いい年こいて、モーニング娘。かよ(w   

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411名無し娘。


ののの手術の日が迫ってくる。

あの日以降、ウチはののの病室に行くと、決まったように、
休憩所で、一緒に過ごすようにした。

「なあ、休憩所いかへん?」
「なんか、最近よく行くけど、何でれすか?」
「外の空気をすわなあかんねん」
「れも、病院のなかれすから、同じじゃないれすか?」
「え?そ、そうか?違うやろ」
「別にいいんれすけどね……」

そんな感じで、ウチはののとおしゃべりをしたり、
教科書を開いてみたりしては、休憩所であの人と偶然遭うのを期待した。
412名無し娘。:02/10/10 11:12 ID:MuzRwY+r
「相変わらず仲いいね」
綾小路先生が通りかかる。
「あ、先生」
その姿をみるだけで、心臓の鼓動が早くなって、
声の調子も上ずってしまう。

「分からないところあったら、言ってね」
「は、はい。大丈夫です」
たったそれだけの会話。
そして、忙しそうに綾小路先生は行ってしまう。
でも、それだけでも充分楽しかった。

「はあ……、カッコええ」
ウチはついぼそっとつぶやく。
「あいぼん、口に出してますよ」
「えっ?」
ののがにやにやと笑う。
「綾小路先生のこと、好きれすね」
くすくすと笑うのの。
「ち、違うわ!」
「別にどうでもいいれすけどねえ」
ののは意地悪そうにわらって、ウチの顔をのぞき込む。そして、
「耳まで赤いれすよ」
と、またくすくすと笑った。
413名無し娘。:02/10/10 11:13 ID:MuzRwY+r

しばらくすると、何にも答えないウチにちょっぴりつまらなそうに、
ののは、
「来週手術れすね」
と、つぶやいた。
「そうやな。上手くいくで。おにいちゃんがするねんから」
「そうれす。ののはあいぼんのおにいちゃんを信頼してますから」
そういって、きゅっと握っている手に力をいれるのの。
それは、やはり明るく振舞ってはいるが、手術への恐怖が彼女を襲っていることを
示していた。

「なあ、手術が上手く行ったら、退院やろ。そのあと、どうするの?」
「え?またおばさんのうちにお邪魔するんれすかね」
「そうか……。ウチ、あの人あんまり好きやないねんけどな」
「ののもれすよ」
ののは、そういって苦笑いする。

「まあ、先のことを考えるのはまだ早いのれす」
「そうか」

しばらくして、飯田さんがののの検査があるとのことで、呼びに来る。
すると、ののは、今日はもう一度、綾小路先生にあえるといいれすね、
と、言って、検査へと向かった。
ウチは、その言葉にちょっぴり苦笑いしながらも、治ったあとの、ののの行く末、
に少しの不安を感じていた。
414名無し娘:02/10/10 11:14 ID:MuzRwY+r



ウチが家に帰ると、なんと新しい布団が届いていた。
それはおにいちゃんが買ってくれたものやった。ウチの大好きな桃色の布団。
そして、前のやつより一回り大きくて、分厚くて、とてもふかふかやった。
でも、ウチの心の中に、ちょっぴり寂しいキモチが流れる。
「もう、買うたんか……」
あまり嬉しそうにしていないウチをみて、
おかあちゃんが意地悪そうに、これ、おかあちゃんが使おうかな、と笑う。

「あ、それはいやや」
「じゃあ、あんたもっと嬉しい顔せんか」
「うん、嬉しいねんけどな。なんか寂しいな」
ウチは、そういって笑う。
「まあな、あんたもお年頃やし」
おかあちゃんはそういうと、台所へと向かった。
ウチは、布団にぼんと、体を預ける。
それはやわらかくて、いかにも心地よさそうな感触やった
415名無し娘。:02/10/10 11:16 ID:zyQYsHTY

ふと、前をみると、ちゃぶ台の上に一冊の冊子があるのに気付いた。
ウチはそれを取り上げで、中をみる。

うわ、めっちゃ綺麗──

そこには着物をきた綺麗な女の人の写真があった。
どうみてもそれはお見合い写真やった。
「おかあちゃん!これなに?」
ウチは台所にいるおかあちゃんに叫ぶ。
おかあちゃんは、割烹着で手を拭きながら、
おにいちゃんのお見合い相手や、と言った。

「お見合い相手?」
おかあちゃんの話しによると、病院の偉い先生から、
紹介されたと、おにいちゃんが持って帰ってきたらしかった。
そして、来週にお見合いをするとのことやった。

「そ、そんな急に」
「いや、そんなもんや。お見合いなんて」
「そうなんか……」

なんだか、複雑なきもちやった。
おにいちゃんが結婚してしまうかもしれん。
別に、それはいつかはするものやし、おにいちゃんもいい年こいてる
わけやから、当然や。
せやけど、そうなったら、おにいちゃんが遠くに言ってしまうようで、
なんだか寂しくてたまらなかった。

ウチは、お見合い写真を戸棚の上にしまうと、
自分の部屋で、ただ漫然と教科書を開いたり閉じたりしていた。