★★【小説】 ☆☆【 BATTLE AFTER 】 ★★

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【 BATTLE AFTER 】第二十六話

夕暮れが迫る校舎に一台のリムジンが静かに滑り込み停車する。
中から出てきた素肌にタキシードを着込んだ男は
優雅に校舎から出てきた藤本美貴に一礼してリムジンのドアを開ける。
滑り込むように座席に座る藤本。
黒塗りのリムジンは夕暮れの中に消えた。


合唱部員達は部長の藤本が今日の部活に出ないと知ってガッカリした。

「今日は顧問の石井リカ先生に可愛がって貰いなさい・・・」
藤本は優しく皆に言うと、仕方が無いと部員達は納得した。

合唱部顧問の音楽教師、石井リカはドクターマシリトの人体実験で生まれた
藤本と同じヴァンパイアだ。
序列は藤本、石井、里田の順だが、これはヴァンパイアとしての能力の差だった。


車内の藤本は一人考え事をしていた。
気になる事が有った。
昨日、屋敷に現れたという、保田とかいう人造人間の友達らしき2人の魔人。
里田の体に聞いたところでは、ヴァンパイアの牙を打ち込み虜にしたらしいが
実力では完全に向こうの方が上との事だった。
まあ、里田クラスでは、そんな所かとも思う。
実力としては、このリムジンを運転してる下僕の改造人間と変わらない弱さだ。

そしてもう一つ・・・
昨日、退部を申し込んできた高橋と紺野の美少女2人組みの事だった。
自分の虜にしようと何度か妖視線を送った。
だが、無駄だった。
高橋と紺野の2人には自分の邪眼が効かなかったのだ。
不思議な感じのする少女達だった。
何か秘密がある筈だ。
此方の方が気になった。



【 BATTLE AFTER 】第二十六話

 藤本は高橋と紺野の謎を突き止める事を選んだ。
昨夜の2人の魔人は今日は来ないだろう。
里田に血を吸われていれば暫らくは動けまい・・・
いや、近付く事さえ容易ではない筈だ。
藤本はそれ程までに、自分達の吸血能力に自身を持っていた。


藤本は携帯を取り出し石井に電話する。
《はい・・・》
「私です」
《あっ、美貴様》
「昨日退部した高橋と紺野の住所を調べて下さい」
《あ、はい・・・》

少しの時間の後2人の住所が分かった。
「そう・・・2人とも同じ所に住んでるの」
《はい、でも紺野は今日、学校を休んでます・・・高橋はまだ校内に居ますが、どうします?》
「そう・・・」
暫らく考えてから
「じゃあ、高橋は貴女に任せます・・・奴隷にするなり虜にするなり好きにしなさい・・・
ただし、妖視線が効かない秘密を暴いてからですよ」
《はい、判りました・・・で、美貴様は?》
「私は紺野を虜にします・・・あの娘達、何か秘密が有りそうです・・・
それに屋敷のメイドが居なくなりましたので、あの2人をメイドにと考えています」
《判りました・・・あの娘達なら素晴しいメイドになると思います》

携帯を切り、運転手に住所を伝え行くように命令する。
「・・・ところで貴方、何故いつも上半身裸なんです?」
「へへへ、すいません・・・生前からの癖でして・・・でも、ちゃんと着てますよ」
藤本は呆れる。
「そんなのは着てるとは言いません、裸にタキシードを羽織ってるだけです」
無言でニヤリと笑う男。
「明日からはちゃんと・・・と言っても無駄ですね・・・」
何回注意しても、この男はすぐ上半身裸になる・・・しかも下は黒タイツだし・・・
「へへへ・・・それより美貴様、紺野というのは・・・?」
「彼方には関係有りません」
ピシャリと言い切る藤本。
「・・・へい、すいません・・・」
運転手は不気味にニヤニヤと笑う。
藤本は慣れてるのか平然としたものだ。
素で笑っても不気味に見える男・・・江頭2:50だった。

