★★【小説】 ☆☆【 BATTLE AFTER 】 ★★

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1DEADorALIVE ◆ALIVE7Is
【小説】 ★★ 『ハロプロ』バトルロワイヤル★★
の続き、sage進行でお願いします。

前スレはコチラです。
http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/ainotane/1011018323/l50

登場人物紹介と今までの粗筋は>>2-20ぐらいに有ります。
2DEADorALIVE ◆ALIVE7Is :02/07/10 08:07 ID:suLKcMxm
【 BATTLE AFTER 】

ーーー登場人物と背景ーーー

★『レストランプチモーニング』
関東のS市に有る海の見える丘の住宅街の一角に有る
小さいがお洒落な喫茶兼洋食屋。
営業時間はAM11時〜PM 9時オーダーストップは8時半。
定休日は日曜日、売り上げは1日平均約3万円。
客層は昼時は安倍、矢口、目当ての男性客が多いが夜はカップルが多数。
2階に安倍、矢口、加護が住んでいる。

☆安倍なつみ(21)
『レストランプチモーニング』のオーナー兼コックさん。
安倍特製のハンバーグ定食『なっちランチ』が好評。
夜はフランス料理の『なっちディナー』が評判を呼ぶ。
http://pandaemonium.cool.ne.jp/oekakilog/log135/035_048.png 

☆矢口真里(19)
『レストランプチモーニング』のオーナー兼カウンター係り。
軽快なトークで客の心を惹きつける。料理は出来ない。
日替わりのミックスジュース『矢口ジュース』は何が入っているか分からない。
http://isweb41.infoseek.co.jp/play/blanch/cgi-bin/data/IMG_000012.jpg

☆加護亜依(中学2年生)
『レストランプチモーニング』に住み込む。
気が向いた時にウエイトレスとしてバイトをする。
いつも辻と一緒に居る為『飯田二輪店』に月の半分は泊まりに行く。
必殺技はペットの虎をけしかける『虎太郎アタック』
http://pandaemonium.cool.ne.jp/oekakilog/log133/034_168.png
http://isweb41.infoseek.co.jp/play/blanch/cgi-bin/data/IMG_000010.jpg
3DEADorALIVE ◆ALIVE7Is :02/07/10 08:08 ID:suLKcMxm
★『飯田二輪店』
『レストランプチモーニング』の隣に有るオートバイと自転車のショップ。
『ツョッカー』壊滅の御褒美に政府に3階建てのビルに立て替えてもらうが
飯田の余りにもいい加減な経営の為、客は近所の小中学生の自転車のパンク修理だけ。
2階に紺野、高橋、辻が住んでいる。3階は飯田1人で独占。
屋上にライオンと虎を飼っている。
一日の平均売り上げ2千円ぐらい、極たまにバイクが売れる。
生活の為『七曲署』に紺野と一緒にアルバイトをする。
営業時間と休業日は適当、飯田は『レストランプチモーニング』に入り浸ってる。
 

☆飯田圭織(21)
『飯田二輪店』オーナー。
ピンクのライダースーツに着替える事により仮面ライダーに変身。
必殺技『かおりんマッハパンチ』『かおりんキック』『かおりん錐もみキック』
愛車はバイクの『サイクロソ』
渋川流念法師範代、渋川剛気に師事を仰ぎ念法を会得。
http://isweb41.infoseek.co.jp/play/blanch/cgi-bin/data/IMG_000013.jpg

☆紺野あさ美(15)
『飯田二輪店』の実質的なオーナー。
売り上げ計算から家計簿、税務申告まで全てこなす。
『ツョッカー』壊滅の御褒美に政府に3階建てのビルを立て替えさせるが
ソレを期に民間人に戻った為、政府からの援助は無くなる。
ナノマシーンにより脳改造手術を受けている為、IQは200以上。
日本で5本の指に入るハッカー。愛車は改造したジンジャー。 
今春から地元の女子高に高橋と一緒に通う。
http://pandaemonium.cool.ne.jp/oekakilog/log135/035_044.png 

☆高橋愛(15)
『飯田二輪店』に住み込む。
元『ツョッカー』の改造人間。紺野のツテで政府の再手術を受けて
老化現象を止める事に成功。
今春から地元の女子高に紺野と一緒に通う。
通学は紺野から貰ったジンジャーで紺野と一緒に通う。
必殺技は相手の精気を抜く事だが今は封印している。
4DEADorALIVE ◆ALIVE7Is :02/07/10 08:09 ID:suLKcMxm
☆辻希美(中学2年生)
『飯田二輪店』に住み込む。
気が向いたら『レストランプチモーニング』にバイトに行く。
頭を撫でた動物と心を通わせる事の出来る動物使い。
必殺技はスカイフィッシュを使い相手を切り刻む『スカフィーアタック』と
ペットのライオンをけしかける『獅子丸アタック』
目のチャクラを開き相手の心をホンワリとさせる聖眼『ハムスターアイ』
http://pandaemonium.cool.ne.jp/oekakilog/log134/034_178.png


☆虎太郎☆獅子丸
『ツョッカー』の改造を受けた虎とライオン。
今は加護と辻のペット。
普通の虎とライオンより相当強い。
☆オロチ丸
『ツョッカー』の改造を受けた体長10Mを超えるアナコンダ。
飯田に蛇だけは勘弁して欲しいと頼まれて辻が山に放すが
今は古びた神社の守り神に祭り上げられている。


☆吉澤ひとみ(17)
改造人間。警察庁長官直属の特殊警察官。殺人許可証を持つ。
全国に散らばった『ツョッカー』の残党を殺す為、全国を旅する。剣の達人。
必殺技『円月殺法』『次元刀』、渋川の師事の元、念法を会得。
http://isweb41.infoseek.co.jp/play/blanch/cgi-bin/data/IMG_000007.jpg

☆後藤真希(17)
改造人間。警察庁長官直属の特殊警察官。殺人許可証を持つ。
全国に散らばった『ツョッカー』の残党を殺す為、吉澤と共に全国を旅する。
必殺技『大回転踵落し』『猛虎硬爬山』、渋川の師事の元、念法を会得。
http://isweb41.infoseek.co.jp/play/blanch/cgi-bin/data/IMG_000009.jpg


