いい年こいて、モーニング娘。かよ(w   

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344名無し娘。



9月になっても、まだまだ暑い日が続いていた。
おにいちゃんは、相変わらず全然家に帰ってこなくて、
おかあちゃんも、ウチも、戦争にいってるのと変わらんな、なんて、
言ったりしていた。でも、やっぱり男の人が家にいると、
安心で、おにいちゃんの稼ぎもあって、それなりに楽しく暮らすことができた。

ののの病状は大分良くなったみたいで、最近では病棟を歩けるようになっていた。
これなら、治るんやろな。おにいちゃんはやっぱり約束を守ってくれる
そんなことを思いながら、この日もののの見舞いにいった。

病棟にはいると、ののは休憩所の長いすで、なにやら飯田さんと話し込んでいた。
「……、怖いれす」
ののが小さく震えていた。飯田さんはののの肩をやさしく抱きしめながら、
「がんばらないと」
と答えていた。
ウチは、なにか良く分からないまま、二人のやり取りを遠くで聞いていた。
ののは、不安げな瞳で飯田さんを見上げると、
「どうしても、手術しなければいけないんれすか?」
と、尋ねた。
345名無し娘。:02/09/18 11:44 ID:K6HPP3oB


手術?なんのこと?
だって、もう歩けるようにもなって、お薬も効いているはずやんか。
ウチは、思わず大きな声をだした。

「手術するん?」
「あいぼん……」
ウチに気付いたののは、ちょっぴりばつの悪そうな顔をした。
「なんで?なんでなん?」
「それは……」
ののは、口篭もる。
それをみた飯田さんが、おにいさんに聞いてないの?と尋ねた。
「いや、全然ウチに帰ってこうへんし」
「そう……」
「なんで?なんで?」
ウチは飯田さんのそばに駆け寄って、彼女の肩をゆする。

「ののちゃんのね、肺の部分が悪くてね、そこを切り取らないと、なかなか良くならないの」
「え?」
ウチはののを見る。するとののは、悲しげな表情をして、首を縦に振った。
「ほんまなんか……。で、したら治るの?」
「上手くいけば」
飯田さんは真剣な表情でそう答える。
「上手くいかんかったら?」
ウチはそう尋ねたが、飯田さんはそれ以上なにも答えんかった。
そして、ののの体は小さく震えつづけていた。
「そうか……」
ウチはその姿を見て、それ以上なにも聞けなかった。
346名無し娘。:02/09/18 11:45 ID:K6HPP3oB

しばらくして、ののは大きく息を吐くと、
「手術、おねがいします」
と、飯田さんに向かってはっきりと言った。
すでに、ののの震えはとまっていた。
「どうしたの?急に?」
飯田さんがそう尋ねると、ののは、あの、おにいちゃんにいつも見せる表情をして、

「手術しないと、なおらないんれす。ののは、なおりたいんれす」
そうつぶやいた。

「でも、手術したらもしかするかもしれへんのやろ?」
ウチは不安やった。お薬で粘れるのやったら、そのほうがいいのかもしれん。
そう思っていた。
「早くなおりたい。元気になって、先生に……」
と、ののはいったところで、はっとした表情でウチをみた。
「なんでもないれす」
そういって恥ずかしそうな顔をするのの。
その雰囲気がなんかいじらしくて、昔感じていた軽い嫉妬はどこかへ飛んでいっていた。
347名無し娘。:02/09/18 11:46 ID:K6HPP3oB
「わかってるよ」
ウチはそういって笑う。
「え?」
急に真っ白だったののの頬が赤く染まる。
「な、なにがれすか?」
「ウチのおにいちゃんのこと、好きなんやろ?」
「え?いや、そ、そんなこと……」
ののは慌てて、飯田さんの顔をみる。
すると飯田さんは、もう言っちゃえば、と言った。
それを聞いて、ののは、
「うん……」
と、うつむいた。
それを聞いて、飯田さんの言っていた、ののの生きて理由が
完全に分かった。

ののの生きていたい理由って、おにいちゃんやったんやな。
そして、おにいちゃんと一緒にいたい理由だけで、
意識が回復したり、手術を決意したりできるんやな。
なんか、それがとてもすごく思えたのと、
逆にそんなことで、人って変われるんや、
ということが同時に思い浮かんで、なんか笑えてきた。

「お、おかしいれすか?」
「いや、ごめん、ごめん」
「ののの立場はわかってるれすよ」
「そんなん、気にせんでええって。しかし、ののも単純やな」
「え?なにがれすか?」
ののは、不思議そうにウチと飯田さんをみる。
すると、飯田さんは、ウチにむかって、
「でも、人ってそんなものなんだよね」
と、微笑んだ。