノックの手を止めた。すると後ろで様子を
見守っていた柴田が口を開いた。
「あのー多分それ美貴だと思うんですけど。トイレに行くって言ってましたし。」
「え!ほんと」
「そーで−す、美貴でーす。今出るからノックしないでー!」
中から出てきたのは確かに藤本美貴であった。
「あんたがウンコしてたの!?」
「う○こって…いやしてませんよ。おしっこですよ。」
(そうか良かった、彼女たちがうんこなんてするはずないもんな)
伝説は守られ、私はほっと胸をなで下ろした。
「アホー!安心しとる場合かー!」
圭ちゃんの突っ込みにより私の意識は現実へと戻った。そうだ、石川梨華ではなかった
とはいえ、この藤本は犯人(と勝手に思っている娘)だ。こんな所でトイレしているなん
て怪しい、怪しすぎる。
「美貴ちゃん、ここで何してた?」
「何って…女の子にそんなこと言わせないで下さいよーなつみさん。」
「ああ、ごめんごめん。だよね。」
いかんいかん、何を言ってるんだ私は。こんな事を聞いたら怪しまれるだろ。犯人には
最後まで気付かれない姿勢を保たねば。
「フゥ〜馬鹿馬鹿しい。私、戻って作業続けてるね。」
呆れた様にため息をつき、柴田あゆみは渡り廊下を生徒会室の方へと戻っていった。実
際に石川梨華を目撃した福田と、好奇心旺盛な藤本はそれでも戻りはしなかった。
「ねえあなた、私達が来る前に足音聞こえなかった?」
混乱気味の私に代わって、圭ちゃんが藤本に尋問を始めた。藤本は思い出すように少し
首を傾けて答えた。
「そういえば聞こえた様な…渡り廊下の方からあっちの方へ走る音」
「あっち?」
藤本美貴が指差したのは北校舎右側、奥には音楽室の重厚な扉がそびえている。私は圭
ちゃんと顔を見合わせ同時に走り出した。一つ一つ教室の中を覗いていくが、誰もおらず
異常はない。最後に突き当たりの音楽室だけが残った。私と圭ちゃんと福田と藤本の四人
は顔を見合わせて頷いた。圭ちゃんが代表して音楽室のドアノブを回す。
「駄目、鍵がかかっている。」
圭ちゃんが顔を横に振った。くそ、せっかくここまで石川梨華を追いつめたというのに…
「鍵は用務員さんが持っているはず。私呼んできます。」
そう言うと福田は用務員室へと走り出した。でも用務員室は校庭の脇にあり、ここから
だとどんなに急いでも片道5分、往復10分はかかる。音楽室だけあって扉は確かに分厚
いけれど、木製みたいだし皆で体当たりすれば破れないことはないかもしれない。私は圭
ちゃん美貴ちゃんと顔を見合わせた。
1. 体当たりで扉を破る
2. 福田が鍵を持ってくるまでじっと待つ
3. 署への連絡が先だ