【 BATTLE AFTER 】第二十六話


 中庭の花壇で新しく撒いた「愛の種」に水をやる高橋。
今日、紺野は警察のアルバイトで学校を休んだのだ。
高橋は正直、紺野が少し羨ましかった。
自分の個をしっかり持って生きていると思う・・・
それに比べて自分は・・・
ちょっぴり情けなかった。

「さて、帰ろかな・・・」
ウジウジ考えても仕方が無い、自分は自分だ。
高橋は頭を切り替えて帰ろうとする。

ピンポンパンポーン♪

校内放送が鳴った。
合唱部顧問の石井先生からの呼び出し放送だった。

どうせ、何故部活を辞めたか問いただす為の説教だろうと思った。
「はあ、なんて言えばいいんだろう・・・」
呼び出された音楽室に行く足取りは重かった。
紺野に聞いた藤本部長と部員の関係が理由だなんて言える訳が無い。
あれこれ言い訳を考えている内に音楽室の前に立っていた。


【 BATTLE AFTER 】第二十六話

 『バーパンサークロー』に真矢と石黒がやつれた表情で現れた。
「どうしたん?」
真矢は石黒を抱えていた。
「すまん、中沢・・・助けてくれ」
ペコリと頭を下げる真矢。
「助けてって・・・どういう事?」
真矢は黙って石黒の首の吸血痕を見せた。
「あちゃ〜、あやっぺ やられたの?」
「ゆ、油断しただけだよ・・・」
ヨロヨロと立ち上がりカウンターにドカリと座る石黒。

「彩を噛んだ吸血鬼を殺せばいいんだが・・・」
そう言う真矢も困った顔だ。
「真矢さんが殺せばええんちゃう?」
「いや、それはそうなんだが・・・」
真矢は自分の首筋を中沢に見せる。
そこには2つの穴、牙の傷跡があった。
「真矢さんも やられたの?」
「いや・・・俺はやられてないが・・・彩が余りにも血を欲しがるんでな・・・」
「・・・あやっぺ に吸わせた訳だ・・・」
ポリポリと頭を掻いて照れる真矢。

「血が・・・欲しくなるんだよね〜・・・牙も生えてきたし」
カウンターに突っ伏す石黒は気だるそうだ。
「んじゃ、このまま吸血鬼って事で・・・」
「それは駄目だ・・・」
真矢は中沢の言葉を直ぐに遮った。

血に飢えた妻に血を吸わせたのはいいが、自分も欲しくなり
昨夜は永延とお互いの血を貪ったのだ。

「ミイラ取りがミイラにか・・・まあ、仕方ないか・・・真矢さん場所教えて」
「すまん・・・」
ペコリと頭を下げる真矢。

そこに「あ〜疲れた〜!」と平家が帰ってきた。
中沢の瞳が輝く。
「おお!殺しにピッタリの人が帰って来たやん!」
中沢はパチパチと手を叩いて、マネージャー業でグッタリの平家を迎えた。
「・・・なに?何の事?」
キョトンとする平家。
「真矢さん、みっちゃんを行かせるわ、私が瘴気を使うと
そのお屋敷がお釈迦になる可能性があるやん!」
「うむ・・・でもなあ・・・」
真矢はマネージャー業で疲れている平家を少し可哀想に思った。
「大丈夫だって、チョコチョコってやってパーっと帰ってくればいいんやから」
アバウトすぎる中沢に腕を組み目を瞑る真矢。
「なになになに?何の事なのよ〜?」
事情を知らない平家に、もう一つ余計な仕事が出来上がった。

【 BATTLE AFTER 】第二十六話

 高橋がノックして音楽室に入ると、そこには石井だけが居た。
「あれ?他の部員の人達はどうしたんです?」
「今日は部長の美貴さんが休んだので皆帰りました」
「・・・はあ、そうですか」
石井はツカツカとドアに行き鍵を掛ける。
「今日は大事な話しが有ります」
クルリと振り向き、フフフと笑う石井の瞳が赤く光り始めた。

