322 :
辻っ子のお豆さん:
圭織に負けたくない。この事件は私の手で解決してやる!
「行こう!」
私は真里と朝日奈女子校へ聞き込みに向かう事にした。事件解決する為には頭だけじゃ
ない、地道に足で少しでも多くの情報を集めることが大事なんだ。
「真里、この事件、うちらの手で解き明かしてやろう。」
真剣な面持ちでそう告げると、真里は嬉しそうに笑った。
「それでこそなっち。いいねえ。エリートの鼻を明かしてやろうぜ。」
私達は手と手を叩き合わせ走り出した。
途中、玄関付近の廊下にて、あくびをかみ殺しているお姉さんと鉢合わせた。
「圭ちゃん!」
「よう、お二人さん。相変わらず元気そうね。」
「圭ちゃんは相変わらず眠そう。」
目の下にくまができている。これで二日連続徹夜なんだそうだ。
「また現場に行くの?」
「おうよ!この事件はおいらとなっちで解決するんだから!」
それを聞くと圭ちゃんはおもしろそうに微笑んだ。
「あんた達、まさかあの飯田をライバル視してる訳?やめときな、相手が悪いわよ。」
「やだ、負けたくないの。圭ちゃんは私達の味方だよね。」
私が顔を覗き込むと、圭ちゃんは可笑しそうに吹き出した。
「そうね、少しくらいなら協力したげてもいいわよ。」
そう言うと圭ちゃんは、私達の耳を自分の口元まで引っ張り小さい声で囁いた。
「極秘情報。被害者の死因は無数にある顔の傷じゃない。胸を貫いた刺し傷の方。つまり
犯人は被害者の胸を刺した後、さらにわざわざ顔を切裂いたってことになるの。」
それが意味するもの…?
「もう一つ。理科準備室から見つかった足跡、まだはっきりとはしていないんだけど、
被害者の足跡以外に上履きの跡っぽいのがあったわ。」
上履きの跡…?
それはつまり女子校の生徒の物ってこと?
犯人は生徒の誰かってこと?
私と真里は顔を見合わせ、互いに思考をフル回転させていた。
「はい、ヒントはここまで。あとはあんた達でなんとかしな。」
そんな私達にはお構いなく、圭ちゃんは陽気に離れていった。
「あ、ありがと、圭ちゃん!」
我に返った私達がお礼を言うと、すでに歩き出していた圭ちゃんは背を向けたまま手を
振った。
女子校へと続く道柄、私は真里と事件について話しながら歩いた。さっきの圭ちゃんの
話を聞いてから真里は肩を落としている。ショックが強かったのだろう。
「やっぱり犯人は生徒の中にいるのかなぁ、おいら悲しいよぉ。」
「まだそう決まった訳じゃないよ。はっきりとしてはいないって言ってたでしょ。」
認めたくなかったんだ。自分の後輩に人殺しがいるなんて。
「だけど…上の人も言ってた。顔見知りの犯行の可能性が高いって。」
現場に争った形跡はなかった。
さらに鍵は被害者の村田めぐみが所有していた。
それもあえて人気のないような理科準備室の。
つまり、村田自らが顔見知りの犯人と二人きりになる機会を作ったということ?
「まあ、今の時点じゃ考えたってわかんねえよ。」
「そうだね、これから情報集めるんだしね。」
「まあ、一番怪しいのは顔見知りの生徒ってことか。」
「そんなのいっぱいいるんじゃない?」
「あ、そっか。」
真里は恥ずかしそうに頭を掻いた。
だけど、この真里の言葉が間違いでなかったことを、私達は後に気付く事になるのである。
時計は午前7時半を指していた。それを見た真里が呟いた。
「まだ登校時間には少し早いか?」
確か生徒が登校するのは8時を回った辺りだったと思う。
「でも早い子なら来てるんじゃない。部活の早朝練習とかさ。」
そう口にだしたとき一人の名前が頭に浮かんだ。
第一発見者のあの子にだけは絶対会っておかないとと思った。
「家によってこっか。愛も心配してるだろうし。」
そうだ、愛は現役夕凪女子校生だ。事情の説明くらいした方がいいかも。
「おなかすいたし珍丼屋でラーメンって手もあるよ。」
あの店は早朝から開店しているなんとも物好きな店なのだ。
店長の小池さんはよっぽどラーメンが好きなのであろう。
さて、どうしよう?
1. 私立夕凪女子校へ
2. 自宅へ
3. 珍丼屋へ