サウンドノベル5「赤と青」

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637辻っ子のお豆さん
(犯人は藤本美貴だ)
 私の刑事としての直感がそう言っていた。いい人そうな面をして、きっと裏ではとんで
もない事を考えている様な女に違いない。油断してはいけない。

「何にも言わないってことは、やっぱり石川さんが犯人なんですね?」
「え?ああ、そうね。」(犯人はあんたでしょ、白々しいこと言っちゃって)

 私は適当に相づちを打ってごまかした。まだ言えない。藤本美貴が犯人であるという決
定的な証拠を掴み取っていない。直感だけで指摘しても言い逃れされるだけだ。私は密か
に藤本をマークして、尻尾が出るのを待つことに決めた。

「石川さんのことなら、私より柴ちゃんに聞いた方がいいすよ。」
「え、柴ちゃん?」(何、突然、罠か?)
「そう、友達のいない石川さんが仲良くしてたの柴ちゃん、柴田あゆみだけだったから。」

しばたあゆみ……?どこかで聞いた様な名だ。どこだったか、思い出せない。
638辻っ子のお豆さん:02/09/01 13:53 ID:T1kBVkmR
 私が考え込んでいると体育館の扉が開き、そこから一人の女生徒が顔を覗かせた。落ち
着いていて利発そうに見える子だ。

「美貴、練習の後、生徒会室に来て。」
「学祭の打ち合わせ?うん、わかった。福ちゃん何してんの?」
「図書室で受験勉強。」
「うげ〜聞きゃなきゃ良かった。耳が痛い。」

 美貴は耳に手を当ててうずくまった。福ちゃんと呼ばれた娘は、それだけ言うと表情も
変えずにまた扉を締め出ていった。私には目もくれなかった。

「誰?今の子?」
「福ちゃん。福田明日香。うちの生徒会長だよ。ちなみに副会長が私っす。」
(お前のことなんか聞いてねえよ、この人殺し!)
(ん、待てよ。あの子ならこの藤本の本性を知っているかもしれない)
(よし、次はあの福田って子に聞き込みしよう)
「じゃあ美貴ちゃん、私そろそろ行くね。」
「えー、伝説の続きを直に色々聞きたかったなー。また来て下さいね。」
「うん、絶対また会いにくるから。」(次は逮捕状を持ってね)
639辻っ子のお豆さん:02/09/01 13:53 ID:T1kBVkmR
「ちょっと待ってー、福田さーん。」

 体育館と校舎を挟む脇道で、私は黙々と歩く福田さんを大声で呼んだ。彼女はやはり、
表情一つ変えず振り向いた。

「なにか?」
「私、朝日奈署の安倍って言うんだけど、少しお話いいかな。」
「また村田先生の件ですか。あれはもう解決したんじゃないの?」
「違うの、ちょっと藤本さんについて聞きたいの。」
「美貴のこと?どうして?」

 ようやく表情が変わった。どうにも不信そうに見られている。そりゃそうだ、質問がま
ずかった。なんとかごまかさないと。

「え、えーと、だ、第一発見者だから…」
「さっき美貴とお話してましたよね。本人に聞いた方が早くないです?」

難しい子だ。揚げ足を取られてばかりである。
640辻っ子のお豆さん:02/09/01 13:54 ID:T1kBVkmR
「それもそうねアハハハ、じゃあ村田先生について聞いてもいいかな。」

 笑ってごまかす。やっぱり不信そうな眼で見られている。犯人である藤本美貴の情報は
得れそうにない。これじゃ意味ないよ。福田さんは不信がりながらも、私が刑事であると
いうことで、仕方なさそうに話してくれた。

「村田先生はあまり生徒に人気はある方ではなかったですよ。男性教師には別ですけど。」
「美人だったから?嫉妬?」
「でしょうね、それで石川さんと揉めたりしたのが原因じゃないですか?」
「ふーん。」(それで藤本と揉めたのかも)
「生徒と授業以外で話してる所なんて、ほとんど見たことないですよ。あ、でも一人…」
「一人、いるの?」
「あゆみ。柴田あゆみと話してる所を何度か目撃しました。内容は知りませんけど。」

 またその名前が出た。柴田あゆみ。どうやらこの娘が何かを握っているのは間違いない
様だ。石川梨華と柴田あゆみ。柴田あゆみと村田めぐみ。この間にどの様な関係があるの
かはまだ分からないけど、謎に一歩近づいた様な気がした。
641辻っ子のお豆さん:02/09/01 13:55 ID:T1kBVkmR
 「あゆみなら、今日はバイトで来れないけど明日は来れるって言ってました。」という
福田さんの話から、今日はもう夕女を出ることにした。署に戻り、決められた仕事をこな
す。朝の手紙騒動などもう皆忘れているみたいで、それぞれの仕事に追われている。

「なっちー、帰ろ。」

 夕方、真里に誘いと共に定時であがる。署の門を出て、いつも通り大通りを歩いている
と、前方に見覚えのある後ろ姿が見えた。亜弥ちゃんだ。電信柱の裏に隠れて、何かを尾
行しているみたいだ。

「亜弥じゃん、何してんの?」

 真里が声を掛けると、ビクッと肩を震わせた亜弥が口元に指を立てシーッと私達に合図
した。そしてどこかを指差している。私達は指差す方向を覗いてみた。マックの中で愛が、
見知らぬ男子と二人でおしゃべりしていた。

1. まさか彼氏!
2. ただの男友達だろう
3. 愛を誘拐しようと企む犯人だ!