★『七曲署』
飯田達が住むS市の警察署。
捜査一係に飯田と紺野が事件解決の為、アルバイトをする。

☆松田優作
元七曲署のジーパン刑事。念法を使う鬼武者。
渋川へ月百万円の送金の為、ヤクザの用心棒をしている。

☆渋川剛気
念法の達人、渋川流念法師範代、スケベだが物凄く強いお爺ちゃん。
5DEADorALIVE ◆ALIVE7Is :02/07/10 08:10 ID:suLKcMxm
秘密結社『パンサークロー』
       『ツョッカー』壊滅後、中沢が仲間を集めて造り出した
       超魔人による改造人間犯罪集団。
       *『ツョッカー』が余りにも強く造った為、
         手に余り日本に放逐した残党達、全員念法を使う。

★中沢裕子  総帥
       中沢ビルのオーナー兼バー『パンサークロー』のママ兼
       中沢芸能事務所社長。
       必殺技 暗黒瘴気を操る。瘴気に触れた人間は即死。
http://isweb41.infoseek.co.jp/play/blanch/cgi-bin/data/IMG_000014.jpg

★平家みちよ 副長
       バー『パンサークロー』のチィママ兼『モーニングペアー』のマネージャー。
       必殺技 右手人差し指から発射する念弾『サイコガン』
           曲がる性質のある念弾は相手が物影に隠れても追尾し命中する。

★市井紗耶香 団員 
       全てを無くし、放浪の旅をする。
       必殺技 邪眼『パンサーアイ』で相手を木偶にする。
http://isweb41.infoseek.co.jp/play/blanch/cgi-bin/data/IMG_000015.jpg

★石黒彩   団員
       夫の真矢と共にCAT'S-EYEとして盗賊家業に勤しむ。
       必殺技 超硬質の爪『キャッツクロー』で全てを引き裂く。

★真矢    団員
       超怪力の持ち主。妻の彩と共にCAT'S-EYEとして盗賊家業に勤しむ。
       必殺技 指先から発する超振動で相手を粉砕する『ダイヤモンドクラッシュ』
6DEADorALIVE ◆ALIVE7Is :02/07/10 08:15 ID:suLKcMxm
★石川梨華  団員
       松浦と共に『モーニングペアー』として歌手デビュー(中沢芸能事務所所属)
       必殺技 複数の五寸釘を天空に放りシャワーのように
           相手に突き刺す『モーニングシャワー』
http://isweb41.infoseek.co.jp/play/blanch/cgi-bin/data/IMG_000017.jpg
          
★松浦亜弥  団員
       石川と共に『モーニングペアー』として歌手デビュー(中沢芸能事務所所属)
       必殺技 念により作り出されるシャボン玉を口から吹き出す
           『シャボンピーチ』シャボン玉には桃の香りがする
            松浦の吐息が含まれているが、それは相手の四肢を
            弛緩させ、動けなくする毒息。
 
★新垣理沙  団員
       『モーニングペアー』のマネージャー(中沢芸能事務所所属)
        飯田圭織によって命を絶たれる。

* 他にも団員が居るかは不明

7DEADorALIVE ◆ALIVE7Is :02/07/10 08:18 ID:suLKcMxm
今までの粗筋。(但し、自分も読み返してないので間違ってたらスマソ・・・)

200X年、日本に革命政権が誕生する。
資本主義を否定する政権は独裁者によって軍拡に勤しみ、
国民を恐怖政治によって押さえ込む。
政治力を国民に知らしめる為に最初に粛清のターゲットになったのは
ブルジョワ芸能界だった。
ツンク♂の裏切りによって差し出された生贄はハロープロジェクト。
彼女達はハロープロジェクト解散の最後のツアー中に拉致される。
解散という事で駆けつけた卒業生達も理不尽な殺し合いのゲームに
巻き込まれる、『バトルロアイアル』の開始だった。

無人と化した小さな島で殺し合いを余儀なくされたメンバー達は
国民への恐怖を刷り込む為のスケープゴートになった。

こうなる事を予想していたのか、積極的に参加する者、
ただ、ひたすら逃げる者、仲間を探す者、メンバーの団結力は急速に無くなる。

殺し合いを助長するために投入された陰獣達は芸能界でも持て余す犯罪予備軍だ。
喜び参戦する者、大切な人を守る為参戦する者、それぞれの葛藤は悲劇を呼ぶ。

その闘いの中で自分の潜在能力を引き出す者達がいた。
後藤真希は磨きぬいた肉体を最大限引き出し、闘いの中で自我流の拳法を編み出す。
吉澤ひとみは日本刀を手にする事により殺人の快感に身を委ねる魔剣を身に着けた
シリアルキラーと化した。
福田あすかは幼い頃から習得していた柔術を使い生き残る決意を固める。
8DEADorALIVE ◆ALIVE7Is :02/07/10 08:21 ID:suLKcMxm
辻と加護は手を取り合いミニモニリーダーの矢口を探し出した。
信頼出来ると思われる飯田を探す矢口達の前で、既に石川を殺害している
中沢裕子がボーガンで松浦を殺害。
中沢は矢口を探していたが、殺人現場を目撃された矢口に否定されると
矢口の目の前で自殺を図った。

政府の目的は殺人ゲームを楽しむだけでは無かった。
政府は軍事科学において全てのタブーを否定した。
それはマッドサイエンティストを生み出し、人体実験を繰り返し、
生物兵器の可能性を探っていたのだ。

闘いの中でモニタリングされていた、娘達の中で選ばれたのが
後藤、吉澤、福田の3人だった。

その後藤と福田の死闘は、辛くも後藤の勝利で終わる。

一方、ひょんな事からチームを組む事になった市井、紺野、高橋は
殺し合いを止めさせるべく島をさ迷うが、やっと見つけた寺で見た物は
死体がゴロゴロと転がる中で対峙する後藤と吉澤だった。

魔剣と剛拳の闘いは後藤に軍配が上がるが、親友の吉澤を殺した
後藤は吉澤の亡骸を蹴りつける高橋を見て激昂、高橋を殺害する。

本当の妹の様に可愛がっていた後藤の変わり様に絶望した市井は
後藤を抱きしめながらナイフで殺害し、自分もそのナイフで自殺をする。

その頃、ナイナイの岡村の手を借りてツンク♂とその仲間を殺し、
首輪の爆破装置を解除するリモコンを奪った安倍と飯田は
モニターに映る矢口達を見つけて合流に成功して島を脱出する。

政府の命を受けた転向者、和田アキコが屍が転がる寺の境内に到着すると
そこに居たのは一番無害と思われた紺野だけだった。
モニタリングしてた3人を生死に関わらず、人体実験のために運び込もうとする
和田は、過酷な運命を切り抜けた紺野も何かの運命かもしれないと思い連れ去る。
9DEADorALIVE ◆ALIVE7Is :02/07/10 08:22 ID:suLKcMxm
革命政府の人体実験は成功した。
吉澤、後藤、福田は蘇生手術と肉体改造を受けて超人として甦る。
紺野は脳手術を受けてテレパシストになっていた。
政府の手によって命を握られた4人はチームを組んで
次の『バトルロアイアル』に陰獣として参加する事になる。
相手はジャニーズ軍団だったが、彼等の半分以上は改造手術を受けた
魔獣と化していた。

