いい年こいて、モーニング娘。かよ(w   

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492名無し娘。

ウチはゆっくりと目を閉じて、そう祈った。
疲れたなと、ため息をついて背もたれにもたれてみる。
時々とおりすぎる看護婦さんの足音だけがぱたぱたと響いている。
病院独特の匂いももう気にならないほど、ウチは病院に慣れていた。

「今日はひとり?」
「ひゃっ!?」
突然の声でウチはおもわず、変な声を出してしまった。
目を開けると、綾小路先生が目の前に立っていた。
「あ、はい。ののは手術なんです」
「ああ、そうだったね」
「先生は手術はしないんですか?」
「ぼくは内科だからね」
綾小路先生はそう言うと、手術上手くいくといいね、といって、
ウチの横に座った。しみのない綺麗な白衣が風にゆれて、消毒液の匂いがウチの鼻をくすぐった。
ちょっとの間の沈黙。それがなんだかどきどきしてしまう。
493名無し娘。:02/11/21 10:37 ID:4lSe1MWv

「今日はお暇なんですか?」
ウチは沈黙に耐え切れなくなって、横にいる綾小路先生にそう語りかけた。
使い慣れない敬語を思わず使ってしまう。
「患者さんが退院したからね」
「そうですか」
それで話は終わってしまう。綾小路先生は何も喋ろうとはしない。
どうして横にすわっているんだろう。ウチに何か用があるんやろうか。
だんだんと、胸がどきどきが大きくなっていくのがわかる気がした。

「心配?」
「へ?」
ウチに突然そう尋ねた綾小路先生の言葉の意味がわからずに裏返った声で答えてしまう。
「あ、ごめん。辻ちゃんのこと」
「あ、はい。でも大丈夫です。おにいちゃんがついてますから」
ウチは笑顔を作ってそう答える。
494名無し娘。:02/11/21 10:37 ID:4lSe1MWv

「そう。おにいちゃんのこと信頼してるんだね」
「はい。おにいちゃんはいつでも約束を守ってくれますから」
「そうなんだ。なんかいいね」
綾小路先生のいいね、という意味が良く分からない。
不思議そうな顔をすると、先生は続けて、
「ぼくにもこんな妹がいたらいいのにな」
と、つぶやいた。

妹、いもうと、イモウト?──

その言葉を聞いて、悲しいキモチが胸をちくりと刺した。

「妹……、ですか……」
少し眉をひそめてうつむいて、そうつぶやいた。
綾小路先生はウチの様子に気付くこともなく、
「実は、立て続けに主治医だった患者さんが亡くなってしまってね。ちょっと落ち込んでいたんだ」
と、寂しげにつぶやいた。
「そうなんですか」
その表情がとても悔しそうで、ウチはどうしていいか分からなかった。
495名無し娘。:02/11/21 10:39 ID:4lSe1MWv

「おにいさんはね、いつでも一生懸命やっている。その元気の素がね、君なんだよ」
「え?」
「君の笑顔を見ていたら、元気になれる。そんなことを言っていてね」
「はあ」
そういうと、ウチの頭をおにいちゃんがいつもするようにくしゃくしゃとなでて、
「ごめんね、つまらない話をして。手術うまくいくといいね」
といって、立ち上がった。
「あ、はい」

また、白衣の裾がゆれて、消毒液の匂いがした。
そして、少し悲しいキモチは相変わらずウチの心の中によどんでいて、
妹──ということばが、頭の中に浮かんでは消えていった。