500 :
辻っ子のお豆さん:
人生って すばらしい
ほら 誰かと
出会ったり 恋をしてみたり
Ah すばらしい Ah 夢中で
笑ったり
泣いたりできる
あいぼんといつも一緒にうたっていた歌がある
つらいとき、悲しいことがあったとき
勇気と元気をくれた歌がある
友達だよ
いつまでも友達だよ、あいぼん
いつまでも…
びちょ。
音がしました。あいぼんの足がそこにありました。
瓦礫の中枢となる巨大な欠片をどかした私は見てしまいました。
あいぼんの膝から上が違うモノになっていたのです。
「………………」声が消えた。
千切れていた。
潰れていた。
うつ伏せだった。
真っ紅だった。
背中の肉が瓦礫の底部に貼り付いていた。
髪が乱れていた。
塊だった。
(…人生って すばらしい)
二度と歌う事のできないアイとキボウのウタを…
すぐ傍で爆発の音。それももう現実に程遠いものに聞こえる。
どれが現実で、どれが夢ですか?
今のこの、あいぼんが死んで独り炎の中に佇むこの状況が現実というのですか?
だったらいりません。私は私をいりません。
絶望へと絶望へと絶望へと
闇へと闇へと闇へと
堕ちてゆく堕ちてゆく堕ちてゆく
炎がもうすぐ傍まで来ていました。
私は持っていた瓦礫から手を放しました。
瓦礫はまた崩れ落ち、山となる。
あいぼんの足が反動でビクンと動いた。
焼き尽くして下さい。
何もかも。
愛も希望も何もない、目に映るこの世界のすべてを焼き尽くして下さい。
(のの、生きろ)
悲壮と絶望の狭間で、あいぼんの声が聞こえた。
爆炎が辺り一面を包み込む。轟音が重々と鳴り響く。地獄絵図の世界。
生きとし生ける者は存在すら許されない世界。
見えた。
永遠の闇を待つばかりの私に小さな光が見えた。
振り返ればあの人が……
真希さんがいた。
1. これは夢だ
2. これは幻だ
3. これはすべて現実だ