洗脳を受けて、死んだメンバーの事を忘れた、ニューモーニング娘。の
安倍、矢口、飯田、辻、加護の5人はジャニーズの生贄として
戦いの場、『軍艦島』に送り込まれる。

吉澤達は5人を守りながらジャニーズと戦わなければ為らなくなる。
熾烈を極める魔戦で福田あすかが死亡。
洗脳から解き放たれた5人の娘達のリーダー飯田圭織は紺野のテレパシーによって
隠されていた最強の武器、ライダースーツを手に入れて仮面ライダーに変身、
魔獣香取しんごを殺害。

一方、稲垣メンバーの復讐劇によって殺された和田アキコ。 
そして、一緒に居た紺野は稲垣メンバーの手に掛かる前に
自分のテレパシー能力を辻に託し自ら死亡、しかし紺野の死は仮死状態だった。

紺野の死にキレた後藤が稲垣メンバーを殺害。
吉澤は最後の魔獣、木村タクヤに追い詰められるも必殺の『次元刀』により
辛うじて勝利する。

生き残ったのは、やはりモーニング娘。のメンバー達だった。
10DEADorALIVE ◆ALIVE7Is :02/07/10 08:28 ID:suLKcMxm
時は経ち、日本人民共和国となった国も、抑圧された国民の怒りが爆発、
自分達の力に自信をつけた、吉澤達は反政府ゲリラになり、
超人の能力をフル活用する活動は政権を弱体化させる。
そして、各地で反政府活動が活発化して遂には赤い政権は終焉を迎える。

しかし、政権を離れたマッドサイエンティストの活動は地下犯罪組織を造る事になる。
秘密結社『ツョッカー』の誕生は、新たな戦いが始まる事を意味していた。

新たに出来た新政府の特命を受ける吉澤と後藤。
テレパシー能力を失った代わりにIQ200を超える超天才になった紺野。

紺野は『ツョッカー』壊滅の為に飯田が経営する『飯田二輪店』に転がり込む。
飯田と暮らし始める紺野は戦いの中で『ツョッカー』壊滅よりも飯田達を
守る事を使命として感じ始める。
http://isweb41.infoseek.co.jp/play/blanch/cgi-bin/data/IMG_000008.jpg

運命的な出会いで愛し合うようになった高橋愛と松田優作は
高橋を改造人間にした『ツョッカー』を壊滅する為に軍艦島に向かう。

軍艦島で後藤、吉澤と出会った松田は共闘することで
鈴木ムネオ、松山チハルの『ツョッカー』の首領を倒し基地を爆破して壊滅に成功する。
遅れて来た飯田達とも合流して再会を果たすが、松田は高橋を飯田達に託して姿を消す。
11DEADorALIVE ◆ALIVE7Is :02/07/10 08:31 ID:suLKcMxm
『ツョッカー』壊滅後。
高橋を向かい入れて楽しく暮らす『レストランプチモーニング』と
『飯田二輪店』の安倍、矢口、辻、加護、飯田、紺野。

吉澤と後藤は『ツョッカー』の残党狩りの途中で再会した松田に
今までとは違う敵の存在を教えられて愕然とする。
『ツョッカー』でさえ手に余り日本国内に放逐した改造人間達。
彼女達は全員『念法』という人外の能力を身に着けていた。
吉澤達がどんなに肉体を鍛錬しても念には無力だ。
対抗するには自身も念能力を身に着ける必要があった。

その頃、飯田は矢口の不思議な事件がきっかけで出会った渋川剛気という
念法の達人の老人に弟子入りして念法を憶える。
そして、その後、後藤、吉澤も弟子入りを果たし念法を習得。

その頃、新たな犯罪組織、中沢裕子を筆頭とする『パンサークロー』が
その活動を開始しようと蠢いていた。

中沢の命を受けて、矢口の居所を探っていた『パンサークロー』の団員、
新垣は毒の瘴気で飯田と対峙するが念を覚えた飯田の敵ではなかった。
http://isweb41.infoseek.co.jp/play/blanch/cgi-bin/data/IMG_000011.jpg
そして、紺野と高橋の前に現れた市井紗耶香は2人を心ごとさらってしまう。
怒る飯田を罠に嵌め、紺野の手で飯田を死地に追いやる市井。
http://pandaemonium.cool.ne.jp/oekakilog/log135/035_054.png
矢口を想い続ける総帥中沢、自分勝手な石川、松浦。
組織の結束を一番に考える石黒夫妻、平家みちよ。
様々な事情を内包しつつ『パンサークロー』は活動を開始する。
12DEADorALIVE ◆ALIVE7Is :02/07/10 08:41 ID:suLKcMxm
う〜む、粗筋は、こんなところか・・・
なんか、ペタペタ貼ってるイラストは突っ込まないで下さい。
似てないのは重々承知の上ですので・・・申し訳!

では、これから本編です。
が・・・連続カキコで書き込めない・・・
ので、もう少ししてから書き込もうと思います。
13DEADorALIVE ◆ALIVE7Is :02/07/10 13:58 ID:8j2q6HU6
【 BATTLE AFTER 】第十九話


今日の2時のワイドショーは生放送で局が開催する世界の宝石店の紹介をしている。
その紹介番組は凄惨な殺戮現場を中継する事になった。

某局の一般人用の玄関口に集まった『パンサークロー』の面々は
それぞれにアイマスクをして集合した。
中沢はお気に入りのエルメスのバックを持っている。
「いや〜、これに入りきれるんやろか?」
「ハハハ、大丈夫よ、うちの旦那様が全部運び出すから」
石黒は夫の真矢の腹をポンポンと叩いた。
真矢は黒く大きい麻袋を担いでいた。
「さてと・・・」
平家はさっきから呆然と立ち尽くしている市井と紺野、高橋をチラリと見る。
「紗耶香・・・あんた達準備はいいの?」
黙って頷く市井に平家は中沢に視線を送り窺うと、中沢は首をすくめた。

