不定期ドラマ「タイフーン娘。」
●07話「わたし信じてるから!つむじ風新垣、疑惑の生徒会選挙」
マリ、後藤、よっすぃーの元に「つーく」と名乗る人物から届いた謎の手紙。
ただの悪戯か、それとも・・・?
マリたちが屋上で悩んでいると、ばごーんと出入口が開いた。
「あんたたち、屋上は立ち入り禁止だって言ってんでしょ!」
現生徒会長、鬼のダーヤスこと保田圭だった。
「そんなに怒らないでよ、保田さん。選挙近いんだから愛想振りまかないと」
「いいから早く出て行きなさいよ!行かないとキスするわよ!」
「オエー。出ていきます出ていきます」
睨み付ける保田を振り返りつつ、後藤が言う。
「あの人・・・」
「ウチの生徒会長だよ。ああ見えて、意外と人望あるんだ」
「次の選挙も、きっと信任投票だよね」
(・・・あの人、前にどこかで・・・)
後藤の胸に、かすかな記憶が甦る。だが、具体的にそれが何なのかは思い出せなかった。(伏線)
さて、マリとよっすぃーの会長選挙予報は見事に外れた。1年の新垣里沙が、いきなり生徒会長に立候補したのだ。
『学園につむじ風!アナタのニィニィにラブラブな一票を!』
そんなコピーの踊るポスターが、学園のあちこちに貼られる。
学校放送のCM買い取り、モデル顔の兄ちゃんを引き連れた演説会、プレゼント攻勢・・・。
新垣の選挙運動は、学園の女生徒たちを確実にトリコにしていった。
「保田さん、このままでいいんですか!?」
新垣の活動を見ても行動を起こさない保田を見かねて、マリとよっすぃーは生徒会室を訪れる。
しかし、保田は取り合わず「選挙運動より会長としての職務が大事」と言いきった。
そこに現れる、おなじみチャーミー!
「しばらくね、保田さん。悪いけど、今度の生徒会長は里沙ちゃんに決まりよ」
なんと、新垣のバックにはチャーミーがついていたのだ。
「あんた、また何か企んでるわけ!?」
「さあ、なんのことかしら?別に私は、影で生徒会を仕切ろうなんて思ってないわよ!」
チャーミーへの対抗心もあって、マリとよっすぃーは全面的に保田のバックアップを決意する。
会長職に忙しい保田の代わりに、校内をくまなく選挙運動をして回るマリとよっすぃー。
よっすぃーの拳法の試技と、マリの台風芸で少しずつギャラリーも集まるようになってきた。
「会長にはダーヤス、保田圭をお願いいたします!」
「ラブラブニィニィ、あなたのラブラブニィニィをよろしくラブぅ〜!」
事前のアンケートでは、保田・新垣それぞれの支持は半々。
勝負は、明日行われる本番の投票へと持ち込まれた。
選挙戦も最終日。いつものようにチャーミーに言われたとおりの演説を終えた新垣は、
ひと休みすべく校舎裏の花壇へと足を伸ばした。
(ここのお花、いつもきれいなんだよね・・・)
彼女の父親は、チャーミーの父の会社で総務課長をしている。いわゆる中間管理職だ。
『もし、私の言うとおりにして生徒会長になったら、お父さんのことパパに口をきいてあげてもいいわよ』
気苦労の絶えない父親の背中を見ていた新垣には、その誘いを断ることができなかった。
チャーミーの傀儡になることがわかっていても、会長になる必要があるのだ。
と、新垣は足を止めた。花壇の隅で、花に水をあげている人影が見えたのだ。
(あれは、保田さん・・・?)
見ると、保田が花に水をやっている。その横顔は、小さいものへの愛情に溢れていた。
「あれ、このタンポポ元気ないなぁ。せっかく、四本揃ってキレイに咲いてたのに・・・ン?」
新垣に気づく保田。
選挙は平等とは言え、3年の会長に喧嘩を売っている立場である。新垣は身を強張らせた。
「・・・あんた、新垣でしょ? あんたも花好きなの?」
意外な保田の言葉。そして、笑顔。
「はい・・・心が、休まる気がして・・・」
「そう。じゃあ、あたしと一緒だ」
「保田さん、タンポポ好きなんですか・・・?」
「うん。むかし、大事な友達がタンポポを一生懸命育ててたの。それで、あたしも気になって」
タンポポが、やわらかく風に揺れる。
「・・・ねえ新垣。あたしが卒業しちゃったら、このタンポポ、あんたが世話してくれないかな」
「私が・・・ですか!?」
「あたしは、所詮タンポポみたいに可憐には咲けないからね。
あんたなら、きっとタンポポの気持ちがわかる――タンポポになれるんじゃないかと思って」
そう言って、保田は笑った。
新垣には、返事をすることができなかった。
ついに生徒会選挙の投票が行われ、即日開票される。
結果は――新垣の圧勝だった。
チャーミーの裏工作は、選挙管理委員にも及んでいたのだ。
事前アンケートとは大幅に違う結果に、マリとよっすぃーは猛抗議する。
どこに証拠があるの、と反論するチャーミー一派との大口論。
しかし、それを止めたのは当の保田だった。
「もういいよ、マリもよっすぃーも。あたしは、あと半年もすれば卒業だもの。
1年生に任せた方が、新鮮でいいじゃん」
「保田さん・・・」
「ほら、ごらんなさい。保田さんも負けを認めたんだから、マリたちもとっとと帰んなさい、ぷーだ!」
勝ち誇るチャーミー。
しかし、その時ずっと黙っていた新垣が口を開いた。
「・・・ダメです・・・やっぱり、会長は保田さんじゃなきゃダメです!」
チャーミーの制止をふりきり、不正の証拠としてマリたちにゴミ箱を見せる新垣。
そこには、捨てられる直前の保田票が大量に捨てられていた。
「だ、だから早く焼いてしまえばよかったのに! 里沙ちゃん、覚悟はできてるわね!」
「・・・かまいません。この学園には、私たちにはまだ保田さんが必要なんです」
新垣の決意に溢れた目に圧倒され、チャーミーは開票場を後にする。
「キーッ、おぼえてらっしゃい、マリ!」
「なんでおいらなのさ!」
票の再集計が行われた結果、僅差ながら保田が会長に再選される。
「ま、別にいいんだけどさ・・・あたし、ホントにあと半年しかいられないんだよ?」
「それでもいいじゃん」
「そーそー。鬼のダーヤス、もうしばらく頑張ってもらわないと」
笑いあうマリとよっすぃー。
新垣の言っていたとおり、別れのその瞬間までモーニング学園には保田の力が必要なのだ。
その頃、花壇では。
笑顔でタンポポに水をやる新垣の姿があった。
(保田さんの大事な友達さんのためにも、私もタンポポを育てるお手伝いをします・・・)
それにしても、とジョウロを置く新垣。
「この手紙、いったいなんなんだろう・・・?」
それは、「つーく」よりマリたちにも送られたあの手紙だった。
「あまねく天下にタイフーン娘。を求む・・・」
――ここから現実に完全リンクは無理っぽいので、
なんとなーくそれっぽくしてみようか、と提案する長文矢口