★★【小説】 ☆☆【 BATTLE AFTER 】 ★★

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139デッドオアアライブ ◆ALIVE7Is
【 BATTLE AFTER 】第二十八話

ーーーキーーーンーーー

当ても無く高速道路を走る保田のドゥカティ996Rは横転し
バイクから投げ出された保田はそのままコンクリートの壁に激突した。

ーーーキーーーンーーー

横転の原因は突如訪れた違和感だった。
事故を起こしても平気なボディを持つ保田は立ち上がり、片手で頭を押さえる。

ーーーキーーーンーーー

頭痛と共に耳鳴りがする。
サイボーグの肉体に共鳴する、何かが起きたのだ。


それは丁度、飯田圭織が藤本と闘う為に仮面を装着した時間。


当ての無い旅をする保田は自分の目的が何なのかを理解した。

ーーー仮面を破壊するーーー


ドクターマシリトは前の独裁政権の時に自分が造った
戦闘用ボディスーツを破壊する為に保田の体に共鳴装置を組み込んだのだ。

クーデターが起こり、現政権に移行した時マシリトは懇願した。
「今までしてきた実験を続けさせてくれ」と・・・
しかし、新たな政府は首を横に振る。
冷たく見捨てられたマシリトは復讐に燃え、次々と改造人間を造る事になる。
その最終系がサイボーグの保田圭だった・・・


何故、仮面と戦闘用スーツを破壊しなければいけないのか保田は解からない。
しかし、そんな事はどうでも良かった・・・
生きる理由が出来た。

仮面の戦士を殺す・・・

その目的の為に生きる・・・

どんな、些細な理由でも良い・・・

自分がこの世に再生した理由が欲しかったのだ・・・


【 BATTLE AFTER 】第二十八話

吉澤と後藤は石川と松浦『モーニングペアー』を監視していた。
目的は勿論、『パンサークロー』の壊滅だ。
大体の事は把握した。
石川と松浦は一般人の取り巻きやファン、分刻みのスケジュールの為、
近付く事は出来ない。
マネージャーの平家、事務所社長の中沢、そして、中沢ビルもつかんだ。
だが、分からない事が有った。
石黒夫妻の棲み家だった。


「どうする、よっすぃ?」
中沢ビルの向かいのビルから『パンサークロー』の動向を監視する2人。
吉澤は腕を組み考える。
組織を完全に把握してから行動を開始する・・・
それが作戦だったからだ。

実際、石黒夫妻は尾行するのが難しかった。
常に周囲を警戒して行動する盗賊『CAT'S-EYE』の石黒夫妻に
気付かれないように近付くのは無理だった。

「う〜ん・・・どうしよう? ごっちん」
吉澤にも分からない。
分かっているのは、不用意に近付けば返り討ちに合う。
その可能性が高い事だけだった。


後藤の携帯が鳴った。
相手は紺野だった。

「なに〜!本当か?」
暫らく頷きながら聞いていた後藤が驚きの声を上げた。
「どしたの?」
聞く吉澤。
「例の2人の居所・・・分かったかもしれないって!」
後藤は吉澤に向かってピースサインをして見せた。

【 BATTLE AFTER 】第二十八話

高橋が音楽教師の石井に相談されたのは、石井が退院し復学して暫らくの事だった。

「家に帰ったら、変な2人組みが屋敷を乗っ取っていたの・・・」
音楽室でコーヒーを高橋に淹れる石井の声は少し震えていた。
「変な2人組み?」
頷く石井・・・

高橋に牙を抜かれた石井はヴァンパイアの能力を喪失し、
普通の人間として生きていく事にしたのだ。

牙を抜かれたとは言え、普通の人間より回復能力の高い石井は
ミイラ状態の体を一ヶ月ほどで回復させた。
藤本、里田の事も忘れて、普通に生活しようと
屋敷に自分の荷物を取りに帰ったら
明らかに普通の人間とは雰囲気の違う男女が屋敷を占拠していたのだ。

「それで、どうしたの?」
高橋は2人の人相を聞いてピンと来るものが有った。
石黒夫妻の事を思い出したのだ。
「私が屋敷の住人と知ってヴァンパイアと思ったみたい・・・」
「それで?」
「殺されそうになったけど、抜けた牙を見せたら許してくれたわ」
「それで?それで?」

「・・・ごめんなさい高橋さん、牙を抜いた貴女の事を話したの・・・」
「・・・えっ」
「だって、殺されたくなかったから・・・」
「・・・そう・・・」
高橋はまずい事になったと思った。

「うん分かったよ・・・先生、もうその屋敷には近付かない方がいいよ」
「やっぱり、知ってるの?」
「う〜ん、心当たりが有るだけだよ・・・」
「貴女の事、知ってるみたいだったわ」
「・・・・・・」


高橋は帰るとすぐ、紺野と飯田に相談した。

「よし!私が行ってくるよ、高橋、住所を教えて」
飯田が腕をまくる。
「飯田さん・・・」
「ハハハ、大丈夫、大丈夫!」
飯田は豪快に笑ってみせた。

紺野は黙っていた・・・
思う事があった・・・

やはり、あの人達が存在する限り、私達は安全ではない・・・
ここの場所を知られる前に何とかしなくちゃ・・・
それには先手を打つしかない・・・

紺野は後藤に連絡を取った。
飯田と後藤、吉澤が力を合わせれば勝てると思ったからだ。

【 BATTLE AFTER 】第二十八話

海岸線を走るサイクロソが眩い閃光に包まれる。
「変身!!」
アクセルをふかす仮面の戦士は夕日を浴びる。
銀色の車体は夕暮れの中に消えた。



ーーーキーーーンーーー

耳鳴りと共に感じる・・・
仮面の戦士の居場所を・・・

保田は漆黒のドゥカティ996Rのアクセルをふかす。
感じるままにハンドルを傾ける保田は黒い閃光になった。



山道を走るサイクロソが弧を描いて急停車する。
暗い山道に立ち尽くす漆黒の人影をヘッドライトが捉えたからだ。

「・・・誰だ・・・?」

無言の女のフルフェイスヘルメットに隠された素顔は見えない。
黒いライダースーツの大胆に開いた胸元に光る、
青いペンダントヘッドだけが揺れていた。
「誰だって聞いてるんだ!」

「お前を殺す者・・・」

「・・・どう言う事だ・・・?」

「その仮面を破壊する・・・」

「・・・ほう・・・」

少し気色ばむ飯田がバイクから降りる。
「勝てるのかい?」

「・・・変身・・・」

「なっ!?」
飯田は変身する新たな敵の存在に驚きを隠せない。

カチカチとヘルメットが変形していく。
ライダースーツがスルスルと全身を覆う。

「私はお前を破壊する者・・・ハカイダーだ・・・」

漆黒のボディは頑丈そうな胸当てに稲妻の模様が黄色く光り、
同色の目は感情によって色が変化するサイボーグアイだ。
頭部の半透明のヘルメット状の超強化ガラスの中には、
生命維持の為の培養液に包まれた脳が赤く発光していた。

「・・・いくぞ・・・」

ハカイダーのサイボーグアイは赤く光り始めた・・・