さっきから此方をチラチラと見ていた警備員らしき男が意を決して尋ねてきた。
「あの・・・その格好は・・・」
「先週に予告状送ってんねんけどなぁ、パンサークローの名前で・・・」
中沢の言う『パンサークロー』の名前を聞いて警備員の表情が変わる。
「・・・あっ・・・」
「ほう、一応名前は知れてたんだね・・・無視されたかと思ってたわ」
事務所に報告に走る警備員に拳銃を撃つような格好で指先を向ける平家。
「ぱん・・・」
指先から放たれた念弾が警備員の頭を撃ち抜く。
スイカのように頭を潰され倒れる姿に周りの一般人が悲鳴を上げた。
14DEADorALIVE ◆ALIVE7Is :02/07/10 13:59 ID:8j2q6HU6
【 BATTLE AFTER 】第十九話

「よっしゃ!行くでぇ!祭りの始まりや!!!」
中沢はメンバーを見渡し襲撃開始を宣言する。
「逃げる一般人は無視やで、抵抗する奴だけにしときな!!」
死んだ警備員を抱き揺する同僚めがけて石黒は大ジャンプの跳躍をみせる、
「シューーー!!」
着地と同時に右手を振ると同僚は5枚の肉片になる。
石黒の指先は全てを引き裂く念の爪で出来ている。
「ハハハハ・・・・来た来たぁああ!!!」
玄関からバラバラと出てくる職員と警備員達を見て石黒の唇が釣りあがる。
「石黒さん、私にやらせて!!!」
石川は右手を頭上に掲げ、念を集中すると手の中には五寸釘がゴッソリと握られていた。
「みんなぁ!ハッピー!!」
五寸釘を空に放るとキラキラと輝く銀の光は放射状に散らばり、
物凄い勢いで落下する。
釘が落ちる半径5m以内にいた人間は五寸釘の洗礼によって蜂の巣にされた。
「キャハハハハハ・・・」
人を貫いてもコンクリートの地面に深々と突き刺さる自分の念能力に
手を叩いて喜ぶ石川。
蜘蛛の子が散らばるように人々はその現場から逃げ惑う。
蜂の巣になって死んだ警備員達を跨いで玄関に赴くメンバー達。
玄関は鍵が掛けられシャッターが下ろされた。
「無駄な事を・・・アナタ、お願いね」
「おう・・・」
石黒に頼まれて巨大なシャッターに両手を当てる真矢。
「ふん!」
気合いと共にシャッターと強化ガラスで出来た玄関は強力な超振動に揺れる。
サーーッと音も無く砂のように崩れる玄関とシャッターは
真矢を砂まみれにした。
「もう、やりすぎです!」
モウモウと立ち込める砂煙に鼻と口を押さえながら松浦が抗議する。
「でも、キャーキャーうるさいんだよね」
逃げ惑う一般人を見渡し
「殺さなきゃいいんですよね、中沢さん」と、中沢にウィンクしてみせる。
松浦は大きく深呼吸すると唇を尖らせ、桃色の息を吐き出す。
その息は無数のシャボン玉に包まれ、フワフワと漂い、逃げる人間にぶつかり弾ける。
人の四肢を弛緩させる甘い毒息はバタバタと倒れる人の山を築いた。
15DEADorALIVE ◆ALIVE7Is :02/07/10 14:02 ID:8j2q6HU6
【 BATTLE AFTER 】第十九話

迷路のように入り組むテレビ局の巨大ビルディング・・・
一階ホールに立つメンバー達に中沢は指示する。
「よっし、ここからは自由行動だよ、目標は宝石展がある球体展示場!
まあ、何人殺しても構わないが、テレビカメラ持ってる人には
ちゃんとサービスしてスクープを撮らせるんだよ、じゃあ解散!!」
パンパンと手を叩いてメンバーを煽る中沢は腕組みをして
散々になる面々を見てニンマリと笑った。

市井の後ろをトコトコと着いて行く紺野と高橋。
「あの・・・これからどうするんですか?」
「う〜ん、まあ、なるようになるんじゃないか・・・」
「警察も来ますよ・・・」
紺野の警察との言葉に市井はハハハと笑う。
「警察?・・・逮捕されるのもいいし、皆殺しにするのもいいね」
「でも、警察には後藤さんと吉澤さんがいますよ」

急に市井が立ち止まる。
「・・・どうしたんです?」
「・・・今、なんて言った・・・」
「えっ?」
振り返り紺野の肩を押さえる。
「なんて言ったんだ!」
揺する市井の手が紺野の肩に食い込む。
「い、痛い!離して!」
「答えろ!!なんて言ったんだ!!」
ドンと突き放すと紺野は尻餅をついた。
「・・・警察に後藤さんと吉澤さんがいるんです・・・」
高橋に支えられて肩を押さえる紺野。
「それが・・・どうかしたんですか・・・?」
呆然とする市井の呼吸は荒れていた。
16DEADorALIVE ◆ALIVE7Is :02/07/10 14:03 ID:8j2q6HU6
【 BATTLE AFTER 】第十九話

廊下の向こうから此方に気付いた警備員と職員が走ってくる。
「おまえ等、何処から来た?」
警備員が市井の腕を掴んだ。
「・・・うるさいよ・・・」
「なにぃ!」
「・・・うるさいって言ってんだよ・・・」
市井の裏拳が警備員の顔面をグシャリと潰す。
「・・・!!!・・・」
たじろぐ残りの職員達5人は、ユラリと動いたかと思う間も無く
電光石火のスピードで職員達の間を抜ける市井の貫手で瞬殺された。

ドサリと倒れる職員達を一瞥もせず、市井は自分の顔を隠していた
アイマスクを無造作に取り捨てた。
「・・・市井さん・・・」
「・・・・・・」
「市井さん!」
紺野の呼びかけにも無反応な市井は肩で息をし、顔色は蒼くなっている。
「・・・関係ない・・・」
「えっ」
「もう、パンサークローも何も無い・・・」
無表情ながらも紺野と高橋を見る市井は薄く笑う。
「・・・もう、おまえ達も・・・」
「・・・なんです・・・?」
「いや・・・なんでない・・・好きにしな」
見合わせる紺野と高橋。
フラフラと歩く市井をそれでも2人はトコトコと着いて行く。
17DEADorALIVE ◆ALIVE7Is :02/07/10 14:05 ID:8j2q6HU6
【 BATTLE AFTER 】第十九話

