私はその写真を胸のポケットに締まった。
(なにやってんだろ私、これじゃまるで泥棒だよ)
理性がそう囁きかけていたが、体がそれを聞こうともしなかった。
(刑事がこんな真似していいと思ってるの?)
(早く返しなさい。元の場所に。)
足が走り出した。右手が扉を閉めた。左手はポケットの上に添えられたまま離れようと
しなかった。早くその場を離れようと、足がさらにその速度を増した。気が付くと一目散
に走り出していた。目から何かがこぼれた。涙だった。私は泣いていた。
「何、これ?」
涙が止まらなかった。あの写真を見た瞬間から、私の中のナニカが一気に弾け出した様に。
もう一度写真を見直した。少女二人が幸せそうに笑っていた。
柱の影から誰かがその一部始終を覗き見ていた。
影は笑みを浮かべていた。
結局、石川梨華の行方は分からずじまいだった。翌日も、翌々日も、石川梨華は学校を
欠席した。家にも姿を現わさなかった。
「カオリンの出る幕はなかったみたいですね。」
朝日奈署会議室にてこの事件総指揮者、飯田圭織が決断の言葉を下した。
「私立夕凪女子校殺人事件の犯人は…」
事件後姿を暗ました、在学期間わずか10日の転校生。石川梨華に逮捕状が下された。
こうして私立夕凪女子校殺人事件は解決した。
…かの様にみえた。
〜第三話 終〜