しかし、キョトンと目を丸くするだけの高橋。

邪眼が効かないのも当然だった。
市井紗耶香の邪眼の呪縛を自力で克服した高橋と紺野には
ヴァンパイアの妖視線は無力、効く筈がなかった。


「どうしたんです?先生、目が赤いですよ、寝不足ですか?」
フーと溜め息を漏らす石井。
「それに鍵なんて掛けて・・・お説教なら覚悟してますよ、逃げ出しません」
「そうですか、逃げないのは良い心掛けです・・・でも・・・」
「でも?」
「説教なんてしません・・・あなたは私の物になるんですから」
ニヤリと笑う石井の口から鋭い犬歯が見えた。


ブワリと跳んだ石井は目を見張る高橋の首に吸血鬼の牙を刺し込む。
「あっ・・・先生・・・なにを・・・」
たっぷりと高橋の血液を吸い、そして自分のヴァンパイアの血を送り込む。
それだけで石井は勝利を確信する。
事実、高橋は早くも喘ぎ始めたからだ。

【 BATTLE AFTER 】第二十六話

 高橋のダラリと弛緩した手がブラブラと揺れる。
「あ、あなたの血・・・最高・・・」
石井の声は歓喜で震える。
今まで吸った血の中では、高橋の血は最高級のワインだった。
石井はそのまま高橋の唇を奪い貪った。

ピクリ・・・ と高橋の体が反応する。

 ーードクンーー と高橋の心臓が鳴る・・・

胸を揉まれ、股間を弄られる高橋は、
心の奥底に眠る何かが起き出そうとしている事を真っ白になりつつある頭の片隅に感じた。

高橋は何時の間にか全裸にされていた。
体を重ねる石井の指の児戯に翻弄させられビクビクと体が艶めかしく動く。

この娘の体・・・
石井は今までに感じたことが無い快感に自分を忘れる・・・

「ああぁぁぁあああ!!!!」
絶叫に近い喘ぎ声を出したのは石井の方だった。
【 BATTLE AFTER 】第二十六話

 ハァハァと胸を上下させる石井は満足の表情で立ち上がる。
「愛さん・・・これであなたは私の物だわ」
高橋はダランと弛緩した体にヒンヤリとした床を背中に感じながら
おぼろ気に石井を見詰める。
「・・・そう・・・かしら?」

気だるそうに立ち上がる高橋。

「そうですわ 愛さん、もうあなたは私の命令に逆らえないのよ・・・」
そう言った石井の体が愕然とする。
薄く笑う高橋が石井の手首を掴んだのだ。
それだけだけなら驚く必要も無い。
掴まれた手首から電気が流れるように快感の波が石井の体を襲ったのだ。

「ど、どういう事なの・・・?」
腰がガクガクと震え立っていられなくなり、崩れ落ちる石井は
カエルのように股を広げていた。
「ウフフ、先生・・・それは今から教えてあげる・・・」
今度は高橋が石井の上に乗る。


封印していた高橋の能力『フェアリーサキュバス』は、
石井のヴァンパイアの血によって目覚めたのだ。


淫魔戦に敗れた石井は高橋の質問に喘ぎながら全て答える。
見る間に体が干乾びていく石井の表情は恍惚に歪んでいた。

「これは貰っておくね」
セーラー服に着替えた高橋は老婆のようになって横たわる
石井の緩くなった歯茎から鋭い犬歯を2本とも抜き取る。
「これでもう、悪さは出来ないよ先生・・・」
高橋は自分の首筋にそっと手を当てる。
ヴァンパイアの吸血痕は跡形も無く消えていた。


「救急車を呼んであげるね先生、 たぶん2,3ヶ月も入院すれば体は治るよ・・・
歯は駄目だろうけど・・・そしたら元の優しい先生に戻ってね」
高橋が音楽室を出ると部員達がいた。
ニコリと笑う高橋はペコリと頭を下げる。
「先輩達も吸われたんだね・・・でも、私には治してあげる事は出来ないです、
これ以上、被害者を出さないで下さいね・・・じゃないと私・・・」
それ以上言わず、前に進む高橋。
無言の合唱部員達はサーと横に引いて高橋の道を造った・・・


おまけデス
藤本美貴篇イメージイラスト
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保田圭イメージイラスト
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