テレビで生中継される某局は各階で爆発が起こり、煙が上がっていた。
局内のカメラマンが中継する凄惨な殺人ショーは
国民の目を釘付けにした。

飯田と矢口と安倍、加護、辻もテレビの前でパニックになり体が凍りついていた。
テレビに映し出される殺人ショーの主役達のアイマスクの下の口は笑っていた。
「なんでこんな事すんだよ!あいつ等!!」
矢口の声は怒りで震えていた。
アイマスクをしていても矢口達には誰なのか判った。
皆、知っている、かつての仲間だった。
安倍と矢口で応援しようと約束した、石川と松浦もいた。
「裕ちゃん・・・」
中沢は高笑いをしていた。
「裕ちゃん、なんで・・・」
矢口はガクリと肩を落としポロポロと涙を流す。

「あっ、見て!あさ美ちゃんと愛ちゃんがいるよ!!」
辻が指差す画面には返り血を浴び両腕を血だらけにした市井が
警官を無造作に撲殺する姿と怯えるように後を着いて歩く紺野と高橋が映し出された。
ガバリと立ち上がる飯田の両拳が怒りで震えていた。
「紗耶香!!!」
出て行こうとする飯田に辻と加護が追いかけようとする。
「ののも行くのです!」
「うちも行くでぇ!」
「駄目だっ!!!」
飯田の余りの剣幕に辻の腰が抜ける。
飯田は目が潤み泣き出しそうな辻に近付きソッと頭を撫でる。
「おまえ達が来たら、今度こそ死ぬよ・・・私は大丈夫だから・・・ねっ」
への字に口を曲げる涙目の加護に矢口が抱きしめてやる。
「大丈夫、かおりは強いよ・・・信じよう」
大粒の涙を流す矢口は飯田に親指を立ててみせる。
「必ず、戻って来るんだよ・・・」
「おう・・・」

バイクに乗り込む飯田に安倍が走って追いかけてきた。
「・・・行ってくる・・・」
安倍は黙って頷くしかなかった。
言葉を出せば泣いてしまうからだ。
人差し指と中指を立ててピッと挨拶をして爆音と共に飯田のバイクは街に消える。
安倍は飯田が見えなくなっても何時までもその場から離れなかった。
18DEADorALIVE ◆ALIVE7Is :02/07/10 14:06 ID:8j2q6HU6
【 BATTLE AFTER 】第十九話

東京のホテルのスィートルームで麻薬取引の為に上京していたヤクザの一団がいた。
テレビの中継を手を叩いて喜ぶヤクザ達。
画面の中の少女を見た松田優作は、おもむろに立ち上がり部屋を出ようとする。
「おい、ちょっと待てや、何処に行く?」
「・・・俺は抜ける・・・」
「なにぃ!取り引きは一時間後だぞ!」
親分が騒ぐ皆を制して松田に詰め寄る。
「てめえ、何言ってんのか分かってるのか?」
「・・・・」
「この世界、勝手は許されねえ」
「・・・・」
「なんとか言えや」
「・・・邪魔すれば斬る・・・」
ヤクザ達は顔を見合わせてゲラゲラ笑う。
「斬るって、おまえ、得物持って無えじゃねえか!」
松田は右手を横に水平に振った。
「・・・!!・・・」
言葉も無く4人のヤクザ達の首がボトボトと落ちる。
松田の右手には念で隠し持つ長剣が握られていた。
用心棒として雇われているだけの関係には情など有る筈も無かった。

吉澤が以前言っていた。
高橋は幸せに暮らしていると・・・
その高橋が、念を憶える前の自分を瀕死の重傷に追いやった市井と行動を共にしていた。
無言で部屋を出る松田の胸に付いている、市井から受けた傷がズキリと疼いた。
19DEADorALIVE ◆ALIVE7Is :02/07/10 14:07 ID:8j2q6HU6
【 BATTLE AFTER 】第十九話

2台のハーレーに乗る美女2人・・・吉澤と後藤は遠くに見える
某局のビルから立ち上る爆煙を複雑な想いで見ていた。

とる行動は決まっていた。
それは市井紗耶香を殺し、紺野と高橋を救い出す事だった。

テレビ画面で見るパンサークローのメンバーの念能力は想像以上だった。
1対1でも勝てるか分からないのに、全員相手では絶対に勝てない。
他のメンバーは後回しにする・・・
そうするしか無かった・・・

吉澤はチラリと後藤を見た。
後藤の顔は悲壮感が漂っていた。
大丈夫かと思う。
後藤は市井と刺し違えても殺すと言った。
しかし、後藤の精神状態は手に取るように判った。
迷っている・・・
こんな状態では勝てない。
それなら・・・と、思う。

ごっちん・・・悪いけど、ごっちんを死なす訳にはいかないんだ・・・
私が困るんだよ・・・この先、どうしたらいいか判らなくなっちゃうじゃないか・・・


局ビルが近付くにつれ吉澤の決意は固くなる。

市井紗耶香は私が殺す・・・

それは、市井に心奪われている後藤に対しての微かな嫉妬も含まれていた。

20DEADorALIVE ◆ALIVE7Is :02/07/10 14:08 ID:8j2q6HU6
【 BATTLE AFTER 】第十九話

球体展示場の真ん中に鎮座する世界一と謳われるダイヤのネックレスを首に掛けて
ご満悦の中沢に石黒が声を掛ける。
「裕ちゃん、お宝は粗方頂いたわよ、ねえアナタ」
真矢の麻袋はパンパンに膨らんでいた。
五指にギラギラと光る指輪を嵌める石川は窓の光に指輪をかざして見る。
「わあ、もう、ハッピーですう」
腕組みする平家はチラリと時下数千万円の腕時計をチラリと見る。
「ねえ、紗耶香達遅いんじゃない・・・」
「逃げたね、あいつ等・・・」
腰に手を当てた石黒が呆れ声で言う。
「紗耶香は結成当初から、やる気が無いからね・・・」
窓から下を見ていた松浦が報告する。
「皆さん、凄い数の警察が集まってきましたよ」
平家が松浦の所に行き、見てみると数十台のパトカーと消防車、救急車が集まってきた。
「さて、どうする裕ちゃん・・・」
「もう、あんな人達ほっといて行きましょうよ」
松浦も少し焦ってきたのか、訴えるように言う。
「・・・・・」
少し考える中沢。
「裕ちゃん・・・」
「わかったよ、出よう・・・紗耶香は後で私が罰を与える・・・これでええかな?」
中沢はポンと石黒の肩を叩いた。
石黒は溜め息まじりに頷く。
「よっしゃ、それでは正面玄関からどうどうと出るよ」
「・・・えっ?」
松浦と石川は顔を見合わせて渋い顔をする。
「私の暗黒瘴気を使って皆殺しにする・・・みんな、ちょっと我慢してね」
やっぱりと、松浦と石川は肩をガックリと落とした。
念防御をしても中沢の瘴気を浴びると暫らくの間、体が具合悪くなるのだ。
ポンと平家が石川の肩を叩く。
平家は仕方が無いと首をすくめて見せた。

21DEADorALIVE ◆ALIVE7Is :02/07/10 14:10 ID:8j2q6HU6
【 BATTLE AFTER 】第十九話

正面玄関から現れたパンサークローのメンバーに一斉に銃口が向けられた。
一人前へズイと出た中沢のダラリと垂らした両手から
黒い煙のような靄が溢れ地面に広がる。
「う、撃てーーーー!!!」
怪異な現象を見た警官隊の隊長の命令により一斉に射撃が始まる、
が、瞬時に移動するメンバーには銃弾が当たらない。
その銃撃も数秒で収まった。
中沢の暗黒瘴気が風に乗り、あっという間に正面玄関に集まった人間を殺したからだ。
累々と転がる屍の間を悠々と歩き去る『パンサークロー』の最初の活動は終わった。



離れた所から見ていた見ていた吉澤と後藤。
「あの中には、いないな・・・」
歩き去るメンバーの中には市井達はいなかった。
双眼鏡を覗いていた後藤が吉澤に双眼鏡を手渡し指を刺す。
指差す先に市井達はいた。
局ビルの屋上から下を見下ろす3人が見えた。

玄関口まで約100メートル、殺人瘴気は漂っている。
吉澤は日本刀を上段に構える。
ヒュン!
無言で振り下ろす念の刃は瘴気を切り裂く。
サーーー!と切れる瘴気の間を走り抜けて玄関口に立つ。
見上げる先に市井は居るのだ。


22DEADorALIVE ◆ALIVE7Is :02/07/10 14:12 ID:8j2q6HU6
【 BATTLE AFTER 】第十九話

屋上のドアが開いて中から出てきた後藤と吉澤。
無言で見詰める先には市井達がいる。
「ハハハ・・・やっぱり来たね・・・」
手摺りにもたれる市井は天を仰いだ。
ビィィン!
その足元に一本のナイフがコンクリートに突き刺さる。
「・・・・」
無言でナイフを見詰める市井。
最初に口を開いたのは後藤だった。
「市井ちゃん・・・私ずうと考えてたんだよ」
「・・・・」

「でも、解からなかった・・・」
「・・・・」

「どういう意味?」
「・・・何の事だい?・・・」

「そのナイフを使って、紺野にかおりんを殺させようとした・・・」
「・・・その事か・・・」
市井は静かに、寂しそうに瞳を落とす。

「どういう意味かって聞いてんだ!!」

後藤の拳は震えていた。
手摺りにもたれかかった市井は動かない。
「答えろ!!」

「・・・永遠の別れ・・・」

市井はひっそりと呟いた。

「・・・えっ?・・・」

「聞こえなかったのかい・・・」
「・・・・」

後藤の顔は苦悩で歪んだ。
「・・・そういう事・・・なの?」

ユラリと動きだそうとする後藤の前に吉澤が回りこむ。
 
「・・・!!・・・」

後藤の鳩尾に吉澤の日本刀の柄がめり込んだ。
「・・・よっすぃ・・・何故・・・」
ズルリと崩れ落ちる後藤を優しく支え頬にそっと手を置く。
「ごっちん、今のあんたじゃ無理だよ・・・ここで黙って見てな・・・」

立ち上がる吉澤はゆっくりと市井に向かう。
「見ての通り、私が相手をさせて貰うよ・・・
紺野、高橋、危ないから下がってな!」
市井が紺野と高橋に頷くと2人はその場所を離れた。
「吉澤・・・あんたが後藤とつるんでるとはねえ・・・
あの時は私の目の前で闘ったのに・・・」
「・・ふん、そうだったかねえ?・・」
構える吉澤に不用意に近付く市井の目が光り始めた。

その時、ドアが勢いよく破られ一人の漢が現れた。

23DEADorALIVE ◆ALIVE7Is :02/07/10 14:14 ID:8j2q6HU6
【 BATTLE AFTER 】第十九話

飯田の乗り込むバイク『サイクロソ』はキャハハハと笑う一団とすれ違う。
10mも離れた所で気付いた飯田は弧を描いてバイクを急停車する。
振り向く集団、それは『パンサークロー』のメンバーだった。
「・・・かおり・・・?」
「かおりか?」
ざわつく一団の中に市井達が居ない事を確認すると
飯田は無言でバイクを急発進する。
爆音と共に消える飯田を見送るメンバーは顔を見合わせた。
「どういう事?」
石黒は中沢に話を向ける。
「・・・解からへん・・・けど、紺野と高橋に関係有るかも知れへんな・・・
やっぱり紗耶香に話し聞かへんとな・・・」
腕組む中沢は遠い空を見上げた。


サイクロソは中沢の瘴気を切り裂き局ビルの中に突っ込む。
この中に市井達はいる筈だ。
微かに漂う市井の念は、確かにこのビルに居る事を伝えていた。

24DEADorALIVE ◆ALIVE7Is :02/07/10 14:19 ID:8j2q6HU6
【 BATTLE AFTER 】第十九話

屋上のドアを蹴破って入ってきた松田優作は
横たわり、何かを訴えようとする後藤、
目の前で対峙する吉澤と市井、
手を取り合って震える紺野と高橋を見て、だいたいの状況を把握した。

「わぁぁあああ!!!」
高橋は松田を見て両手で顔を覆い、その場にへたり込んだ。
松田も気付いたが、それ所では無かった。
市井のあの目・・・ヤバイ・・・

「吉澤!その女の目を見るな!操られるぞ!!」
しかし、松田の警告は遅かった。
クルリと松田に向き直る吉澤の瞳は光りが抜けていた。
上段に構える吉澤の体は微かに震えている。
市井の邪眼『パンサーアイ』を見た者は自分の意思を無くす木偶となる。
しかたなく長剣を構える松田・・・

吉澤の攻撃は単調だった。
体が強張り、力任せの大振りは何時もの華麗な剣技とは程遠い。
吉澤なりに必死に邪眼の呪縛に抵抗をしているのが判った。
しかし、念が込められている吉澤の日本刀は当たれば致命傷になる。
それは、松田の持つ長剣も同じだった。

あの技を使うしかない・・・

しかし、技を使うには吉澤の動きを止める事が前提だ。
25DEADorALIVE ◆ALIVE7Is :02/07/10 14:21 ID:8j2q6HU6
【 BATTLE AFTER 】第十九話

高橋は松田と吉澤の闘いを祈るように見詰めていた。
松田は吉澤の剣を受けるか避けるのが、やっとのように見える。
「止めさせなきゃ・・・」
このままだと、松田、いや2人とも死んでしまう・・・
フラフラと立ち上がる高橋は紺野の制止を振り切って走り出した。

「止めてぇぇええ!お願がぁぁああいい!!」

松田と吉澤の間に両手を広げて入る高橋・・・

松田は愕然とする。
「ば、馬鹿!・・・」
操られる吉澤の剣は止まらない。
その日本刀は高橋の脳天に襲い掛かる・・・
「高橋!!!」
ザクリと振り下ろされた吉澤の日本刀・・・
ズルリと落ちたのは松田の左腕だった。
松田は高橋を庇い左肩から先を無くした。

吉澤の目が見開く・・・
「わあぁぁああああ!!!」
叫びと共に上段に構えたままの、吉澤の動きが止まった。
邪眼への必死の抵抗が自身の体の動きを止めた。

その吉澤の背中からスッと突き出る光る長剣。
振り向きざまに放った松田の最後の突きは吉澤の体の細胞の隙間を通す神技だった。
スルッと何事も無いように鳩尾に刺さった長剣を抜き取ると吉澤は静かに崩れ落ち、
松田は大の字に倒れた。

26DEADorALIVE ◆ALIVE7Is :02/07/10 14:22 ID:8j2q6HU6
【 BATTLE AFTER 】第十九話

「いやぁぁあああ!!!」
高橋は松田の左腕を拾い上げ必死に肩に着けようとする。

「わぁぁあああ!!よっすぃぃいい!!!」
バタバタと這いながら近寄り吉澤を抱き寄せる後藤は激しく体を揺らした。
「よっすぃ、よっすぃ、起きてよ!!!」
後藤はパニックになりかける、吉澤の腹は血で染まっていた。
「・・・大丈夫だ・・・」
松田が後藤に声をかける。
「吉澤の内臓は傷ついていない・・・血は仕方ないと思え・・・
まあ、俺の念によって、また何週間か動けないけどな・・・」
薄く笑う松田はゴフッと血を吐いた。
吉澤に受けた念の傷は確実に松田を死地に連れて行こうとする。

「なあ、高橋・・・」
必死に腕を繋げようとする高橋に松田が声をかける。
「・・・な、なに?・・・」
「膝枕をしてくれ・・・」
「でも・・・でも・・・」
尚も繋げようとする高橋に笑ってみせる。
「ハハ・・くっつかないぜ・・・それよりも、俺のポケットにタバコとライターが有る・・・」
高橋はタバコを探し膝枕をする。
震える手でタバコを口に当てジッポーで火を点けた。
「・・・旨い・・・」
右手を高橋の頬に当てると高橋もその手を握り返す。
「なあ・・・」
「なに・・・?」
「俺が死んだら・・・」
「いや・・・」
「俺が死んだら・・・」
「いやだ・・・」
「キス・・・してくれ・・・」
「いやだ・・・今する!」
ポロリと咥えていたタバコが落ちる・・・

そっと口付けた松田の唇は冷たくなっていた・・・


市井紗耶香から取り上げられた『愛』は松田優作の死と引き替えに高橋愛の心に戻った・・・


27DEADorALIVE ◆ALIVE7Is :02/07/10 14:23 ID:8j2q6HU6
【 BATTLE AFTER 】第十九話

意識が無い吉澤をそっと離し、後藤は自分の鳩尾に手を当てる。
吉澤から受けたダメージは回復していた。
目の前の出来事を黙って見ていた市井は無表情のままだった。
「もう、容赦はしない・・・」
「・・・そうか・・・」
「あんたの事、ずっとお姉ちゃんと思ってた・・・」
「・・・・・」
「でも・・・それも今、断ち切る!!」
後藤の声は震えていた。
それでも、キッパリと言い切る宣言に市井の顔に変化が生じた。
「・・・いいよ・・・」
力無く呻くように言う市井の額にどっと汗が吹き出る。

無表情に見える市井は激しく動揺していた。



最初は自分と同じ様に後藤は生きていると思った。

でも、『ツョッカー』の中に後藤は居なかった。

市井は絶望の中、日本中を旅した。

万が一でも後藤が生きている事を期待して・・・

拾われた中沢達のグループは居心地は悪かったが、何かを忘れられそうな気がした・・・

しかし・・・気がした・・・だけだった。

全てが、どうでも良くなり死に場所を探していたら紺野と高橋に出会った。

その時に後藤の事を聞いていればと、思う・・・

自分が撒いた種とは言え、こんな結果に成るとは夢にも思わなかった。

時間が戻せたなら、紺野達と出会ったあの海に還りたい・・・

そうすれば、今の自分はそちら側にいた・・・

だって、後藤真希・・・あんたが生きてると思わなかったから・・・


この想い全てを後藤に伝えたい、でも、伝えるすべが無い・・・


全てが・・・全てが、空回る・・・


もう、全てが遅かった・・・


28DEADorALIVE ◆ALIVE7Is :02/07/10 14:27 ID:8j2q6HU6
【 BATTLE AFTER 】第十九話

「紗耶香ぁぁああ!!!」
市井が声がする空を見ると、輝く太陽を背に飯田圭織がキックの体勢を取っていた。
「・・・なっ・・・!!」
動き出そうとした後藤も唖然とする。
「かおりーんキーークッ!!!」
何時来たのかさえ分からない仮面の飯田は市井を見るなり
必殺のライダーキックを繰り出していた。
全ての念防御を両腕に込め、十字ブロックする市井は激しい衝撃に
数メートルも後ろに吹っ飛ぶ。

「紺野!!」
「飯田さん!!」
飯田はよろめく市井をそっちのけで紺野に駆け寄った。
「い、生きてたんですか・・・」
抱きしめた紺野はエグエグッとベソをかいた。
「ハハハ、当たり前じゃん、俺様が死ぬ訳ないじゃん!」
「だって、だって・・・死んだと思ってました・・・」
仮面を外した飯田はギュッと抱きしめて頬をくっつけた。
「バカ・・・心配させやがって・・・」
「ごめんなさい・・・」
「いんや、許さない・・・帰ったら、お灸すえるからな・・・」
「・・・えっ・・・?」
飯田はくつけていた頬を離して紺野の頭を撫でた。
「だから・・・帰るんだよ・・・」
「帰っていいの・・・?」
「当たり前だよ、高橋も一緒にな・・・」
飯田は紺野の手を取って松田の躯に跪く高橋の元に向かった。
言葉の無い飯田と紺野に向かって高橋は言う。
「・・・飯田さん・・・私、帰りたい・・・みんなの居る家に・・・あさ美ちゃんと一緒に・・・」
「・・・愛ちゃん・・・」
紺野は高橋に抱きついた。
松田の遺体に手を合わせる飯田はニコリと笑ってみせた。
「嫌だと言っても、連れて帰るよ・・・」
そして、倒れている吉澤を見て紺野にリーダーとして命令する。
「紺野、よっすぃの止血、頼んだよ」
「は、はい・・・」

帰れるんだ・・・私達、帰っていいんだ・・・

紺野の呪縛は飯田の命令で開放された・・・

29DEADorALIVE ◆ALIVE7Is :02/07/10 14:30 ID:8j2q6HU6
【 BATTLE AFTER 】第十九話

飯田が振り向く先には後藤がいた。
「ごっちん!決着をつけるんだ!!」
後藤はうつむきながらも微かに頷いてみせた。


市井の腕は飯田のキックによって完全に折れた。

市井は後藤を見た・・・項垂れている妹を・・・

飯田が後藤に言った「決着」という言葉・・・

そうだな・・・決着はつけないとね・・・


「うわぁぁぁああぁぁああああ!!!!」
市井はがむしゃらに後藤に突っ込む。
迎え撃つ後藤は項垂れていた。


どうしたんだい・・・?

そんなんじゃ私の念が当たっちゃうよ・・・

私を殺すんだろう・・・


顔を上げた後藤は泣いていた。
「うおぉぉおおお!!!」
後藤の貫手は市井の胸に突き刺さる。
「・・・!!!・・・」
後藤の手に衝撃が走った。
貫手で刺さった後藤の指先にカチリと金属の感触・・・
市井の心臓は機械で出来ていたのだ。
「市井ちゃん・・・」
「ハハハ、私の心臓・・・破壊しないと、私は殺せないよ・・・」
後藤はそっと市井の機械の心臓を掴んだ。

30DEADorALIVE ◆ALIVE7Is :02/07/10 14:31 ID:8j2q6HU6
【 BATTLE AFTER 】第十九話

「ゴメンね・・・悪いお姉ちゃんで・・・」
万感の想いを込めて、初めて市井が微笑んだ。
「市井ちゃん・・・」
後藤の瞳から大粒の涙がポロポロと零れ落ちる。
「さっ、殺りな・・・念、使えんだろ?」
市井は優しく後藤の頬を擦る・・・
「市井ちゃん・・・」
後藤の念能力・・・
それは、拳を燃やす『炎のオーバードライブ』・・・

静かに燃え始める市井紗耶香の体・・・
炎に包まれる市井は後藤の手をそっと引き離す。

「・・・私の心臓・・・爆発するんだ・・・」
後ろに下がりながら市井は最後の言葉を伝える。
「だから・・・死ぬ瞬間は見せたくない・・・」
「市井ちゃん・・・」


「さようなら・・・真希・・・私の妹・・・」


市井は踵を返すと屋上の手摺りに向かって走り出した。

「わぁぁあああ!!市井ちゃん!!」
後藤は追いかけようと走り出すが、
・・・死ぬ瞬間は見られたくない・・・
市井の言葉が後藤の足を止めた。

市井は手摺りを越えて屋上から飛び降りる。


「わぁぁあああ!!・・・お、お姉ちゃん・・・お姉ちゃん!!!」


数秒の後、爆発音と共に煙が屋上に昇ってきた・・・


その煙は天に昇り、青空に果かなく溶けて消えた・・・



http://isweb41.infoseek.co.jp/play/blanch/cgi-bin/data/IMG_000018.jpg
31DEADorALIVE ◆ALIVE7Is :02/07/10 14:33 ID:8j2q6HU6
【 BATTLE AFTER 】第十九話

ーーーー数日後ーーーー

吉澤は病院のベットの上で目覚めた。
「・・・ここは・・・?」
「かおりんの使ってた部屋だよ・・・」
後藤は優しく微笑んだ。
「良かったです」
「のの・・・なんでここに・・・?」
何故か辻も付き添っていた。
「さあ・・・?」
後藤も肩をすくめる。


「は〜い、あ〜んするのです」
辻に言われるままに、口を開ける吉澤。
お粥を口に入れてもらいながら、吉澤は不思議に思う。
目覚めてから数日・・・毎日、辻がお見舞いに来るのだが、
辻がいると、場が和むのだ。
「可笑しいね、ののを見てると何かホンワリとするよ・・・」
「そうですか・・・?」
うんうん、と頷く吉澤。
「ほんと、ほんと、偉いよ〜ののは」
何が偉いのかは分からないが、後藤も辻の頭を撫でる。
「へへへ〜、ののは偉いのです、はい、あ〜ん」
「本当に不思議な娘だね・・・あ〜ん」
吉澤は当然のように口を開けて、お粥を口に入れて貰ってる自分が可笑しかった。
事実、辻が居ると助かった。
後藤と2人きりになると、何となく気まずい雰囲気が漂った。

あんな事の後だ・・・まあ、仕方ない・・・時間が解決するよ・・・
吉澤は自分に言い聞かせた。
それは、後藤も同じだった。
2人とも言葉に出さないが、考える事は同じ・・・解かっていた。


辻の瞳に宿る、聖眼『ハムスターアイ』は人をホンワリと幸せな気分に何となくさせる。

吉澤と後藤は辻の能力に自分達がハマっている事に気付いていない。

勿論、辻はそんな自分の能力に気付いてさえいない・・・

いや、気付く筈もなかった・・・

32DEADorALIVE ◆ALIVE7Is :02/07/10 14:36 ID:8j2q6HU6
【 BATTLE AFTER 】第十九話

高校の中庭の花壇に咲く予定だった、高橋の誕生花アザミは見事に枯れていた。

「やっぱり枯れてたね・・・」
少し残念そうな紺野。
それを見た高橋はニッコリと笑う。
「また、植えなおそうよ」
「うん、そうだね・・・」
「今度は、あさ美ちゃんの誕生花も一緒に」
「えっ・・・」
得意そうに高橋はユックリと花壇を回る。
「知ってるよ、あさ美ちゃんの誕生花・・・すずらん・・・花言葉は繊細・・・
ムフフ〜、なんか合ってるね・・・」
「私が繊細・・・ですか?」
キャハハハと笑う高橋。
「もう、やっぱり、そう思って無いですね」
プウとほっぺたを膨らませる紺野。

キャハハハと笑い合う2人の声・・・

新しい2人の物語は、今始まったばかりだった・・・


ーーー市井紗耶香篇(完)ーーー